先客がいたと思ったら怪しい組織でした
「おい、急げ! 核心部の『星結晶』を取り出せば、我ら『深淵の天秤』がこの大陸の魔導炉をすべて手中に収めることができる!」
古代遺跡の最奥、眩い青光を放つ巨大な星結晶が鎮座する大広間。
そこには、全身を不気味な漆黒のローブで包んだ怪しげな集団が群がり、手慣れた様子で防護結界を解除しようとしていた。
「そこまでにしてもらおうか」
ルーク院長の低く冷ややかな声が、広間に響き渡る。
「なっ……何者だ!? ここは我が『深淵の天秤』が封鎖したはず——」
ローブの男たちが一斉に振り返る。
だが、彼らの前に立った私の姿を見るや否や男たちの顔が一気に引きつった。
「な、なんだあの娘は……!? 身体から溢れ出している魔力の量が……異常だぞ!?」
「バ、バカな! 結界もなしに、この高密度の古代魔力の中に平然と立っているだと!?」
私とルーク院長、そしてシオンの三人は、ピクニックの途中に立ち寄ったかのような涼しい顔で彼らの前まで歩を進めた。
「あなた方ですね。氷竜を刺激して、北方の街を危険に晒したのは」
私が静かに尋ねると、リーダー格の男がハッと我に返り、懐から怪しげな魔導杖を取り出した。
「ハッ! 噂に聞く帝国の『大魔術師』気取りの小娘か! 我らの悲願を邪魔立てするなら、この古代魔導砲で灰にして——」
「シオン、術式の分析は終わりました?」
「はい、エレノア様! あの人たちが使おうとしている魔導砲、回路が粗雑すぎて三秒後に暴走しまーす!」
「……だそうですわ」
「な、なに……!?」
男が焦って手元の魔導杖を見ると、杖に刻まれた不完全な術式が、私の存在と干渉したことで許容量を超え、バチバチと赤い火花を散らし始めていた。
「ひっ……! 止まらん!? なんだこの干渉力は!?」
「人の作った遺跡のシステムを強引に奪おうとするからそうなるんだよ。素人は引っ込んでな」
ルーク院長が呆れたようにパチンと指を鳴らす。
次の瞬間、私の『星辰魔術』によって空間の歪みが生じ、男たちが持っていた不気味な魔導具や武器が一瞬で彼らの手から消失。頭上の空中に綺麗に並べられて浮遊した。
「あ……俺の武器が……!?」
「——『星辰縛鎖』」
私がスッと右手をかざすと、星の光で編まれた黄金の鎖が室内いっぱいに広がり、怪しい組織の男たち全員を逃さず一網打尽に縛り上げた。
「ぐはっ!? ほどけない……! なんだこの重厚な魔力鎖は!?」
「くそっ……! 我ら『深淵の天秤』が、こんな小娘たった一人の魔術に……手も足も出ないだと……!?」
ほんの数秒で無力化された男たちが、地面に転がって絶望の叫びを上げる。
「さて、遺跡を荒らす害虫退治も終わったことだし……じっくり本物の『星結晶』の解析を始めようか、エレノア」
「はい、ルーク院長! シオン、記録の準備をお願いしますね」
「お任せくださいー!」
転がる怪しい男たちを背景に、私たちは楽しそうに古代文明の叡智の調査へと向かったのだった。




