極寒の地で古代遺跡を見つけちゃいました
帝都での大歓声から一転。
私たちが向かったのは、大陸の最北端に位置する「永久凍土帯」と呼ばれる極寒の未開地だった。
地上は吹雪と巨大な氷塞に覆われ、並の人間なら一分と生き残れない極限の世界。
けれど——。
「うわぁぁ! すごいですエレノア様! 船のまわりだけ春みたいに暖かいです!」
白銀の魔導飛行船『ステラ・グランヴェル号』の甲板で、シオンがはしゃいでいる。
船全体を包み込んでいるのは、私の星辰魔術で張った『常温遮断結界』だ。
外はマイナス五十度の氷の世界だというのに船の上はぽかぽかと温かく薄着のままで快適に過ごすことができていた。
「ふふ、シオン。あまり身を乗り出すと落ちてしまいますわよ」
「まったく……天災をサクッと鎮めた次は、極地の寒さすら無視してピクニック気分か」
操縦席から出てきたルーク院長が、温かいココアを手に呆れ顔で笑っている。
その琥珀色の瞳は、眼下に広がる純白の大地を鋭く見据えていた。
「だが、そろそろ目的地だ。……見ろ、エレノア」
ルーク院長が指さした先、猛烈な吹雪の隙間から信じられない光景が姿を現した。
そこにあったのは氷の地層の中に埋もれるように佇む、巨大な白亜の建造物——。
数千年前、天体の力を直接利用していたとされる『第一世代の古代魔術文明』の遺跡だった。
「まあ……素晴らしいですわ! 建造物全体が、星の磁場と完全に同調した魔導回路で組み上げられています!」
「ええっ、あんな巨大な建物が全部魔導具なんですか!? すごすぎます!」
遺跡のあまりの美しさと精密さに、私とシオンは目を輝かせた。
王宮にいた頃は「古臭い図鑑」でしか見ることができなかった憧れの古代遺産が、いま目の前に広がっているのだ。
「フッ、目が輝いているなエレノア。……だが気をつけろよ。あの遺跡の中心からは、氷竜を暴走させたものと同じ『超高密度の古代魔力』が溢れ出ている。どうやら、誰かが最近……内部の封印を強引にいじくったらしい」
「誰かが……ですか?」
ルーク院長の言葉に、私の胸にちくりと予感が走った。
「ああ。どうやら世界の異変に惹かれてやってきたのは、俺たちだけじゃないらしい」
飛行船がゆっくりと遺跡の広場へと降下していく。
王宮のドロドロとした人間関係を飛び出した私を待っていたのは、世界の真理へと繋がる未知なる大冒険の扉だった。




