氷竜さん、星の力って知ってます?
猛烈な吹雪が吹き荒れる帝国の北方上空。
眼下に広がる街や山々は、氷竜の発する凄まじい冷気によって命の気配すらない絶対ゼロ度の世界へと変わり果てていた。
「グルオォォォォン……ッ!!」
天を突く氷の城塞の上に鎮座する巨大な古代竜が、私たちの乗る飛行船を払いのけようと空間ごと凍らせる吐息を放ってくる。
「ひやぁぁっ! 船ごと凍っちゃいますー!?」
「シオン、騒ぐな。……エレノア、いつでもいけるぞ」
操縦桿を握るルーク院長が、不敵な笑みを浮かべながら私に合図を送る。
「はい、ルーク院長!」
私は飛行船の甲板へ飛び出すと、吹雪の中で静かに右手を天へ掲げた。
王宮で抑え込まれていた6年間の魔力が、胸の奥で心地よく跳ねる。
これまでは「ちょっとした実験」でしか使わなかった星辰魔術の、本当の威力を解放する時だ。
(氷竜さん、いくら寒くても……宇宙の熱には勝てませんわよね?)
「——巡れ、天の十二宮。降り注げ、太陽の輝き——『星辰降臨・光華』!」
バババババババッ……!!
私が言葉を紡いだ瞬間、吹雪で覆われていた黒雲が円形に大きく穿たれた。
そこから降り注いだのは、昼間であるはずの空から降り注ぐ、まばゆい金色と琥珀色の「星々の熱線」だった。
ズドォォォォン……っ!!
「グガァァァっ!?」
絶対ゼロ度の冷気が一瞬で蒸発し、氷竜の巨大な身体が光の柱に飲み込まれていく。
私が放った魔術は、氷竜を倒すだけでなく、冷え切った大地を優しく温め、凍りついていた街の氷を一気に溶かしていった。
「な……なんという規模の魔術だ……! 空間の温度そのものを書き換えて、天災を消し去っただと……!?」
遠くで結界を張っていた帝国の魔術師たちが、空を見上げたまま開いた口が塞がらない様子で固まっている。
光が収まったあと、そこにはすっかり大人しくなり、子犬のように小さくなって丸まっている古代竜の姿と、暖かな日差しを取り戻した北方の街が広がっていた。
「ふふ、これにて一件落着ですね」
私が微笑むと、甲板の扉を開けて出てきたシオンとルーク院長が、呆れたような、けれど誇らしげな顔で拍手を送ってくれた。
「まったく……相変わらず規格外だな、エレノア」
「エレノア様、すごすぎます! 帝国の歴史がまた一気に変わっちゃいましたよ!」
こうして私は、国家を揺るがす大災厄を、ものの数分で解決してしまったのだった。




