え、北方が凍りつきそうなんですけど!?
「——帝国の北嶺にて、龍脈の暴走を確認! 封印されていた『災厄の氷竜』が目覚め、周辺の都市が丸ごと凍りついています!」
帝国魔導院の作戦会議室。
緊迫した叫び声と共に、立体地図の上に真っ赤な警告ランプが点滅した。
画面に映し出されたのは、猛烈な吹雪に包まれ急速に氷漬けになっていく北部の広大な領土。
そしてその中心で輝く巨大な氷晶の奥にうごめく山体ほどもある巨大な龍の影だった。
「なんということだ……! 氷竜の絶対ゼロ度の冷気は、我が国の近衛魔術師団が結界を張っても数時間と持たん!」
「もはや軍の手に負える規模ではないぞ! 領民数十万を見捨てて撤退するしかないのか!?」
帝国の将軍や老魔術師たちが顔を蒼白にして慌てふためいていた。
人間同士の泥臭い争いなど遥かに超越した「大自然の猛威と古代の怪物」による破滅の足音が迫っていたのだ。
「見捨てる必要なんてありませんわ」
騒然とする会議室に、澄んだ涼やかな声が響いた。
振り返る一同の視線の先に立っていたのは、蒼銀の凛としたドレスに身を包んだ私——エレノアだった。
「エレノア殿……! し、しかし相手は神話時代の天災ですぞ!? いくら貴女の魔力が規格外でも、一人の人間が立ち向かえる規模では……」
「一人ではありませんもの。私には、頼もしい仲間がいますから」
私の隣で、ルーク院長がニヤリと不敵に笑いシオンが背中に巨大な魔力増幅装置を背負って胸を張った。
「エレノア様の『星辰魔術』なら、氷竜の冷気ごと空間を『遮断』して、上空から星の熱線を直接叩き込めます! 術式のバックアップは私に任せてください!」
「俺も一緒に行く。帝国の魔導士たちが束になっても無理な巨大術式の維持、横でしっかり支えてやるよ」
ルーク院長が私の肩にそっと手を置く。
その温もりが、私の心に強い確信を与えてくれた。
(王宮にいた頃は『目立つな』『力を隠せ』と言われ続けていたけれど……今の私には、共に歩んでくれる大切な人と、困っている人を救う力がある!)
「大魔術師エレノア殿……! 本当に行ってくださるのか!?」
帝国の元帥が、信じられないというように目を見開く。
「ええ。サクッと解決してまいりますわ」
私は軽やかに微笑み、準備された魔導飛行船へと向かって歩み出した




