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「真実の愛を見つけた」ならどうぞお幸せに ———放置された公爵令嬢は婚約を破棄して魔術の頂点を目指します  作者: もも子
エレノアの覚醒

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暴走するアレスと王国の崩壊

「——どこにある!? グランヴェル家が隠している『通信魔導具』の権利書と、転送魔導具の研究資料はどこだ!?」


夜の闇が明ける前、静まり返った王立魔術研究院の保管庫。

目つきのすわったアレスは、数人の私兵を率いて荒々しく資料を漁っていた。


「殿下、このような行為は……! 院長閣下やグランヴェル公爵にお知らせすればただでは済みません!」


止めに入った見張り番の若い魔術師をアレスは剣の柄で容赦なく殴り倒した。


「黙れ! 俺は次期国王だぞ!? この国のすべての財産と技術は王家のものであるのが当然だ! これさえ手に入れば帝国との交渉も財政難も一気に解決するんだ……!」


アレスの瞳にはかつての「気品ある王太子」の面影など微塵もなかった。

父親から謹慎を命じられ、セシリアとも引き離され、貴族たちから蔑まれて追い詰められた末に行き着いたあまりにも惨めで無謀な「強奪」だった。


「見つけましたぞ、アレス殿下! これがエレノア様の研究ノートと、通信魔導具の契約書の原本です!」


「よし……! よくやった! これを回収し、明日にも市場と軍に王家主導で引き渡せば——」


「——人の屋敷……いや、研究院の保管庫で泥棒まがいの真似とは、落ちたものだな。王太子殿下」


暗闇の中から、低く冷ややかな声が響いた。


アレスがギクリとして振り向くと、そこには長衣を羽織り手に小さな灯火を浮かべたルーク院長が立っていた。

その琥珀色の瞳は、ゴミを見るかのように冷淡で恐ろしいほどの威圧感を放っている。


「ル、ルーク……! 貴様、王太子である俺に向かって失礼な口を……!」


「失礼? ハッ、笑わせるな」


ルークがパチンと指を鳴らした瞬間——。


ドッ!!


凄まじい衝撃波が大気を揺らし、アレスたちが手にしていた研究ノートと契約書が一瞬で青い炎に包まれ、灰となって散った。


「な……っ!? 俺の……俺の希望が!! 何をするんだ、貴様ぁぁっ!?」


「勘違いするなよ、愚か者」


ルークはアレスの胸ぐらを掴み上げると、耳元で恐ろしいほどの低い声で囁いた。


「あれらはただの『写本』だ。本物はすべてグランヴェル家の地下金庫にある。……それよりも、貴様はいま、決定的な一線を越えたんだよ」


「な、なに……?」


「『王立魔術研究院への不法侵入』『保管庫の破壊』および『研究資材の盗奪未遂』。……そして何より、グランヴェル公爵家が帝国および各国と交わした正式な特許の侵害だ。明日、この事実は公爵閣下から全貴族と諸外国へ公表される」


「ひっ……!?」


「お前がやったことは、王家の権威を取り戻す足掻きなどではない。……アルフレッド王国の命運を、その手で完全にトドメを刺す自滅行為だ」


ルークの手が離され、アレスは床に腰から崩れ落ちた。


翌朝。

グランヴェル公爵家は、アレス殿下による暴走と窃盗未遂の事実を告発。

これを受け、国内の有力貴族の8割が「もはや現王家に付き従う道理なし」と判断し、王家への増税・支援要請を拒否。

さらに、グランヴェル領を筆頭とする主要領地が事実上の「経済封鎖」を王都に対して宣言した。


近衛兵たちは給与未払いに怒って次々と脱走し王都の治安は崩壊。

他国の使節団も一斉に退去しアルフレッド王家は自国の中で完全に孤立した。


崩れていく城の自室でアレスはただ頭を抱えて震えることしかできなかった。

彼が必死に守ろうとした「王太子の地位」は、彼自身の愚かな手によって跡形もなく崩壊したのだった。

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