第二十九話「お別れパーティーをしたら帰れそうなんですけど?」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
いよいよ物語も終盤。
今回は、お別れパーティーのお話です。
ここまで出会ってきた仲間たちとの時間、そしてそれぞれの想い。
少し賑やかで、でも少しだけ寂しい、そんな回になっています。
最後の一歩手前の物語、楽しんでいただけたら嬉しいです。
パーティーの準備は、朝から始まった。
アリアが料理を作った。
さくらが飾り付けをした。
ノアが——邪魔をしないように端に座っていた。
「ノア、何か手伝って」
「……何をすればいい」
「テーブルを並べて」
「……分かった」
「ポチは邪魔だから外に出て」
「きゅん」
「ポチが傷ついた顔してる」
「……ポチは感情が豊かだ」
「外に出てて、後で入れてあげるから」
「きゅん」
「ポチ、外」
「きゅん……」
「外!!」
ポチが渋々出ていった。
「……ポチがしゅんとしている」
「後で入れてあげるから大丈夫」
「……余も、しゅんとしてみようか」
「しなくていい」
「……そうか」
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昼前に、全員が集まった。
あかね、怜奈、ルミナ。
ひまり、フロスト。
紫苑も来た。
「久しぶり、さくら」
「紫苑!! 来てくれた!!」
「呼ばれたから」
「元気だった?」
「まあまあ。あなたは?」
「元気。色々あったけど」
「聞いてる。噂は広まるもんね、この世界でも」
「どんな噂?」
「魔法少女が魔王と組んで暴れてるって」
「暴れてない!!」
「Sランクを倒したって聞いた」
「……それは暴れてないよ」
「まあね」
紫苑がノアを見た。
「ノア、久しぶり」
「……久しぶりだ、紫苑」
「元気そうで良かった。魔力は?」
「……だいぶ戻った」
「そう。良かった」
「……紫苑は?」
「私は相変わらず。この世界でやることが増えてきたから、忙しくしてる」
「……やること?」
「まあ、色々。今日は詳しく話す気分じゃないけど」
「……そうか」
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料理が並んだ。
全員が席についた。
アリアが言った。
「じゃあ——今日集まってくれてありがとう。さくらちゃんとノアちゃんの、お疲れ様会ね」
「お疲れ様会!!」
「お別れパーティーって言うと寂しいから、お疲れ様会にしたの」
「アリアさんらしい!!」
「ではみなさん、食べましょう」
「「「いただきます!!」」」
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賑やかだった。
あかねが「最初にさくらを見たとき、魔法少女だと思わなかった!!」と言い出した。
「どう見えたの?」
「普通の子!! でも魔力がすごくて!!」
「普通の子なんだけど」
「普通の子がSランクに挑むの!?」
「挑んで負けたけど!!」
「でも次は勝ったじゃん!!」
「みんなのおかげで!!」
怜奈が静かに言った。
「……私が最初にさくらを見たのは、こっちの世界じゃなくて向こうだから」
「そっか、幼なじみだもんね」
「最初に会ったのは小学校三年生」
「覚えてるの?」
「覚えてる。さくらが転校してきて、私に話しかけてきた」
「私から話しかけたっけ」
「話しかけてきた。『隣いい?』って」
「……あー、そんなこと言ったっけ」
「言った。それからずっと隣にいる」
「怜奈……」
「事実を言っただけ」
「でも——ありがとう、ずっと隣にいてくれて」
「……こちらこそ」
ルミナが感動していた。
「……怜奈様とさくら様の絆……!! 素晴らしいです……!!」
「ルミ、食べて」
「……食べながら感動できます……!!」
「器用だね」
ひまりが立ち上がった。
「私も言っていいですか!!」
「どうぞ」
「先輩と出会ったのは、コルナの市場でノア様が——」
「暴れたときですね!!」
「……暴れたとは」
「暴れてましたよね!!」
「……結果的にそうなった」
「認めてる!!」
「……認めた。今日は認める」
「やった!! で、そのときにさくら先輩が普通に話しかけてて——私、先輩のことが好きになりました!!」
「ひまり……」
「先輩みたいな人、初めて見たので!! 怖くなさそうにしてて、でもちゃんと強くて、困ってる人を放っておけなくて!!」
「……放っておけない人、か」
ノアが言った。
「ノアも同じこと言ってたね」
「……最初からそうだった、と言った」
「先輩は最初からそういう人なんです!!」
「……余も、そう思う」
「ノア様も!!」
「……余はひまりと同意見になりたくないが——今回は同意する」
「やった!!」
「……やったと言うな」
「やった!!」
「……」
フロストが静かに言った。
「……私が初めてさくら先輩を見たのは、魔王様と先輩が対峙したときです」
「覚えてる?」
「……覚えています。魔王様が混乱していて、先輩が——怖そうにしながら逃げなかった」
「怖かったんだよ、あのとき」
「……でも逃げなかった。それを見て、先輩は信頼できると思いました」
「フロストに信頼してもらってたんだ」
「……はい。魔王様を守れる人だと思いました」
「守れてるかな」
「……守れています。今も」
「ありがとう、フロスト」
「……どういたしまして」
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食事が進んで、少し落ち着いたころ。
さくらが紫苑に声をかけた。
「紫苑、今日の本題なんだけど」
「なに?」
「一緒に帰らない? 転送装置で元の世界に試みようと思って」
紫苑が少し間を置いた。
「……さくら」
「うん」
「私は、今は帰らない」
「今は?」
「この世界に、やりたいことができたから」
「やりたいこと?」
「……まだ言えないけど。でも——転送装置が使えるなら、帰れるときに帰れるでしょ」
「そうだけど」
「だから今は残る。あなたたちが帰った後も、ここで動く」
「……紫苑」
「心配しないで。私は大丈夫」
「大丈夫じゃなかったら——」
「大丈夫。それより——さくらはどうなの。帰りたい?」
「帰りたい。家族も心配してるし、学校もあるし」
「そっか」
「でも——ここも、好きになった」
「それは分かる」
「分かる?」
「あなたのことだから。どこに行っても、そこを好きになる」
「……そうかな」
「そうよ。だから安心して帰って。また来ればいいんだから」
「……また来れるかな」
「転送装置があるでしょ」
「あるね」
「じゃあまた来れる。それまで、ここの人たちのことは私が見ておく」
「紫苑……ありがとう」
「どういたしまして」
ノアが横で聞いていた。
「……紫苑」
「何、ノア」
「……この世界に残る理由が、余には想像できないが」
「そう?」
「……でも——紫苑がそう決めたなら」
「うん」
「……余は尊重する」
「ありがとう。ノアらしいね」
「……らしい?」
「相手の領域に踏み込まない。魔王の作法でしょ」
「……アリアに言われた」
「私にも分かる。あなたはそういう人だから」
「……そうか」
「ノア、さくらのこと頼むね」
「……余の世界と、さくらの世界は違う」
「それでも」
「……分かった」
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夕方になった。
全員で遺跡に向かった。
鋼鉄竜を倒したときと同じメンバーで、同じ道を歩いた。
「……不思議な感じがする」
さくらが言った。
「何が?」
「こんなに大勢で歩いてる。最初はノアと二人だったのに」
「……そうだな。最初は二人だった」
「増えたね」
「……増えた」
「全部、ノアのせい」
「……余のせいか」
「暴れたから借金して、ひまりと仕事して、あかねに会って、怜奈に会って、フロストと再会して——全部繋がってる」
「……余のせいで、全部が始まった」
「ノアのおかげで、全部が始まった」
「……おかげかどうかは——」
「おかげ」
「……まあ」
あかねが割り込んできた。
「二人、何話してたの!!」
「ノアのおかげで全部が始まった話」
「それ最高だね!! ノアが暴れたから!!」
「……暴れたとは」
「暴れたんでしょ!!」
「……今日は認める日ではなくなった」
「さっき認めた!!」
「……今は認めない」
「さっき認めた!!」
「……状況による」
「ずるい!!」
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遺跡に着いた。
内部を進んだ。
ゴーレムがいた部屋。
台座の上の転送装置。
全員が部屋に入った。
「……これか」
怜奈が装置を見た。
「前に見たね」
「……前のときは、仕組みが分かっていなかった」
「今は分かってる」
「……元の世界の座標を登録して、装置を起動する」
「できるかな」
「……やってみないと分からない。でも——試せる段階まで来た」
さくらとノアが装置の前に立った。
全員が見守っていた。
「……どうやって座標を登録する」
「魔力を流しながら、帰りたい場所を強くイメージする、って話だったよね」
「……そうだ。二人で同時に」
「うん」
「……さくらは、元の世界をイメージできるか」
「できる。家の玄関、ちゃんと覚えてる」
「……余は——魔王城の正門をイメージする」
「じゃあ、やってみよう」
「……やってみる」
二人が装置に手を置いた。
魔力を流した。
装置が光り始めた。
青白い光。前に見た光と同じ。
「……光ってる!!」
「反応してる!!」
「……座標が登録されている、かもしれない」
「起動する?」
「……起動する。全員、離れていてくれ」
全員が少し後ろに下がった。
紫苑だけが、さくらを見ていた。
さくらが振り返った。
「紫苑、またね」
「またね。元気でね」
「紫苑も」
「うん」
あかねが叫んだ。
「さくら!! またすぐ来てね!!」
「来る!!」
「約束!!」
「約束!!」
「ノアも来てね!!」
「……来る。約束する」
「やった!!」
ひまりが泣いていた。
「先輩……!! またいつでも来てください……!!」
「来る!! また仕事も頼んで!!」
「頼みます……!! ノア様も……!!」
「……また借金はしない」
「借金じゃなくていいので……!! また来てください……!!」
「……来る」
「……絶対ですよ……!!」
「……絶対だ」
フロストが静かに言った。
「……魔王様」
「……何だ、フロスト」
「……お気をつけて」
「……余の世界に帰るだけだ」
「……それでも」
「……分かった」
「……先輩も」
「うん、ありがとうフロスト」
「……どういたしまして」
ルミナが怜奈の袖を掴んでいた。
「……怜奈様、私も何か言っていいですか」
「言って」
「……さくら様、ノア様——お元気で……!! また会いましょう……!!」
「また会おう、ルミさん」
「……はい……!! 怜奈様の分も言いましたよ!?」
「……言わなくていい」
「でも……!!」
「……自分で言う」
怜奈がさくらを見た。
「……さくら」
「うん」
「……元気でね」
「うん、怜奈も」
「……また来い」
「来る。絶対来る」
「……約束」
「約束」
アリアが最後に言った。
「さくらちゃん、ノアちゃん」
「アリアさん」
「……アリア」
「ここにいてくれてありがとう。楽しかったわ」
「私も楽しかったです」
「……余も——楽しかった」
「また来てね。ご飯作って待ってるから」
「待っててください」
「……待っていてくれ」
「待ってるわ。二人とも」
装置の光が大きくなった。
さくらがノアを見た。
「ノア」
「……何だ」
「ここにいる間——ありがとう」
「……余が言う言葉だ」
「両方言えばいい」
「……そうだな」
「じゃあ」
「……じゃあ」
さくらが、ノアの手を握った。
一瞬だけ。
「行こう」
「……行こう」
装置が、起動した。
光が二人を包んだ。
全員が見ていた。
光が弾けた。
二人が——消えた。
部屋が静かになった。
アリアが静かに笑った。
「……いってらっしゃい」
暗転。
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最終話に続きます。
第二十九話、読んでいただきありがとうございました。
ついに、ここまで来ました。
長かったようで、あっという間だった気もします。
この回は「別れ」をテーマにしつつも、この作品らしく、できるだけ温かく、前向きな形で描きました。
完全な終わりではなく、「また会える約束」としての別れです。
そして——さくらとノアは、ついに元の世界へ。
次回、最終話。
この物語の結末を、ぜひ最後まで見届けていただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします。




