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第十二話「魔王が子犬を家来にしてケルベロスと名付けたのにポチと呼ばれてるんですけど?」

いつもお読みいただきありがとうございます。

第十二話では、女王となったあかねの城や町の様子が描かれるとともに、少しだけ穏やかな日常回となっています。

……とはいえ、魔王にとってはとても大きな出来事が起きます。

それでは、第十二話をお楽しみください。



 あかねの城は、思ったより立派だった。


 石造りで、三階建てで、中庭に噴水がある。壁に旗が飾ってあって、衛兵が整然と立っている。


 ただ、所々に違和感があった。


 中庭の噴水が、微妙に焦げていた。


 壁の一部が、何かにぶつかったような跡がある。


 衛兵の鎧が、一人だけ歪んでいた。


「……あかね、この城」


「うん?」


「なんか焦げてない?」


「あー……ちょっと訓練で」


「訓練で噴水が焦げるの?」


「魔法の制御がまだ甘くて」


「あかねが焦がしたの!?」


「……七割くらいは私じゃないよ」


「三割はあかねじゃん!!」


 ノアが中庭を眺めながら言った。


「……魔法を使う者が王になると、こういうことが起きるのか」


「魔王城でも?」


「魔王城は石でできておるから、そう簡単には焦げない。ただ——余が幼いころ、魔力が暴走して床を溶かしたことはある」


「床を!?」


「幼いころの話だ」


「何歳のとき?」


「……覚えておらん」


「あかね、ノアも似たようなもんだよ」


「似てるんだ」


 あかねはノアを見た。


 ノアはあかねを見た。


「……余は床を溶かしたが、噴水は焦がしていない」


「私は床は溶かしてないよ」


「……どちらが上かは微妙だな」


「微妙だね」


「……まあ、いい」


 なんか仲良くなりそうだな、とさくらは思った。


-----


 広間に通されて、全員で座った。


 お茶と菓子が出てきた。


 あかねが向かいに座って、さくらを見た。


「……で、説明して。魔王と一緒にいる経緯を」


「長いよ?」


「聞く」


「じゃあ最初から——」


 さくらは説明した。


 次元の狭間に落ちたこと。気づいたらコルナにいたこと。ノアと出会って、お互いの魔力が不安定で、同行することになったこと。ひまりと再会したこと。紫苑先輩が女神になっていたこと。


 あかねは黙って聞いていた。


 話が終わると、少し沈黙があった。


「……紫苑先輩が女神」


「なってた」


「……先輩っぽい」


「そう思う?」


「うん。先輩、やると決めたら徹底するから」


「……確かにそうかも」


「怜奈は?」


「まだ分からない」


「そっか……」


 あかねは少し黙った。


「私も最初は探してた。みんなのこと。でも手がかりがなくて——そのうちこの国の問題が色々あって、気づいたら王様になってた」


「どうして王様に」


「前の王様が急に倒れて、後継者がいなくて、国がごたごたしてたから。魔法で助けたら祭り上げられた」


「……それであっさり王様になるの、あかねらしいね」


「あっさりじゃなかったよ!? すごく大変だったから!!」


「でも断らなかったでしょ」


「……国が困ってたから」


「そういうとこだよ、あかねは」


「そういうとこって何」


「放っておけないとこ」


 あかねは少し赤くなった。


「……別に、そういうわけじゃ」


「そういうわけでしょ」


「……まあ」


 ノアがお茶を飲みながら言った。


「強くて、放っておけない性格で、王になった。理解した」


「……理解が早いね、魔王」


「余は頭がいい」


「自分で言うんだ」


「事実だから言う」


「……さくら、この魔王って普段からこんな感じ?」


「こんな感じ」


「大変だったね」


「大変だった」


「……余は大変ではない」


「大変だったよ!!」


「ぐぬ……」


 あかねが笑った。


 さくらも笑った。


 久しぶりの感じがした。あかねと笑うのが、久しぶりだった。


「……さくら、帰れそう?」


 あかねが聞いた。


「頑張ってる。魔力が戻れば——ノアと戦い直して、次元の狭間を開けるかもしれないって」


「ノアと戦い直す?」


「元々さ、私たちって宿敵じゃん」


「……まあ、魔法少女と魔王だし」


「帰るためには一回ちゃんと戦わないといけないらしくて」


 あかねはノアを見た。


「……それで、今は一緒にいるの?」


「そう」


「不思議な関係だね」


「不思議だね」


「……ノアは、帰りたい?」


 あかねが直接ノアに聞いた。


 ノアは少し間を置いた。


「帰らなければならない」


「帰りたいかどうかを聞いてる」


「……さくらも同じことを聞いた」


「さくらが聞いたの?」


「……余は、今はまだ答えを出していない」


「なんで?」


「……今は今だからだ」


 あかねはさくらを見た。


 さくらは少し目を逸らした。


「……なんかさくらに影響されてるじゃん、魔王」


「影響されておらん」


「されてるよ、絶対」


「……されていない、と思う」


「思う、って言ってる時点で怪しいじゃん」


「……うるさい」


 あかねがまた笑った。


-----


 午後は、あかねが町を案内してくれた。


 女王が直接案内するのは珍しいらしく、町の人たちがあかねを見てにこにこしていた。


「陛下!!」


「よー!! 元気?」


「元気ですよ!! 今日はお客様ですか?」


「そう!! 友達と魔王と商人と元四天王!!」


「はあ、賑やかですね!!」


 あかねが気さくだった。


 町の人たちとの距離が近い。女王という感じよりも、顔の広い近所のお姉さんみたいだった。


「……あかね、女王らしくないね」


「女王らしくしようとしたんだけど、無理だった」


「無理だったんだ」


「三日で諦めた」


「早!?」


「堅苦しいの苦手で!! でも民は慕ってくれてるし、まあいいかなって」


「まあいいか、で女王やってんの?」


「……そういうわけでもないよ。ちゃんとやってるよ、政治」


「焦げた噴水は?」


「……あれは事故」


「訓練で噴水が焦げるのは事故じゃないと思う」


 ノアが町を眺めながら言った。


「……良い町だ」


「でしょ!! 自慢の町!!」


「活気がある。市場が広くて、住民の顔が明るい」


「ノアも分かる?」


「余は魔王だ。町の状態を見れば、統治の質が分かる」


「……魔王ってそういうこと考えるんだ」


「魔王も、領地を治める必要がある。良い町と悪い町の違いは——」


「教えて!!」


「……良い町は、子どもが走り回っておる」


 あかねが辺りを見渡した。


 確かに、子どもが数人、石畳を走っていた。


「……なるほど」


「子どもが外で遊べる町は、治安が良く、親に余裕がある。その逆は——」


「逆は?」


「子どもが見えない。隠されておる」


「……魔王軍の領地は?」


「……良い町もあったし、悪い町もあった」


「正直だね」


「……余の力が及ばない場所もあった」


 あかねはノアを見た。


「……ちゃんと王様やってたんじゃん、魔王」


「魔王だから当然だ」


「さくら、この魔王意外とまともじゃん」


「意外とね」


「余は最初からまともだ!!」


「虫の巣踏んだり箱罠壊したりしてたじゃん」


「……それは別の話だ!!」


 あかねが笑いながら歩いた。


 さくらも歩いた。


 ノアがついてきた。


-----


 市場を歩いていたときだった。


 路地の端で、小さな声がした。


 きゅん。


「……?」


 ノアが足を止めた。


 路地の隅を見た。


 段ボール——ではなく、木箱の陰に、小さな生き物がいた。


 子犬だった。


 真っ黒な毛並みで、耳が少し大きくて、目がくりくりしている。


 ひょっこりと顔を出して、ノアを見た。


 きゅん。


「……」


 ノアが固まった。


「ノア?」


 さくらが声をかけると、ノアは振り返らなかった。


 子犬を見ていた。


 子犬もノアを見ていた。


「……お主は」


 ノアが子犬に近づいた。


 子犬は逃げなかった。


 ノアがしゃがんだ。子犬と目線が同じになった。


 子犬がノアの手を嗅いだ。


 舐めた。


「……」


 ノアが固まった。


「……ノア?」


「……なんでもない」


「顔が赤いけど」


「……赤くない」


「赤い」


「……寒いからだ」


「寒くないでしょ今」


「……寒い」


 あかねが覗き込んだ。


「子犬!! かわいい!!」


「かわいいね」


「野良かな?」


「みたいだね」


「……余のものにする」


 ノアが言った。


「え?」


「余の手下にする。家来だ」


「子犬を家来に?」


「余は魔王だ。使い魔や使役獣を持つのは普通のことだ」


「……まあ、そうかもしれないけど」


「この犬は余に懐いた。ならば余の家来だ」


「懐いてるかどうかはまだ分からないんじゃない?」


 子犬がノアの膝によじ登ってきた。


 くるりと丸まった。


 きゅう。


「……懐いた」


「懐いたね」


「余の家来だ」


「まあ、飼うの?」


「飼うのではない。家来にする」


「同じじゃん」


「違う。余が世話をするのではなく、余に仕えるのだ」


「子犬が仕えるの?」


「そうだ」


「……世話は誰がするの」


「……余がする」


「やっぱり飼うんじゃん」


「うるさい!!」


 あかねが子犬を見た。


「名前は?」


「……これから決める」


「何にするの?」


 ノアは子犬を見た。


 子犬はノアを見た。


「……ケルベロスだ」


「ケルベロス!?」


「地獄の番犬の名だ。余の家来にふさわしい」


「この子犬に!?」


「何が問題だ」


「サイズが全然合ってないじゃん!!」


「名は大きくあるべきだ。魂は名に宿る」


「……まあ」


「ケルベロスだ。余の最初の家来。覚えておけ」


 さくらは子犬を見た。


 子犬は小さくて、ふわふわで、ノアの膝の上で丸まっていた。


 どう見てもケルベロスではなかった。


「……ケルベロス、か」


「そうだ」


「……ポチのほうが似合う」


「ポチ!?」


「なんとなく」


「ポチなどという名は似合わん!! ケルベロスだ!!」


 あかねが笑いながら言った。


「ポチじゃん絶対」


「ポチではない!!」


「ポチだよ、どう見ても」


「ケルベロスだと言っておる!!」


 ひまりが追いついてきた。


「あ、子犬!! かわいい!! 名前は!!」


「ケルベロスだ!!」


「……ポチですね!!」


「ポチではない!!!」


 フロストが後ろから静かに言った。


「魔王様、ポチというのは愛称として一般的です」


「愛称は要らん!!」


「ケルベロスは長いので、ポチと略す形で——」


「略すな!!」


「ポチ、こっちおいで」


 あかねが手を差し伸べた。


 子犬がノアの膝から降りて、あかねに近づいた。


「あかね!! 余の家来を!!」


「ポチじゃん、やっぱり」


「ケルベロスだ!!」


「ポチポチ」


「やめろ!!」


 子犬があかねの手を舐めた。


 ノアが子犬を抱き上げた。


「……余の家来は余の隣にいろ」


 子犬はノアの腕の中で、きゅんと鳴いた。


「……名前はケルベロスだ」


 子犬は答えなかった。


「ケルベロスと呼んだら来るか?」


「……ケルベロス?」


 子犬は反応しなかった。


「……ポチ?」


 子犬がぱっと顔を上げた。


「…………」


「ポチって反応したね」


「…………」


「前の飼い主がポチって呼んでたんじゃない?」


「…………」


「ノア?」


「……名前は、ケルベロスだ」


「うん」


「ケルベロスと呼ぶ」


「うん」


「ただし、反応するときはポチと呼ぶ」


「……それポチじゃん」


「ケルベロスという名の犬がポチという愛称に反応するだけだ!!」


「……まあ」


「まあ、じゃない!!」


「はいはい、ケルベロス改めポチね」


「改めてない!!」


-----


 夕方、あかねの城に戻った。


 ポチ——ケルベロスは、ノアの腕の中でずっと眠っていた。


 夕食の席でも、ノアの膝の上で眠っていた。


「……よく眠る」


「子犬だから」


「余の膝が気に入ったのか」


「気に入ったんでしょ」


「……家来としての忠誠心だな」


「ただ眠いだけだと思う」


「忠誠心だ」


「まあ、そういうことにしといて」


 あかねが肉料理を頬張りながら言った。


「ノア、ポチのご飯はどうするの?」


「ケルベロスだ。そしてご飯は——」


「余った肉をもらえるか」


 あかねに向かって言った。


「いいよ!! こっちには食材が余ることも多いから!!」


「助かる」


「ノア、素直に頼めるじゃん」


「余は常に必要なことは言う」


「さくらには素直じゃないのに」


「さくらには素直だ」


「……じゃあなんで毎回言い合いになるの」


「それはさくらが余計なことを言うからだ」


「余計なことって?」


「……まあ、色々と」


「さくら、聞いた?」


「聞いた」


「余計なことって何か心当たりある?」


「いっぱいある」


「さくらも認めてるじゃん!!」


「余計なことを言うけど、間違ったことは言ってないから」


「……そういうやつだな」


 ノアがつぶやいた。


「間違ったことは言わないが、余計なことは言う」


「そう」


「……まあ」


「まあ?」


「……それでいい」


 あかねがさくらを見た。


 さくらは少し目を逸らした。


「……仲良いじゃん」


「仲良くはない」


「仲良いよ絶対」


「……まあ」


「まあって言ったじゃん!!」


「まあ、は色々な意味がある」


「どんな意味?」


「……秘密だ」


 あかねが笑った。さくらも笑った。ノアが「笑うな」と言った。


 ポチが目を覚まして、あくびをした。


-----


 食後、あかねがさくらを廊下に呼んだ。


 二人だけになった。


「……さくら」


「何?」


「ノアのこと、好きなの?」


 さくらは固まった。


「……なんでそんなことを」


「なんとなく」


「なんとなくで聞かないで」


「だって見てたら分かるじゃん」


「……分からないよ」


「さくらが分からないふりしてるだけでしょ」


「……あかね」


「私、さくらのこと分かるから。ずっと一緒に戦ってきたから」


「……まあ」


「まあって認めてるじゃん!!」


「認めてない」


「さくら!!」


「……複雑なの」


「複雑?」


「……宿敵で、魔王で、でも今は一緒にいて、帰るためには戦わないといけなくて」


「……それは複雑だね」


「複雑でしょ」


「でも今は?」


「今は——」


「今は?」


「……今は今だよ」


 あかねは少し黙った。


「……それ、ノアが言いそうなセリフだね」


「……ノアに言われたの」


「逆じゃん!! さくらが言うセリフをノアが言ってたんじゃなくて?」


「……最初は私が言った。でも今日はノアが言ってた」


「……移ったんだ」


「移った、かな」


 あかねが笑った。


「……さくら、いい顔してるよ」


「いい顔?」


「うん。こっちに来てから大変だったと思うけど、表情が——なんか、柔らかくなった気がする」


「……そう?」


「うん。コルナで暮らしてる時間、悪くなかったんじゃない?」


 さくらは少し考えた。


「……悪くなかった、と思う」


「そっか」


「帰りたくないわけじゃないけど」


「うん」


「……でも、悪くなかった」


「ノアのおかげ?」


「……いろいろのおかげ」


「その中にノアがいる?」


「……まあ」


「まあって言ったじゃん!!」


「あかね!!」


「はいはい、分かった分かった」


 あかねが廊下の奥を見た。


「……帰るときに、ちゃんと戦えるといいね。二人とも」


「うん」


「戦って、帰れるといいね」


「……うん」


「でも——」


「でも?」


「帰ったら帰ったで、また色々あるじゃん。魔法少女と魔王だから」


「……そうだね」


「そのときも、なんとかなるといいね」


 さくらは少し黙った。


「……なんとかなるかな」


「なんとかなるよ」


「根拠は?」


「さくらと、あの魔王なら」


「……根拠になってない」


「なってるよ」


 あかねが歩き始めた。


「戻ろう、ポチが鳴いてる」


「ケルベロスね」


「ポチだって」


「ケルベロス」


「ポチ!!」


「……あかね、あんたもノアと同じタイプだよ」


「どういう意味!?」


-----


 夜。


 さくらとノアの客室。


 ポチがノアの布団の端で丸まっていた。


「……布団に入れるの?」


「寒いだろう」


「子犬は毛があるから大丈夫だよ」


「余の布団のほうが暖かい」


「まあ、いいけど」


 さくらは天井を見た。


「……あかねと話した」


「何を」


「色々」


「色々とは」


「……あかね、帰ったらまた色々あるって言ってた」


「そうだな」


「……うん」


「余も、考えておる」


「帰ったあとのこと?」


「……余が帰れば、魔王軍は動き出す。さくらの世界への侵略も再開されるだろう」


「……そうだろうね」


「それは、変わらない」


「……うん」


「ただ——」


「ただ?」


「……それは、そのときに考える」


「今は今?」


「……今は今だ」


 ポチがきゅんと鳴いた。


「……ケルベロスが鳴いた」


「ポチね」


「ケルベロスだ」


「ポチって呼んだら来るんでしょ」


「……ケルベロスという名の犬が、ポチという音に反応するだけだ」


「一緒だよ」


「一緒ではない!!」


 ポチがノアの顔を舐めた。


「……」


「……ノア?」


「……なんでもない」


「顔赤いけど」


「……寒いからだ」


「さっきも言ってた」


「……今日は寒い日だ」


「……まあ、おやすみ」


「……おやすみ」


 今日は珍しく、同時だった。


 ランプを消した。


 暗闇の中で、ポチの寝息がした。


 小さくて、規則正しくて、なんか落ち着いた。


-----


**【魔王の小さな冒険 其の十二「魔王、初めての家来を得た件」】**


 のあちゃんには、隠していることがあった。


 子犬を見た瞬間に、胸がきゅっとなった。


 それだ。


 それを隠していた。


 魔王が、子犬を見て、胸がきゅっとなる。


 そんなことを知られたら——と思った。


 でも子犬は余に懐いてきた。余の手を舐めた。余の膝で眠った。


 魔王が子犬に懐かれる。


 これは——使い魔を得た、ということだ。


 家来を得た、ということだ。


 決してかわいいと思ったわけではない。


「……かわいい」


 暗闇の中で、のあちゃんはつぶやいた。


 言ってしまった。


 でも、誰も聞いていない。


 ポチ——ケルベロスがのあちゃんの胸元で眠っていた。


 温かかった。


 小さくて、柔らかくて、温かかった。


「……ケルベロス」


 呼んでみた。


 反応しなかった。眠っている。


「……ポチ」


 ぴくっと耳が動いた。


「…………」


 のあちゃんはため息をついた。


「……ポチという名のケルベロスだ」


 誰にも聞こえない声で言った。


「余の最初の家来。ちゃんと家来らしくしろよ」


 ポチは眠り続けた。


 のあちゃんはポチの頭を、そっと撫でた。


 一回だけ。


 誰も見ていないから、一回だけ。


「……明日も、ついてきていい」


 ポチが小さく鳴いた。


 のあちゃんは目を閉じた。


 久しぶりに、すぐに眠れた気がした。


-----


第十三話に続きます。


-----


**次話予告**


 翌朝。


 ひまりの商談が始まった。


 さくらとあかねは久しぶりに並んで歩いた。ノアはポチを抱えて、あかねの城を探索していた。


 そして昼過ぎ。


「さくら、一個聞いていい?」


 あかねが真剣な顔をした。


「魔力、本当に戻ってきてる?」


「……うん、少しずつ」


「ならさ——少し、一緒に訓練しない?」


 第十三話「王様になった先輩と特訓したら魔王がすねたんですけど?」 ――次回!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今回は戦闘や大きな事件はありませんでしたが、あかねの現在の立場や、ノアの心境の変化、そして新たな“家来”の登場など、今後に関わる要素を多めに詰め込んだ回になりました。


ケルベロス(ポチ)は、魔王にとって初めての部下であり、初めて自分から手に入れた存在でもあります。彼女にとっては小さな一歩ですが、大きな意味を持つ出来事でもあります。


次回は、あかねの提案によってさくらの訓練が始まり、再び戦いに向けて物語が動いていきます。引き続き読んでいただけると嬉しいです

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