神饌の姫篇 エピローグ クシナダ姫はおにぎりを握る①
土曜の昼下がり。
楓はメイの家に遊びに来ていた。今回は初の、泊まりがけである。
──「この週末、うち、両親留守なの。メイのとこにお泊まりに行ってもいい?」
──「えっ……も、もちろんいいよ!」
メイの母はメイより喜んであちこち大掃除、客用布団を干したり、食材を仕入れたり。
おかげで神納家は数日、すっかりお祭り騒ぎだった。
で、今。
楓は、神妙な面もちのメイの母と、顔をつきあわせていた。
最近、妖怪が見えるようになったメイの母に「見える人の心得」をレクチャーしてほしい、とメイがたのんだからだ。
(わたしまだ人とオバケの見分けもつかないし、アドバイスもらうなら野々宮さんだよね!)
信頼のまなざしで見守るメイの前で、
「なるほど、職場でも通勤途中でも、ユーレイっぽいものは見かけてないんですね」
楓の確認に、母はうなずいた。
「見てないわ。人そっくりだったら、見すごしてるかもしれないけど」
「会話してる途中で相手の印象ががらっと変わったり、怖い思いをなさったことは?」
「うーん、ないわねえ」
「でも、このキバ君は見える、と」
皮ごとみかんにがぶり、とかぶりついたところの小鬼は「ンあ?」と間の抜けた声を出す。
母はくすっと笑った。
「ちゃんと見えるわよ。最初はね、もこもこしてすばやいのがキッチンにいるから、てっきりネズミかと思ったんだけど! ちゃんと手足あって表情豊かだし、ほんとに妖怪さんよねー」
ティッシュをとり、小鬼の口もとに飛び散った果汁をちょいちょいとふいてやる。
もうすっかり「うちの小さい子」あつかいだ。楓も笑った。
「二階の神さまはどうですか?」
「実は、まだちゃんと見たことないの。最初の時はひたすら怖くて、必死で目をそらしちゃったし、あとはなんとなく気がひけて」
楓はうなずいて、居間の天井に指を向ける。
「今はなにか感じますか」
「ううん、なんにも」
「他に見たことのある妖怪は?」
「もちろんうちのミーちゃんよ! 化け猫さんだったの! すごくたよれる感じの美人さんに化けるのよ! わたしが慣れてる子猫の姿にもなって、おしゃべりしてくれるの!」
目を輝かせて説明する母に、楓はうなずいた。
「だいたいわかりました。そういう感じなら問題ないと思います」
「えっ、そうなの?」
思わずつぶやいてしまうメイをふり返って、楓は請け合う。
「だいじょうぶ! オバケが見えない人ってたいてい防ぐ力が強いんだけど、メイのお母さんもそう。すごーく健全で霊光も明るいから、そもそもヘンなものとは波長が合わないの。よりつく隙がない感じ。今までどおり、ふつうに生活してればだいじょうぶ」
「そっかー、良かったー」
メイはほっと胸をなでおろす。
「じゃあお母さんには『それはそれ、これはこれ!』なんておまじない、必要ないのね」
「ないね。そんな対応しなきゃいけないもの、目に入らないんだもん」
「すごーい」
メイの尊敬のまなざしに、母は釈然としない顔をした。
「見えないのがすごいの?」
「それも才能です!」
楓は断言して母を安心させておいて、そわそわとあたりを見まわす。
「それでその……化け猫さんは?」
「あ、買い物に行ってくれてるの。ケーキと出す予定のハーブティー、うっかり切らしてて」
「ミーちゃんがお買い物に……! 普通の人にも見えるように化けられるってこと?」
驚いてふり向く楓に、メイはうなずいた。
「ふだんの買い出しの手伝いとか、もう何度もやってくれてるー」
「すごい! それってもう、大妖怪じゃん!」
「だよね! ほんとの姿なんか車ぐらいあって、わたし乗せてぱーっと空飛べちゃうんだよ!」
「えっ、乗せてもらったの? うわーうわー、いいなー」
羨望の声をあげる楓の向かいで、母も目をみはる。
メイは猫神の姿を思い出すだけで感謝でいっぱいになり、思わず手を合わせた。
「もう化け猫さんって言うより、猫神さまです」
「人の姿もすっかりオトナなの?」
「うん。背もね、お母さんより高い感じ」
「この春、湖の近くで会った三毛さんだよね? あの時はキュートな美少女だったのに……」
「妖怪さんってすごく長い間同じ姿でいるみたいなのに、育つ時は一足飛びだよねー」
「ワシも早う大きゅうなりたいものよ」
小鬼が、たぶん三個めぐらいのみかんにかぶりつきながらつぶやく。
「えー、キバ君は生まれたてなんでしょ、そんな早く大きくならなくても……って……」
ふと気づいて、楓はまじまじと卓上の小鬼をのぞきこんだ。
「あれ? なんかキバ君のツノ、のびてない?」
「え? あっ、ほんとだ!」
メイと、さらにメイの母にまで注目され、小鬼は赤くなって小さな角を手で隠す。
「す、少しじゃ! ほんの少しのびただけじゃッ」
「まあ可愛い! メイに乳歯が生えてきた時のこと、思い出すわあ」
母が顔を輝かせ、小鬼にきいた。
「これってやっぱり、お祝いした方がいいのかしら」
「いらんいらん! これしきのことを祝う鬼なぞおらぬわ」
「そう? あたしからしたら、お赤飯炊いてもいいことみたいな気がするんだけど」
「赤飯!」
「あ、妖怪さんはおめでたいものはダメ?」
「ダメなわけがなかろ」
即答し、あふれかけたよだれをあわててぬぐう小鬼に、母は吹き出す。
「じゃあ明日はお赤飯にするわ。メイのお祝いもあるし」
「? なんでわたしのお祝い?」
わけがわからずきょとんとするメイに、楓はいたずらっぽい笑みを浮かべた。
「メイってば、やっぱり忘れてたんだ?」
「なにを?」
「今日は、メイがこのあいだ代役した撮影の記事が、配信される日でーす」
「えっ……」
楓は持参のお泊まりバッグからノートパソコンを出し、いそいそと居間のテーブルに広げる。
「の、野々宮さん……! パソコンまで持って来るなんて……」
うろたえるメイに、楓はけろりと答えた。
「お母さんに写真見せたげるって約束してあったから」
「ええーっ、そ、そんな約束、いつの間に……」
「このあいだ、メイのお母さんとアドレス交換したの。それで会話の流れでなんとなくー」
「で、でで、でもっ、なにもお母さんに、み、見せなくてもいいと思……」
「なに言ってんの! モデルの写真は人様に見せるための写真ですよ、お仕事ですよ」
楓は手早くファッションサイトの特集ページを開き、みんなで見られる位置に置く。
「じゃじゃーん! 初公開! 小柄なモデルMAY、デビュー写真はこちらでーす!」
メイはあわてて目をそらし、メイの母は目をまん丸にしてのぞきこんだ。
「えっ……? ええっ? これ……これがほんとに……」
「メイでーす」
ウェブマガジンの〈小さいサイズ〉特集記事。
その数ページを飾る写真のメイは、ふだんとは完全に別人だった。
元気はつらつで跳びはねる「やんちゃな少女」。
分厚い洋書を手に、謎めいた横顔も美しい「深窓の令嬢」。
街角で友だちが撮った、という仕立ての「あなたに恋するとなりの少女」。
花と語らう森の精、みたいなショットまである。
衣装はもちろん、メイクもヘアスタイルも背景もすべて別。
なによりメイの「演技」が別人すぎて、顔かたちまで変わってみえた。
母は写真と、すぐ横のいるひとり娘を何度も見くらべ……ぼそっとつぶやく。
「メイって実は……モデルの天才だったのね」
「ちっ、ちがうのちがうの! それはその、スタイリストさんとかの頭の中のイメージを……えっと、乗り移らせて演じただけで、ぜんぜんわたしの才能とかじゃないのー」
必死で訴えるメイを、母は笑い飛ばす。
「なんだっていいじゃない、ここまでできればお仕事になるでしょ」
楓の方を向いて「なるわよね」と同意を求める母に、楓は深くうなずいた。
「なりますとも。このデビュー写真見て、MAYって誰? って、業界ではけっこう話題になってて、事務所の方にももう何件も、お仕事のオファーが来たって」
「すごいじゃない!」という母の声に、メイの「野々宮さん……!」という悲鳴が重なる。
楓はかまわず続けた。
「でもメイが零課通して正式に事務所辞めちゃったんで『一身上の都合で引退しました』ってことになってて、幻のモデル、って惜しまれてます」
きゃー、いやー、やめてー……と、もはや声に出すこともできず、メイは真っ赤になってキッチンへ逃げこむ。母は不満そうにくちびるをとがらせた。
「えーっ、辞めちゃったの? なんでよ、もったいない」
「だ……だって……だって……」
「モデルになる話丸ごと、妖怪警察への就職を隠す、ただのカモフラージュだったから?」
「あう」
「野々宮さんも知ってたって聞いた時は、さすがにちょっとショックだったわー」
「そ……そのせつは大変失礼いたしました」
社会人っぽく恐縮する楓をじとっと見て、しかし母は苦笑した。
「でもまあ、しょうがないわよね。オバケ見えない人、説得しようがないもんね」
「すみません」
「そもそも野々宮さんがオバケ見える子だなんてことも、ぜんぜん知らなかったし!」
「あはは」
「子どものころから見えるなの?」
「はい、もう幼稚園のころからずっと」
「大変だったでしょう」
「あたしの場合、そうでもなかったです」
「ご家族は知ってらっしゃるの?」
「いえ、ぜんぜん」
おどけた様子でぱたぱたと手をふる楓に、母は尊敬のため息をついた。
「小さいころから思ってたけど、楓ちゃんほんとにしっかり者よねえ! これからもうちのたよりない娘を、どうぞよろしくお願いします」
「いえいえこちらこそー」
あらためて頭をさげあって一段落、母はふたたび、パソコンの画面に見入る。
ため息をついた。
「それにしても、もったいないわー。メイ、モデルも続ければいいのに」
「だ、だってわたし、零課でもう就職……」
「だいじょうぶよ! 昼は売れっ子モデル、夜は妖怪のおまわりさん、ふたつの世界をまたにかけ……とか、かっこいいじゃないの」
「テレビドラマじゃないから! 零課はものすごーく、めちゃくちゃ忙しくて……」
「やればできるわよ」
「無理っ! 絶対ぜーったい、できないもん!」
「あっ、久々にメイの『無理』と『できない』出た!」
明るくツッコむ楓の向かいで、母は不満げに口をとがらせる。
「なんでそんなにイヤがるのよう。こんなに可愛いし、すごいし、きれいなのにー」
「だ、だからそれは、スタイリストさんやメイクさんやカメラマンさんのおかげで……」
「それだけじゃないでしょ! メイ、あんた自分の写真、ちゃんと見たの?」
「見るわけないよー」
「せっかくだから見なさいよ」
母は楓のノートパソコンを持ち、メイのところに運ぼうと立ちあがる。
「恥ずかしいから、やめてぇー」
メイが悲鳴をあげた時、ピンポーン、とチャイムが鳴った。
「あ、ミーちゃん帰ってきた?」と楓が腰を浮かせる。
「ミーちゃんには鍵、渡してあるから……」
母が答えるより早く、メイは玄関に走った。
「お届け物かも! 出まーす」
モデル写真から逃げる絶好の口実だ。たたきでサンダルをひっかけて玄関を開け、
「……!」
しかし、訪問者を目にしたとたん固まってしまった。
「こんにちは。ご無沙汰してます」
度の強い角ぶち眼鏡に、いつ見てもよれよれのスーツ。今日も「くたびれたサラリーマン」にしか見えない大矢野課長が、のほほんと立っていた。
「か……課長……! お、お、お久しぶりです」
うろたえるメイに、大矢野課長はおかしそうな顔をする。
「せっかくの休日に、いきなりおじゃましてすみません」
「と、とんでもありません!」
「神納さんのご家族の方に、ご挨拶にうかがいました」
「あ、はい! ど、どうぞおあがりください」
あわてて来客用スリッパを出そうとするメイを、課長は笑顔で止めた。
「いえ、玄関先でけっこうです。ほんとに、ご挨拶だけですので」
「そ……でも……じゃあお母さ……母を呼んで来ますっ」
居間に飛びこむと、母はすでに立ちあがっていた。
「どなた?」
神納家は小さい。声はほぼ筒抜けだ。メイは母に駆け寄ってささやく。
「零課の課長さんが、お母さんに挨拶したいって、玄関にみえてて……」
「!」
母はさっと身だしなみをととのえ、よそ行きの顔になってメイと入れ替わりに出ていった。
「課長……! 零課の……!」
小鬼はぼん、と毛をふくらませ、かじりかけのみかんを抱いたまま楓の後ろに隠れる。
楓は面識があるので、
「そんなに怖がらなくてもだいじょうぶだと思うな」
「ま……まことか?」
小鬼はかじりかけみかんを影にしまいこみ、席を立つ楓の背中にしがみついた。
メイ、楓、小鬼はそろって居間の出口にはりつき、壁越しに玄関の様子に耳をすます。
母がよそ行きの高めの声で「あら! 確か、春にうちの子の勧誘にいらした方ですよね? 課長さんとは存じあげなくて……」とか「よくおいでくださいました!」とか「いつも娘がお世話になっております」とかまくしたて、課長がぼそぼそ恐縮している。
「玄関で立ち話もなんですし、どうぞ中へ」
という母のすすめを固辞して、課長があらたまって言った。
「今日はご家族の皆様におわびにまいりました」
「え」
「お嬢さんの就職先を偽装し、ご心配をおかけしまして、大変申し訳ありませんでした」
「…………」
沈黙が落ちた。
課長の声音は穏やかだったし、揺るぎない誠意も感じられた。
一方、「就職先の偽装」と「心配をかけたこと」については謝罪しているが、術をかけて虚偽を信じこませたことについてはひとことも謝っていない。ひとことも、だ。
(課長……妖怪っぽい! 悪いと思ってないことは謝らないんだ……! 言霊使いだから?)
メイと楓は思わず顔を見合わせ、固唾をのんで母の反応に耳をそばだてる。
母は、ため息をついた。
「警察が市民をだますとか、絶対、反則だと思いますけれど」
「はい」
「でも、しかたなかったと思います。オバケなんているわけないと思ってる時『お宅のお嬢さんは霊能者なのでスカウトに来ました』なんて言われても詐欺にしか聞こえませんし……」
ふたたび、しみじみとため息をつく。
「それが警察だなんてますます信じられません! 前回いらした時だって、もう少しで警察に通報しちゃうとこでしたし……」
「はは……」
「謝っていただいてかえって申し訳ないぐらいです。ありがとうございました」
「ご理解いただき恐縮です」
場の空気が一気にゆるみ、壁越しに盗み聞きしている面々もほっとする。母が続けた。
「あ、実は夫が単身赴任中で、ちょっと遠方にいるのですが」
「はい」
「できれば夫にかかってる催眠術? みたいなのも、解いておいていただけると助かります。いくらホントのことを言っても耳に入らないようですので……」
「了解しました」
「これからも娘をどうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそ、たよりにさせていただいています」
「ほんとにあがっていらっしゃいませんか? ちょうど娘の友だちが遊びに来てて、ケーキもあるんです。なんでしたらお茶だけでも」
「いえ、おわびにうかがっただけですので、私はこれで……」
いつも多忙な課長がそそくさときびすを返す気配に、母の呼び声が重なった。
「メイ、課長さん、お帰りになるって」
呼ばれてメイと、続いて楓も顔を出し、玄関へ見送りに出る。
「こんにちは! お久しぶりです」
臆せず挨拶する楓に、大矢野課長はにっこりした。
「野々宮さんですね、いつもご協力ありがとうございます」
「えー、あたし、零課に協力なんてしてませんよ」
「いつも神納さんを、適切にサポートしてくださってるじゃありませんか」
言いかけて、はたと思いつきに身を乗り出す。
「野々宮さん、もしや零課のサポート係への就職にご興味は……」
「ごめんなさい! 本業忙しいので兼業はムリでーす」
両手でばってんを作って明るく断る楓に、課長は残念そうに肩を落とした。
「ですよねえ」
引き戸を開け、外へ出る課長にメイの母、メイ、楓も靴やサンダルをひっかけて続く。
楓の背中からこわごわのぞいていた小鬼は、一瞬、課長と目が合ってしまったが、にっこりされてあわててひっこんだ。
それで思い出したらしい。課長はメイの母にあらためてたずねる。
「見えるようになって、なにかお困りのことはありますか」
「特にありません」
明るく言い切るメイの母に、課長は笑った。
「それなら良かったです」
「あ! もしかしていきなりまた、見えなくなっちゃったりしますか?」
「〈見る目〉がきれいに開いてらっしゃるので、それはないと思います。ご自身が『見ない』と決めれば目を閉じることもできますが、『見よう』とすればまた開きます」
「あ、ふつうの目と同じなんですね」
「はい」
「あー、良かった! せっかく見えるようになったうちの妖怪さんや神さま、見えなくなっちゃったらさみしいからー」
「そうですね」
と答える課長もなんとなくうれしそうだ。母はくったくなく続ける。
「なんでいきなり見えるようになったのか、それだけはちょっと不思議なんですけどね」
「通りすがりの神さまが、いたずらなさったんですよ」
「神さまが!」
目を丸くする母の後ろで、メイはハッとした。
(狐さんだ!)
メイの髪にかかった祖母の封を解いたように、「見えない」母の目を開いたのだ。でも──
「それは感謝しなくちゃ!」
母は明るく手を打ち合わせて、顔を輝かせる。
「娘と同じ世界が見えるようになって、ちゃんとほんとのことを話し合えるようになったし、可愛い妖怪さんとも話せるようになったし……いいことしかなかったもの!」
良いことばかりではなかったはずなのに、「いいことしかなかった」と言い切るメイの母に、大矢野課長は驚いたように目を見開き、ほほ笑んだ。
「その感謝をぜひ、神さまにさしあげてください」
「どちらの神さまか知らないんですけど、神社にうかがった方がいいですか?」
「いえ、あちらも通りすがりになさったことですし、心をこめて祈ればちゃんと届きますよ」
敬意をこめて、大矢野課長は母に軽く一礼する。
「では私はこれで。なにかご心配なことがありましたら、ひきつづき、お渡ししてある番号にご連絡ください。零課のサポート係につながりますので」
メイにも「あ、来週には休職明けの連絡がいくはずですので、無理のない範囲でまたよろしくお願いします」と挨拶。一同に見送られて飄々と歩き去る。
ひとつめの角を曲がったとたん、気配が消えた。
「な、なにごとじゃ? いきなり気配が……」
楓の背に隠れたまま怪しむ小鬼に、メイがささやく。
「課長さんはその、遠隔移動? が得意で……」
「なんと! まことに人間か……?」
と青ざめる小鬼をよそに、母がすっとんきょうな声をあげた。
「えーっ、課長さん瞬間移動できるの? SF映画の転送みたいな? もうっ、メイったらなんで早く教えてくれないの! 知ってれば絶対、目の前でやってもらったのに! 残念ーっ」
母はつっかけでわざわざ走って行き「ほんとに消えちゃったか」ご近所を確かめてまわる。
もちろん零課課長の姿は、どこにも見つからなかった。
②へ続く
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