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どこまでもハプニング①

「うわあ……これもけっこう、ケガレがたまってますね」

 アールヌーボー調の古い鏡に、メイは零課支給のはたきを向けた。

「そうっとじゃ、馬鹿力を出さずに、おとなしーくやるのだぞ」

 頭に乗ったままえらそうに注意する小鬼に、メイは「もちろんです!」と真剣にうなずく。


 深呼吸し、手にしたはたきをひかえめに左右にふった。

「きれいになりますように……きれいに……」

ピン! と涼しい音がして、鏡の枠から小ねじが一本飛んだ。

「!」

 息をのんで浄化を中止。様子をうかがう。


 幸い、それ以上、部品が落ちてくることはなかった。

「よ……良かったあ! ばらけて落ちて、割れちゃったらどうしようかと」

メイはほっとし、残るケガレを優しく祓ってから、床に落ちた小ねじを拾う。

「あ」

 つまんだとたん、ありふれた小ねじは錆になって、手の中で崩れてしまった。


「うそ! え? え? 錆まですっかり消えちゃった!」

「むむ、浄められて塵になったということは、あれは呪いのカケラだったのだな」

「呪い!」

「百年ほど昔に、人が人を呪ったものとみた」

「ええー……怖いよー、骨董品、怖いー」

「鏡に欠けた部品はないようじゃ。壊さずにすんで良かったではないか」


 楓から依頼のあった撮影スタジオを、「お掃除」中だった。

 メイはセーラー服姿で、零課が手配してくれた見学者パスを首にかけている。

 零課に協力してくれているモデル事務所が研修生のために開催する、見学会用パスだ。


 ちなみに、本日の実演モデルはなんと、楓!

 予定を合わせたわけでもなんでもない、ただの偶然だが、メイは内心拍手喝采した。

(やったあ! 野々宮さんの撮影が見られる! 絶対、見学しなくちゃ!)


 その一心で、撮影開始の夕方五時までに「お掃除」を片づけるべく、午前中で学校を早退した。一時前には現着して、早々と仕事にとりかかったのだが──


 意外と手こずっていた。


 今回、スタジオ関係者は零課の存在すら知らない。竹ぼうき同様「人に認識されにくい」術がかかっているはたきをたよりに、こっそり「お掃除」するしかない。

 しかしこれが、思っていたより大変だった。


 なにしろ室内ですれちがう相手は全員、こちらが見えていない。空気に対するみたいにまっすぐつっこんでくるし、荷物をよけたりもしてくれない。

 ぶつかれば認識されてしまうので、壁にはりついたり、しゃがんだり、四つんばいで進んだり、アクションゲーム並みに真剣にかわしまくることになる。


 見とがめられたら通報されかねないバックヤードを、こっそり「お掃除」してまわりながら、メイは我慢できずスマホで時間を確かめた。


(もう四時すぎちゃった! 外から竹ぼうきで、まとめてお掃除できてれば楽だったのにー)


 最初、建物を見た時は、竹ぼうきだけですぐすむと思った。

 三階建てだが小さなビルで、敷地をぐるっとまわるのに十分もかからない。

 年代物でさえなく、コンクリート打ちっぱなしのおしゃれな新築だ。


 なのに楓が言っていたとおり、建物がかすんで見えるほど瘴気に沈んでいて、しかもその瘴気は、外から竹ぼうきで「お掃除」しただけでは半分もきれいにならなかった。


 時々、そういう現場がある。

 誰かが知らずに変な御札を集めていたり、忘れられた呪具がしまいこまれていたり。

 改築の時にご神体を埋めてしまった、とか、関係者が呪われている、なんてこともある。


そういう「一度で片づかないめんどうな案件」は、そうと判明した時点でベテランに引き継がれるので、メイはまだ、最後まで担当したことがなかった。


「これ使うのも初めてだし……」

 手にしたはたきをぱたぱたふって、でもメイは、そのふり心地の良さににっこりしてしまう。


 竹ぼうきは人や物が多い場所には持ちこめない。

 また、パワーを出しやすいぶん、繊細な調整がむずかしい。

 そんな時に支給される零課のはたきは、おもむきのある和ばたきだった。


 細い竹の柄に、細長く切った古布をたばねてくくってある。

 布が色とりどりなのも楽しい。

(誰かの手作りかな……わたしも作ってみたい)


 見てすぐ愛着がわいて、長持ちしますように、という気持ちで護身法術をかけようとしたが、そんなメイの反応を見越したように、絶妙のタイミングで千里からメールが届いた。


『業務連絡。注意! はたきに護身法術は絶対、かけないように! 護身法術かけるとパワーが乗りすぎて、対象物を破損することがあります。ひとつひとつの浄化にも、力を入れすぎないようにしてください。メイちゃんの浄化術はけっこうパワフルだから、ほうき使う時よりやさしく、そっと、なでるような感じでやってね』


 よほど心配だったらしい。読んでいるうちにもう一通届いた。


『はたき適用の屋内案件、初めてのメイちゃんに丸投げしちゃってごめんね。今、めちゃくちゃ立てこんでて…… でもまあ、緊急度は低い案件だし、ケガレた物品、浄化で壊れるのはよくあることだから、気にしないでいいから!』


(気にしないでいいって言われてもやっぱり……気になっちゃうよ……)

 屋上に放置されていた年代物の大きな水がめは、浄化したとたん、まっぷたつに割れた。

 幸い、周囲に積まれた植木鉢やコンテナのおかげでそのまま倒れて粉々、という事態だけは回避できたが、さすがに気がとがめる。


 人の行き来が途絶えるのを待って、すばやく一階への階段を降りながら、

「屋上の水がめ……高価そうでしたよね……」

 ついもれた気弱なひとりごとに、頭の上から小鬼がコメントした。


「がらくた同然の扱いだったゆえ、さほどでもないのではないか? それよりワシは、三階で一気にひび割れてしもうた、古い絵の方が気になるのう」

「わーん、あれはわたしも気になりますー。持ち主の人、ショック受けないといいけど……」


 この撮影スタジオは、骨董品がやたらと多いのだ。

 撮影小物として集めたのだろうが、ほとんど使われずにほこりをかぶっているうえ、さまざまな邪念、亡霊、呪いの残滓(ざんし)が重なり、瘴気を生む立派なケガレだまりを形成していた。


 さらに。

 瘴気がたちこめる建物内では、ささいな邪念も強化され、定着してしまう。

 おかげで骨董品だけでなく、一見無害なさまざまな小物にも、浄化が必要だった。


 撮影用の大判ボードの後ろに落ちていた髪ゴムも浄化した。

 ちぎれてしまったので、そっとゴミ箱に捨てておいた。


 そのゴミ箱も、化粧台の引き出しに忘れられていた片方だけのイヤリングも浄化した。


 落とし物のヘアピン、十円玉、リボンも浄めた。


 (ふち)に電球がずらっと並ぶモデルさん用の鏡に、ねっとりしがみついていた亡霊のような生き霊のような影も、話がまったく通じなかったのでなるべく優しく祓った。

 すると電球がひとつ切れてしまったが、どうしようもないので忍び足で逃げ出した。


「……屋内案件って、体力はそれほどいらないけど……すっごく気疲れしますね」

「馬鹿力ゆえの悩みかのう」

「えー、わたし、そんなに馬鹿力じゃありませんよ。千里さんにくらべたら、ぜんぜん」

「ワシから見れば似たようなもんじゃ」


 一階廊下の浄水器を片づけ、たぶん最大の難所、人の出入りの多い事務室に忍びこむ。

 本棚のすき間に身体を押しこんだり、デスクの下にもぐりこんだり、事務の人や出入りの業者さんたちを必死でかわしながら、ケガレの目立つものを「お掃除」していく。


 年代物の木製デスク。

 ブタの貯金箱。

 私物のスリッパ。古いストール。ビニール傘。


 最後にコピー機を、故障させないよう限界まで力をしぼって無事、浄化し終える。

 直後、急いでコピーを取りに来た人が、驚きの声をあげた。

「あれえ、今日はこいつ、調子いいな。一枚めが真っ黒じゃない……!」


「良かったです」

 はたきを握りしめ、コピー機のわきに隠れたまま、メイは小声でつぶやいた。

 もちろん相手は気づかずに行ってしまったが、喜ばれると素直にうれしい。

 書類棚にくっついていたケガレのもやも、ついでに祓って事務室を出る。


「うん、建物の中の空気、ずいぶん軽くなりましたね」

「明るくもなったのう」

「あとは地下スタジオだけ」

「この調子なら、見鬼の娘の撮影見学に間に合いそうではないか」

「がんばりますっ」


 がらがらと車輪を鳴らして運ばれていく、衣装をぎっしりかけた大型ハンガーラックをやりすごし、メイは玄関ロビーわきの、狭い階段をすばやく降りた。

 地下スタジオをのぞきこむ。

「…………」


 広々とした板張りの空間は、明るく照明されていた。

 壁面は一部がレンガで、コーナーは豪華な花飾りで埋まっている。ひときわおしゃれだ。

 モデルの姿はまだないが、数人がてきぱきと機材を配置し、撮影準備を始めていた。


「野々宮さんがこれからここ、使うのかな」

 わくわくしてくるメイに、小鬼が水をさす。

「ここは見鬼の娘と同じ事務所がおさえておるが、別の娘の撮影じゃ。カエデは三階じゃな」

「えっ、キバさんどうしてそんなこと知って……」


「玄関の〈ほわいとぼーど〉に誰がいつどこを使うか、ちゃあんと書いてあったではないか」

「ほんとに? ホワイトボードなんて、あるのも気がつきませんでした!」

「つくづく目端(めはし)の利かぬやつよ」

「いえそのっ、人をよけるのに必死で……あと、ケガレてるもの見つけるのに必死で……」


「わかったわかった。して、この部屋をどう見る」

「他の階よりずっと……マシな感じがします。ほとんどお掃除の必要なさそう」

「そうさのう、懸念があるとすれば……」

「あの、すみっこに置いてある妖精の……」

「うむ。西洋のあやかしの像じゃ」


 庭園用の置物だろう。

 真っ白な台座の上に、蝶の翼を持つ愛らしい少女の像が乗っている。

 タンバリンを持ち、片足を浮かせ、今にも軽やかに踊り出しそうだ。


 風格のある骨董品だが保存状態は良く、瘴気を放っているわけでもない。

 なのに、今日見たもろもろの骨董品の中で、なぜかいちばん、怖かった。


「ええと……あれ、真っ白ですけど石膏でしょうか。大理石だと思いますか?」

「わからん。なにゆえ材質など気にするのじゃ」

「割れちゃったらまずいなあ……って」

「なんじゃ、浄める前から壊す気満々か」


「なんだか手ごわそう……って言うか、手加減できない気が。でも割っちゃって、ここで仕事してるみなさんにご迷惑がかかったら最悪だし……どうしたらいいかと……」

 困りはてるメイの頭の上で、小鬼はううーん、とうなった。

 なにかひらめいたらしい。えへん、おほんとせきばらいして切り出す。


「あー、この案がそなたの気に入るかはわからんが……」

「なんでしょう」

「あの像、外へ持ち出してはどうじゃ」

「えっ……で、でもあれけっこう大きいし、すごく重そう……」

「ワシが影に入れて運べば楽勝じゃ」

「あっ……」


「離れた場所で取り出して浄めれば、やむをえず割れてしもうてもここにいる人間のせいにはならんし、破片も影に放りこめばあとかたなし! いい考えであろ?」

「……ド……ドロボーみたいで気がとがめるんですが……」

「どこがじゃ! 浄めのために手間をかけてやり、無事すめばそっと返してやるのじゃ。礼を言われこそすれ、とがめられるいわれなぞないであろうが!」


 正論だ。

 メイはそれでいきましょう、と言おうと口を開きかけて、

「?」

 目を疑った。


 いつの間にか妖精像の、向きが変わっている。

 さっきまで右を向いていたはずなのに、今はこちらを向いていた。

「あ、あの……キバさ……」

 小鬼に声をかけようとして一瞬、目をそらしてしまったかもしれない。


 次に見た時、妖精の像は二メートルほどこちらへ、台座ごと移動していた。

 明るい室内で、なんの物音もないのがかえって不気味で、メイはどっと冷や汗をかく。

 その頭上で、小鬼もこわばった声を出した。


「のう……あやつ、さきほどまでは確か、部屋のすみに立っておったと……」

「ですよね! あんな、半端なところに置いてなかったですよね!」


 スタジオの反対側では、撮影スタッフが忙しく立ち働いている。

 ライトの位置やレフ板の角度について相談している人も、背景のセッティングをせっせと進めている人も、妖精の像が勝手に動いたことには気づいていない。

 だがその、確認のためにそらした視線を戻したとたん、メイは悲鳴をのみこんだ。


 目の前、手を伸ばせば届く距離に、妖精像が立っていた。

「バカ者! 護身せよッ」

とっさに小鬼が、像に蹴りを浴びせる。

 どぷっ、と泥にはまったような音がした。

「んをッ? な、なんじゃこれはッ!」


 胴から下が像の額にめりこんでしまった小鬼はあせって暴れるが、じりじりと像の「中」へ沈んでいくのを止められない。メイが手をのばし助けようとした時、

「!」


 小鬼の首飾りが、護身の金の輝きを放った。

 像からはじき出された小鬼は、勢いあまってくるくると天井高く舞う。

「キバさん!」


「ぶ……無事じゃ! そなたの護りの術のおかげで助かった!」

 その時、妖精の像がぱっ、とコマ落としの動きで小鬼の方へ向きを変えた。


「! この像、キバさんを狙って……?」

「こやつ、小さい妖怪を狩る魔法からくりじゃ! 封じられてはかなわんッ、早う止めんか!」

 言いながら全速力で逃げまわる小鬼を追って、妖精の像は、ぱっ、ぱっ、と、スタジオの端から端まで、めまぐるしく瞬間移動する。目が追いつかず、メイはあせった。


「でも、どっ……どうすれば……」

「強い術じゃが古いッ! (きよ)めよ! そなたの馬鹿力で消し飛ばしてしまえッ!」

「でっ、でも、動きが速すぎてねらえませ……」

「ええいッ! なれば止めてやろうぞ」


 スタジオの隅で、小鬼は全身の毛を逆立て向き直った。

 ぱっ、と目の前に出現した像の頭部に、つかみかかる。

「キバさ……」

 ふたたび護身の光がまぶしく輝いたが、小鬼は今度は、はじき飛ばされなかった。


 ばちばちと小さな稲妻を散らし、像に爪を立ててかじりついている。

 像が、止まった。

「今じゃ!」


 メイは無我夢中で、十メートル以上離れた像に向かってはたきをふる。

「はらいたまえ」

 右へふり、

「きよめたまえ」

 左にふった。


 手加減なし、全力の祈念の輝きが像を直撃した瞬間、


 どおん──!


 と、スタジオ全体が鳴動した。


 機材スタッフのひとりが、驚いたように天井を見あげる。

 他の人は反応しなかった。

 物理的な音ではなく、霊音だったらしい。


 一拍遅れて──


 妖精の像は真っ白な砂となって崩れ落ちた。


「この……クソ馬鹿力めが! ワシまで消し飛ばされるかと……寿命が縮んだわい」

 小鬼が空中にすくんだまま毒づく。


 そこへ、ひと山の白砂と化した像の残骸から、淡く輝く光の玉が十個あまり、ふわふわと飛び出してきた。うれしそうに小鬼にまとわりつく。

「これ、そうなつくでない……なんじゃ? そなたらの言葉はさっぱり聞き取れ……ん? それはもしや英語というやつか? そなたら、いぎりす出身か?」


小鬼が「はう、あーゆー」と、メイの教材でおぼえたての挨拶を口にしたとたん、光の玉たちはぱあっと明るさを増した。パステルカラーの軌跡を描いて、にぎやかに飛びまわる。

 はしゃぐ光の玉の群れにたかられながら、小鬼はメイのところへ戻ってきた。


「こやつら、甘いものが欲しいようじゃ。なんぞ持ち合わせはないかのう」

「あめ玉でしたら少し」

 はちみつレモン飴の小袋を小鬼に渡すと、光の玉がわっと殺到した。


 光の玉は小鬼よりひとまわり小さく、よく見ると、中心に華奢(きやしや)な人型が浮いている。

 それぞれ蝶やトンボに似た半透明の翼で、音もなくはばたいていた。


(わあ……本物の妖精さんだ! わあ……!)


 目を丸くするメイの前で、小鬼は飴の包み紙をせっせとむき、妖精たちに投げてやる。

 妖精たちはさえずるような歓声をあげ、飴を取り合って乱れ飛んだ。

 合間に気まぐれに寄ってきてはメイの頬をつっついたり、髪の先をひっぱったりする。

 キスする者もいた。可愛い。


「キバさん、すごいですね! 妖精さんの言葉、わかるなんて……」

「英語ゆえ半分ぐらいしかわからんが、まあ、妖怪同士じゃからの」

 小鬼はからっぽになった飴の袋をメイに返し、説明する。


「こやつら、悪さがすぎて人間の……魔女? かなにかに仕返しされたらしいぞ。アホウじゃのう……! しかも長い間閉じこめられたくせに、これっぽっちも()りとらん」

 メイには小鳥のさえずりにしか聞こえない妖精のおしゃべりに、小鬼は律儀に返事をする。


「ん? 中では三日ほどしかたってないじゃと? 仕返しの仕返しをしたい? バカ者! そなたらさっきヴィクトリア女王がどうとか申しておったであろ? その時代から、ざっと百二十年は経っとるんじゃ! そなたらを封じた人間は、とうの昔に骨になっとるわい! ざっとぱーそん・だいど・あろんぐたいむあごー! じゃ。ここか? ここは日本じゃ。じゃぱん。わかるか? 故郷に戻りたくば……うむ、まずは地図か」


 きょろきょろとスタジオを見まわす面倒見のいい小鬼に、メイは笑った。

「地図なら外に、竹ぼうきと一緒に置いて来た鞄に入ってますよ」

「ありがたい! しかしワシが勝手にいじって、人目につかぬかのう」


「竹ぼうきの陰でやれば大丈夫だと思います。妖怪さんはそもそも人目につきませんし」

「なればさっそくこやつらに見せてこよう。もうこの場に浄めは必要なさそうじゃし……」

「はい! 今日もありがとうございました。おかげさまで助かりました」

 感謝をこめて一礼するメイに、小鬼は照れまくる。

「な、なんの、これしき……」


「あとは野々宮さんの撮影見学だけですね! 終わったら鞄とりに行きますので、それまでどうぞ妖精さんたちと、外でお話してらしてください」

「いやいやワシもカエデの撮影が見たい! さっと教えてさっと戻るぞ!」

 妖精の群れをひき連れ、急いで出て行く小鬼を見送って、メイはあらためてそうっと、スタジオ内の他の人々の様子をうかがう。


 あれだけの騒ぎがあったのに誰ひとり、異変に気づいていなかった。

 パソコンをのぞきこんで打ち合わせする人たちの横で、スタイリストらしい女性が、ハンガーラックで搬入した衣装に丁寧にアイロンをあてている。


 ひとり離れて、スマホで通話中の人もいた。

「お疲れさまです! えっ……? それは……わかりました! すぐ当たります」

 誰かが遅れそうか、来られなくなったらしい。


 あわてて同僚に声をかけ、手分けしてあちこちに連絡を入れ始める。

 みな忙しく、使う予定のない像が砂の山になったことになど、気づく余裕はなさそうだ。

 メイはほっとし、地下スタジオを抜け出した。


どこまでもハプニング②へ続く




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