二百七十一話
「クライシスくん、とりあえずゆっくりと休んでくれ」
「回復したからと言って直ぐに来たら駄目だからね?一時的なものでしかないからゆっくりとしてよ?」
運んでくれた生徒たちの言葉にクライシスは頷く。
ここまでされたら従うしか無い。
今日はゆっくり休んで明日から再開しようと考えていた。
「………運んでくれてありがとうございます」
「気にしなくて良いって。いつも頼りにさせてもらっているし」
「そうですよ。そんなことより早く回復してくださいね」
その言葉にクライシスが頷くと二人も寮の部屋から去っていく。
その姿を見送りながら今日の飯はどうするかなとクライシスは悩んでいた。
「ふぅ。当たり前だけどクライシスくん疲れてましたね」
「まぁ、それが当たり前なんだけどな」
クライシスは一ヶ月間ずっと動いていた。
それを見ていた者たちからすれば疲れ果てていて当然。
むしろ一ヶ月間も休まずに動いていたことに驚嘆していたぐらいだ。
「これで最後まで休まずに動いていたら本当の意味で化物としか思えません」
「わかる。数日経ってから日に日に疲れていったから、あぁ同じ人間なんだなと感じたもん」
逆に言えば、これで疲れている様子も見せなかったら完全に化物だと判断していた。
疲れていく様子を見て、生徒や教師たちは同じ人間なんだと安心できた。
「休んで、また明日に来れば良いって言ったけど。来ると思う?」
「あれだけ言いましたし、体調がまだ万全じゃないなら休むと思います。もしくは来ても指導は無しか」
「あぁ、ありそう」
本来なら来年になっても続けられる予定だったらしいのだ。
それだけ短縮されたのなら少しぐらい休んでも文句はない。
とくにこの場にいる二人の生徒は来年の予定だったからありがたさと申し訳無さの二つの感情があった。
「ところでクライシスくんの配信見てる?」
「見ていますよ。というか学園の生徒で見ていないものは少ないと思います」
それはそうと頷く生徒たち。
学園で一番強い生徒なのだ。
配信に興味がなかったとしても、それが理由で一度だけでも見てしまう。
「ダンジョンに挑んだり指導している配信が勉強になりますしね」
わかると何度も頷く生徒。
あとで確認することができるから何度も見直している。
そして見るたびに新しい発見があったりするのだ。
「そういえばご飯は大丈夫かな?」
「放課後、おにぎりとか買ってクライシスくんのところに寄りますか?」
「そうだな。あの状態だと昼は食べる余裕があるかわからないし夕飯だけは準備しておくか」
その言葉に頷きあう生徒たち。
放課後になったら夕食を買ってクライシスのところへ行こうと考えていた。
「あっ、シクレ。クライシスくん倒れて休ませたから放課後にでも見舞いに行ったらどうだ?」
「へ?」
「流石に一ヶ月休み無しで動いたのはクライシスくんでも限界だったらしい」
「はぁ……。えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
突然のことにシクレは言われた言葉の意味が理解できなかった。
だが少し間を開けて言われた言葉の意味を理解すると驚きの声を上げる。
「クライシスくんは大丈夫なんですか!?」
「クラスメイトが寮の部屋へと送ったからしいから大丈夫だと思うぞ。後で見舞いに行ってやれ」
その言葉を無視してシクレは校門へとダッシュで向かう。
授業のことも忘れて今すぐにクライシスのところへと行こうとしていた。
「シクレ?」
「えっ、まさか……!?」
「授業は!?」
走っていく方向が教室とは真逆の向き。
しかも校門の方向だということで他の者達もシクレがどこに行こうとしているのか察する。
同時にカバンとか完全に置いていっているので、どれだけ焦っているのか理解できた。
「ちょっと授業はどうするの!?」
「別にサボっても良いと思うけど忘れ物!?」
クラスメイトたちの引き留めようとする声も聞こえてないのかシクレは走り去っていく。
その様子に何人かはため息を吐く。
「そもそも休ませればクライシスくんは倒れなかったんじゃ」
「無理だったんじゃね。クライシスくん、疲れていても無視して来ていたらしいし」
「それなら倒れた直後か直前の方が確実に休ませれるか……」
そこまで心配するなら無理矢理にでも休ませろと思ったがクライシスがそれを無視したら止めることは難しいかと考え直す。
たとえどんな関係だったとしてもクライシスのほうが強いのだ。
止められるわけがなかった。
「まぁ、自分の限界を知りたいから無理をしていたか。それとも教師たちは限界に気づいていても休日の大事さを伝えるためにあえて気づかないふりをしていたか……」
「あぁ、確かに」
あとは限界を知るため、もしくは休憩の大事さを伝えるためと聞いて納得する。
クライシスくんでも休憩を取らなかった結果、倒れたのだ。
休憩の大事さをクライシスを通して理解させられた。
「はぁ………。シクレちゃんは、もう……」
そんな中シクレの同室の女子はため息を吐く。
自分の物をほとんど置いていったのだ。
放置するのも気分が悪いしと自分の荷物と一緒に部屋まで運ぶことを決める。
「あとでお礼を貰わないと……」
自分の荷物だけでなくシクレの荷物も運ぶのだ。
絶対に何か奢ってもらうか、何かお礼してもらおうと同室の女子は考えていた。




