ギルドからの重大な依頼
数日後、おれたちはギルドに呼び出された。
「おう、来たな。例の、古墳の件だがな」
「どうでした? へんな古墳だったでしょう? それであの可哀想な——ハモンドさんでしたか、なにか判明しましたか?」
サバンさんは渋い顔をして
「それがなあ……」
アリシアさんも
「それがねえ……」
「えっ?」
「けっきょく、たどりつけなかったんだよ」
「へっ?」
「さっそく、あの二人、つまりフローレンスさんとバルトロメウスさん、おれ、そしてギルドの魔導師の四人で、おまえたちに描いてもらった地図をたよりに出かけたんだが……」
「はい」
「見つからないんだよ、あの古墳が……」
「ええっ、そんなはずは……」
「ちゃんと地図描きましたよ、おれらが行ったとおりに」
「いや、そこは疑ってない」
「わかった!」
おれは声を上げた。
「サバンさん、地図を上下逆に見てたのでは」
「はあ? ばかばかしい、お前じゃあるまいし」
「そうだよ、アーネスト。そんなことするのは、世界広しといえどもお前ぐらいのものだ、失礼だぞ」
おい、ヌーナン、その言いぐさは、おれには失礼ではないのか。
「なんらかの隠蔽の魔法がかけられていないか、魔導師に確かめさせたが、だめだった」
「だめだった?」
「もし、魔法により古墳が隠蔽されているとしたら、それは恐ろしく高度な魔法で、そうとうな大魔導師でないとなんともならないというんだ」
「あっ、ルシアさまに頼めば、ちゃちゃっと」
「それはおれも考えたんだが、今、あの『雷の女帝のしもべ』の人たちは、この地に不在なんだ」
「四人とも?」
「そうだ」
サバンさんは厳しい顔になった。
「この世界の存亡がかかる重大な事案のために、先日、旅立ったのだ」
「あの人たちが、全員でかかるような……」
その場の全員が、しばし沈黙した。
やがて、その沈黙をやぶるように、サバンさんが
「それでおれは思いついた」
「さすがです!」
おれはすかさず合いの手を入れたが、
「まだ何も言ってない」
と、にらまれた。
いや、なにかサバンさんがすごいことを言うような気がしたのだ。
「たいした案じゃない。というか、もう最低の案だとは思うんだが、ここに至ってはやむを得ん」
「それはいったい……」
「お前だ」
サバンさんは、いきなり、おれを指さす。
「ヒエッ! む、無理です!」
おれは、すくみあがって言った。
「だから、まだ何も言っていないって」
「で、でも……」
「わたしたちギルドとしても、これは最後の手段です」
とアリシアさん。
「な、なんなんですか?」
おれはドキドキしながら聞いた。
サバンさんはおもむろに言った。
「アーネスト、お前に地図を持たせる。おれたちはそのあとをついて行く。お前の、そのとんでもない能力が頼りだ」
なんだって! おれが頼りだって?!
「そうですか! わかりましたっ、まかせてください!!」
おれは、テンションがあがって、大声を出した。
そうか、ついにおれの実力が、みんなに認められるときが来たのだ。
まあ、じゃっかん遅きに失するきらいはあるけどな。
「ええーっ?」
と、パルノフとヌーナンが声を上げた。
「そんなことして、だいじょうぶなんですか」
「なにしろ、こいつは」
何を言っているのだ、お前ら。
見ろ、サバンさんの確信に満ちた顔を。
「まさに、そこだ。まともにいったらたどりつけないんだ。まともでない手段でいくほかない」
サバンさんが重々しく断言した。
「絶滅したはずのムカシモウコジャコウソウを見つけたり、時の鐘を手に入れたりした、地図を逆に読むアーネストの能力に賭けるのだ」
「なるほど」
二人が納得し、アリシアさんもうなずく。
なにか釈然としない部分もあるが、とにかく、おれにかかる期待は大きい。
おれは全力を尽くすことを心に誓った。
ヌーナンとパルノフが、記憶から再現した、古墳にたどりつくための地図。
地図の上には、古墳までのルートが、詳細に記載されている。
さあ、いよいよおれの真価が発揮されるときが来た。
おれは気持ちをひきしめて、地図を広げ、慎重に検討すると、一同に宣言した。
「わかりました、こちらです! さあ、みなさん、おれについてきてください!」
「ああー……」
おれの後ろで、ヌーナンが情けない声を出した。
「すでに地図の向きが違うんだが……」
「しっ!」
サバンさんが
「お前らはなにも言うな。いいか、どんなにおかしいと思っても、なにも言うんじゃないぞ」
と、ヌーナン、パルノフに念を押す。
「たしかに、出だしから聞きしに勝るでたらめさだが、今回はこれに賭けるんだ。いいな、ヌーナン、パルノフ」
「は、はあ……サバンさんがそうおっしゃるなら……」
ヌーナンとパルノフは不承不承答えている。
そんなやりとりは、おれの頭に入ってこない。
おれは、地図を読むことに集中しなければならないのだ。
ふむ……よし、
「次は、こちらへ。ここを通ります!」
おれは自信をもって、路地を指し示す。
「おいおい……こんなとこ、おれらは前に通ってないよ……」
「何も言うな」
いつも読んで下さってありがとうございます。いよいよアーネストの真価が発揮される! なんてね。
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