アーネストがその真価を遺憾なく発揮する。
そして――数刻後。
森の中、おれたちの前には、見覚えのある、あの古墳が。
やった!
おれはやったのだ。
この困難なクエストを、あふれる才能で、見事に達成したのだ!
おれは得意満面で、みんなをふりかえった。
「ここです! これが例の古墳です」
「ほんとに、着いちまったぜ……」
あぜんとしているのは、サバンさんだ。
「すばらしいです、アーネストさん。あなたの能力はすごい。あんなに探しても見つからなかったのに……」
フローレンスさんが感動している。そうでしょう、そうでしょうとも。
「なんでこうなる?」
「どう考えてもおかしいだろうよ」
納得できない表情のヌーナンとパルノフ。
どうして、我がメンバーはこうなのか。
「ううむ……驚くほかないわい。内側に入ってみてわかったが、これはかなり強力な、隠蔽の結界じゃな。見慣れぬ術式……あるいは、この世界のものではないかも知れぬ……それにしても、如何にして、われらはその結界を通れたのか?」
ニコデムス師が、あたりを見回し、興味深げにつぶやく。
「よくやった、アーネスト」
サバンさんが、おれの肩をたたき、
「だが、まだ終わったわけではない。古墳の中を調査しなくてはならぬ」
そうだった!
そんなことはすっかり忘れていたが。
おれたちは、うなずき、古墳に向かって歩き出す。
「あっ、そうだ。ちょっと待ってください」
そこで、おれは、フローレンスさんに声をかけた。
「フローレンスさん、こちらへ」
古墳の脇の、森の一角。
雑草を払い、整地し、小さな盛り土をして、石を目印に立ててある。
「これは……」
フローレンスさんがおれを見る。
「……はい、ハモンドさんの首をここに」
フローレンスさんが、しばしの沈黙のあと、微笑んだ。
「……ありがとう、『暁の刃』のみなさん……」
「いえ、たいしたことはできなかったので、せめてこれくらいと」
「とんでもない……感謝します」
「おれからも、お礼をいわせてくれ。ハモンドはおれの友だからな」
と、バルトロメウスさんも頭を下げた。
二人は、土を掘り起こして、ハモンドさんのしゃれこうべをとりだし、汚れをぬぐった。
「ひいおじいさま、あなたにいったい何があったのですか……?」
フローレンスさんは、しゃれこうべに語りかけると、丁寧に布につつみ、バルトロメウスさんが背負ったバッグの中におさめた。
「あの……残りのお体の方は、古墳のなかに……遺品もそこに」
と、おれは言いかけて、はっと思い出した。
そして、いそいで、腰の袋をさぐる。
「そういえば、あれがここに……ああ、あった!」
忘れてた。
古墳からずっと入れっぱなしだったのだ。
古墳の中でハモンドさんの骸が手にしていた、鍵のような匙のような、青い金属のもの。
細長い柄の先に、湾曲した丸い部分があり、その周りがギザギザになっている。
「フローレンスさん、これを」
おれは、それをフローレンスさんに差し出す。
「これは?」
「ハモンドさんが、最後まで握っていたものです」
「おぅ、それは!」
「むう、なんと!」
バルトロメウスさんと、ニコデムス師が、同時に声を上げた。
「ヴァルサーの鍵だ」
「ヴェルサリウスの匙じゃな」
「?」
おれたちは、なんのことだかよくわからない。
バルトロメウスさんによれば、それは「ヴァルサーの鍵」と呼ばれる古い魔道具で、それを持つことで隠された扉を開けることができるのだという。
ニコデムス師によれば、それは「ヴェルサリウスの匙」と呼ばれる古代魔法の遺物で、邪悪を祓う強力な呪具だという。
どちらも同じものを指しているのだが、永く伝承される間に、情報に異同が生じたようだ。
いずれにせよ、そこではたと気がついた。
つまり、おれがこれを身につけていたからでは?
「朝起亭」で魔物が消滅したのも、あの呪いの人形に勝てたのも、この「ヴァルサーの鍵」「ヴェルサリウスの匙」の力だったのではないか。
「そういうことかー」
パルノフが言う。
「おかしいと思ったよ、アーネスト」
と、ヌーナンも言う。
「なるほどな、それならうなずける」
と、サバンさんも言う。
なにを納得しているのだみんなは。
ともあれ、これは本来、ハモンドさんが持っていたものだ。ハモンドさん亡きあと、正当な持ち主は、フローレンスさんだろう。
おれは、若干の名残惜しさを感じつつも、フローレンスさんに、その、鍵である匙を受けとってもらったのだ。
「よし、では、そろそろ古墳を調べよう」
サバンさんがいい、おれたちはあらためて、古墳の前に立つ。
おれたちが貼ったお札が、あのときのまま扉を封じている。
「開けるぞ」
サバンさんが、お札に手を伸ばす。
そのとき、おれがふと思ったのは、これだけの呪具を持ちながら、どうしてハモンドさんは敢えなくあんな骸になってしまったのか、ということだ。
つまり、あの呪具でさえ役に立たないような、なにか、とんでもない――。
「な、なあ、パルノフ、おれは思うんだが――」
おれがそのことを口に出そうとしたとたん
「待て、お前は、なにも言うな! 言ってはダメだ!!」
おれは、あわてた二人に口を押さえられたのだった。




