酒場でのあれこれ
おれたちは、朝起亭の酒場で、泡立つクワズ酒の杯を手に、祝杯をあげていた。
たった二ギルダのしょぼい稼ぎのはずが、思いがけず大金になり、口元が緩む。
男三人の会話も弾もうというものだ。
「それにしても、サバンさん、めちゃくちゃ怒ってたなあ……」
「ああ、『ギルドが舐められている!』 ドカン!! ……こわいよ狂戦士」
「でも、いったい、なんだったんだろうね」
パルノフが首をひねる。
「おーい、お姉さーん、追加で注文おねがいしまーす!」
やってきたケモ耳の、女給のおねえさんは、おれたちをじろりとみて
「ねえ、あんたたち、そんなに注文して、お金の方は大丈夫なの?」
と、疑うような声で言った。
まあ、日頃が日頃だからな、無理ないといえば言えるけどな。
だが、今日のおれたちは違うのだ。
「もちろんだ。金はしこたま稼いだ、この通りだ」
おれはそういって、金をいれてある腰の袋を、ポンポンと叩いた。
ジャララン
と、袋の中から音がする。
「あら、まあ」
と、お姉さんがにこやかな顔になる。
ところが、突然、
ギョェエエエエエエエ!
おれたちのすぐ後ろで、断末魔の叫び声が上がった。
「キャッ!」
お姉さんが悲鳴をあげた。
「うわっ、な、なんだ?!」
おれたちはとびあがって、ふりかえる。
すると、おれたちの後ろのテーブルについていた四人組の連中が、黒い煙となって消えていくところだった。
煙の中に、歪んだ苦しげな顔が浮かぶ。
煙はちりぢりに拡散し、そして、四つの椅子の上には、それぞれ、小さな灰の山が残された。
「ええっ?」
いったい何事かとおどろく、おれたち。
「なによ、こいつら? いきなり消えちゃって。食い逃げ?!」
お姉さんは目をつり上げている。
「いや……そういう問題じゃないのでは……」
パルノフがつぶやく。
「どっちかというと、無理やり消滅させられた……っていう感じだけどな」
しかし、満員の酒場の冒険者たちは、この様子をちらっと見ただけで、なにごともなかったように、すぐにまた自分たちの会話に戻っていった。
「下級のけちな魔物だな……食べつけないものでも喰ったか」
そんな声も聞こえてきた。
さすが海千山千の冒険者たちは、こんなことぐらいでは動じないのだろうか。
うん、おれたちも、優秀な冒険者として、そうありたいものだな。
「お姉さん、クワズ酒三杯追加ね。あと、スープもちょうだい」
おれは、さもなんでもないというふうを装って、なおも怒っているお姉さんに、追加の注文をしたのだった。
いつも読んで下さってありがとうございます。祝杯をあげるアーネストたちであります。ちなみに消えちゃった連中は、最初の方の回で、こそこそ物騒な会話をしていたヤツらであります。
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