ギルドへの報告と、おれたちの稼ぎ
怪しげな古墳の、三枚のお札を貼り替えるという、まさに英雄的なクエストをこなしたおれたちは、意気揚々、ギルドへ報告に行った。
ギルドの大きな扉を勢いよく開けて、おれは叫んだ。
「アリシアさん! やりましたよ、任務達成です!」
受付にいるアリシアさんが、顔をむけて、にっこりと微笑んでくれる。
「さすがアリシアさんですね、ちゃんとおれたちの実力を考えて、あのクエストを任せてくれたんですね」
受付で、おれが礼を言うと、
「まあ! アーネスト、あなたも、ようやく自分を客観的に見られるようになったのね! 本当によかったわ!」
とても、うれしそうだ。
おれはうなずき、
「一見簡単そうだけど、実は、命の危険もあるクエストなんてね。あれは、へぼいパーティが、うかつに手を出したら、ぜったいに生還できませんからねえ」
「ん?」
アリシアさんがなぜか首をかしげる。
「実力あるおれたちでさえ、危なかったですよ。なあ、みんな」
「うん、石棺から出てきた、あのへんな黒い霧はヤバかった。あぶなくアーネストがやられるところでした」
「えっ?」
「おれたちの前に、あそこにはいって、命を落としたらしい冒険者の骸もありました」
「ええっ?!」
アリシアさんは、なぜかひどく驚き、立ち上がってしまった。
「ど、どうしたんですか、アリシアさん?」
「地図渡しましたよね? だれが地図を読んだの? まさかアーネストじゃないわよね?」
「だいじょうぶです、地図を読んだのはおれです」
とパルノフが言う。
「アーネストじゃありません」
「そう……」
アリシアさんが言う。
「じゃあ、前みたいに、まちがえてへんなところに行ってしまったわけではなさそうね」
「はい、アーネストには、けして地図は触らせてませんから」
パルノフとヌーナンが答える。
おい、お前たち。
どういうことだよ。
なんだかひどい言われような気がするぞ……。
「あなたたち、少し待っていて下さい。今、すぐに副ギルド長を呼んできますから」
「へっ?」
アリシアさんは、あわてて、急ぎ足で行ってしまう。
おれたちは、わけが分からず、顔を見合わせたのだった。
「で……」
と、ギルドの応接室で、おれたちは、サバンさんから事情聴取をうけていた。
この部屋に入るのは、『白銀の翼』と顔合わせをして以来だ。
なぜか厳しい顔のサバンさんの前で、おれたちは小さくなって座っている。
「地図の通りにいってみたら、古墳があって、そのなかで黒い霧におそわれた、と」
「はい。でもチョチョイと片づけて、お札も三枚、依頼通りにしっかり貼り付けてきましたから!」
おれは胸を張って言った。
「うーん……」
サバンさんは、腕を組み、眉間にしわを寄せて、アリシアさんを見た。
「どう思う、アリシア……こいつらの話」
アリシアさんも深刻な顔だ。
「これは……まずいですね……」
「そうだ。これは問題だ」
サバンさんがきびしい顔で言う。
おれはビビりながら、おずおずと聞いた。
「あの……さっぱりわからないんですが、おれら、また、なにかしくじりましたか?」
「ん? いや、そういうわけではない」
サバンさんが説明してくれたところによると、そもそもギルドに依頼された時点では、町外れの道祖神の祠を三つまわり、お札を張り直すという、まさに二ギルダにふさわしいものだったらしい。それがどこかですり替えられた可能性があるという。駆け出しの冒険者を狙った魔物の罠かもしれないとのことだ。
「いずれにせよ、これは大問題だ。偽装した依頼とは、ギルドがなめられている。至急調査をして、キッチリ片をつけないとな。ふざけたまねを二度とはさせない!」
そういって、サバンさんは、テーブルの上の依頼文を、拳で、がん! と叩いた。
「ひえっ!」
サバンさんの狂戦士の肉体から、燃えるような怒りがメラメラと立ち上っている。
こ、こわい。
「あ、あの、そういえば……」
おれは、腰の袋からとりだしたものをサバンさんに渡した。
ボロボロになった、安物の革帽子である。
「ん、これは?」
「はい、あそこで骸になっていた冒険者の遺品です」
サバンさんは、それをそっと手に取った。
「そうか……ギルドの記録を当たってみれば、その冒険者がだれか分かるかもしれんな……よく持ち帰ってくれた。礼を言うぞ、お前たち」
そういって頭を下げた。
いい人なのである。おっかないけど。
そのあと、アリシアさんから、今回のクエストの報酬をうけとり、おれたちはギルドを後にした。
報酬は、契約通りの二ギルダだけかと思ったら、おれたちの手に渡されたのは、ビックリしたことにずいぶん大きな金額だった。今回のクエストが、募集通りのものでなかったことに対する迷惑料と、古墳で命を落とした冒険者の情報をもってきたことへの、ギルド規定の礼金とのことだった。
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