それは突然の出来事
「それではこれより、魔法大会の開催を宣言いたします!!」
「おぉーーー!!」
大会会場である闘技場の舞台上で、黒いスーツを着た審判が観客席に向かって大きな声を出すと、観客席に座っている人達は拍手や大きな声で答えた。
すると、闘技場から花火が打ち上がり、バンバンと大きな音を立てて魔法大会を祝福した。
「それでは、さっそく試合を開始いたします!! ムショ対ドウテ、入場してください」
こうして魔法大会が戦いが始まった。
「モグモグ。ん、始まったかな?」
俺は選手控室の机の上にあるお菓子をモグモグと食べていた。
「これ、美味しいな。少し持って帰ろうかな」
俺のいるこの部屋は、自分しかいない控室。
予選の時とは違い、選手には個室を与えられているのだ。
だから、ここにあるお菓子は全部自分のために用意されている。
このお菓子は1人占めしても良いことになる。
そう思いながらお菓子を食べていると。一際大きな歓声が聞こえた。
多分だけど最初の戦いが終わったのだろう。
俺は控室に張ってある大きな紙を見た。
これにはトーナメントの紙で、次の対戦相手が誰かがわかる。
このトーナメントの対戦相手は、魔法大会を予選で勝ち上がった18名と各国にから派遣された6名の魔法使い、合わせて24名の魔法使い達だ。そんな彼らが優勝を目指して勝ち抜き戦をおこなう。
まずは予選で勝ち上がった16名が1回戦を戦い。予選で圧倒的な強さを出した2名と派遣された6名、計8名がシード扱いとして2回戦から戦う形になっている。
ちなみに俺はシード扱いされていない。
だから1回戦から戦う事になる。
トントントン!!
ドアの叩く音がすると、大会関係者の男性が中に入ってくる。
「ロジックさん、次の試合が終われば出番になります。準備が終わりしだい選手入場口に来てください」
「あ、はい!」
彼が出ていくと、俺は目を瞑ってパンパンと手で顔を叩いた。
それから集中する。
俺はこれから大勢の前で舞台に立ち、演技をしながらサーカスの宣伝を成功させ、そして戦いにも勝つ。
‥‥‥よし!
パチリと目を開ける。
「さぁ、ショータイムだ」
サーカスの舞台にあがる時の俺の決まり文句を口ずさんで、選手控室から出ていった。
「さぁさぁ、盛り上がってまいりました!! お次の試合はマールフォイ対ロジック。入場してください!!」
審判の声でマールフォイは舞台の上にあがっていく。
舞台の中央に立つと、魔法の玉の付いた杖を右手に、左手を腰に当ててフンと鼻息を出した。
「‥‥‥あれ。ロジックさんー。入場してください!!」
なかなか現れないもう一人の選手に、観客達もざわつき始めた。
そんなざわついた中、選手入場口から1人の派手な服を着た青年が現れて、舞台に向かって走った。
それから側転、側宙、転宙、最後に前方伸身宙返りをして舞台の中央に着地した。
そしてニッコリと微笑みながら両手を広げて観客席に向かってお辞儀をした。
「なんだありゃ、魔法使いじゃなくて、ピエロがいるぞ!」
「おお! なんだかすごいぞ、いいぞピエロ!!」
「お母さんお母さん、ピエロがいるよー」
「あら、なんでかしらね。でもなんだか面白いわね」
観客席が大いにざわつきながら、感嘆の声をあげていた。
ピエロこと俺は、周りの声を聞きながら、最初の掴みは成功したと心の中で親指を立てた。
‥‥‥まずは、驚かせることには成功したな。
「おい! ふざけるな!!」
苛立った顔をしたマールフォイは俺に睨めつけてきた。
近づいてきて掴みかかろうとしてきた所を、審判が割って入って止めてくれた。
‥‥‥このマールフォイはなんで怒ってるんだ?
「はいはい、戦いは試合が始まってからにしてください。それにこの魔法大会では素手での攻撃は反則になりますよ!」
「ちっ」
マールフォイは歯を強く噛みしめて舌打ちをした。
「ふざけた姿のお前。悲惨な目に合わせてやる」
「あらら、それはそれは、お手柔らかにー」
俺は笑顔で微笑みながら恐ろしい事を言うマールフォイに、お道化た様に笑いかけた。
そんな笑ってる俺の内心は少しビビっていたってのは内緒だぞ。
俺はさっそくマールフォイの顔を観察した。
その顔は、金髪で色白の肌、釣り目がきつくて、常に怒っているように見えた。
‥‥‥いや、今怒っているからそう見えるだけかもしれない。
「んんっ。さぁさぁ、2人共離れて離れて。試合を始めるよ」
俺とマールフォイは、お互い間合いをとるように歩き、戦う準備を始めた。
腰の革袋から魔法の玉を取り出した俺は、両手を自由に使う事が出来るように魔法の玉を浮かせた。
マールフォイもまた魔法の玉が付いた杖を軽く振って、俺に杖先を向けた。
「それでは、準備はいいですね。では、試合開始!!」
「いけっ!! ピエロがんばれー!!」
「マールフォイ、ふざけたピエロなんて凍らせてしまえ!!」
審判の声と観客の声が合わさりながら試合が始まった。
「フォイ!! アイスショット」
始まった瞬間すぐにマールフォイが独特な掛け声と出して攻撃を飛ばした。
連続片手側転をして避け、こちらも攻撃を‥‥‥はしなかった。
俺にはやる事があるので、まずはそれをしなければいけない。
あと親父に言われた、ピエロとして戦う事も忘れてはいけない。
「さぁさぁ、皆様ご存じの通り私はピエロ。あらくれサーカス団のしがないピエロでございます!!」
俺はマールフォイに背を向けて、観客席に向けて宣伝を始めた。
「今日、この場に私ことピエロが来ましたのは、ここで1つ、楽しいショーをお見せいたしたいと思い参上したのです」
「フォイ!! ふざけるなこの3流ピエロが、アイスーボール!」
俺の背中に激しい怒りの声と、冷たいの白い雪玉が向かって来ているのがなんとなく分かった。
「ひょいっと、はいはい! はーい、着地ー!」
俺は先ほどと同じように避けつつも、最後に魔法の玉を踏み台にして高く飛び、前方伸身宙返りをして四角い舞台の周りをまわるように位置を変えて、円形闘技場に座る観客達に向かってお辞儀した。
「今回は私と、そこで顔を真っ赤にしているマールフォイ君と一緒に楽しい演技をするので、どうかどうかお楽しみください!」
「フォォイ! 許さん! アイスーショット!!」
また後ろから氷の攻撃が迫ってきた。
‥‥‥さてと、ここからだ。ここからが本番。
これからが俺自身の見せ場になる。
俺はすぐ振り向いて、頭からスライディングをして攻撃を避ける。
それからひょいっと立ち上がり、両手を広げて笑顔で笑う。
「さぁて、マールフォイ君。僕と一緒に踊ろうか!」
「フォッ!! 己、馬鹿にしよって!!」
頭がプッツンしたマールフォイは、強力な魔法を唱えようと呪文を唱え始めた。
「寒い寒い、遥か北から吹く冬の風よ。吹いて‥‥‥」
「だめだめ、マルフォイ君そりゃ駄目だよ」
マルフォイが俺の知らない魔法を唱えようとしていた。
だが、俺は焦らない。
この時の為に覚えてきた魔法があるからだ。
俺はすかさず飛び上がり、魔法の玉の上で片手倒立をした。
そして唱えた。
「サンダーフロア!!」
マルフォイが呪文を唱え終わる前に、俺の放った雷の魔法が舞台上を駆け回った。
「フォフォゴゴゴゴゴォォ」
マルフォイは体を痺れさせて、呪文を止まった。
ついでに髪の毛がボサボサに爆発させた。
そして同時に俺も。
「アバババババッ」
魔法の玉に直に触っている俺は、流れ出る電流に痺れつつ、髪をボサボサに爆発させてポテッと舞台に落っこちた。
「なにあれ、面白い!!」
「あははっ、ピエロもマールフォイも笑える!!」
大会会場の観客席から大勢の笑い声が聞こえた。
観客達はお腹を抑えながら笑っていた。
俺は、大勢の笑っている姿を見てなんだか楽しくなってきた。
‥‥‥そうだ。これがピエロとしての戦い。
自分自身が傷つこうとも、皆が笑える、笑ってもらえるそんな戦い。
そして皆の笑顔が俺を自身を楽しませてくれる。
さぁ、もっと楽しもうマールフォイ。
「さぁさぁ、行くよマールフォイ君。アイスボール!!」
「フォ、フォーイィー」
マールフォイは痺れた体で氷の魔法を何とか避けたが、足元に氷が張ってしまったおかげで、滑らせてこけてしまった。
そしてこけたマルフォイが、お尻で氷の上をシューと滑らせながら、俺に向けて突っ込んできた。
俺はマルフォイに向かって走り、側転からバク転で避けた。
と同時に足元に張った氷で滑らせてマルフォイの逆の方向へ滑り転がっていった。
「ぷっ、わはははははっ」
「なんじゃこりゃ、いいぞ!!」
「ねぇねぇ、お母さん、あれ面白いよ、ねぇ」
「うふふっ、そうね」
俺達の戦いに観客達は大爆笑した。
まるでお笑いの劇を見ているかのように楽しそうに笑っていた。
そんな楽しくしている観客を見て、そろそろ頃合いかと思った。
‥‥‥後は、あらくれサーカス団ではそれ以上に楽しい演技や劇が見ることが出来ると宣伝すれば、あらくれサーカス団の興行は大繁盛間違いなしだろう。
俺は転んでいた体を立ち上がらせて、最後の決め台詞を声に出した。
「皆さま、どうでしたでしょうか。少しは楽しんでいただけたでしょうか。ここでのショーはそろそろ終わりになります。ですが、ここで皆様方に耳よりの情報がございます。それは、これ以上のショーをあら‥‥‥とっと」
俺は舞台の上で口上を述べていると、いきなり舞台が‥‥‥いや都市全体が大きく揺れ始めた。
ドドドドドドッ。
そして、舞台の中心がいきなりボコッと盛り上がった。
「はっ?」
俺の目の前でボコボコッと山の様に盛り上がっていった。
そして‥‥‥。
ドッッゴッゴン!!
大爆発をした。
まるで火山が噴火するかの如く爆発して、その炎が空に立ち昇るように燃え上がっていった。
俺はその爆発の勢いで観客席まで吹き飛ばされて、体を強く打ち付けた。
「ぐっが‥‥‥な、なんだっよ、いきなり」
痛みを我慢しながら倒れた体を起こす。
そして俺は爆発して吹飛んだ舞台を見た。
「お、おい、うそだろぉ」
先程までいた舞台は、炎と溶岩で地獄の様なありさまになっていた。
そしてその舞台の中心から激しい音を立てて、何かがこちら側に出てこようとしていた。
少しずつ出てくる。
巨大な何かが‥‥‥出てきた。
それは‥‥‥それは、とても大きくて凶悪な真っ赤なドラゴンだった。




