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勇者パーティにはピエロはいらない  作者: トラタロウ
あらくれサーカス団
26/52

予選開始

 大会会場である闘技場の選手控室に、俺を含む魔法大会の参加者102人が座って待っていた。


 「それでは1番から6番の番号の方、闘技場の舞台に移動してください」

 「はい!」

 

 大会関係者の女性がそう言うと、6人の魔法使い達は返事をして立ち上がって控室から出ていった。


 俺は自分の手元にある番号札を見る


 「‥‥‥100番」


 1番から順番に呼ばれるとしたら、俺の出番はまだまだ先だ。


 俺は俯きながら目を閉じて、大会のルールと勝利条件について再確認するために、簡単に思い出していた。

 

 まずは勝利条件は3つ。

 

 1、相手を舞台の外に出す事

 2、相手を気絶させる。ただし死亡させたら負けになる。

 3、相手が負けを認めて降伏する  


 次に大会のルールは6つ。


 1、魔法と魔法の玉以外の攻撃はしてはならない。

 2、回復薬や興奮剤などの体を回復や強化する薬を飲んではならない。

 3、魔道具以外を使って相手の行動を阻害してはならない。

 4、観客席又は会場外からの支援攻撃をお願いしてはいけない。

 5、魔法の玉を直接持って相手に攻撃してはならない。

 6、相手を死亡させてはいけない。

 

 ルールを違反した場合は失格、負け扱いになるので気をつける事とのことだ。


 「31番から36番の方、舞台の方へ移動してください」


 大会関係者の女性が声が聞こえて目を開けた。

 いつのまにか番号が進んでいた。

 だが、まだだ。慌てる順番じゃない。


 俺はもう一度目を閉じて、戦いの形式を思い出していた。


 まず予選は6人で戦うバトルロイヤル方式とのことだ。

 周りの5人は全員敵で、最後まで立っていた人が本戦へと進む。


 この戦いは1対1とは違い、周りを気にしながら注意深く戦わなくてはいけない。

 場合によっては、敵同士でも利害が一致した相手と結託して戦っていくのも1つの手段だ。

 だがこれは、逆も然りだ。敵同士が結託して自分を狙ってくることもある。


 となるとだぞ、番号順で呼ぶのってよくないんじゃないか?

 友人同士で申込みをしたなら、連番になるだろう。そしたら友人同士で結託して周りを追い落としてから2人だけで勝負する‥‥‥といった事が出来るんじゃないか?

 

 「67番から72番の方、舞台の方へ移動してください」


 だんだん俺の番号が近づいてきた。

 ドクッンドクッンと自分の心臓の音が聞こえてきた。

 俺はちょっとだけ緊張している。ほんのちょっとだけ。


 うん、さぁ‥‥‥落ちつけ俺。

 サーカスの舞台に立つのと変わらない。

 いつもの様に舞台で演技する、そう思えばいいのだ。


 「ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」


 独特の呼吸法を行い、心を落ち着かせていく。


 --ラマーズ法ーー


 突然頭の中に星の囁きが聞こえてきた。

 ここ最近、俺は星の囁きをよく聞くようになったと思う。


 これはとある噂の話だけど、星の囁きを頻繁に聞く人は、星の神様に愛されていると言われている。

 そんな星の神様に愛されている人はとても幸運の持主になんだって。

 そして多くの人を導くほどのカリスマ性をも持つようになるという。


 となると、ロレンスは毎日のように星の囁きを聞いてたりするのかもな。

 うん、大変だな。


 「91番から96番の方、舞台の方へ移動してください」


 おっと、次だ。

 次に俺と残りの5人が呼ばれるだろう。


 俺はこれから戦うであろう魔法使いの人達を見るために、顔をあげた。

 するとこんな人達がいた。 


 黒いコートを羽織ったおじさん。

 茶色のフードで顔を隠した魔法使い。

 魔法学校の学生服を着た青年。

 杖を持った女性。

 紺色のコートと仮面つけた剣士風の魔法使い。


 なんというか皆は落ち着いた色の服を着ていた。

 地味とも言える。

 だが、その見た目こそが魔法使いといった感じだった。


 ‥‥‥俺はどうかって?


 俺はピエロ完全装備をしている。

 赤と白の縦縞のつなぎの服に同じ色の尖がり帽子。顔のメイクはいつもの様に下地は白で口周りを赤く、目の周りを星にして、最後に鼻には赤いボールとチョコンとくっ付けている。


 「‥‥‥ふぅ」


 まぁ、ようするに。俺だけが周りから浮いているのだ。

 周りが黒で、俺だけ赤ってな感じだ。


 そう考えていると、大会関係者の女性が控室に入って来た。


 「それでは、97番から102番の方、舞台へ移動してください」

 「はい!」


 俺と魔法使い達は立ち上がり、舞台へと案内されて行った。





 会場の闘技場は丸い円形になっており、その中央に四角い舞台が置いてある。

 俺と魔法使い達、それと審判がその舞台にあがった。


 「それでは、各自距離をとってください」


 審判の言葉で、俺達は舞台で一定の間合いをつくりながら広がった。


 「これからこの笛を鳴らします。その音が試合の開始となります」


 そう言って、審判の人が舞台の上から降りていった。

 

 舞台の上に立っている魔法使いの人達は戦闘の準備を始めた。

 俺も革袋から魔法の玉を取り出した。


 「それでは、試合開始! ピーーーーーー!!」


 笛の音とともに予選試合が開始された。

 俺は敵となる魔法使い達を見た。

 皆は後ろを取られまいと、舞台の端を背にしていた。


 おやおや、あんなに舞台の端に近寄ってると少し押しただけで場外に落ちるよ?

 俺はそう思いながら、近くで腰が引けている学生服の魔法使いを最初の相手に選んだ。


 ‥‥‥戦い慣れてないな。なら、一気にやる!


 「いけ! 魔法の玉よ」


 手の周りで浮かせてた魔法の玉は、近くにいる学生服の魔法使いに飛ばした。


 「あ! ふぁ、ファイあがっ」


 学生服の魔法使いは、魔法の玉を魔法で弾き返そうとしたけど、間に合わずにお腹に直撃して場外へと落ちていった。


 まずは1人っと、んあ!!


 どこかから光が放たれて、俺は眩しさのために目を瞑ってしまった。


 「サンダーフロア!!」

 「あばばばっ!」


 誰かの唱えた魔法が舞台全体に広がり、魔法を使った人物以外の皆が体を痺らさせられた。


 俺は誰がこの魔法を唱えたのかと、痺れる体をなんとか動かして相手を探した。

 すると仮面をつけた魔法使いだけが自由に動いていた。

 そしてその人物がまた魔法を唱えていた。


 「アースボール!」


 まだ痺れて体が上手く動かないそんな中で、仮面の魔法使いは土の魔法を俺‥‥‥ではなく、黒いコートを羽織ったおじさんに目掛けて飛んできた。


 「ぐほっーー」


 黒いコートのおじさんは丸い土の塊に吹き飛ばされて場外へと落ちていった。


 「ウインドーロング」


 突然風が吹き始めた。

 痺れた体を杖で支えた女性が魔法を唱えていたのだ。


 吹く風が強くなり、舞台上は風が荒れ狂っていた。


 「うごごごごぉ」


 俺は風の勢いで吹き飛ばされそうになりながらも、なんとか耐えていた。

 だが俺の鼻に付いていた赤いボールが風で何処かに飛んで行ってしまった。


 ‥‥‥あれ高いのに!!


 そんな風が吹いている中で、フードを被った魔法使いが俺に向かって魔法を唱えているのが見えた。


 「おいおい! こんな状況で魔法唱えるとか、まじかよ!!」

 

 俺は態勢を整えるのに必死な中で、フードを被った魔法使いは魔法を放った。


 「ファイアーショット!」

 「むん!!」 


 俺は体を倒し、全身を地面にへばりついて相手の魔法を避けた。


 「おら! アイスボール!」


 仕返しとばかりに俺はフードを被った魔法使いの足元に放った氷の魔法を放った。


 「ぬぁあ、わしの下半身がっ!!」


 舞台と魔法使いの下半身が凍り付いた。


 「ほらっ、おまけだ、持ってけ!!」


 動けなくなったフードを被った魔法使いに剛速球クラスの速さで魔法の玉を顔面辺りにぶつけた。


 「ほげぇ!!!」


 魔法の玉がぶつかった衝撃で、張り付いた氷が離れてそのまま場外へと落ちていった。

 

 俺は2人目を倒すと同時に、舞台の上で吹いていた風が収まった。


 「あぐっ」


 風の魔法を使っていた女性に目を向けてみると、丁度仮面の魔法使いの魔法攻撃によって場外へ落とされていた。


 これで舞台に残ったのは俺と仮面を付けた魔法使いだけになった。

 

 「さてと、あとは道化師の姿をしたお前だけだな」

 「‥‥‥そのようで」


 お道化た様に手を広げた俺はそう返事をした。

 

 俺は改めて相手の姿を見た。

 長い黒髪で黒い髑髏の仮面を付けた‥‥・多分青年だと思う。

 体には黒い鎧に黒いマント、それと黒いガントレットに黒い魔法の玉‥‥‥なんだか黒づくしの姿だった。

 そんな人物は魔法使いと言うより戦士の様な雰囲気を出していた。


 ‥‥‥そう、雰囲気でわかる。こいつ強いぞ!!


 「では、私からいかせてもらおう。サンダーフロア!」

 「おわぁ、やべぇ!」


 舞台全体に電気が走った。


 俺は‥‥‥すぐに飛び上がり、浮かせた魔法の玉に乗って回避した。


 「おっ、おとと。あぶねぇっと」


 小さな玉乗りをする要領で相手の雷の魔法を避けた俺は、そのまま乗りながら魔法を唱えた。


 「あらよっと、アイスボール!」


 狙う場所は足元。

 フードを被った魔法使いと同じように倒そうと俺は魔法を放った。

 また、それと同時に足元にある魔法の玉を蹴り飛ばした。


 「ちぃ、サンダーショット」


 足元を凍らせた仮面の魔法使いはこちらの攻撃を気にすることなく魔法を撃ってきた。


 「なんとぉ!!」

 

 俺は魔法の玉から落ちて、すぐ横に側転をして避けた。


 「ぐっ、サンダーショット!!」


 魔法の玉を手でガードした仮面の魔法使いは、すぐに同じ魔法を俺目掛けて放ってくる。

 俺は側転、バク転、スライディングといった軽やかな動きで避けて避けて避けまくった。


 「ひょ、とこ、さっと、ファイアーショット!!」


 俺は避けながら魔法を放ち、合わせて魔法の玉を飛ばした。

 しかし仮面の魔法使いは手で魔法を防ぎ、もう片方の手で魔法の玉をガードした。


 ねぇ、どうして手で防げてるの? 

 そう思いながらも、俺の出来る事はこれぐらいしかないので根気よく攻撃し続けた。


 どちらも決定打のない攻撃を何回も繰り返した。


 終わらない戦いに俺はどうしたものかと考えていると、仮面の魔法使いに異変があらわれてきた。


 「くっ‥‥‥はぁはぁ枯渇してきたか、致し方ない‥‥‥使うか」


 体をふらつかせながら膝をついた。

 そして息を荒げながらも、魔法の玉を俺の前に突き出して魔法を唱えた。


 「サンダーウイップ!!」


 その瞬間、魔法の玉から雷の鞭が唸りながら飛び出して俺に向かって落ちてきた。


 ズゴゴォン!!


 それをなんとか避けた俺は、さっきまでいた場所が大きく破壊されていたのに驚いた。


 「ち、ちょと、こんなの死ぬから!!」


 俺は全身全霊をもって避ける事に徹した。

 なぜなら、当たったら多分死ぬ。いや絶対死ぬから。破壊された場所を見ればよくわかる。

 

 避ける俺を追う様に、雷の鞭が俺目掛けて跳ねて舞台をえぐり、それが何度も何度も跳ねて舞台を破壊していった。


 「あががっががっ」


 サンダーウイップの電気の衝撃が、直接当たらずとも伝わり、体を痺らせて動きを鈍くしていった。


 やばいっ、このままじゃ‥‥‥そう思っていた。

 その時、突然シュっとサンダーウイップが消えた。


 「ぐっ‥‥‥こ、ここまでか」


 膝をついていた仮面の魔法使いは苦しそうに胸を手に当てて、そのままバタリと倒れていった。

 そんな戦いを見ていた審判が、舞台に上がってきて倒れた仮面の魔法使いに近づいた。


 「ん、これは魔力の枯渇か。衛生兵!!」


 仮面の魔法使いの状態を確認した審判は、俺を見て手をあげた。


 「勝者ロジック!!」


 俺は審判の言葉を聞いて気が抜けた。

 ドスンっと尻餅をついて、それから背中から倒れた。


 「はぁはぁ、マジしんどい。だけどこれで俺の役割を果たせそうだぜ‥‥‥ふぅー」


 俺の役割は、本選で集まる観客達にあらくれサーカスを宣伝をすることだ。

 まずはそれが出来そうなので、ほっと一安心したのだった。

 




 

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