魔法大会の申込み
魔法都市ハリーに到着した馬車は、すぐに魔法大会の会場に向けて走り出した。
魔法大会の会場がある場所は、都市中央にある大きな時計台の手前にあった。
そして大会会場は巨大な円形闘技場になっていた。
会場に着いたあらくれサーカス団は馬車を降りて、会場の中に入って大会の受付所を探した。
会場内を見回してみると、入口から少し入った所に魔法大会申込みと書かれた立て札があり、その少し先の方に3人の受付の女性が座っていた。
俺達はその場所に行き、魔法大会に参加するため、受付の女性に話しかけた。
「すみません、魔法大会に参加したいんですけど」
「申し訳ございません。この大会は魔法使い限定となっておりますので、それ以外の方は参加対象外になります」
「あ、これでも一応魔法使いでしてー」
俺は腰の革袋から魔法の玉を取り出した。
「これは‥‥‥確かに。申し訳ございませんが、この魔法の玉は本当に貴方のですか?」
「はい、そうですとも!」
「それでは、この魔法の玉を動かして見せてください」
言われた通りに俺は魔法の玉を、プカプカと浮かした。
それを見た受付の女性は頷いて、机の上に申込み用紙を置いた。
「失礼いたしました。それでは、ここに必要事項のご記入をお願い致します」
俺は机に置いてあるペンを取り、名前、年齢、職業と書いていった。
全ての項目を書くと、申込み用紙と交換するように番号札をもらった。
「100番か」
俺は番号札に書いてある、きりのいい数字を見てちょっと嬉しくなった。
別に理由などないのだけど、なんとなく縁起の良い数字に見えたのだ。
「それでは、ロジック様。明日の昼頃に魔法大会の予選が行われますので、早めの出席をお願い致します。もし出席が遅れますと、不参加扱いになりますのでお気を付けてください」
「あ、わかりました‥‥‥あの、大会って明日やるんですか?」
思えば俺は、魔法大会の開催日がいつなのか知らなかった。
だから明日予選を行うという事は、魔法大会の開催は明日なのかと思った。
「いえ、魔法大会は3日後に行われます。明日は魔法大会の、いわば本戦に出るための予選を行います。なにぶん魔法大会に参加する魔法使いは大勢いらっしゃいますので、予選を行いより優れた魔法使いの方達に本戦に出場してもらい、優勝を狙って競い合ってもらいたいのです」
「な、なるほど‥‥‥ちなみになんですけど、予選って観客とかいます?」
「いいえ。観客はいません。観客が来るのは魔法大会の本戦が開催した時です」
「そ、そうですかぁ」
となると、何が何でも予選を勝たないといけなくなった。
自分の考えだと、参加申し込みをしたら大会出場が確定するものだと思っていたのだけど、どうやらそうはいかなかった。
「よーし、これは絶対勝たないといかんぞ息子よ。わかってるな?」
「そうよ、根性で勝ちなさい!」
「此処で稼げるかどうかは、お前にかかってるんだ。やれるよなロジック!」
親父とティティとアレクが俺にそう言って背中をバンと叩く。
そんな俺は。
「ゴフッ」
と咳き込んで返答を誤魔化した。
「あーそういえば、他の皆いないけど何処へ行ったんだ?」
先程まで一緒にいたトム座長とベルニーニとバルタ、それとフレディとが見当たらなかった。
「ああ、座長達なら興行の場所を確保するために、ここの市長に交渉しに行ったぞ」
「そっか、良い場所貸してもらえるといいな」
宣伝が成功しても、興行する場所が悪ければお客はうまく集まらない。
俺達がうまく稼ぐには、宣伝と場所の確保をうまく成し遂げないといけないのだ。
「さてと、トム座長達と合流しようか」
「おう!」
ここで用事は終わった。なので俺達はこの会場を後にした。
夜。
リングの宿屋で部屋をとった俺達は、その宿屋の隣にある酒場でビールの入ったジョッキをぶつけ合い「かんぱい!」と言ってお酒を飲んでいた。
「いやー、今回はとても良い場所を取れましたよ」
ご機嫌のトム座長は、ビールをゴクゴクと飲んですぐにおかわりをした。
「なんとですね、今回は大会会場である闘技場の近くの場所を取れたんですよ! 競合相手が40人もいる中でよく取れました。いやー運がよかったです」
トム座長は魔法都市ハリーをまとめる魔法市長のいる時計台に向かうと、すでに同業者が大勢いたらしい。
彼らの目的も、トム座長と同じ、興行を行うのに良い場所を借りるため魔法市長に交渉しに来ているのだ。
そんな彼らに魔法市長はくじを用意した。
そして、引いたくじに書いてある番号の少ない順から、条件のよい土地を借りる事が出来た。
ちなみにトム座長は3番の数字を引いた。
「いよっ! トム座長は素晴らしい!!」
「お見事です! トム座長!」
団員達でトム座長を称えながら、ジョッキを上に持ち上げてもう1度乾杯をした。
「後はロジック君の働きしだいですね。頼みましたよ」
「お、おいっす!」
熱い期待の眼差しで見るトム座長。
俺に肩を叩いたり、背中を叩いたり、頭をグリグリと押し込めてくる皆。
‥‥‥こりゃ負けられないぞ。もし、予選で負けたら‥‥‥想像するだけでも恐ろしいな。
俺は気合を入れ直すつもりでビールを一気に飲んだ。
その後は、何度もお替りをして、乾杯を繰り返して夜が更けていった。
次の日。
「おい、起きろ!!」
「んあぁ。おはよ親父」
「おはよう息子よ。もう皆起きて、隣の酒場で朝食を食べ終えているぞ」
俺は部屋の窓から外を見た。
日はすでに真上にあがり、朝から昼にさしかかる時間になっていた。
どうやら結構長く寝ていたようだった。
‥‥‥たしか、予選は昼からだったな。
窓の外に見える時計台の針は10を指していた。その針が12を指すとお昼頃になる。たしかね。
「さぁ、飯を食いに行け。食べないと力は出んぞ!」
「おいっす。痛っ」
昨日飲みまくったせいか、頭痛がした。
俺は怠そうに起き上がり、着替えをしてから隣の酒場で朝食を食べに行った。
「うまいうまい」
ムシャムシャと、酒場で出された朝食を羊の様に食べた。
今日という一日の、体を動かすための活力を得た。
ご飯を食べ終えたので部屋に戻ると、すでに誰もいなかった。
‥‥‥もう皆は、借りた場所に舞台の設置をしに行ったのかな。
「さてと」
皆は皆の、俺は俺の役割がある。
気合を入れて自分の頬をパンパンと叩いた。
「よし、行くか!!」
魔法の玉が入った革袋が腰に身に着けているかを確認した。
準備が整ったので俺は部屋から出た。
「女将さん行ってきますね」
リングの宿屋にいる髪の長い女将さんに挨拶をして、俺は魔王大会の会場へ向けて走っていった。




