ギガースとの激闘 前編
「おいおい‥‥‥まじかよ」
ここまで来て俺は後悔した。
足跡を追ってシシ森の奥へと歩いた俺は、悲鳴のような泣き声が聞こえてその場所に向かった。
なんだけど、そこで俺は絶滅しているはずの1体の巨人を発見してしまった。
4つの目を持った巨人ギガースは、体は灰色で分厚い筋肉を装備している。
腰には動物の毛皮を繋げた物で急所を隠していて、両腕には鉄製の腕輪を嵌めていた。
俺はギガースに見つからないように、茂みの中に隠れてその姿を観察した。
それから悲鳴が聞こえた場所はどこだと辺りを見回した。
すると鉄製の鳥籠に捕まっている2人の少年と少女が泣きながらギガースに懇願していた。
頼む、殺さないでくれと‥‥‥。
そんな言葉を聞きながらギガースは笑っていた。
「多分あれが、行方不明の冒険者のディーノとフィナか」
マタニーさんから聞いた情報から、捕まっている2人は俺が探している冒険者だとわかった。
そして今回の依頼‥‥‥というかやるべきことは、彼ら夫婦の元へ帰すことなのだが、どうも簡単に行きそうにない。
というより、これはもう俺がなんとか出来るような状況じゃない気がする。
「魔物討伐より簡単な仕事だと思っていたんだけどなぁ」
‥‥‥仕方ない、一旦戻るか。
今ここで俺が巨人と戦っても勝てる気がしない。
俺はただのピエロ。ちょっとだけ魔法の使えるだけのピエロなんだ。
勇者や英雄と違ってあんな強そうな魔物を簡単に倒せるわけない。
だから、1度町に戻ってベテランの冒険者達に任せよう。
俺はそう思って、この場所から離れて町へと戻ろうと考えた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
捕まってるフィナが大きな叫び声をあげた。
木の串を持っているギガースが、フィナの右足に突き刺したのだ。
「ハハハッ、イイヒメイ。サイコウ。モットサケベ」
「止めてくれ、頼む止めてくれ!!」
フィナを守るように両手を広げて前に出たディーノは泣きながらギガースに言った。
そして‥‥‥。
「ぐあっぁぁぁぁぁ!」
ディーノの足に串を刺しこんだ。
「ヒヒヒッ、サイコウ。モットダ、モットダサケベ」
俺は噂に聞いていた巨人族の性格を思い出した。
もしかしたら、フィナとディーノは俺が冒険者達を連れてくる前に殺されているかもしれない。
なら‥‥‥どうする? 戦うのか、あの巨人と? 勝てるのか?
頭の中が焦りと不安でごちゃ混ぜになりながら、俺は魔法の玉を取り出した。
「ふぅー」
息を吐いた。そして集中した。
頭の中にあるゴチャゴチャとした悩みを捨てて、やるべき事を考えて、そして決意した。
「‥‥‥よし、やろう!」
戦う事を決めた俺は、なるべく有利な状況で戦おうと考えた。
‥‥‥巨人はまだ俺の存在を知らない。なら奇襲だ。ファイアーボールを後ろ頭にぶち当てよう。
うまくいけば一撃で倒すことが出来る。
俺は茂みの中をゆっくりと移動しながら、ギガースの背中に回り込んだ。
未だにギガースは俺に気づいていないようで、鳥籠の中の2人を玩具にして遊んでいた。
俺はこの瞬間が最大の好機だと思い、魔法の玉に力を込めた。
「ファイアーボール!!」
ギガースの後ろ頭目掛けて、火の玉を飛ばした。
そしてぶつかった。
「ウギャァァ!!」
ギガースの頭が火に包まれて、悲鳴をあげて転げまわった。
「おっ、やったか!」
ギガースの頭が焼けていく姿を見ながら俺は勝利を確信した。
‥‥‥しかし。
「ダレダ、オレノアタマ、ヤクノ」
倒れていた体を起こして、そしてコチラを見ながら立ち上がった。
「お、おおっ」
近くで見るギガースの大きさに驚いて、俺は1歩後退りをした。
‥‥‥効いてないのか?
それになんだこの大きさは、3メートル以上‥‥‥もしかしたら4メートル近いかもしれない。
俺はこんな大きな相手と戦おうって勝とうと考えていたのか。
怯んでいた俺を見つけたギガースは憤りを露わにした。
「ニンゲン、オレノアタマ、ヤイタ、コロス!」
そういてギガースは両手を淡く光らせて地面に叩きつけた。
「カタストロフス!!」
ギガースの使う特技で地面が割れて、粉々になった大量の土石流が俺に向けて放たれた。
「ちょ、まじかよ!!」
俺は真横に走って避けようとするが、カタストロフスの攻撃範囲が思っていた以上に広くて直撃してしまう。
「ガハッ」
俺は石と砂に押し流されて、木にぶつかって止まった。
「チョウド、イイ。コレデアタマ3ツ。ダンゴデキル」
近寄ってくるギガースに、俺は体中に走る痛みを我慢しながら立ち上がった。
「はぁはぁ、捕まってたまるか」
このまま捕まってしまうと、多分恐ろしい目に合うのがなんとなくわかった。
「ファイアーボール!」
もう一度ギガースの顔を目掛けて火の玉を放つが「フン!」と手で弾かれた。
「なっ、嘘だろ‥‥‥」
俺はそれを見て青ざめた。
自分が出せる一番強い攻撃が効かないとなると、勝ち目が見えなくなった。
‥‥‥こうなるともう逃げるしかない。
捕まっている2人には悪いけど、俺も死にたくない。
一度戻ってそれから強い冒険者達を連れて討伐してもらおう。
運が良ければそれで2人は助かる。うん、そうするしかない。
俺は後ろに下がりながら、振り返って逃げようとした。
「助けて! お願いだ、お願いだ!」
「お願い、私達を助けて!!」
まるで見捨てないでと言うように2人は俺に向けて、血反吐を吐くように泣いて叫んだ。
「助けてぇぇ!」
「お願いだ!」
その叫びに、俺は‥‥‥。
俺は‥‥‥彼らを見捨てられなかった。
「くそっ、やってやんよ!」
俺は改めてギガースに向き直った。
まず、ギガースと戦う注意しなければならない事がある。
それは捕まってはいけない事、それと素手での直接攻撃に当たらない事だ。
もし、その攻撃に当たると、俺の人生が終わるだろう。
まさに命がけの戦いだ。
だから俺は攻撃を避けるために全力で動かなければならない。
そのため魔法の玉を手に持っている余裕がないので、俺は魔法の玉を体のまわりに回らさせながら浮遊させた。
魔法の玉を浮かせた状態でも魔法は打てるし、そのままぶつけてもいいだろう。
よし、戦闘準備が整った、
「ドウシタ、マホウ、ダサナイノカ」
警戒していたのか、ギガースは俺の魔法を弾いてから動いていない。様子見をしていたのだろう。
「さぁ、出すかもね? それじゃ行くぜ」
今だに痛む体を我慢して俺はギガースの死角に走り出す。
又それと同時に魔法を唱える。
「ファイアー!」
うまく集中出来なかったためファイアーボールより威力が低い攻撃になってしまった。
「フン!」
こちらに振り向き、魔法を片手で弾いたギガースはおもむろに足に力を入れた。
そして弾けるように走り、俺に向かって拳を振り下ろしてきた。
「くぅぅ」
バコッン!! と音を立てて大地に穴が出来る。
凄まじい破壊力だ。
これに当ったら体がペチャンコになって潰れるのが想像できた。
そんな攻撃を何とか避けて、俺はギガースの後ろ頭に魔法の玉をぶつけた。
「ガッ」とうつ伏せに倒れた後に、さらに追撃のファイアーボールで火だるまにした。
「アチィィィィィー!」
体を燃やしたギガースだが、痛がりながらも立ちあがり、両手を光らせて大地に打ち付けた。
「カタストロフスゥゥゥ!」
ギガースの特技で土石流が俺に向けて押し寄せた。
「うぉぉぉぉぉぉ」
避けることが出来なかった俺は、とがった石などで体が切り裂かれて血が噴き出した。
そしてそれと同時に砂で下半身が埋まってしまった。
‥‥‥やべぇ早く動かないと。
埋まった下半身をなんとか脱出しようと体を動かす。
そんな時、ギガースは俺に向かって火を吐き出した。
「ま、魔法の玉よ、ファイアー!!」
俺も魔法の玉から火を出して、ギガースの火を相殺しようとした。
しかし、ギガースの噴き出した火の方が強くて、相殺できずに俺の体を少し焼いた。
「はぁはぁはぁ、あちぃ、痛ぇ‥‥‥」
戦いが始まってからそれほど経っていないのに、俺の体はボロボロになっていた。
「ボロボロ。オマエ。ボロボロ。ソロソロオワリ」
そう言って、ギガースはまた両手を光らせた。
「ははっ、嘘だろ」
絶望的な状況に笑うしかなかった。
そして、どうして俺は戦う事を選択したのかと後悔しながら‥‥‥。
「カタストロフス!!」
ギガースの出した土石流に飲まれていった。




