シシ森のギガース
シシ森に大きな足跡を残して歩く、1体の魔物がいた。
その魔物はギガースと呼ばれる4つ目の巨人。
3メートル以上の大男で、とても残忍で冷酷な性格をした危険な魔物だ。
そんなギガースは、丸々と太ったポニーニを両脇に抱えて自分の住処に持って帰ろうとしていた。
「グゥ、ハラヘッタ」
自分の住処に着いたギガースは丸太の大椅子に座り、傍に置いてある幾つかの薪を自分の前に置いて、その薪目掛けて口から火を噴いた。
そして火の付いた薪の中にポニーニを投げ入れた。
「ブヒィィィィィ」
気絶していたポニーニが火に焼かれて悲鳴をあげた。
「フハッハッハッハ、イイコエダ」
ギガースは、苦痛に悲鳴を上げて焼けていくポニーニを見て笑い、肉が焼ける美味しそうな匂い食欲をそそり、口から涎が滴り落ちた。
「ハハッ、ウマソウダ」
十分に焼けたポニーニを手に取り、そのまま噛りついた。
すると口から肉汁とポニーニの血が溢れて地面にボタボタと垂れ落ちていった。
「ひっ!」
それを見ていた2人の人物は、お互いを抱きしめ合って体を震わせていた。
「ハッハッ。ナンダ、ニンゲンモ、ホシイカ?」
ギガースは肉を咀嚼しながら後ろを振り向いた。
そこには鉄格子の大きな鳥籠とその中に茶色の髪をした少年と少女がいた。
「い、いりません、お願いです、どうか私達を帰してください」
「頼む、俺達を家に帰してくれー」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃな顔をした2人は膝をついて頭を下げた。
その姿を見たギガースは大声で笑った。
「イイカオダ、イイニンゲンダンゴ、デキル。ニガサナイ。ガハハッ」
鳥籠に顔を近づけたギガースは舌なめずりをして2人を眺めた。
それから鳥籠の横に置いてある大きなツボから一本の串を取り出す。
その串には人間の頭が3つ刺さっていた。
「ひぃぃぃ。ヤダヤダッ。だれか助けてー! 誰かぁー!!」
「はぁぁぁぁぁぁ!? 誰か‥‥‥父さん、母さん、助けてくれー」
あまりの凄惨な物を見て2人は怯えて泣き出した。
「ギヒヒ。イイカオ。イイダンゴ。オイシソウ」
ギガースにとって人間の頭はちょっとしたオヤツだ。
その頭を3つ串刺しにして、人間団子として食べられていた。
「アト1ツアレバ。3ツアタマ。ダンゴガデキル。ソレマデガマン、ガマン」
そうして手に持った人間団子を2人に見せつけるように、ムシャムシャと食べ始めた。
「到着っと」
シシ森に着いた俺は2人の冒険者を探すべく、マタニーさんから聞いた冒険者の容姿や情報を頭の中で思い浮かべた。
まずは少年ディーノ。年齢は14歳。茶色の髪をした元気のいい男の子。戦士として登録している。
‥‥‥しかしなんだ、やっぱり戦士って人気なのかな。初めて冒険者組合に来た時に、掲示板でお喋りをしていた冒険者も戦士っぽかったしな。
次は少女フィナ。年齢は15歳。茶色の髪をした大人しい女の子。道具使いとして登録している。
‥‥‥道具使いかぁ。石やナイフに火炎瓶といった物をポンポン投げている感じがあるな。
さてこの2人の冒険者を探さないといけないのだけど、この広いシシ森でどうやって見つけるかだ。
普通だったら、大きな声を出して捜索するのだろうけど。声に惹かれて来るのは沢山のポニーニだろうから、大声は出せない。
「しかたないか。まずは奥にでも行って探してみるか」
今のところ2人を見つける手段が思いつかないので、まずは奥へと進んでみることにした。
もしかしたら、昨日お爺さんを発見した時のように見つけれるかもしれない。
俺はなるべくポニーニと出会わないように、静かにこっそりと進んでいった。
それから少し時間が経つ。
時間的にはお昼頃だろう。
お腹の音を鳴った俺は、昼ご飯として持ってきた黒パンを口に入れて歩いていると、地面に気になるへこみを見つけた。
「なんだこりゃ、大きい足跡だな」
そのへこみは、まるで巨大な人間が地面に残したかのような足跡があった。
だが、これほど大きな足は人間にはいない。
こんな大きな足跡だと、まさに巨人ような大きな存在でなければ、これほどの跡をつけることが出来ないだろう。
だけど、巨人‥‥‥巨人族ってたしか全滅したんじゃなかったけ?
昔の勇者と魔王の戦いの時に、全ての巨人族は全滅したと聞いたことがある。
昔の魔王軍の中でも巨人族は特に残忍で凶悪な性格をしていたので、勇者や英雄達はそんな凶悪な巨人族を全滅させるべく、激しくも長い戦いをして絶滅させた。
なのだけど、俺の目の前にあるおおきな足跡を見ると、絶滅したはずの巨人の足跡に見える。
「もしかして、生き残りがいた?」
‥‥‥いや、まさかね。もし巨人族がここに住んでいたら、もっと前に見つかってるはずだ。
相手は残忍で恐ろしい性格をしているから、すでに誰かが襲われて犠牲者が出ているはず。
そうなるとすぐ巨人の存在を知った国や冒険者組合らが討伐隊を編成して対処しているはずだ。
うん、そのはずだ。そのはずなんだけど‥‥‥。
だけど、もし巨人族が誰にも気づかれずに森の中で隠れて暮らしているとしたら‥‥‥。もし、2人の冒険者が偶然それに出会ってしまったらいったいどうなるか。
殺されるか、捕まるか‥‥‥どのみち帰っては来ないだろう。
「‥‥‥さてと」
大きな足跡は森のさらに奥へと続いていた。
この後を追っていけば足跡の正体がわかるだろう。
だけど、行っていいのだろうか‥‥‥。
俺自身の本能が、行かない方がいいと囁いている。
「どうしようか」
それにだ、この跡を追う意味はあるのだろうか。
行った先には2人の冒険者はいないかもしれない。その代わりに巨人族の生き残りがいるかもしれない。
だが、もし生き残りがいて冒険者が捕まっていたら。いやでもそんなはずはない。
そう言った考えが頭の中でグルグルと回った。
「一応‥‥‥確認だけして見るか」
この場合、自分で対処が出来そうにないと判断して、一度戻って、冒険者組合に状況を報告をして対処方法を考えてもらった方がいいのだけど、今の俺は冒険者になったばかりなので、そういった事は思いつかなかった。
「よし、行くか」
なんだか嫌な予感がする。
だけど、2人がいるかどうかを確認するだけなら問題ないだろう。
そう思いながら、俺は足跡を追ってシシ森のさらに奥へと歩いていった。




