↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/23

第十三章:王都への道

見知らぬ道を進むという行為は、常に不安と好奇心を伴う。

そして、王都への旅は、彩にとって――紅蓮の過去へと近づく、一歩でもあった。

廃坑を後にした二人は、騎士団に伴われ、王都へと向かう馬車に乗り込んだ。

車窓から見える景色は、見たことのない広大な平原へと変わっていった。彩は物珍しそうに外を眺めていたが、その表情にはまだ拭いきれない緊張が滲んでいる。

「……緊張しているのか」

紅蓮が静かに尋ねると、彩はこくりと頷いた。

「王城になんて、行ったこともないですし……それに」

彼女は言葉を濁し、紅蓮の顔をそっと窺った。

「あなたのこと、まだ何も聞けていません」

紅蓮は、しばらく黙っていた。それから、静かに口を開いた。

「話そうと思っていた。……もっと早くに、話すべきだったのかもしれない」

彩は、身を乗り出すようにして耳を傾けた。

「俺はかつて、竜界と呼ばれる異なる世界で、竜たちを統べる王だった」

彩の目が、大きく見開かれた。しかし、彼女は口を挟まず、続きを待った。

「二年前、俺は裏切りに遭い、力の大半を封じられたまま、この地――人間界へと堕とされた。あの日、お前と出会った時の俺は、本来の力の欠片も持たぬ、ただの半端者に過ぎなかった」

「裏切り……誰に?」

「かつて信頼していた重臣の一人だ。詳しい経緯は、いずれ話そう」

紅蓮の声には、静かな苦さが滲んでいた。彩は、その表情を見つめながら、そっと彼の手を握った。

「話してくれて、ありがとうございます」

「怖くはないのか。人ではない者と、共にいることが」

彩は、迷うことなく首を振った。

「怖くなんかありません。あなたが何者であっても、わたしを助けてくれた、優しい人だということに変わりはありませんから」

紅蓮は、彼女の言葉に、静かに目を細めた。

「……お前は、本当に変わらないな」

「変わる理由が、ありませんから」

彩は柔らかく微笑んだ。馬車の窓から差し込む陽光が、二人を優しく照らしていた。

道中、同乗していた騎士の一人が、遠慮がちに口を開いた。

「失礼ながら、お尋ねしても?」

紅蓮が視線を向けると、騎士は緊張した面持ちで続けた。

「先ほどの邪竜との戦い……あれほどの力を、どうやって?」

紅蓮は、少し考えるように間を置いた。

「話しても、理解できるかどうか」

「それでも、お聞きしたいのです。王国は長年、ああした魔物の脅威に苦しめられてきました。あなたのような方がいれば……」

騎士の声には、切実な響きがあった。紅蓮は、彼の表情を見つめながら、静かに頷いた。

「陛下に会った後、話すとしよう」

その答えに、騎士は深々と頭を下げた。

やがて馬車は、王都の門をくぐった。石造りの高い城壁、整然と並ぶ建物、そして遠くにそびえる白亜の王城――彩にとって、初めて目にする光景だった。

「すごい……」

彼女は思わず声を漏らした。村育ちの彼女にとって、王都の規模は想像を絶するものだった。

「怖がることはない」

紅蓮が、彼女の手をしっかりと握った。

「何があろうと、俺がついている」

彩は、その温かな手の感触に、少しずつ緊張をほぐしていった。

馬車は、王城の正門へと向かって進んでいく。門の前には、すでに多くの兵士たちが整列し、二人の到着を待ち構えていた。

「……ずいぶんな出迎えですね」

彩が、やや圧倒されたように呟いた。

紅蓮は、その光景を静かに見つめながら、小さく息を吐いた。

「厄介なことにならなければいいがな」

馬車が完全に停止すると、扉が外側から開かれた。眩い陽光と共に、王城の威容が、二人の前に姿を現した。

見知らぬ王都への旅は、紅蓮の過去の一端を明かす旅でもあった。

彩の心には、新たな確信が芽生えていた――彼が何者であろうと、自分の想いは変わらないという確信が。

そして、王城の門はすでに開かれ、二人を待ち受けていた。これから訪れるであろう謁見が、二人の運命に、どのような影響を及ぼすのか――まだ、誰も知る由はなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。