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作画スキルで異世界らくらくスローライフ  作者: 奏月脩/Shuu Souzuki
第一章 ハイエルフのお姫様に異世界召喚された件

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第16話 頑張れ俺の理性君!




 さて、二人に背中を流してもらった後は、前だけ自分で洗って先に湯船に浸からせてもらう事にした。



 ……仕方がない。


 流石に前まで洗ってもらうのは時期尚早だと思うしな。


 それだと、もうただのエッチなお店のサービスみたいなことになってしまう。




 まあ、正直に言えば少しもったいない事をしたとは思うが。


 これで良かったんだ。


 欲をかき過ぎて二人に気持ち悪がられたりした日には、異世界転生して早々ショック死する自信がある。



 そういう訳で、俺は相も変わらず浴槽に浸かり。ユリアとミクに背を向けながらどっしりと構えていた。


 無論、耳はしっかりと澄ましているが。


 ここからでも、キャッキャうふふと楽し気な二人の声が色々と聞こえてくる。


 話の内容から察するに、今は二人揃って髪を洗っているところのようだ。



 ――――なるほど、これがシャンプーかぁ……自分で使うのは初めてだけど、やっぱりいい匂いだね。美容効果も洗い流すと実感できるのかな?



 ――――はい、そしてこのリンスも……はい、先ほどお教えした通りの手順でお使いになられれば……。



 ――――頭を洗いつつ、髪のケアも一緒に出来ちゃうと!おおっ!





 ……どうやら、俺の作ったシャンプーやリンスは無事に二人にも気に入ってもらえたようだ。


 それだけでも十分すぎるくらいの成果である。



 やはり、余計な事を言わなくて良かった。


 女の子同士で盛り上がっているところに、今更水を差すのも忍びないしな。


 俺はこのまま一人、黙ってお湯の気持ちよさに浸っていようと思う。



 ふぅ~極楽極楽。




― ― ― ―





 ……俺がお風呂に浸かり、20分ほど経った頃だろうか?


 ミクとユリアも、そろそろ湯に浸かるために浴槽の方へと足を向けるらしい。


 


 ――――間違いない。これは俺に課せられた試練だ。




 全く、大好きなお風呂タイムを呑気に堪能していた俺の姿は、我ながらお笑いだったぜ。


 何せ、その後に待っている人生最大の試練を前に、何の心の準備も出来ていないんだからな!



 そう――――


 身体を洗えば、お風呂に浸かる。


 当然だ。


 俺がそうしたように、彼女たちもまたこの浴槽に浸かりにくる。


 容易に想像できたはずだ。


 それだけではない。


 当初、俺は「二人と一緒に入れたらいいなぁ」なんて淡い欲望も込めてこの浴槽を広々と描いたのである。



 もう一度言おう。



「お風呂気持ちい~!」などと呑気に考えながら、女の子同士のキャッキャうふふをBGMにお風呂に浸かっていた俺の姿はお笑いだった。


 何せ、俺はそんな素晴らしい状況に耐え抜いた上で、相も変わらず視点をただ一点に固定し続けなければいけないんだからな!!




 はあ……もうまぢ無理、病む。イラストレーター引退しよ。


 こんな役得な状況にも関わらず、好きな子の裸はおろか、自分が生み出したはずのユリアの裸体すら拝めないだなんて……。


 こんな事なら、ユリアの裸も転移前に描いておくんだったと割と本気で後悔した。


 まったく、一体何のための画力だと言うのか?


 ブランディングの関係上、エロ絵を投稿しないスタンスだったのが災いしたのかもしれない。



 ……はぁ、これでもこだわるところはこだわり抜いて、美少女を描いてきたつもりだったのだが。


 どうやら、俺はもっと仕事に己の性癖と欲望を持ち込むべきだったようだ。


 俺は、この日を境に生まれ変わるのだと心に固く誓う。


 喜んで健全なイラストのお仕事を受けさせてもらっていたイラストレーター飛鳥馬癒弦は最早過去の男だ。


 これからは、美少女のドスケベなイラストだけを描くエッチ系イラストレーターとして頑張っていこうと思う。



 まあ、そうは言っても異世界転生しちゃったし、もうイラストレーターとしてお仕事することは出来ないだろうけどな!


 本当に、今更ってやつだ。がはは!がはは………はは……は――――


 







 はぁ……つらい。


 現実逃避ももう限界だ。


 今更二人の裸がみたいだなんて言い出せる筈もなく、俺はまたしても血涙を呑んでこの状況を耐え抜かなければいけないのだ。


 もう本当に、頭がおかしくなりそうなくらい辛いし苦しかった。



 ……主に俺の身体の一部分がな。

 


 今もなお、後ろからユリアとミクがこちらに向かって湯を掻き分けて歩いてくる気配が鮮明にイメージできるというのに。


 俺は、その光景をこの目に焼き付けることはできない。


 これを試練と言わずして、一体何と言えばいいというのか?



 ……辛い。


 見たい。


 マジで振り返りたい。



 ――――しかし、我慢。


 我慢である。


 ここで狼になってはいけない。いけないぞ飛鳥馬癒弦!


「マスター、お隣、失礼しますね」


「私も~」



 そんな俺の葛藤など知らんとばかりに、ミクとユリアが無防備に俺の両脇に寄って来たとしても、決して隣を振り向いてはいけないのだ。



 二人が俺の隣で腰を下ろしたことで、湯が盛り上がり浴槽の外にあふれ出す。


 その様子が妙に生々しくとも、決して隣を向いてはいけないのである。






 ……はあ、はあ。


 一体二人は俺の理性君に何の恨みがあると言うんだ?


 彼はキミたちの貞操を守る為に今も必死で頑張ってくれているんだぞ?


 それともええのんか?


 俺の理性君がノックアウトしてもええのんかいなお二人さん?


 こんなもん、俺の心の中のエセ関西人も出てまうっちゅうもんですわ。




「ふぅ……気持ちいいですね」




 ……やめろ、やめてくれ。


 ユリア。


 俺のすぐ耳元で、そんな艶っぽい声で呟かないでくれ……。



「ね?お湯加減も丁度いい感じだし……もしかしなくても、これってユリアさんの魔法の効果?」


「ええ、しばらく湯の温度が一定になるように、少しだけ」


「ほへぇ、すごぉ~い……ね、ユヅル様?」


「……」


「ユヅル様?」




 ……ダメだ。


 ミクから話を振られていることはわかるのに、もう頭にエロい事しか浮かんでこない。


「マスター?どうしましたか?」


「……いや、なんでもない。大丈夫だ」


 そんな俺の様子を見て、ようやくユリアが俺の異変を察知してくれたらしい。


 しかし、バカ正直にムラムラし過ぎてしんどいです!などと言える筈もなく。


 なんとかキリっとした声色を取り繕って、大丈夫だと返答した。


 今はそれが精一杯である。


 俺の頭の中はもう手遅れだ。


 猛烈に横を向きたいという欲望で完全に支配されている。



 ――――しかし、ここまでくるともう無理なんだ。


 最後まで紳士的なスタンスを貫き通さないと、あまりにもダサ過ぎる。


 自分の中の変なプライドが、かろうじて俺の理性君の命を繋ぎとめてくれていた。



 どうやら、俺の忍耐力はまだまだ試されるらしい。




― ― ― ―




 ……それから、永遠にも思える数分間を過ごした。

 

 俺達は無言で湯に浸かっていただろうか。


 未だ新しい会話はない。


 不幸中の幸いだ。


 やはりみんな疲れが溜まっており、黙々とお風呂の気持ちよさに浸っていたからだろう。


 特に会話がなくともなんとかなっていた。



 しかし、それも長くは続かないだろう。



 むぅ……。



 なんだか一周周って冷静になってきたな。


 俺はこのまま、二人の裸が見れなくて悶々とした日々を過ごすのか?


 それこそ、この先もずっと紳士的に自分を繕い続けて……。




 ……うん、無理だな。


 女性の裸が安いもので無い事など百も承知だが、それにしたって限度はある。


 せめて、お互いの気持ちが通じ合ったとわかったなら……。


 その時は、必ずそのチャンスをものにしてみせよう。


 いつまでもヒロインとセックスしないような男には、俺は絶対になりたくない。


 こうなったら、告白だ。プロポーズだ。


 いくらお姫様が相手でも、正式にお嫁さんにした後であればエッチな事をしても何の問題も無いだろう




 そうと決まれば、この機会も今だけの辛抱だったと前向きに受け入れよう。


 次の機会までには、絶対にミクとも結婚して、ユリアとも結婚する。


 そうすれば堂々と二人の裸を拝めるのだ。



 よし、そうと決まれば一足先に小屋に戻ってイメトレだ。


 若干動機は不純だろうとも思ったが、俺は二人に自分の想いを告げる決意を固める。



「……俺、先に上がらせてもらおうかな。目をつむっておくから、俺の死角に回ったら言ってくれ」


「のぼせましたか?マスター」


「ああ、ちょっとな……」


「大丈夫なのですか?」


「ああ、気分が悪いというほどじゃないよ」


「そうですか……まあ、マスターはずっとお入りになっていましたもんね」


「ああ、ミクも悪いな」


「ううん、ちょっと残念だけど……それよりも、ユヅル様のお身体の方が大事だから、無理しないでね?」


「ああ、ありがとう」




 ……そこからは一瞬だった。


 俺は一足先にお風呂を上がらせてもらう事にして、この時間で今後の事をじっくりと考えさせてもらう事にする。



 まあ、それはそれとしてベッドを用意しなければいけないというのもあったが。



 俺はミクの用意してくれていた絹布で手早く身体を拭うと、早々に着替えを済ませて一人小屋へと戻っていった。


 しかし、そんな俺を待ち受けていた者が一人。いや、一本。



『……父よ、我の事を忘れていただろう?』



「あっ……」



 どこかふてくされたような声で問いかけてくるアルちゃんに、俺はあまりにも間の抜けた声しか出せなかった。









↓同時連載中

「The Hero's Sweet Brides~学園の女子だけ貞操観念が逆転していくサバイバルクラフトゲームで、俺だけ既に神殺しと畏怖された異世界の救世主~」

https://kakuyomu.jp/works/822139838557577613

※もう一つのリンクはノクターンノベルズの為ここでは割愛。


・作者X

https://x.com/Shuu_Souzuki

作品の執筆状況などをたまに投稿していく予定です。

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