第15話 初めてのご奉仕
さて、一時はミクの天然さに翻弄されそうになったが、そこは宣言通りユリアがフォローしてくれるようだ。
背後でガチャガチャと瓶の擦れる音が聞こえてくる。
早速、俺の作ったシャンプーやボディーソープを使ってくれるつもりなのだろう。
「ミク様、こちらを」
「あっ、ありがとうユリア様」
説明の代わりに、まずはそれぞれの石鹸が入った瓶をとユリアがミクに手渡したようだ。
「えっと、確か、このシャンプーって言うのが頭を洗う用の石鹸で、このボディーソープっていうのが身体を洗う用の石鹸なんだっけ?」
「ええ、その認識で概ね間違いありません」
「そっかそっか……それじゃ、どっちから先に使おうかな」
「……私に共有された記憶では、マスターは頭から先に洗われるようです」
「じゃあ、頭から洗う?ユヅル様もそれでいいかな?」
「ああ、頼むよ」
「おっけー!」
ミクの元気の良い返事と共に、きゅぽんっという快音が聞こえてくる。
今、ミクの手によってシャンプーの瓶の蓋が開けられたのだろう。
「わっ、凄くいい匂い……」
どうやら、シャンプーの香りは無事にミクのお気に召してもらえたらしい。
それから少しして、後ろでぬちょぬちょとシャンプーの泡を泡立てている音が聞こえてくる。
その間、ユリアは桶に湯を汲んでくれているようだ。
……正直に言えば、視線をそちらに向けたい。
何せ、ちらっと横を見れば簡単に色々と見えてしまいそうな状況だ。
湯を掬うために屈むその一瞬、ユリアのあれやそれも完全に丸見えだろう。
しかし、そこは紳士的に目を反らしておいた。
いくら好感度が高いとはいえ、ユリアはかなりの恥ずかしがり屋さんのようだからな。
ユリアはクールでありながらも、意外と乙女チックなところもあるという設定にした子だ。
筋も通さずに裸を盗み見たりすれば、せっかく最初から高かった好感度にもヒビが入る可能性が高い。
故に、俺は血涙を呑んで理性という理性を全力で働かせていた。
しかし、それもほんの刹那の事。
湯を掬い終えたユリアが、俺の耳元で囁いてくる。
「それではマスター、地べたで申し訳ありませんが、そのまま目を反らした状態でお座りください」
「ああ」
言われた通りに石床の上に座り込む。
少し硬いが、ミクがしっかりと加工してくれていたおかげで滑らかだ。
座り込んでもそこまで問題はない。
まあ、強いて言うなら、案の定股間のふくらみだけはごまかせそうもないというところか。
一応股間部分を手で隠してはいるが、それでも対して意味はない様に思える。
生理現象なのでどうしようもないが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしかった。
まあ、幸いにもユリアは見ないふりをしてくれているので、今はその厚意に甘えさせてもらおう。
俺の邪念ごと洗い流すように、ユリアが俺の頭に少しずつ湯をかけてくれる。
あったかくて、心地いい。
こうなれば視界も悪くなるし、少しは冷静さも取り戻せてくる。
このままつつがなく二人に頭を洗ってもらうためにも、しばらくは大人しくしておくことにした。
「それじゃあ、ユヅル様。このあわあわを使って、早速頭を洗っていくね」
「ああ、頼む」
シャンプーをしっかりと泡立てて待ってくれていたミクが、ついに俺の濡れた髪に触れる。
中々にたどたどしい手つきだった。
意外と緊張しているのだろうか?
恐る恐る髪を撫で、シャンプーの泡を全体に馴染ませるようにミクの華奢な手が俺の頭上を這っていく。
しかし、これではまだまだシャンプーを頭に塗りたくっただけの状態だ。
もう少し、指に力を込めて洗ってくれても大丈夫なのだが……。
やはり初めてという事もあって、こちらに遠慮しているのだろうか?
俺も俺でそれを正直に伝えていいものかと葛藤していると、そのタイミングで丁度ユリアのフォローが入る。
「ミク様、そのまましっかりと頭皮にまで泡を馴染ませて、汚れを落とすのです。このように――――」
「おお……!」
瞬間、ゾワゾワっとする感覚と共に、しっかりと指圧をかけてゴシゴシと頭を洗われる感触が伝わってきた。
どうやら、ユリアがミクに手本を見せてくれているらしい。
滅茶苦茶上手だった。
「お、おお……」
思わずふやけた声が漏れ出てしまう。
これも面倒見の良いキャラクターに設定したおかげなのだろうか?
人の頭を洗うのが滅茶苦茶うまい。
それこそプロの人に頭皮のマッサージをしてもらっているのではないかと錯覚するほどの絶妙な力加減。
端的に言って、極楽だった。
「ほへぇ……すごい、ユヅル様とっても気持ちよさそう」
「ミク様も練習すればすぐに同じように出来ますよ」
「本当!?」
「ええ、本当です」
口ではしっかりとミクを立てつつも、存外満更でもなさそうな様子のユリア。
またミクに俺の頭を洗う役を返すと、そのままいつでもフォローできるようにと依然として傍に控えてくれていた。
こういったところは、本当に面倒見の良い楚々とした女性だなと心底感心する。
「それでは、ミク様も」
「うん、わかった……えっと、こうかな?このくらい?」
「……そうですね、もう少々力を入れても大丈夫かと思いますが、どうでしょうマスター」
「ああ、もう少し強くしてくれても大丈夫だ」
「ほんと!?それじゃぁ……うんしょっ……!このまま、もう少し力を入れて……」
「おお……」
段々とミクのシャンプーも心地よいくらいの力加減になってきた。
やはり、ミクはミクでかなり物覚えの良い方らしい。
既に、最初の頃のような拙い感じは全くと言っていい程感じなかった。
「……ゴシゴシ、ゴシゴシ。ふふっ、ユヅルさまぁ……気持ちいですかぁ?」
「ああ、めっちゃいい感じだ……」
「あはは、確かに、すっごく気持ちよさそうな声でてるね?」
「そうかな?」
「うんうん、気持ち良かったら、もっと声出していいからね~」
「ああ゛ー!ぎぼぢいいい!」
「あはは、流石にそれはわざとらしすぎるよ~」
俺のふざけた声と、ミクの可憐な笑い声が浴室にこだまする。
それがなんだかバカップルのやりとりみたいで、くすぐったくも充実した気持ちになった。
まさか、俺がリア充の気持ちを当事者として理解できる日が来るとはな。
しかし、それもこれも、すべては驚くほど寛容なミクの人柄のおかげだろう。
俺のくだらないボケにも、純粋な気持ちでくすりと笑ってくれるミクはやはり最高にイイ女だと思う。
まさに、ヲタクに優しいギャルならぬ、ヲタクに優しいハイエルフのお姫様だった。
俺がそんなくだらない事を考えている間にも、ミクのシャンプーの腕は見る見るうちに良くなっていく。
俺の顔も、気付けば自分でもわかるくらいとろんっと蕩け切っていた。
「あはは、これ、なんか楽しいかも」
なんだかんだで、ミクもシャンプーで俺の頭を洗うのにハマってくれたらしい。
気付けば、10分くらいはミクに身も心も委ね切っていただろうか。
丁度良い頃合いで、ユリアから声がかかる。
「ミク様、この辺りで、一度お湯でシャンプーを洗い流しましょう。次はこのリンスを使います」
「リンス?」
「はい、髪のケアに有効な美容品です」
「おお!それ、私も気になってたんだ!早速、ユヅル様に使ってみていい?」
「ああ、頼むよ」
俺が返事を返したのと同時に、バシャーっとユリアが掬った湯でシャンプーを流される。
それをもう何度か繰り返して、とうとうリンスで仕上げという感じのようだ。
「へぇ……リンスの方は、こんなあっさりした感じで良いんだ」
「はい、マスターは私たちほど長髪ではありませんし、あくまでも頭を洗うのはシャンプーの方ですから」
「なるほど……」
「ええ、ですので次はお背中をお流ししましょう」
「うん、私から言い出したことだしね」
「はい、ではこちらのボディーソープをお使いください」
「はーい!」
なんだか微笑ましい感じの会話を後ろ背に聞きながら、俺は相も変わらずじっと地べたに座り込んでいる。
背後では、瓶からそれぞれボディーソープを手に出して、泡立てている音がした。
どうやら今度は、ユリアもミクと一緒に洗ってくれるようだ。
俺はドキドキワクワクしながら二人の納得のいく泡立て具合になるのを待った。
それはもう、時間が永遠にも感じる程の空白の時間。
しかし、不思議と心の中は幸せで満ちていた。
本当に役得な状況だとしみじみ実感するな……。
↓同時連載中
「The Hero's Sweet Brides~学園の女子だけ貞操観念が逆転していくサバイバルクラフトゲームで、俺だけ既に神殺しと畏怖された異世界の救世主~」
https://kakuyomu.jp/works/822139838557577613
※もう一つのリンクはノクターンノベルズの為ここでは割愛。
・作者X
https://x.com/Shuu_Souzuki
作品の執筆状況などをたまに投稿していく予定です。




