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第十八部 memento mori(自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな)

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第十八部 第9話 prima(主役)

 「~ったく!イヤらしいったらナイなぁ」

ウル・ハガクレの両親は特にどうということのない一般人だった。その血筋に軍属者はいない。戦場の只中でエース級だろうと簡単に想像できてしまうような3機に取り囲まれている最中だったとしても、自分がなぜ軍人になったのか、自分の記憶を探ってみてもその理由や動機がわからない。

 気付けば軍の学校に入っていた。もしかしたら戦争と言う時代の中でそれが終わると思うことができず、軍人ならば生きていけると思ったからだったかもしれない。軍人になったからと言って、最前線だけが職場ではないのだから、なんなら誰か高官の秘書辺りにでも成れれば、安全な場所で生きていけるなどと考えたからかもしれない。けれど、戦争という時代の中で誰しもが最初に通る適正試験でパイロットとしての適性を見出された。

 ウルには不思議だった。特に模擬線において、それが1対1だろうが団体戦だろうが、敵にあたる相手がどうしようとしているのかが手に取るよに分かった。パイロットとしての教育が始まって以降、徐々にだったが〝戦術〟に面白さを感じていたことが災いして、相手の戦術を看破することが容易で楽しさを見出すに至った。気が付けば、ウルはパイロットはおろか、様々な分野で才能を見出され、士官学校を主席で卒業していた。

 いつの頃だったのか、ハッキリとは覚えていない。それでも、どこかのタイミングで〝パイロットとして生きていく〟のだということを認識した。戦場で戦うことはコワイことだと〝知って〟はいたが、戦場に実際の恐怖を〝感じる〟ことはなかった。たぶん士官学校を卒業したての頃は、自分が強いのだと酔っていたのだろう。

 周りを取り囲んだ大人たちに言われるがままにpentagram(ペンタグラム)に配属されたとき、そこに集った人たちが強い人たちなのかどうか分からなかった。それは部隊としての何度かの訓練を経ても変わらなかった。数度の出撃で実践を経験しても、やはり戦場に恐怖を感じることはなく、pentagramのみんなが強い人だとは認識しても、それが自分より上だとは思わなかった。

 全てが変わったのはAttis(アティス)との遭遇だった。初めて知る感覚だった。何か得体の知れない巨大なモノに飲み込まれてしまったかのようだった。新兵を装っていたはずの自分が、実のところ紛れもない新兵だったことを思い知らされた。Attisとイザナギの乱舞を目にしたとき、そこには恐怖が確かにあった。

 「強いとは思うけれど、アンタたちはコワくない。私だって三姫の1人なんだ。誰のものかは知らんけど、この物語の主人公にだって成れるんだよ?」

まるでウルの意志に反応するかのように、beauty(ビューティー)&beast(ビースト)のモノアイが光を放った。Mhwのモノアイにそんな機能は無いが、それでも確かに眼光を宿したその目が、赤い光の筋だけを残してその場から消えた。ソレが証明される日は来ないかもしれないが、三姫のMhwは外装だけでなく、内部のいたるところでBDが使われている。もしかしたら、現象の解明がされていない発光現象がその正体だったのかもしれない。

 beauty&beastはMhwなのだから可能と言えば可能ではあるが、予備動作の一切も無く、瞬く間にエイタ・ムラサメとアーサ・クサクォルの機体を両断した。正に一瞬の出来事だった。2人は反応することすらできず、まるで居合の丸太かのように、ただその場で斬られるのを待った。たぶん2人には〝待つ〟という感覚も時間も無かっただろう。2人は死ぬという事実に気付くこともなく死んだ。もしかしたら、それは幸運なコトだったのかもしれない。

 「な・・・んだってぇ・・・そんな速度で・・・どうやって・・・」

ショウ・ビームスの目にはbeauty&beastが消えたように見えた。いくらADaMaS製Mhwだろうと、パイロットが例を見ないほどのNEXTだろうが、そんな速度で斬撃を当てられるとは常識の外のことだ。そもそもパイロットの体がGに耐えられるかという疑問もあるが、よしんばADaMaS製だからGを緩和することも可能だったとしても、気付けば手にしている実刀が振り遅れることも早すぎることもなく、刹那で斬り伏せることができるものだろうか。最初から刀を構えたまま、恐ろしいほどの速度で擦り抜けただけならばできるのかもしれない。速度はbeauty&beastの方がはるかに速いが、以前に実体験したThe(ジ・)kuynbout(クインバウト)が正にそうだ。だが、beauty&beastが姿を消す直前まで、刀はその手に握られていなかった。瞬きする間すら無かったかもしれない刹那で抜刀し、2機を瞬時に斬り伏せた。

 よくよく考えればもう1つ不可解な点がある。エイタもアーサも、ショウを含めて等間隔でbeauty&beastを包囲していた。それほど広いわけではないにしても、その2機の間をどうやって移動したのか、その事実すら認識できていない。ショウを圧倒的な恐怖が襲った。まだ20歳にも成っていない少女が、2人の人間を躊躇うことなく斬り捨てたことにではない。なぜ自分だけが生きているのか?どちらが先だったかも判然しないが、2機目がもしも自分だったとしたなら、自分はすでにこの世には居ないという事実。それはまるで、アニメやマンガかのように、主人公の意志1つで命を絶たれるような、成す術も、抱く感情すらも許されず、唐突に死をもたらす存在。ショウはそういった存在を示す言葉を1つしか知り得ていなかった。

「・・・死神・・・」

「誰がよ!シッケイな・・・ところで、もう引いてくれんかな?残るつもりなら容赦できんけど」

ふと気が付くと、僚機の数が半分ほどに減っている。五体満足という意味で見れば数えるほどしか残っていない。普通に考えればこの局面での勝ち筋は無くなった。いつもなら可能な限り生還者の数を確保しての撤退を考えるところだが、戻る先とて現状は雌雄を決しようというほどの戦禍の只中にある。万事休すと言ったところだろうか。

 「ウルくん!すぐに2人のところへ戻りなさい。向こうで大きな動きがあったようだ」

ふいに聞き覚えのある声が割り込んできた。コールマンだ。どこかで何かの変化があったようだが、果たしてソレが吉と出るか凶と出るかは神のみぞ知る、だ。

「えっ!?あの2人が押されてるの?ソレってありえるん?大丈夫なんだよね?」

「うん、まずい状況ではないんだけれど、ウルくんも言うように、あの2人が()()()()()()相手みたいなんだ。それにね?彼のコトは私に任せてもらいたいってのも・・・大人の都合でね・・・頼むよ」

コールマンの機体$100(ハンドレッド)がこちらを指さしている。その動きに誘導されるようにチラリとこちらを見た死神は、まるで気まぐれだったと言わんばかりにすっと視線をコールマンの方に戻した。統率された部隊こそが個の最強を上回るという持論を跡形も無く消し去ったその存在は、向こうにそうすべき理由があるのだろうが、その死神としての力を目の当たりにしたこちら側からすれば、興味を失った子供がおもちゃをその場に放置するかのように目の前から姿を消した。

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