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第十八部 memento mori(自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな)

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第十八部 第5話 strategy(戦略)

 「アレが反物質か・・・エゲつないな。本陣の状況は?」

戦争で前線に立って戦う兵士は、自らの命を懸けて信じる正義を通す道に成ろうとする。ショウ・ビームスにとってはそれが兵士としての在り方だ。ショウ自身は決してStarGazer(スターゲイザー)を正義としているワケでなく、彼にとっての正義は仲間を生還させることにある。とは言ってもこれまでに失った命も少なくはない。目の前で仲間の命が誰か他人に奪われる様を目にしてきたが、今回のソレはそれまでとは比べ物にならないほど、邪悪に感じられた。

 「かなりの数のMhwが消失したようです・・・敵も味方も、ですが」

「そうか・・・」

知っている限りなら、アレを撃てるのはA2だけのはずだ。だが何故だろう?どうにも彼らが撃ったと信じられない自分が居る。彼らを代表した女性は「撃つ」と確かに言ったが、その言葉が脅しだと確信出来ていた。だが、目の前を反物質が通過して行ったのも、後方で大きな被害を生み出されたのも事実だ。事実を見ればA2という組織は極悪非道なのだろうが、そうだと断定するには1つ気掛かりがある。この戦場から姿を消したMhwの一団だ。

「どっちにしても、確信を得るにはアレに取りつかないとダメか・・・全機、前へ出るぞ。ただし、あの黄色のヤツは俺と2番、3番でヤる。それと、12、13は周囲の状況を逐一全機へ知らせろ。どの部隊の動きも見逃すなよ?・・・エイタ、アーサ、ついて来い」

 反物質のおかげと言うべきだろうか?もしもソレがなければ、おそらくあの3機と奥で構えているヤツにそれなりの痛手を受けていただろう。反物質のおかげで相手の足も止まったのは幸いだ。確認はまだだが、前の3機のうち1つのパイロットにはフォレスタ・コールマンの色が見える。そして得ている情報からすれば、あの黄色のMhwに乗っているのは、かつてコールマンが直接指揮した部隊、pentagram(ペンタグラム)の誰かだろう。確かあの部隊には1人だけ新人が居たはずだ。当時は「ナゼ?」と不思議に思ったものだが、その動きもさることながら、見た目で特異と分かるMhwを操る彼女は、ナルホドNEXT(ネクスト)なのだろう。そうであれば合点がいくというモノだし、いくらFallen’s(フォールンズ)とは言え分が悪いにも程がある。

「コールマン・・・アンタの教えだ。格上に連携されれば勝は無い。分断して勝てるトコロから勝負する」

一瞬、互いに相手を確認し合えば場が収まるかもしれないと過ったが、それは自分にも少なからずの影響があるだろうと考えを振り払った。

 「いいか?2人とも。アレは強い。俺よりも、俺たちよりも、だ。だが、仲間を信じろ。あの黄色を俺たちが抑えられれば、アレに勝つ道筋ができる。死んでも死ぬなよ?」

「ムチャ言わんでくださいよ、隊長・・・」

「そうですよ・・・死んだら死にますって」

「ホラ、ユルんでるヒマ、ねぇぞ?・・・来るっ!」

ここまでの立ち回りで、両翼の2機は格闘寄りの機体だろう。機体に青いバラが描かれている方が、名前からしてADaMaS(アダマス)の女社長か。そうなると、もう1機のeS(エス)っぽい機体がコールマンだろう。機体からは格闘臭があるが、コールマン自身はオールラウンダーだ。見た限りで射撃系の兵装は無いが、ADaMaS製Mhwのことだ、どこかに潜んでいてもおかしくはない。

 分からないのは先頭で突っ込んでくる摩訶不思議なMhwだ。何でできているのかさっぱり見当もつかないが、全体的に黄色をまとっているその装甲が透けて見える。詳細が分からないとは言え、あのコールマンを差し置いてのエース機なのだろうから、侮るなどともっての外だ。

 隙のない位置取りに見えた3機だったが、黄色の速度が一段階上がったようだ。わずかに広がった間合いに楔を打ち込むかのような銃弾が割って入った。

「ウチの連中、相変わらずイイ仕事するねぇ。2人とも、開いた隙間を逃すなよ?背中は仲間を信頼して預けろ」

2人ともFallen’sで名の通ったパイロットだ。同じ方向に向かって進む3機の、それでも開いた空間にスルリと入り込んだ。相対速度を合わせながら移動する2つの間に自身を滑り込ませるのは言うほどラクな作業じゃない。この場合、それぞれコールマンや女社長の機体に背中を晒すことになるのだが、連携を断ち切られ、間に入られた瞬間の身構えが仲間からの援護を受ける時間を稼ぎ出す。Mhwという巨体をもってして〝秒〟の世界の攻防は、熟練パイロットにとって重要な要素の1つとなる。一瞬の判断ミスがそのまま自らの生死に直結することもままある。

 「コレだからFallen’sは辞められねぇ」

「だな・・・さぁ!囲んだぜ?」

エイタとアーサが割り込んだ瞬間、ほんの一瞬、ローズとコールマンはその場に止まった。まるでそうすることが分かっていたかのように(実際、そうすることが前提だったのだろうが)間髪入れずにビームがガトリングかのように2人を襲った。もしもスロットルを緩めずにbeauty(ビューティー)beauty(ビースト)に追従していたとしたなら、ローズとコールマンなら一瞬のすれ違いでエイタとアーサを撃墜していたやもしれない。だが現実にそうなることは無く、被弾を回避するためにとった行動がさらにウルとの距離を開いた。

 「ローズ!コッチも取りつかれた!スマンが十分な援護はできそうにないな・・・ナントカなりそうか?」

チラリとMahal(マハル)の方を見やると、なるほど確かに、ナナクルにビームバズーカを使わせる時間を一瞬たりとも与えない数のビームが、その後方の空間に消えていく。ナナクルも被弾するようなコトこそないものの、応戦に手一杯らしい。

「そうみたいね・・・キレイに分断されたわ。ココに来て数的不利が実力を伴ったみたいね・・・フォレスタ?」

ビームウィップを巧みに操るその姿は、ローズがソレをやっていたなど聞いたことも無いものの、新体操の選手のようですらある。射撃で誘導されたローズは今、完全に孤立した状態で3機のMhwに取り囲まれていた。

 「ハマりましたね・・・前後左右・・・取り囲むように一斉射を喰らえば、コチラは逃げ場を失う」

ビームがコールマンの進もうとする方向を阻む。一旦その場に釘付けとなった$100(ハンドレッド)は、さらに悪いことに徐々にその包囲を狭められつつあった。

 コールマンの$100を包囲するMhwの数は5機を数える。さすがに各個撃破の結末が垣間見えて仕方ない。まるでその様子が雲のように浮かんでいるとでも言うように、ローズは首を振ることでその光景を霧散させた。自分にまとわりついているMhwは3機だけだ。機動力で一気に振り切りたいローズは、手にしたウィップを巧みに操り、包囲の隙間を作ろうと必死だ。

「イヤラシイわね・・・付かず離れずでウマい距離を保たれてる・・・フォレスタ!もう少し堪えててよね」

それは通信したというよりも、自身の願いが口を突いて出たという方が正しいようだ。当然のように〝焦り〟がローズのすぐ側で踊っているが、かろうじてその手を取って一緒に踊ることは避けられている。

 「チっ・・・ガトバズを撃ち尽くしたのが悔やまれるな・・・今更ながら、時間をかけてこの状況に追い込まれた感がつえぇ。ウル嬢の方はどうなってやがる?」

遠目だったからこそ良く分かっているが、ウルを取り囲んだ3機がFallen’sの中でも飛びぬけた存在だった。だからこそ心配は胸中を支配するが、現実はその心配を解消させる行動が取れるような状況にない。おそらくMhw単体の戦力としてはA2が勝っているはずでも、戦略や連携がその差を覆せると身をもって知らされるようだ。

「くそっ・・・Mhwの性能の違いが、戦力の決定的差ではないってコトかよ・・・」

この空域にあるMhwにあって、おそらくFallen’sは最もロートルなMhwで構成された部隊だ。だがソレが、Fallen’sが弱いということにはならないらしい。

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