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第十八部 memento mori(自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな)

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第十八部 第1話 resistance(抵抗)

 「ベル、これから一度アキラを連れて戻る。他はどうなってる?」

Belial(ベリアル)撃破はすでに各部隊に知らされたことだろう。他と別れてからそれほど時間が経ってはいないが、やはり仲間の状況は気になるところだ。おそらく三姫は無事だろうが、Orion(オリオン)ADaMaS(アダマス)が向かった先、特にADaMaSの方は気掛かりだ。

「全機生きてますよ。三姫の方は交戦もしてないもの。ただ・・・こっちは暗礁宙域から抜けるそうよ。どうも後ろがきな臭いみたい・・・セシルさんが慌ててたわ」

ベルルーイが「後ろ」と言った方向には何もない。だが、その方向にBABEL(バベル)が隠れているだろうと予測されている。正直なところ、隠れるも何も、それが叶いそうな宙域は無いのだが、相手があのミリアークとなれば、こちらの予想もしない隠れ方をしていても不思議はない。

 「分かった。とりあえずアキラを連れて帰るから、それだけ収容してくれ。俺はそのまま戻って手薄なところの援護に向かう」

「了解」

そのまま放置しておくのも勿体ないと、真っ二つにされたイザナギを拾い、アキラはRe:D(レッド)のコクピットへ乗り移った。

「それにしてもあの状態で、俺が生きてるってよく分かったな」

「何言ってんだよ?アキラもこの宙域見て気付いてたろ?」

「まぁ・・・な。この宙域には爆散してねぇのが多すぎだからな・・・たぶん、反物質ってのの廉価版だったからどうけどなぁ」

宙域に漂う残骸に目を向ければ、様々に分断されたMhwの残骸がそこかしこにある。普通ならその残骸は、断面から爆散することがほとんどのはずで、こうも形を残した残骸が漂うことはない。この宙域に到着してすぐにそれを目にした2人・・・いや、ベルルーイを入れて3人は、Belialの持つ武器の特性を理解していたようだ。そのおかげか、イザナギの分断された箇所がコクピットでなかったことで、アキラの生存を確信できていたらしい。

「格闘機乗りならではかもしれんがな・・・ま、とりあえず戻ろうか」

2人は一先ずその空域を離脱し、Re:Dはknee-Socks(ニーソックス)へと進路を定めた。視線を向けた先にあるそのknee-Socks内部では、少々慌ただしい状況が訪れていた。


 「ミシェルさん・・・私、ちょっとプライドが傷つきました・・・ヤバいですよ。何かが反物質精製コロニーの管制システムに入り込んで来ています」

そう言うセシルは手元のコンソールから顔を上げることもなく、その手がせわしなく動いていることを知らせる「カタカタ」という音が際限なく響いている。もしもセシルの能力を知らない者がその音を聞けば、本当に意図したキーを押せているのだろうかと疑いたくなるほどの速度だ。

「・・・そうみたいね・・・セシル、ソレが画面の反射でないのだとしたら、相当に顔が真っ青よ?」

実際には画面の反射も手伝っているのだろうが、それを差し引いても誰の目にも分かるほどに青白くなっている。よく見ればせわしなく動いているのは手先だけでなく、その眼球も画面の中を追っているのだろう、激しい動きを見せている。

「それでどうなの?完全に乗っ取られてはいないのでしょうけど・・・セシル?アナタの様子からすれば、ソレってかなりヤバい状態なのでしょう?」

「今必死に抵抗中です。けど・・・コレは時間の問題ですね・・・そうでもなければ私のプライドは傷つきませんよ・・・」

ミシェルの見ているセシルの額には、数滴の汗が滲んでいる。正直なところ、セシルは全人類の中でも屈指のプログラマーだ。おそらく彼女以外誰であっても、ウテナの開発するMhwの制御プログラムをウテナの満足するカタチで構築することは不可能だろう。その彼女がセキュリティも含めて開発した(それも驚くべき短時間で)反物質精製コロニー制御プログラムに侵入者が居るとセシルは言う。俄かに信じられない話だが、セシルの様子を見ればそれが事実だと分かる。

 「時間の問題って・・・セシルのソレを上回る速度でセキュリティを突破できる人間が居るってことよね?そんなコト、本当に可能なの?」

可能も何も、現実に突破されているのだと分かっていても、その疑問は口を割って出てきてしまった。ミリアークならばあるいはという考えも有りはするが、セシルの実力を知っているからこそ、その可能性は低いと言わざるを得ない。

「この相手・・・人間じゃないかもしれません。でもだからってAIの類でもない・・・すいませんが、マギーとアリスを借ります!できる限り情報を引き出しますから、ソチラの対処、お願いしますね!・・・マギー!アリス!2人掛かりでいいから発信源を洗って!いいこと?手強いわよ?」

「りょ!」

「おけー!マギー?内側ヨロー。あーしは外調べるよー・・・ミシェル姐、後おねがーい」

それまでの役割を瞬間的に放り出したかのように、2人揃ってコンソールの画面を切り替えた。コレに慌てたのはミシェルだ。

「ちょっと!もぅ・・・」

アリスが物理的に放り投げたヘッドセットのマイク部分を慌てて掴んだミシェルは、ソレを装着することもなく、マイクを口元に近付けた。

 「全機聞こえてる?ちょっとコッチは今忙しいから、ソッチは任せるわ。ベルとオペはそのままだから、情報は2人からもらってね」

Mhwに乗り前線に居る誰かからの反応を確認することもなく、ミシェルもまた、自らの言いたいことだけを言ってヘッドセットを放り投げた。すでに2人の手を経由したそのヘッドセットは、遂に誰に使われることもなくブリッジの空中を漂っている。アリスの肘掛辺りとつながっているコードがさながら命綱のようだ。

 ミシェルはスッと自身の体をブリッジの前方へ走らせ、knee-Socksの舵を取っているミハエルが座るシートを目指した。目的の場所へ到達するよりもわずかに速く手を伸ばし、背もたれの角に左手を添えたミシェルはグイと自身の身体の方をシートへ引き寄せミハエルに顔を近付けた。気配でミシェルを察知していたミハエルではあったが、今の状況で視線を移す気にはなれないらしく、視線は前方へ向けたままだ。そんなミハエルの顔を挟むように右手を回り込ませ、他の2つの艦と常時通信しているミハエルのヘッドセットのマイク部分だけを自分の方へと向けた。ミハエルはその視界にチラつくミシェルの手が邪魔だと言わんばかりに、顔をわずかにずらしていた。

「全艦、暗礁宙域を出るわよ!少々艦に傷がついても構わないわ。目標到達ポイントは今Re:Dが居る場所の下よ。急ぎなさい!」

Knee-Socksを先頭に、knee-high(ニーハイ)thigh-high(サイハイ)の二隻が後に連なって移動を開始した。艦に甚大な被害が出ないよう、比較的デブリの薄いルートを選び、それでも浮遊している小さなデブリを船体で押しのけるように進む。

 Knee-Socksのブリッジ内には、ある種の緊迫した静寂が訪れていた。そこで響く音と言えば、3人が高速(と言っても、やはりセシルのソレは群を抜いて速い)でキーを叩く音だけだ。ふと見れば、マギーとアリスの表情が〝集中〟を物語っている。2人にしては珍しく、作業中でも無言だ。正直なところ、「内側」だとか「外」だとか、何を言っていたのかさっぱり分からないのだが、その内容を聞いていたであろうセシルが何も言わないところを見れば、その何だか分からないやり取りで間違っていないと安心できる。

 2人はもともと〝分析〟や〝解析〟に秀でた才を有していた。ADaMaSに来た最初の頃、才能の片鱗は見えていた。それでもADaMaSのメンバーが優秀すぎるのだろう、「まだまだこれからね」と思っていた2人がどうにも頼もしく感じられた。

 「う~ん・・・ねぇマギー?コレってさ、やっぱ居るよね?」

言葉だけ聞いていてもやはりさっぱり分からない。

「ダヨネー。けど、なーんで居ないかなー?・・・うん、セシルねぇ、お探しの相手はココに居るよー」

頼もしいと思ったのは気のせいだったろうか?「居る」と言ったそばから「居ない」と言ったかと思えば、「ココに居る」と結論付けている。それでも、正面のモニターに映し出されている空域に、ブレることなくハッキリとポイントを示して見せた。その空域には目視で見ても何もない。熱源もなければシグナルも無い。それでも、2人は敵がソコに居ると断言した。

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