54。メルティと対峙
【重要なお知らせ】一章までの訂正を完了しました。
なおどれも大きな順序変更はありませんのでご安心を。
ただ一応下に大事な変更点を書いておきます。
・キツネの寮の部屋で見たものを追加(変更済み)
・ツェドリカが少年に扮するシーン、別シーンに入れ替え(後日変更)
・校長先生がメルティを迎えるシーン、態度を厳しめに(後日変更)
・リョナたんの罵倒、変更(後日変更)
・マルコーがメルティに殴り掛かるシーン、変更(後日変更)
変更する理由は後書きに ↓↓↓
ついに、この時がやってきた。
正午、数分前。
百を超えるグループが、無言でひしめき合う。
いつもの談笑も失せ、湧き立って感じるのは、ただ一点の闘志のみーーー。
「メルティがんばろうニャ」
こそっと、シャオワンが横から声をかけてくる。
「うん、がんばろ」
「おい、緊張感くらい持て」
「まあまあ、ピリピリする必要はないさ。自然体がいい。そちらのほうが、『作戦』も上手くいく」
見晴らしのいい草原。
丈の高い草むらに身を潜める面々。
あたりに、人の気配は感じない。
ーーージジッ……ーーー
「あ、放送」
「シッ、静かにしろ」
ーーー『……こちら放送室。こちら放送室。いよいよ、課外実習の時間が迫って参りました』
空気が、ヒリついている。
ーーー『鐘が鳴ってからちょうど一日、エリア内に隠されたモンスターの核を収集してください。数や質、そして希少度……その全てが、ポイントとして評価されます』
ーーー『エリアは、草原、密林、廃校舎、湖畔ーーー学園の校舎を除く全域です』
ーーー『……なお低級モンスターの出現が予想されます。くれぐれも……』
ーーー『……健闘を祈ります』
ーーー『開始三秒前』
メンバー、確認。
マージン・レーヴェン。
ーーー『三』
スキマ・ハリコ。
ーーー『二』
マルコー・シロガネル。
ーーー『一』
藍 小旺。
ーーーーー『……ゼロ』
メルティ・イノセント。
……鐘は、鳴った。
ーーー・ーーー・ーーー
草原。
見晴しのいい場所にいる「獲物」は、すぐに見つかる。
「君ら、行くぞ。話によれば、彼女はあの大樹のあたりにいる」
「彼女って……イノセント嬢のことですよね。それよりまずは核を探すのが優先でしょう、先輩」
「大丈夫だ。そのために三・三に分かれたんだ。それに俺の直感が、彼女を放っておくのは危険だと言っている」
「放っておかなくても危険っすよ」
じわり、じわり。
できるだけ気づかれないようにして、前進していく。
そして。一気にーーー。
「わっ!?」
「いたっ」
「……! どうした!?」
突然つまずく後輩らに、リーダーらしき男子が駆け寄る。
あたりを見渡す。
ーーー特に攻撃を仕掛けてきている様子はない。
もしやただ単に、二人とも転けただけだろうか。
「いきなりなんかに引っかかったんすよ」
「俺もそうです、先輩」
「引っかかった……?」
草を引き抜き、軽く土を落としてみる。
「「「あっ!!」」」
目を輝かせる三人。
なんと、核らしきものを見つけたのだ。
怪我の功名と呼ぶべきだろうか。
しかしそれを掴みあげる暇もなく、何者かによって奪われてしまう。
それは、一本の手。
「ひっ……!?」
……ではなく。
「どうも、ありがとう」
黒髪、不思議なコートを着こなす少女。
そんな人物は、一人しか考えられない。
「メルティ……っ!?」
土から染み出すようにして現れる彼女は、悠々と両手を構えた。
染み出る黒いモヤは、危機感への本能を引き立てる。
「容赦なく、いくね」
「まずいっ!!」
流石はリーダー。
すぐさまメルティの危険性を判断して、後輩二人の腕を引っ張っては後退を試みる。
しかし、振りきれない。それどころか、ズンズンと近づいてくる。
(やはり、応戦するべきか……!!)
二人を下がらせ、リーダーは長剣を構える。
ジリッ……。
対峙するのは、メルティ・イノセント。
剣術科四年。構え熟れたはずの長剣が、言うことを聞かない。
なんとか金縛りのような緊張感から脱出し、口角をつり上げた。
「できれば、逢いたくなかったんだが……奪わせてもらうぞ!」
「ん」
先攻はリーダーの男子。
無駄のない動きで間合いを詰める。
しかしメルティはまるで気にしていないかのように棒立ちである。
「……っ、怪我しても知らないぞ」
さすがに刃先を当てることはできず、払うようにして峰を当てる。
「また……!?」
溶けるようにして、メルティが視界から消える。
そして再び現われた頃にはすでに、間合いの外にいた。
ーーーその手に握りしめられているのは、彼が使っていた金属縁の剣。。
「あっ、俺の……っ!?」
「危ないから、先生に返しておくね」
「まっ、待て……!」
しかし追いつくよりも早く、後輩二人に呼び止められた。
戦意喪失した顔で、下を向いている。
「き、君たちの武器はどこへ……?」
すると二人は遠慮がちに先輩の顔を確認しながら、打ち明けた。
気づけば腰から消えていたーーーと。
ーーー・ーーー・ーーー
ガルー・チェイカー。
剣術科の教師として、それなり長く勤めてきた男である。
その全身に見える夥しい傷跡は彼の歩んできた道という道を、如実にそして生々しく表していた。
しかし唯一、暴れる火山のような性格だけはどうしても変えることができなかった。
ーーー彼がこの仕事以外に、身を置く場所がなくなった原因でもあった。
暴力。
圧倒的な、力量。
それ以上に、自分に何ができるのだろうか。
きっと次またカッとなったら、同じように怒鳴り散らかすはずだ。
それで弱っちぃ奴で、男だったら、一発殴り飛ばす。
……女ぁ?
女の筋力量が、男に勝るはずなどない。
容赦などしない。点数が俺の基準を下回れば、落とすだけだ。
男女拘らず、話はそこからだ。
……これは、ガルーが幼年の頃に残していた、唯一の記憶でもあった。
「……その結果が、あの有様か」
ガルーは大木の幹に背中を預け、自分を嘲笑するように呟いた。
ーーーメルティ・イノセントの途中編入の日。
実技試験のうち、武術への適正を見ることをガルーは任せられた。
あの堅物で、ルール偏重だった校長が、「特待生」を招き入れるだと?
よほどの鬼才か、あるいは魔王か、はたまた勇者か。
しかし実際に見に行ってみればモヤシが一本(※この世界のモヤシは地球産よりも細長い、ダイエット食だよ)。
話を交わしてみればもっとヒドイ。
気迫も、強さも、そして強者には備わっている魔力のオーラすら見当たらない。
がっかりだった。
心の中で、ああ、またかと嘆いた。
「特待生」。
この学園が始まって以来、長いことお世話になったこの制度。
先生の間での別名、「ロイヤル席」。
特に能も学もないが、高い地位を持つ後ろ盾に押され、半ば無理やりに学園に入れさせられた「お坊ちゃま」「お嬢ちゃま」用の席である。
外向きの聞こえがいいだけの看板であった。
……というのも、本当に能力がある文字どおりの「特待生」など、とっくに入学試験を終えているからだ。
ガルーは心頭怒りを覚えた。
あの校長もついにイカレたか、と。
貴族の意見ばかりにつられ、有能な平民の頭は叩き。
もはや王立学園などではなく、貴族学園ではないか。
ーーーそして、ガルーはその私的な恨みを燃やし尽くす勢いで、その「特待生とやら」に攻撃を仕掛けた。
今までの、「上り詰められない」もどかしさを全て詰めて。
そして、惨敗した。
気づけば、診療室にいた。
ドクターから、一歩間違えればで首から下が不随になっていたことを告げられた。
気絶するが、命までは奪わない。
できるだけ短く、恥をかかせないレベルで。
誰も言ってこないが、あの散々馬鹿にしてしまった少女に、自分はきっと手心を加えられていたのだろう。
ーーーそんなあのときの自分を殴ってやりたくなる。
「ハハっ、……」
「せんせー」
「うおっ……!? びっくりした。なんだ、……メルティか。どうした」
今回の課外実習では、自前の武器使用が許されている。
身を滅ぼすような危険物は、事前にチェックを受けて回収してある。
しかし、物は使い方だ。
そこで、人道的でない悪質な行為を間引くために、各箇所に教師を配置しているのである。
草むらからひょいと頭を出すメルティ。
その両手には、目を見開くほどの量の武器が氷漬けになって握られていた。
(こ、これがメルティ・イノセントの武器か? 些か多すぎないか?……いやまて、あの剣の紋章の西のあの家のものだ。……もしかして、これは全部奪ってきたものなのか!?)
(それになんだこの氷は。若干瘴気が立っているぞ)
(いや、違う。あの氷は普通ではない。鎖みたいな模様……まるで武器を食らっているみたいだーーー)
奇妙すぎる情景に、がルーは声がうまく出なかった。
言いたいことが多すぎて、ようやく浮かんだ一言が「……大丈夫か?」であった。
「……? それよりも、これ」
メルティは、その武器たちをガルーへと差し出した。
「……?」
「ん」
「俺が、受け取るのか」
「うん。持っておいて。名前シール、貼ってあるから。来たら返してあげて。」
「???」
訳もわからず引き渡され、ガルーはその場で棒立ちになった。
「ばいばい」
「少し待て」
「?」
「一応ーーーその行動の理由を教えてくれまいか」
ガルーは知りたかったのだ。
この、闇夜のような少女の、覗けぬ心の中を。
しかしメルティの答えは案外、単純明快なものだった。
「……『作戦』に、従っただけ」
「……評価に入れよう。だから良ければ、その作戦を教えてくれまいか。当然、生徒らには言外せぬ」
「わからない」
「はぁ?」
「作戦、わからない」
当たり前のように、メルティは言い切った。
それから、続けた。
「『メルティは好きなだけ暴れて、混乱をもたらして』ーーー……その言葉に、わたしは従っているだけ」
「な……っ」
ガルーは一瞬、目の前の少女が歪んで見えた。
その眼には、何が見えているのか。
生き物は、見えているのか。
感情は、見えているのか。
目の前のコレはもはや、生物ではない。
ーーー超常現象のような……ナニカ。
そんな気がした。
ソレはやがて輪郭をなくし、土の中へと溶けていった。
黄昏は近い。
ついに、スタート。相手からするとメルティはかなーり怖いかも。
ガルー先生実は前に出てきています。41話です。
【変更を加える理由】
もしかしたら、読者様の中で「そんくらいどーでもいいから先進め」と思う方もいらっしゃると思います。ですが、自分で最初のころの文章を見直して、読者様はあんな読みにくいことこの上ない中でも一生懸命読んで待ってくれているんだ、うれしいなぁ、と思ったんです。
すると生まれるのは、せっかく読んでくださっているのなら、もっといいものを見せたい、という気持ち。読者の皆さまの「がんばれびば!先生」が、ちゃんと聞こえたから。
だから、試行錯誤を繰り返そうかと思っています。
私の世界に、色がつくまで。
私の世界に、音がつくまで。
「まだ変更しやがって」と思われた方。大丈夫です。流れは変わらないので安心してください。
引き続き、メルティちゃんたちをよろしくお願いいたします。
びば!
次回更新は9/22(日)。お楽しみに。




