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スノードロップな君が読む物語 ~Record the change of the world~  作者: フリーライダー
プロローグ
7/84

5.編纂の書と旅する理由


宿屋の部屋でハチクを寝かした穂波ほなみは、

光を放つ本のページの上で筆を走らせていた。

特に考えている様子もなく、

スラスラと文字を書き連ねてゆく。



******



あの日。

幼い頃に穂波が、家の蔵からこの『編纂の書』と

『筆』を見つけた時から全ては始まった。

あの黄金竹林でハチクと出会い、

この本を試しに開いてみた時、

穂波は直感的に知ったのだ。


世界の変革の物語を記録する。

それが、この本を手にした自分の役目だということ。


そして、もう一つ。

この本を使った世界編纂の際の禁忌きんき


・世界のモノを大きく壊してはならない

・世界の人を殺してはいけない。


これらを犯そうとすると、

編纂の書からの警告なのか、頭痛が穂波を襲う。


もし破れば、その時は『本を手にしてから』の

穂波の存在が消滅する。

つまり、全てなかった事になるらしい。


最初は戸惑ったが穂波だったが、

偶然なのか運命なのか。あの黄金竹林で、

同じ異能的な力を持つハチクと出会った。

ハチクは困惑する穂波を見兼ねて

優しくしてくれた。

そして今に至るというわけだ。


*******


穂波はあっという間に空白だったページを文字で

埋め尽くすと、自分で書いた文章を読み始める。

記した本人がそれを読むのは見直しではなく、

編纂の書と筆が穂波に記させた文章だからだ。

穂波は今初めて、この世界のページに目を通す。



□編纂の書

*****************



『 闇の中だけが暗いわけではない。

あまりにも強くまばゆい光源は、

モノを明るく照らす一方で、

照らしたモノの背後に影を落とす』


これは、この世界の魔王が人間界に

20回目の宣戦布告をした年の話。


世界は魔族による侵略と一時の平穏を

繰り返していた。

最初の勇者が最初の魔王を倒した時、

悪夢は終わった。皆がそう思った。


だが暫くして、また新たな魔王が現れ、

魔族の侵略が始まる。

それを新たな勇者が止める。

そんなことの繰り返しが、

もう300年続いていた。


選ばれし『勇者』は

精霊の加護を受け、若くして数人の従者を

引き連れて魔王討伐の旅に出る。


それがこの世界の習わし。

人類を守る唯一無二の存在。

邪悪を打ち払い、

世界の困難に立ち向かえる『英雄』


だが、


そんな勇者に対する世界の絶大な尊敬と信頼が、


■皮肉なことに、勇者に魔王討伐の全て

を一任するべきという『イデオロギー』を

無意識の内に生み出していた


その証拠に無関心という訳ではないが、

明らかに人々の危機感、当事者意識は欠如していたのだ。


*****************



穂波

(・・・なるほど。やっぱりあの勇者さんは

世界を救えてしまうぐらいの強いんだ...

だから、みんなは不安や恐怖を感じずに、

過ごせているんですね)


穂波は今日見聞きしてきた街の人々の様子や発言に

納得がいった。


そして、ここから先の空白のページは

穂波自身がこの世界を″観て″聞いて″生きて″

感じた事を記さねばならない。


穂波

(書くにしても、もっとこの世界の色んな事を

見たり知ったりしないとだから、

今日はもう寝よう)


ゴトッ


穂波は作業を終えると、

ハチクの隣りのベットに横になる。


穂波

(・・・・・何か寒い~・・・・・・そうだ)


穂波はベッドを出てて、

両腕をさすりながらハチクのベッドへ向かい、

その中へと潜り込んだ。



ごそごそ



穂波

「ふーっ・・・( ˘ω˘ ) スヤァ…」


こうして2人の1日目の冒険は終わった。



一方その頃、

□1階の飲み屋では、


アクト

「えっ!彼女、お酒が飲める歳なんですか!」



アクトがハンター達の飲みに付き合っていた。



白髪のハンソン

「ああ、ハチクさんは背の高いお嬢ちゃんの

姉貴分なんだと。

いやまぁ確かに落ち着いてて、

貫禄があるなとは思ったがなぁ~」


長髪口髭のウィリエ

「そんで普通に食事してたんだが、

誰かが誘っちまったんだよ。

『なら1杯どうだ?』って」


酔っ払いマティス

「ウップ・・・パーティの始まりってわけだ」


長髪口髭のウィリエ

「彼女は遠慮したんだ。

だが、ボリスやレリスのバカがしつこくてな。

終いには彼女の事を疑い出したもんだから

俺が止めようとしたら、彼女は勇ましく傍に

あったボトルを飲み干しちまったんだ」


アクト

「あらら」


酔っ払いマティス

「しかも俺のとっておきのをだぞぉ!!」


白髪のハンソン

「あとの成り行きは・・・想像できるだろ。

あーー、背中イてっ」


アクト

「でも小柄であんなに強いなんて、

やっぱりただ者じゃないですね」


弓使いレリス

「それをあんな簡単に組み伏せちまう

勇者も流石だぜ」


白髪のウィリエ

「魔物だけでなく女性の扱いも上手とは、

やっぱり勇者がいる限り、この世界は安泰だな!!」


弓使いレリス

「違いねぇ、なあ勇者様!!」


アクト

「・・・そうだといいんですがね。

アハハハ・・・」


勇者アクトは笑って見せたが、

本心では複雑な気持ちだった。


(・・・・本当に勇者が存在するだけで

世界が平和になるなら、迷いも不安も・・・

全部我慢して、受入れられるのにな・・・)


アクトは充分、

自分自身の強さを自覚していた。

また、自分が果たすべき宿命も。


ただ、自分が本当に世界を救う英雄に

相応しいのかという不安は拭いきれていなかった。

それでも、明日から共に旅する『仲間達』の

存在が彼の支えだった。

彼らが一緒にいれば、この先どんな試練でも

乗り越えられると。




しかし


彼らが冒険を通して成長し、

力を付けていくのを待たずして、


冷酷なる魔の手は、静かに人間界に忍び寄っていた。

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