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スノードロップな君が読む物語 ~Record the change of the world~  作者: フリーライダー
変 揺さぶられる心
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57.退く勇気

57.退(しりぞ)く勇気


□ロービン野原では


魔王軍はリノアが仕掛けた無数の

魔法陣の仕掛けに踊らされていた。


《ボガァーーーン!!》


《ギギギギィィーーーー!!》


《ブォォォォッ!!ボゴォォォーン!!》


爆音響き渡り、草や土が吹き散る野原。

狼狽え、逃げ惑うゴブリン。

せめてもの抵抗なのかオーガは棍棒で、

トロールは手足でひたすら地面を叩く。


翻弄されているのは指揮官も例外ではない。


アームド・シュラム

(ジーー)


鎖で繋がれたシュラムの鉄球がフワフワと

風船のように宙に浮かび、


《カタカタカタカタ☆》

《カチカチカチカチ☆》


ヴォルフは小刻みに震えて開閉を

繰り返す義手の右手と鋼の顎に

怒り暴れ狂う。


ギア・ヴォルフ

「ミ・ミ・ミデュデュラカッカッカ!!!

ナッ!ナントカッカッ!シロォォォォ!!!」



ミデュラ

「言われなくてもやってんのよ!!

・・・本当にふざけた事してくれるわ。

おかげで無駄に深読みして手間取ったけど...」


ミデュラの腕のタトゥーが紫色に発光すると、

地面に拳を突き立てて呪文を叫ぶ。


ミデュラ

「全部まとめてぶっ壊しちまえば

いいだけのことだわ!!

アースッ・クェイクウェェェェブ!!!」



((《ブワァァァァァァァァァァァァ》))


ゴブリン トロール

「ウヌッ!?」 「ノォ?ヌオォ?」


地面が海面の様に不自然に波打ち、

野原に立つ者は順々に押し上げられて

バランスを崩される。


アクト

「わぁっ!?

こ、これもブックスのトラップなのかい?」


リノア

「いや、こんな凄いのはないよ!

きっとあの女魔族の魔法だ!!

今ので、土の中のトラップは駄目にされるかもしれない...」


フォロア

「アイツ本当に厄介ね。

まだ混乱してるうちにこっちも動かないと!」


アクト

「・・・僕も戦うよ」


頼もしくも危なげな申し出に、

仲間達は顔を見合わせる。


バーグ

「やれるか?」


アクト

「ああ、いつまでも逃げてちゃ...

奴らも『ジェネラム』も倒せない」


リノア

「!」


こんな状況になっても、アクトは

敵軍を何とかしなければと使命感を

背負い込んでいるようだ。

リノアはまず彼らに知らせなければ

ならない大事な事を思い出す。


リノア

「いや、無理して倒す必要はない!

僕は単なる時間稼ぎで、オラコールから

援軍が来てくれるんだ!」


フォロア イノス

「・・・」 「っ!!」


信じられないといった反応だった。

ところが、フォロアはすぐ前に向き直り、

イノスは俯いて難しい顔で黙り込む。

手放しで喜ぶとまでいかなくても、

多少の喜びや安堵を現してもいいだろうに。

唯一予想通りの反応を見せたのはバーグだけだった。


バーグ

「おいマジかよ!!それなら話は早いぜ!!

みんなあと少しの辛抱だ!

全員で敵を蹴散して城の方に撤退すんぞーー!!」


バーグは防御結界から勝手に飛び出すと、

すぐそばで立ち上がろうとする

四つん這いのオークの胴体を、


ドカッ!!


「「ヴガァァッ!!」」


蹴り飛ばし、走りざまに

まだ戸惑っている魔族達を蹴散らしていく。


フォロア

「あんっのバカっ!!」


アクト

「いくらバーグでも1人にするのは

危険だ。固まって動かないと」


イノス

「仕方ありません。

とりあえずついて行きましょう!」



リノア

「ちょっ、待ってーーー!」



ーーーーーーーーーー


頭を押さえるゴブリン

「ヴヴヴゥ...ヒデェ目ニアッタゼ...」


バーグ

「そんじゃあまだ寝てろっ!!」


《バキッ!》

「ベボキャァァァーー!!!」


=====ゴロゴロゴロゴロ


ゴブリン

「「早ク立テ!!勇者共ガ来ルゾォォ!」」


オーガ

「「ゴギグルッ!ゴギグルゥ!!」」


リノアの魔法の影響が残っている者も多く、

勇者達は散らばる魔族達を蹴散らしながら

オラコールの街の方に走る。


バーグ

「どうしたどうしたぁ!!

この調子なら余裕でいけるぞ!!」


殴りで、蹴りで、時には転がっている

武器で敵を叩き伏せるバーグ。

アクト達は両脇と後を固めてその背中を

追っていたが、フォロアとイノスの足取りは遅かった。



イノス

「バーグ待ってください!!

・・・敵に背を向けて逃げるということですか!?」


リノア

「は?」


こんな時に何を言ってんだ?

騎士としての矜恃(きょうじ)ってやつか?


バーグ

「・・・おい!人聞きが悪ぃぞイノス!

戦術的撤退ってやつだーー!!」


強くムスッとした口調から苛立ちが伝わる。

折角の活路に水を差すイノスの態度は、

リノアも(こころよ)く思わなかったが、


フォロア

「・・・敵前逃亡に、

業を煮やして出てきた連中の犠牲・・・

問題だらけにきまってるでしょ!!」



オーク

「「逃がすかァァーーー!!」」


オーガ

「「ヌガアァァァー!!!!」」


フォロア

「風の精よ、はしゃぎ荒ぶり給え!!

エル・トリプル・ストリィーーーム!!」


木の杖を振るうと、

3つのつむじ風が前触れなく渦巻き、

オークすらも巻き上げる。


フォロア

「初戦で不名誉極まりない汚点を

残すことになるわ!!」


バーグ

「そんなん!!


《ボガッ!!メキッッ!!》


くだらない意地張ってる場合かよ!!」



群がる敵の数は徐々に増していく。


フォロア

「くだらなくてもそれが現実よ!

頼りない勇者達を誰が応援してくれる

っていうの!!」



マンティス・リーパー

「ギリギリギリギリィィィ!!」


スケルトン

「勇シャーーーーーー!!」



リノア

「オワァッ!そんな事言ってる場合じゃ!...」



《ザシュッ!》


視界にアクトの姿が現れたと同時に、

紫色の血飛沫が上がる。


《ギベェァァァァァァ!!!》


アクト

「・・・・」



隣でアクトはただ黙って近づく敵を

造作もなく斬っていく。

その表情はリノアには暗くて怖い顔に見えた。


イノス

「ハァァッ!!ンッ!!

オラコールの騎士には失礼ですが、

彼らではゴブリンやオークは倒せても、

あの指揮官達には太刀打ち出来ませんよ!」


リノア

「そっ、そうかもしれないけど!...でも!」


いくら数では勝っていても

勇者達ですら苦戦している強敵を倒すのは

到底無理な話なのは百も承知だ。


アクト

「・・・僕らが勝てなきゃ、どの道終わり...」


勇者一行にとって人々は守るべき対象、

自分達とは違う立場の存在。

素直に逃げる事も出来ずに戦い続ける勇者達に、

リノアは改めて思い知らされた。

彼らはこんなにも孤独だったのかと。




誰がそうさせてしまったのだろうか?


彼ら自身の思い込み?


いや、断じて違う。

全ては穂波が示してくれた。



リノア

「・・・強い弱いじゃないんだ。

僕らだってオラコールの街を守らなきゃ

いけないんだ!!」


アクト・フォロア・バーグ

「!!」


リノア

「兵士や騎士のみんなも身に染みて分かってるさ!

それでも、守りたいって思いは一緒なんだ!!

他の人達だって覚悟を決めて籠城に備えてる。

助けるなんておこがましいのかもしれないけどさ!

少しぐらい頼ってくれたっていいじゃないかぁ!!」



・・・・・・・



この戦況で戦っているのが並の戦士であったならば、

誰も耳を傾ける事など出来なかっただろう。


勇者達には止めどない敵と対峙しながらでも、

会話を聞き取れるぐらいの余裕はあった。


気を逸らしてまで聞いたその思いは、

頑なに耐えてきた心の隙間に流れ込む。



リノア

「死んでしまったら全部終わりなんだ。

ここまで頑張った君らを、

誰も情けないとか無様だなんて思わない!

だから今は生き延びて...」



アクト

「!?後ろだぁぁぁ!!」


リノア

「えっ?」



若干、背中へ風が吹いている気はしていが、

アクトの警告で初めて耳障りな羽音にも

気づいた。


マンティスリーパー

「ギシャァァ!!」


襲い掛かる声に背筋が凍る。

振り返らなくても、マンティスリーパーがカマを

自分目掛けてカマを降り下ろしている光景が

頭の裏側で過ぎるーーーーー


自分の注意散漫を恨みながら、

リノアが死を悟った刹那ーーーーー




バーグ

「ヌォォォォオリャアアァァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」



オーガ

「ヌォガァァァァアーーーーーーーーーーーーーーーー!?!!」


バーグの大声が響き聞こえた後、

オーガの叫び声が轟き大きくなってくる。



リノア

「ッッ!?」



諦めかけていたリノアが思い切って

背後で起こっている事を確認してみると、

巨漢のオーガが飛来していたマンティスリーパー

よりも高く宙を飛んでいたのだ。


リノア

「エエエエエエエエエエエエエ!?」


オーガ

「ドゲロ!?ドゲロゴォォォォォォ!!?」


マンティスリーパー

「キィィィッ!!!」


筋肉の塊は空中の虫を抱き込み、

リノアの真上に落ちてくる。


リノア

「おわわっ!?」



(《ボフゥゥーーンンッ!!》)



慌てて飛んで避けるリノア。

元いた場所を見ると、オーガは紫色の

水溜まりの上にうつぶせで転がっていた。

背中からはカマが貫き突き出ている。

自分も下敷きになっていたらと想像して

ゾッとする。


リノア

「・・・あっぶなぁぁぁ!

でも、おかげで助かっ...」


バーグ

「「人が喋ってんのを邪魔すんじゃねぇぇぇぇよ

ッッボケがァァァァァァ!!!!」」



ゴブリン

「ギィキキキ!」


イノス

「うわぁ...バーグこっわ」


仲間ですら戦士バーグの怒りの形相に

目を見張る。

リノアもその迫力に少しビビっていると、

バーグは自分を省みて少し落ち着き、

それから言葉を続ける。


バーグ

「・・・俺はバカだからよおぉぉ!

その場凌ぎで考えが至らない事ばっかりだ!

・・・けどよ、ここまで命張ってくれる奴の

覚悟なら・・・信頼してもいいんじゃないのか!!」



フォロア

「ハァッ・・・フゥー」


イノス

「・・・」


わかっていた。

どう考えても流れが悪い。

例え目の前の雑兵を全て倒したとしても、

指揮官と敵将ジェネラムを倒し切る

余力は残らない。

それでも魔法使いとして、騎士として

苦難の道のりを歩んできた2人には、

逃げるという道を選ぶのは、

寧ろ勇気のいることだった。


アクト

「・・・・・退却しよう」



勇者であるアクトなら尚更だ。

なんとか驚きを胸の中に留め、

フォロアとイノスは戦いながらも

アクトの声に耳を澄ます。


アクト

「僕が自分の弱さで負けるのは自業自得だけど、

フォロアを、バーグを、イノスを

死なせることだけは絶対に嫌だ。

それだけは譲れない、耐えられない!」


フォロア・イノス

(アクト...)


アクト

「それにバーグの言う通りだ。

ここまで来てくれたブックスの想いも

無駄には出来ない。

みんなで生きてこの場を切り抜けて、

形勢を立て直そう!」


アクトの心情は計り知れない。

諦め、情けなさと恥を忍んでか。

リノアの言葉に心を許して甘えたのか。


とはいえ他ならぬ勇者本人の決断である以上、

議論の余地はなかった。



フォロア

「・・・そうね。アクトが正しいわ!

こんだけ働いたんだもの!

手伝ってくれるっていうなら、

甘えさせてもらわないとねっ!」


イノス

「僕も異論ありません」


リノア

「ホッ」


ようやく皆の意思が固まった。

となれば、やる事は単純明快だった。



バーグ

「そうと決まれば、さっさと突破して

やろうぜぇーーー!!!!」


ゴブリン

「「ヒギェェェェ!!」」


再びバーグが意気揚々と腕を振って

突っ込んで来れば、下っ端のゴブリン

達は逃げ出し、オーク達は身構える。


迷いを振り払い、勇者達は腹を決めて

漆黒の包囲網からの脱出に挑む。

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