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スノードロップな君が読む物語 ~Record the change of the world~  作者: フリーライダー
結 崩れ去る平穏
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49.まず踏み出す決意


変革の物語を記録する『編纂の書』に

導かれ、

異世界を渡り旅する穂波とハチクだったが、

今回訪れた世界はあまりにも雲行きが

怪しかった。




穂波

「アクトさん……」


この世界の勇者、

『アクト・レインファルト』は、

確かに強かった。


人間離れした身体能力と剣術。

振るった刀身から繰り出される

色とりどりの光り輝く斬撃。

凄まじい威力の戦技や必殺技。


合わせて、従者達一人ひとりの実力も

一騎当千という言葉に相応しいもの。


人々が彼らの力にすがり、

頼り切っていたのも頷けてしまう。


しかし、そんな彼らでも苦戦する程の

脅威がよりにもよって、

のどかな辺境の地に現れることなど、

一体誰が想像出来ただろうか。



冒険が始まる第1歩目から、

狡猾で執拗なまでの猛攻を受けて

心身共に打ちのめされたアクトの姿が

穂波の胸を締め付ける。


ハチク

「……」


しかめっ面のハチクの脳裏に、

どこか力強さに欠ける勇者の謙虚さが

思い起こされる。




初対面で抱いた印象の通り、

彼には荷が重すぎた。


街の兵士たちも彼に抱いた理想や期待は

とうに果てただろうに。


こんな光景を見せられて、なぜまだ、

他人事のようなのか……


そんな疑問の答えはとうに出てる。



リノア

「マズイ、マズイ!マズイッ!!」


不意に自身の過去を回顧していたハチクは

現実に引き戻される。


騎士隊長

「恐れていたことがぁ……リノア!

こうなればやむを得ん!!

お前の秘策とやらを使え!!」


リノア

「なっ!?今更勝手な事言うなよ!!

勇者達がさっきよりかなり前に行ったせいで、

今これを発動させたら巻き添えになるよ

!」



騒ぐ2人の横で、ハチクはボソッと呟く。


ハチク

「……最悪の場合も考えないとな」


穂波

「えっ...」


ハチク

「……人は失ったり、痛みを知って

初めて大事なことに気付く。

この世界の『変革』は、悲劇によって

もたらされるのかもしれない」


穂波

「そんな……酷い……」


ハチク

「残酷なことだが、あくまで可能性の話だ。

もしかした...逆にこの試練が彼らを

成長させるのかもしれない」


穂波

「……劇的な、物語のようにですか」



穂波にしては、引っ掛かる言葉遣いだった。

カバンから編纂の書を取り出す。


ハチク

「運命は気まぐれだ。

酷く辛い試練でさえ、その後の行く末を

変える通過点に過ぎない事も有り得る。

……終わりが良ければこそ、

そう思える話だけどな」


穂波は編纂の書を見つめながら、

共に見届けてきた世界の光景を思い出す。



****************


過去の旅を振り返ってみれば、

社会・時代の流れが変わる程の出来事。

それに関わる人々の生き様は、

決して順風満帆なものばかりではなかった。


苦難や不安に遮られながら、

それでも生きている限りは、

予想のつかない未来を目指して

歩み続けるしかない。


****************


ハチクは経験に基づく諦めで……。


穂波のそれは無知から湧き出る希望でしかなくて。


諭すように穂波に語りかけた。



ハチク

「結局のところ、この世界の問題だ。

部外者の我々は見届けるしか...…」



リノア

「「アンタらこのまま黙って

見てるつもりなのかよ!!」」


穂波達はドキッとして振り返る。

タイミングよく自分達の耳と心に

飛び込んできた叫びは、

リノアが騎士達に対して発したものだった。


騎士

「仕方なかろう!我々ごときに何ができよう!」


騎士

「そ、そうさ!我らがいくら束になった

ところで、あんな強い将軍や魔物達に

かなうわけが...…」


リノア

「でもせめて雑兵の相手ぐらいは出来るだろ!!

この街に何人の兵士がいると思ってるんだ!!」


騎士

「いや、そうだが……

ここの守りを解く訳には...…」



リノア

「彼らがこんなところで死んじゃったら、

どの道もう終わりなんだって!!

なぁ隊長、アンタはどうなんだ!!」


リノアは戦場を向いたままの

騎士隊長に問いただす。


リノア

「何の為の騎士なんだ……

僕だってこの街を守りたいさ……

でも、分かってる。

アクト達がいなきゃ駄目だって!!

でもこのまま黙って祈るだけしか出来ないなら、

僕らは本当に何も出来ない……

無力な人間じゃないかぁ……」



悔しさが滲み出る。

勇者の力にすがる気は毛頭なかったが、

それでも目の前の現実は

否応なしに力の差を痛感させてきた。


しかし、だからこそリノアは気づけたのだろう。

勇者が動けない今こそ、行動しなければ

ならないと。



騎士達も返す言葉がなかった。



隊長

「私とて...」



リノア・穂波・ハチク

「!」



野原の上でちっぽけに座り込む勇者を

隊長は見つめている。


隊長

「……私とて、勇者に憧れて騎士なった身だ。

こんな辺縁へんえんの地の、

取るに足らない騎士だということは

重々わきまえてはいるが……」



若くして規律と礼節を重んじ、

言動や立ち振る舞いも徹底している

堅物な隊長から、感情の篭った声が震える。



隊長

「自分達が守るべき街の前で、

英雄が窮地に立たされているのを・・・

指をくわえて見ていられるものかっ!!」


隊長は騎士達とリノアに向き合う。

その表情は、いつもの生真面目さとは違う、

覚悟を決めた男の顔だった。


隊長

「今から団長に直談判してくる!!」


騎士

「「隊長!?」」


一同

「!!!」


隊長は正門へと走り出す。

リノアと騎士達も後に続く。


ほぅ、と言った感じにそれを目で送るハチク。


ハチク

「……どうする?」


リノアと隊長。たったの2人だけだが、

現状を打開しようと決心して動き始めた

彼らを、

穂波が放っておくはずがない。


穂波

「決まってます!行きましょう!!」


ハチク

「あぁ……」


一同は正門を目指して城壁を駆ける。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー



その頃、戦場では



□ロービン野原にて、




《グルォォォォォォォォォォォォ!!》




押し寄せる黒い軍勢に、

たった1人の戦士が向かっていた。


バーグ

「授かりし紅蓮の灯火をこの手に燃やし、

邪悪な輩を滅し滅ぼせぇぇ!!

パワードゥ・ヘルズ・ワイバーン!!!」


飛び跳ねたバーグの背中に炎の翼が生え、

炎翼の羽ばたきで更に上空へ浮き上がると、

クルッと宙を回ってハンマーを振り下ろす。



《ボワァァァァァァ!!!》


すると、炎は翼の形を解いて四散し、

ハンマーの鉄塊へと流れ包み込み、


ゴブリン

「ギヤァヤァ!?ニゲェェェ...」


魔族達の頭上に隕石の如く突っ込んだ。



((《ボゴォォォォォォン!!》))



オーガ

「グゲェァアア!!」

オーク

「ガァァァァァ!!」


噴き上がる土煙りと黒煙、魔物達。

振動が地面を波打ち、衝撃波が周囲10m

以内の敵を薙ぎ倒してゆく。


勇者から50m程も近づく前に、

漆黒の戦列は中央から掻き乱された。


ギア・ヴォルフ

「ヤハリ雑魚共デハ話ニナランナ...」


案の定の結果に、短い鼻息を漏らす。


アームド・シュラム

「・・・・・・」

《ズズズズッ...》


見兼ねたのか、シュラムは重厚な体を前進させるが、

ミデュラの手に静止される。


ミデュラ

「待ちなさい・・・必要ないわ。

どうせ真っ向からヤリやっても、

さっきみたいな拮抗(きっこう)状態になるだけよ。

所詮相手は人間なんだから、

ここはあの3人の体力を無駄に消耗させて、

疲弊した所を一気に潰しなさい」


ミデュラの指示を聞いて、

シュラムは黙って少し後ろに下がるが、

ヴォルフは舌打ちのように小さく()なった。


ミデュラ

「いづれにせよ、後はもう時間の問題よ…フッ♪」



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