47.瓦解(がかい)の始まり
辺境の地が一時の静寂に包まれる中、
□南東の洞窟上の丘にて。
広大な聖域を望めるその丘には、
何故か1人の老人がいた。
土草の上で青・白・赤のトリコロール
カラーのレジャーシートを広げ、
望遠鏡で街の人々の顔を覗いている。
「さぁーて・・・フゥゥム。
観客は皆、ダンマリかね?
まぁ、無理もあるまい。
彼らはー....おっと、待てよ・・・
ホラッ!そろそろだ!見てご覧♪」
ぽつんと座り込み、1人で語っている。
その服装と言葉遣いは、まさに紳士だ。
老紳士
「やあやあ諸君。随分顔色が悪いじゃないか」
望遠鏡に映るのは、状況を次第に
理解した人々の戸惑い、恐怖する顔。
慌てふためき、蜘蛛の子を散らすように
高台から消えていく。
老紳士
「彼らはようやく気が付いたようだ。
伝説や劇を観るかの如く世界を傍観していた
わけだが、自分達もまた、物語の中の
一人だったというわけだ。どれどれ」
眼下では、人類にとっての一大事が繰り広げ
られているというのに他人事のような捉え方は、
まるで自分は「別の人種」「別の存在」とでも
思っている口ぶりだ。
望遠鏡を覗きながらお菓子と果物の
乗った皿へと手を伸ばし、昨日街で買った
レープクーヘンを口へと運ぶ。
老紳士
「ンッ...んん?
これまたスパイシーなクッキーだ。
それにしても、彼らは
『私のプレゼント』を素晴らしく
使いこなしてるではないか!
君も少しは身ならって欲しいものだね
Mr.ジェノサイド・レイン!
・・・・・・ん?レイン君?」
老紳士は後ろを振り返るが、誰もいない。
あるのは無数の息絶えた獣や虫の死体だけだった。
どれも身体を切り刻まれているか、
穴だらけの蜂の巣になっていた。
老紳士は少し考えて、
思い出すと再び望遠鏡を覗く。
老紳士
「・・・・・そうだったぁ。
ついさっき行ったのだったな。
これではまたボケ老人扱いされてしまうぞ…」
老紳士は再びを望遠鏡を覗く。
48.瓦解の始まり
アイアン・サングレイダーズの
敵将ジェネラムと勇者アクトの戦いの
一部始終を目撃していた兵士。
オラコールの民草達。
そして魔族達までもが、どよめいていた。
当然だ。
最も強く勇ましい人類の絶対的な希望であり、
魔族にとっては恐るべき宿敵であるはずの
勇者が、地面に伏しているのだから。
魔族達は次第に目の前の光景が
現実だと理解すると、歓喜の雄叫びを
吠え出す。
《《グオオオオォォォォォ!!!》》
《《アイアン・
サングレイダァァァーズ!!!》》
壁の外から湧き上がる魔物の歓声が
人間達の不安を煽る。
団長
「・・・今日ほど、街が壁で囲われていて
良かったと思ったことはない。
このような光景が多くの民の目に映れば...」
土砂降りのように乱暴で荒々しい
狂喜の歓声を背に、堂々たる体格の敵将がそびえる。
アクト
「グフッ!.....ガハッ!」
敵将に鎧の胸当てを剥がされ、
豪快な蹴りを食らってしまった勇者。
大怪我はしていないものの、
地面に転がるアクトはうずくまり、
咳き込んでいる。
ジェネラムは自身の足先のブレードへと
視線を下ろす。変わらず鋭い刃は輝いていた。
ジェネラム
「(手応えがない。寸前で防がれたか。
やはり、そう簡単にはいかぬものだな)
さて、次はどうしたものか・・・ん?」
ジェネラムが勇者の様子を眺めていると、
強力な魔力を感じる。
ミデュラ
「(失礼しますジェネラム様。
女魔法使いの広範囲魔法がきますゆえ、
一時お引き下さい)」
ミデュラによる念話での警告を受け、
ジェネラムは素直にその場を飛び跳ねて、
本陣へと帰還していった。
フォロア
「「アイス・エイジ・ドォォーム!!」」
フォロワを中心に青白い冷気が漂う。
フォロア
「アクトの所へ集まって!!」
吐く息が白くなる。
魔族達も肌寒さや雰囲気の異変に気づく
とその場から後退し出す。
ヴォルフ
「ブルゥゥ・・・引くぞ、シュラム」
ヴォルフとシュラムも本陣へと退却する。
すると、突然ーーーーーー
《ゴゴコゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!》
野原に氷塊が現れ、残されたアクト達を
囲むように壁をつくった。
とりあえずの安全が確保されると、
従者達はアクトの元へ駆け寄る。
フォロワ
「アクトォーーー!!」
フォロワが真っ先にアクトの安否を確かめる。
アクト
「うう・・・大丈夫・・・ちょっと痛いけど、
大した怪我はないよ・・・・・・」
ゆっくりと起き上がる。
フォロア
「そう!良かったぁ!
やっぱり精霊の加護のお陰で、
ちょっとやそっとじゃ倒れない身体に
なってるわね!」
バーグ
「オォーーイ!
大剣取り返してくれてありがとうなっ!
でも、随分派手にヤラれたなぁアクト!
ホント大丈夫かぁ?」
アクト
「・・・うん。流石に幹部は格が違うね。
体格差の分、どうしてもパワー負けしてしまう。
奴の戦い方も中々読めないし、慣れないから、
なんとか違うアプローチで攻めない...」
アクトは平静を保って、打開策に頭をひねっていたが、
若干声に覇気がなかった。
バーグ
「それにしても相変わらず思い切った
魔法使うよなぁフォロア。
そんなに使って魔力持つのかぁ?」
フォロア
「そりゃキツイわよ!でも態勢を立て
直さないと、状況的に危なかったから
秘薬を使ったのよ。
本来なら同時に火炎旋風で焼き払おうと思ったのに・・・あの女!
魔法陣を描いてた地面を崩しやがったのよ!!
土使いがあんなに厄介だなんて、
聞いてないわよアカデミーじゃ!!
チィッ!!ムカつくぅぅぅ!!」
イノス
「まぁまぁ。とりあえずは、
あの将軍を倒す手立てを考えないと...」
フォロアとバーグ、イノスがいつもの
調子で話すが、アクトは相変わらず浮かない顔を
していた。イノスは心配して、その表情を覗いた。
イノス
「・・・!?」
自分の目を疑い、思わず二度見するイノス。
イノス
「ア、ア、アクト・・・そ、その目
・・・どうしたんだい!?」
アクト
「えっ?」
フォロアとバーグもアクトの顔を見る。
痛々しい左眉からの出血がまず目に入ったが、
それよりもっとマズイ事が起こっていた。
フォロア
「・・・えぇ!!アクトその目!!」
仲間の反応に、アクトは益々不安になる。
アクト
「な、なんだい?・・・一体俺の目が
どうしたって言うんだい?」
バーグ
「い、色がよぉ、半分元の色に戻ってんだよ!」
アクト
「えっ!!」
アクトの透き通るような綺麗な水色の
瞳が、
右目だけ元の灰色になっていたのだ。
アクト
「まさか、そんな。
力が・・・加護の力が弱まってるんじゃ」
震えながら自分の手を見つめるアクトを前に、
3人は言葉を失う。
最初に声を出したのはフォロアだった。
フォロア
「何で・・・何でこんな事が起きるのよ!!
アクトを子どもの時から選んでおきながら
・・・こんなことって!!
精霊様は一体どういうつもりなの!!」
イノス
「フォロア!落ち着いて!
そんな無礼な事を言ったら、逆効果ですよ!!」
フォロア
「だっておかしいじゃない!?
アクトは勇者なのよ!!その為の力なのに、
この一大事に不調だなんて...
何のための加護なのよ!!」
突然授けられた使命に、背負わされた宿命に
縛られてきた彼の人生を知っているフォロアだから
こそ、
バーグ
「おい!フォロア!!
とりあえず本人は大丈夫って言ってんだ。
あんまし感情的に声を上げるなよ・・・」
アクトは苦しい顔をしながら、
なんとか剣を持って立ってみせる。
アクト
「大丈夫さフォロア。ちょっと驚いたけど、
怪我はしてないし、身体自体はなんともないから
いけるよ!」
言い切る声に、彼が自分に言い聞かせている
ようにフォロアには思えてしまった。
フォロア
「・・・でも」
《バンッ!!ガチィンッ!!!》
氷壁からひび割れ、溶ける音がする。
懸念は残るが、いつまでも話す暇はなく、
全員が意識を切り替える。
フォロア
「・・・もう時間切れみたいね。
もうすぐ溶けて崩壊するわ。
なるべく固まって戦いましょう」
イノス
「チームワークで補うわけですね」
バーグ
「それしかないよな・・・いくぜ」
全員武器を構えて備える。
アクトも自分の剣を拾うが、
腕がほんの少し重い。
指はチクチクと細かい傷が痛み、
柄を握る手が痺れる。
それでも、勇者アクトは挑む。
アクト
「(なんとかなる。大丈夫だ。
みんながついてる。
身体だって疲れはしても、
加護の力で丈夫になってる)」
アクトは心の中で再び言い聞かせる。
しかし、更に追い討ちをかけようとする
者がいた。
ミデュラ
「(それはどうかしらねぇ♪)」
アクト
「(!!・・・お前は!)」
魔族の女参謀ミデュラが念話で
アクトの頭に直接話しかせてきたのだ。
前で3人が作戦を話しているが、
アクトの耳には入らない。
ミデュラ
「(確かにその身体は加護の力で
そう簡単に死なないようになってるでしょうけど、
それは即ち・・・アンタはどんなに苦しんでも、
痛がっても終わらないってことよ!
勇者として強力な力を持った以上、
逃げる事も頼る事も許されない。
だけど、今の勇者くんに我々が倒せるかしら?)」
挑発的な囁きにーーーー
アクト
「(・・・舐めるなよ)」
ミデュラ
「(!)」
力負けして恥を晒した勇者に精神的
揺さぶりをかけるつもりだったミデュラに、
アクトは毅然として静かな敵意をぶつける。
アクト
「(加護を受ける前から僕は最強の
勇者と呼ばれてたんだぞ。
今まで勇者になる為に生きてきたんだ・・・
この命をかけてでも
俺は絶対に魔族を討ち滅ぼす)」
命をかける。
尋常ではない決意と執念を表す言葉だが、
ミデュラは毛ほども気圧されなかった。
ミデュラ
「ふぅーん、なるほどねぇ・・・
それはそれはご苦労な事で・・・
(そりゃあ勇者だから格好つけなきゃ
面目が立たないでしょうけど、
口先だけなら何とでも言えるわ。
いざ実際に追い込まれてみれば....)
でもねぇ・・・それが何だってんだよ」
ーーーーーーーーーーーー
外では魔族達が氷壁を囲んでいた。
ヴォルフ
「引キ籠ルノハモウ終ワリダ!!
サッサト出テコ....」
バーグ
「「オリャーーーーー!!」」
ヴォルフが言い終わる前に、
バーグが氷壁を破って現れる。
魔族
「「ギャアァァァァーーー!!」」
ヴォルフは避けたが、
後ろにいた数十の兵が吹き飛ぶ。
バーグはそのまま立て続けに攻撃や
戦技
を振るって敵を薙ぎ払い、
フォロアとリノアも、ヴォルフと雑兵達
を蹴散らしていく。
団長
「・・・どうやらまだ彼らは戦えるようだ」
依然として彼らの戦いぶりは勇猛果敢だ。
仲間達の奮戦を前に、アクトも負けじと奥義を
使おうとしていた。
ヒューーー
しかし、彼らはまだ気付いていなかった。
ヒューーーー
勇者に迫る
ヒューーーーッ
狡猾で冷徹な刺客達の存在に
リノア
「おい!!あれは!?
アクトの上から何かが落ちてくる!!」
騎士
「あれはまさか・・・マンティスリーパー!?
あの卑怯共がぁぁぁ!!!」
羽音を立てずに、ただ落下してくる虫の
魔族達10匹。
団長
「マズイ!!勇者殿!!!
上だぁぁ!!!勇者殿ー!!!」
兵士
「「勇者様ーー!!!」
城壁の上では皆が必死に危険を知らせようと叫ぶ。
穂波
「危ないですよぉ!!
気付いてないですよぉ!!」
慌てふためく穂波。
ハチクの身体も無意識ながら
小刻みに揺れる。
リノア
「アクトォォ!!こっちを見ろぉぉ!!」
大勢の警告も、離れた戦場では
戦闘の雑音に紛れてしまう。
□正門上
兵士ティアド
「ダメだ。聞こえる訳がない。
・・・おい!笛を貸せっ!!」
他の兵士とは少し違った印象の兵士ティアドは
機転をきかせ、近くの兵士から号令用の笛を
奪い取ると、弓矢に括り付ける。
兵士ティアド
「よぉーし、いい子だから...
上手く鳴けよっ!」
力一杯に弓を引っ張り、
祈りを込めて手を離した。
ビュン!!
《ピュゥゥゥゥ•*¨*•.¸¸♪!!》
放たれた矢は空を走り、
一気に吹き込み流れる風で
笛が高い音を鳴らして飛んでいく。
ーーーーーーーーーーー
再び神々しく神秘的なオーラを
漂わせながら、アクトは柄の宝玉に手を触れ、
全神経を集中させていた。
アクト
「振るは一太刀、斬るは烈風。
我が手に纏うは....ん?」
意識は己の内に向けられていたが、
同時に研ぎ澄まされていた五感は
飛んでくる際立った音色を聞き逃さなかった。
咄嗟に後ろの空へ後ろを振りかえる。
兵士ディアド
「こっちを向いたぁぁぁ!!」
ティアドは弓を投げ捨て、
鞘から剣を引き抜いて上に掲げる。
周りもそれにならって必死に
大きな身振りで知らせようとする。
兵士
「「上だぁぁぁ!!!」」
団長
「勇者殿ぉぉぉぉ!!空をぉぉぉ!!」
ーーーーーーーーーーーー
アクト
「・・・(なんだ?)」
城壁の上のアリのように小さな兵士達が
ちょこちょこ と騒いでいる。
何を叫んでいるのかまでは聴き取れない。
それでも加護の力のおかげか、
彼の視力は微かに兵士達の腕の動きと
掲げられて光る剣の切っ先を捉えた。
アクト
「(剣で上を指し示している?
・・・空か?)」
望みの薄かった懸命な警告はなんとか届き、
勇者は頭上を見上げる。
マンティスリーパー
「「ギイイイイィ!!!」」
《ブゥゥゥゥゥゥゥ.•*¨*•.¸¸!!》
勇者に見つかったマンティスリーパー達は
羽根で耳障りな騒音を喚きながら
一気に襲い掛かる。
アクト
「ッ!!危なかった!!」
アクトは腰を捩り、
右手ので後腰の鞘に剣を収める。
そして脚を曲げて、腰を落として唱える。
アクト
「「地を蹴り上がるは獣の如く!!
天へと扇ぐは鷹の翼!!
見えざる加護を身に宿し!
敵を喰らうは我が爪牙!!」」
助走もなしにその場でジャンプすると、
異常な脚力で地面から離れていく。
マンティスリーパー
「「ギィキィィィ!?!?」」
自分達の領域である空に獲物が
回転しながら自ら迫ってくる。
しかもその勢いは風を渦巻き、
群がる虫達を真ん中に引き寄せ集め、
「「回転剣舞ッ!!
トルナード・グリフォン!!!」」
竜巻のような回転剣舞で、
散り散りに虫を斬り吹き飛ばした。
穂波
「ホッ」
隊長
「流石は勇者殿だ!!」
街の者は揃って安堵する。
ところが、アクトが着地した野原には
マンティスリーパー
「ギシャァァァ・・・」
手脚を、胴体を、首を斬り落とされた
にも関わらず、虫達はユラユラと歩み寄る。
アクト
「クッ、しぶといなぁ...」
ミデュラ
「(ワタシ達こそ、アンタや人間共を
殺すことを生き甲斐に生きてんのよ)」
アクト
「(!?)」
再びアクトの頭に直接語りかけてくるミデュラ。
ミデュラ
「(中にはアンタを殺す為なら・・・・・・
命すら惜しくないって連中もいるぐらいにネェェ!!)」
アクト
「それでもっ!負けてあげるわけには
いかないんでねっ!!」
身体を欠損しながらも
突っ込んでくるマンティスリーパーを
難なく斬り伏せていく。
マンティスリーパー
「「ギシュゥゥゥゥ!!...」」
残りの3匹が列を成して一気に突撃してきたのを、
アクト
「!!...いい加減楽にしてやるっ!!」
アクトはあっという間に串刺しにした。
ーーーーーーーーーーーー
イノス
「どうやら僕達が戻るほどでもないようです。
アクトはまだ戦えます!
彼を信じて戦いましょうフォロア」
フォロア
「ええ、疑ったアタシがバカだったわ。
いくわよ!」
前に向き直る2人。
アクト
「これで全部か。
早くバーグ達の所に・・・」
「・・・・・・」
ピクッ!!ビクッ!!
痙攣し、手脚をジタバタと動かす虫。
アクト
「!・・・まだ生きているのか?」
いや、確かに目の前の虫は息絶えている。
だが、貫かれた身体を更に前に進め、
掴みかかってくる。
アクト
「こんのっ!!」
普段温厚なアクトも敵の鬱陶しさに
我慢できず、勢いよく剣を引き抜いて
ダメ押しの一撃で3匹を斬り裂いたーーーーー
ビチャアァァァ!!
紫色の血液と透明な青い液体が大量に垂れ流れ、
撒き散ってまとわり着く。
アクト
「うわっ!...なんだよもぅ...」
服の白い布地に目立つ紫の飛沫がかかり、
青い粘着質な液体が伸び滴る。
新しい装備が酷く汚されてしまい、
嫌そうに粘り着く汚れを拭い去ろうとする。
アクト
「・・・ん?」
ふと、アクトは後ろで虫がまだ動いている
ような気配を感じて後ろを振り返ろうとした。
グッ!
ところが、なぜか脚も胴体も、
首さえ動かない。よく分からない感覚に
包まれる。
アクト
「(あれ?どうして...)」
ドン!!
アクト
「ッッ?!?!?!!?」
背中に何かがぶつかり、前屈みになるアクト。
一瞬思考が停止する。
なんだか左腕から力が抜け、
肩の付け根辺りが溶け落ちそうなほど熱い。
恐る恐る自分の肩を見ようとしたが、
真っ先に目に入ったのは....
アクト
「・・・・・・・・ッッッッヴ!!??」」
穂波
「!!」
口を押さえる穂波。
リノアは痛みを想像し、吐き気を催す。
団長
「な、なんということだ!!」
目を覆いたくなる、あってはならない光景。
勇者アクトの左胸と肩の間から、
鋭利な爪が突き出ていたのだ。
アクト
「・・・ァ・・・ァァ・・・ァァアアウヴアアア
ァァァァァァーーー!!!」
フォロア・イノス・バーグ
「!?!?」
3人もアクトの悲鳴を聞いて、後ろを振り返る。
???
《ジュポポポポッ》
そこには巨大な目玉でアクトを凝視し、
彼を拘束する青いスライムが、
下半身のないマンティスリーパーの
亡骸を持ち上げて操っていた。
アクト
「ヴヴッ...ハア゛ア゛!....コッ...ノォォ!」
左腕に血が伝い垂れる。
自分の傷口を見ると余計に生々しい
痛みが伝わってくる。
無闇にもがけば更に傷口が広がるが、
このまま苦しんでいる暇はない。
すぐにでも反撃しなければと、
歯を食いしばって右手の剣を後ろに
突き立てようとするが、
アクト
(いつの間に背後に...
まさか、マンティス達の身体に!?)
紫の血液は生地に染みになっていたが、
一緒にまとわりついていたスライムは蠢き、
硬化してアクトの四肢を固める。
辺りの転がっている亡骸からもスライムが傷口や
口から溢れ出して集まってくる戦慄の光景。
「...、。....、。.,....」
すると、
死に絶えたマンティスリーパー達の口が一斉に
動き、共鳴する鈴虫や蝉のように何かを囁き出す。
???
「「「虫ハ手脚ノ1、2本取レヨウト
大シタ事ハナイガ・・・貴様ハ....」」」
アクト
「!?」
グイィーーッ!!!
???
「「「耐エラレルカ?」」」
突き出たマンティスリーパーの爪が
アクトの背より高く持ち上げられて、
更に上へと喰い込んでいく。
アクト
「イギィィッ!!!
ウグアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
神聖な土地オラコールで、
人々の混乱と恐怖心に更なる追い討ちを掛ける、
勇者の苦悶の叫びが上がった。
今回の挿絵イラストには、
朧様のファンタジー剣の素材
https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=68061387
てんゆ様の目玉の素材
https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=manga&illust_id=45562785
を使わせて頂きました。
本当に助かりました。ありがとうございます。
m(_ _)m




