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スノードロップな君が読む物語 ~Record the change of the world~  作者: フリーライダー
転 各々の思い
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33.いつもと変わらぬ朝


33.いつもの変わらぬ朝


穂波とハチクがこの世界に来てから、

4日目の朝。


聖域オラコールの周辺には、

朝から霧が立ち込めていた。

この地域では珍しく、

太陽が登っている今も尚、

遠くが視認出来ないほど濃く

オラコールの野原を覆っている。


□城壁の上


見張り

「今日は凄い霧だな。向こうが全然見えないぞ」


「もう、朝も中頃だよなぁ?

流石にそろそろ晴れるだろう」


普段通り緊張感の欠片もなく

呑気に話す衛兵達。

やがて兵士の言う通り、霧は急に晴れていく。

そこへ偶然、巡回に来た一人の騎士が

何の気無しに城壁から外を覗き込んだ。



騎士

「・・・・ンンッ!?」


すると騎士は目を見開き、口を開けて

呆然とし、ゆっくりと後ずさる。


その不自然な様子をみて、

見張りの衛兵2人は尋ねる。


見張り

「あの〜、どうかしました?」


騎士は外を眺めたまま呟く。



騎士

「・・・を鳴らせ」




見張り

「え?今なんと…」


騎士

「お前達は何を見ていたか!?

直ちに鐘を鳴らしにいけぇぇーーー!!」






ーーーーーーーーーーーーーー


3.いつもの朝


時をさかのぼり、

□聖堂へと続く中央通りの坂道にて


タッタッタッタッタッタ!


穂波

「ハチクー、早く早く!」


ハチク

「分かってる、すぐ行くさ」


リノア邸で朝食や朝の支度を終えた

2人は、聖堂を目指していた。


今日は遂に勇者の洗礼の日。

アクトが勇者としての真の力を授かり、

本格的に世界を救う冒険の旅が始まるのだ。


けれど、ここでも街はいつも通りの様子で

良くも悪くも特に変わった事はなかった。


穂波

「南都の時のようにお祝いしたり、

催し物とかはないんですねー」


ハチク

「まぁ『一般人は儀式に立ち合えるわけ

でもない』みたいだしな。

それにしたって他人事過ぎる気も

しなくはないが...」



ピタッ


穂波はハチクの言葉を聞き、歩みを止める。



穂波

「・・・・一般の人は・・・立ち会えない?


・・・・・・・・・・・


・・・・・・えええぇー!!

そうなんですかぁ!?

そんなの初耳ですよぉ!!

何で教えてくれなかったんですかぁ!」


穂波はハチクに駆け寄り、

肩に掴みかかって彼女の小さな身体を揺らす。


ハチク

「朝にリノアが言ってた....ってか

お前は聞かずに勝手に舞い上がってだろうがっ!」




***************

回想

□図書館にて



穂波

「いよいよですねぇ!どんな儀式なんだろう。

精霊とか見られるんですかねぇ〜♪」


朝っぱらからワクワクと子どものように

はしゃぎ、意気揚々と玄関へと歩く穂波。


ハチク

「おい、まだ早いぞ。

リノアがまだ準備出来てないみたいだ」


リノア

「あ、僕は後から行きますので

お先にどうぞ!」


これから出掛けるというのに、

リノアはずっと道具箱をあさって、

バックの中に詰める物を吟味していた。



ハチク

「そうか。お前は儀式を観なくてもいいのか?」


ハチクの質問に、リノアは不思議そうな

顔をして首をかしげる。


リノア

「え?洗礼の儀式は見物出来ないはずですよ。

神聖な儀式で、人が多いと精霊が

降臨しにくいのだとか」



ばつが悪そうな顔をするハチク。

今までの順調な旅の流れから、

当然見物出来るものと思い込んでしまっていた

自分をハチクは恥じた。


ハチク

「そうなのか・・・・・だとさ穂波。

残念だったな...」


ハチクは玄関の方へ振り向くが、

穂波はもう既に外に出ていた。


彼女のご機嫌な鼻歌が外から聞こえる。


ハチク

「・・・・・・」


無の表情になるハチク。



リノア

「ア、アハハ、お気の毒に...」




****************



ハチク

「・・・というわけだ」


穂波

「そ、そうだったんですかぁ〜」


穂波は楽しみを奪われ、うなだれる。


穂波

「・・・あ。でもセルネスさんに頼めば、

昨日みたいに内緒で入れてくれるかも

しれないですねぇ〜♪」


ハチクはそれを聞くと、頭の中で穂波に

懇願されて戸惑うセルネスを想像する。

本人にはその気はないのだろうが、

ハチクには彼女の微笑みが悪魔の笑みに見えた。



ハチク

「・・・まぁ確かにあいつなら断れずに

入れてくれるかもしれないがなぁ、穂波。

はしゃぐのは勝手だが、

今までの流れ的に洗礼の儀式が

この世界の重要な転換期になる可能性が大きい。

ここから先は特に注意して慎重に

行動するべきだ」


ハチクがいつに無く真剣な顔をする。


穂波

「勿論わかってますって!

だからこそ立ち会いたいんですよ。

もう、ハチクは心配性ですねぇ」



例え予測不能な事態が起きるとしても、

その時に構えたからといって

何が出来るわけでも変えられる訳でもない。

穂波はただ見て、聞いて、感じて、

編纂の書にその世界の事を記録するだけだ。

ただ、


ハチク

「・・・・・・今がどんなに平穏でも、

一寸先に何が起こるかなんて・・・・・・

誰にも分からないんだ。

警戒するに越した事はない」


その言葉は単なる警告というよりも、

自身の経験から、ハチクの胸に深く刻まれた教訓だった。



そして実際に浮かれていた穂波が、

その時の彼女の言葉を身をもって

思い知ることになろうとは、

この時は微塵も思っていなかった。

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