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スノードロップな君が読む物語 ~Record the change of the world~  作者: フリーライダー
転 各々の思い
37/84

29.憂鬱な後味


影におおわれて薄暗くなった野原を

2台の馬車が走る。

穂波達は日没寸前のオレンジに照り輝く

オラコールの街へと帰っていた。


特に意図はないが、

勇者一行とリノアは前の馬車に、

穂波とハチク、セルネス、果物屋の娘や兵士二人は

後ろに分かれて乗っている。



□馬車の中


穂波

「うーん・・・むにゃむにゃ」


穂波と兵士のクレオは疲労と安堵あんどから、

ガタガタ揺れる馬車の中でも爆睡していた。

隣りで寝ている穂波の頭に肩を貸しているハチクも、

目を閉じて身体を休めていた。


一方で、

彼女達の向かい側に座るケインと果物屋の娘は、

先ほどから楽しそうに会話をしている。


だがハチクにとって、彼らの恋路の行方

など

どうでもよかった。

それよりもハチクが聞き耳を立てていたのは、

前を走っている勇者達の馬車から

聞こえてくる音だった。


最初は空耳か外の騒音かとも思った。

あるいは、自分の嫌な予感や不安が

勝手に妄想してしまっているのではと。

だが、現実は残念な方だった。


耳を澄ませると、風の音や布地のはためく音に

混ざって、時折誰かの大声が聞こえるのだ。


ハチク

(あのリノアと勇者達が楽しそうに騒ぐ筈もないしな。

どうせまた揉め事だろう....)


やれやれとハチクは深く溜息をつき、

肩に寄り掛かる穂波を見つめた。


ハチクという人間は他人に対して、

過度な同情や感傷を抱いたりはしない。


ただ、穂波に関しては別だ。

己の限界を知りながら、

それでも誰かを救いたいと常に願っている。


そんな穂波がアクト達やリノアが喧嘩したり

争う様を目にすれば、

まるで両親の不仲に心を痛める

子どものような顔をするだろうと、

ハチクは今から憂鬱ゆううつになっていた。



ーーーーーーーーーーー


□城内


《ガタガタッ》


門を抜けて街に入ると、

人々の営みの音や明かりが荷台を囲う

布地越しに伝わってきた。

平和な場所へと戻って来た実感がいてくるが、

外から聞こえてくるアクト達やリノアらしき声は

次第に大きく激しくなっていった。




そして突然、それは辺りに響き渡った。


フォロア

「アクトのバカァーーー!!!!!」


穂波

「んんん!?」


大声に飛び起きる穂波とクレオ。

ケイン達もびっくりした様子だ。

穂波達の乗っている馬車が急停止する。


ハチク

「はぁー・・・やかましい女だ」


ハチクはめんどくさそうに立ち上がると、

出入り口のカーテンをめくって外を確かめる。

すると、丁度すぐ前をフォロアが通り過ぎる。



穂波

「あっ」



その刹那、穂波は見た。

ハチクが開けた出入り口の隙間から、

寝ぼけ眼ながらも穂波には見えてしまったのだ。



魔法使いフォロアが涙をこぼしながら、

走り去って行くのを。



穂波

「ちょっ!?フォ、フォロアさん!?」


穂波は慌てて馬車から外に飛び出したが、

フォロアはすぐに街並の中へと消えていった。

通りがかりの住民数人も、

何事かと立ち止まって眺めていた。


前の馬車からアクト達も出てきたが、

全員その顔は暗かった。

リノアにいたっては、

顔を紅潮こうちょうさせて涙目にまでなっていたる。

穂波達は訳が分からず困惑していると、

騎士イノスが自分の役目だと思ったのか、

前に出てくる。


イノス

「・・・とりあえずここは人目につきますし、

通行の邪魔になりますから、

脇で話しましょう」


大通りの脇に馬車を移した後、

騎士イノスは事の顛末てんまつを語り始めた。



********



帰りの馬車の中は会話もなく静かなもの

だった。

そこで、リノアがフォロアやアクト達に

何故森に駆け付けたのかを尋ねたのだ。

その時イノスは、

「街で娘さんの事を心配する子ども達に

頼まれた」と答えた。


そこまでは問題なかったのだが、

イノスは果物屋の娘がわざわざ森へ行った理由が、

『フォロアにベリーチュの実を頼まれたから』

だということをリノアに伝えてしまったのだ。


それを聞き、リノアはフォロアに対して

「無茶な頼みだった」と責め立てたらしい。

フォロア自身も責任を感じてはいる様子だったが、

止まらないリノアの執拗しつような指摘に

プライド高いフォロアが黙っているはずもなく、

今度はフォロアが彼を問い詰めた。


それは、リノアが使っていた『使い捨ての杖』や

『魔術の針金』のことについてだった。

それらは本来見習いの魔法使いが練習用に使う物らしく、

大した魔力も発揮出来ないのだとか。


その上、勝手な方法で魔法を扱うリノアに

魔法使いとしての資格があるのかという

事まで追求し出した。

それからリノアとフォロアは

お互いを激しくののしり合い、

アクトや従者も流石に止めに入ったが、

一向に収まらなかった。

特にフォロアの口調はあまりにもキツいもので、

しまいにはアクトがフォロアに対して怒鳴った。

これには皆が驚いて、一瞬静かになったらしく、

フォロアも黙って、無表情になった。


そして、ゆっくり、目からじわりじわりと

涙を流してこう言ったのだ。


フォロア

「なんで・・・いつも・・・いつも

・・・アタシばかり・・・

普段の貴方は自分を押し殺して、我慢して

・・・どんな連中にも気を使って優しいのに・・・

なんでいつもアタシばかりそうやってぇ!!!

みんなの前じゃいつも笑顔の癖に!!

なんでアタシには怒ったり、悲しい顔見せたり

するのよぉぉ!!!

アクトのバカァァァァーーー!!!!」



*********



イノス

「ということがありまして・・・

元はと言えばこちらのフォロアに責任が

あるので、

ブックス殿や皆さんはお気になさらず。

彼女がああやって大人気なく意地けるのは

いつものことですし、

明日には機嫌を直してますよ。

さあ、皆さんもお疲れでしょうから、

この辺で解散しましょう」


イノスは呆れるのにも慣れたように、

冷静にその場を仕切った。


穂波

「そうですかぁ・・・」


セルネス

「イノス殿がそう仰るなら」


ケイン

「まぁ、俺らが首を挟む事じゃないもんなぁ」


一同は気にかけながらも、

その場から帰ろうとしていた。


果物屋の娘

「そんな...せっかく取ってきたのに」


娘は話しを聞いて、なげく。


ハチク

「危険を冒したのに、商売あがったりだな」


果物屋の娘

「いえ、そうではなくて・・・

あのぉ、勇者さん!!」


娘はアクトの元へと駆け寄る。


アクト

「・・・あ。ど、どうしました?」


ボーッとしていたアクトの前に、

娘は籠の中身を見せる。


果物屋の娘

「このベリーチュの実。

勇者さんの為にフォロアさんがケーキを

作ってあげたいと言って、欲しがってた

ものなんです」


アクト

「え…」


唖然とするアクト。

バーグとイノスはそれを聞き、

『やっぱりか』といったように顔を見合わせる。


果物屋の娘

「フォロアさん・・・明日から勇者さんの

冒険が始まるから、その前のゆっくり出来る時間に、

贅沢して欲しいからって・・・

ベリーチュの実なら凄く甘くて美味しいので、

何とか協力してあげたくて、

私が勝手に森に行ったんです!!

フォロアさんに強制させられたとかではないので、

それだけはわかって貰えればと」


娘はそれだけ伝えると、

兵士達と共に城下街へと帰って行った。


益々(ますます)気まずくなる穂波達。


一人佇たたずむアクトの後ろで、

従者の二人がこっそりと話し合う。


イノス

「バーグ。ちょっとマズイですよ。

今のアクトは・・・」


アクトはうついたまま、考え込んでいる。


バーグ

「わーかってるよ。

今かける言葉を考えてんだ」


2人ともアクトの事をよく知っているが、

それゆえに下手な事を言っても

励ましにならない事はわかっていた。


イノス

「とりあえず、自分は彼女を探しに行きます。

バーグはいつもの調子でアクトのストレスを

やわらげてあげてください」


バーグ

「へいへい。

俺に出来るのはそれぐらいだろうしな」


バーグはイノスと分かれると、

アクトに明るく話しかけ、

肩に手を掛けてどこかへと連れて行った。


後に残ったのは穂波達3人。


セルネス

「えーっと・・・私達はどうしましょうか?」


穂波

「そうですねぇ・・・あ、そういえば

リノアさんは?いつのまにか姿が...」


辺りを見渡すが、彼の姿はない。


ハチク

「奴ならさっき黙って1人で帰って言ったぞ」


セルネス

「え!いつの間に・・・

図書館はまだ少し坂の上ですけど」


ハチク

「あんな事があったんだ。

ゆっくり1人で頭でも冷やしながら

帰りたかったんだろ」


穂波

「・・・」


夜の冴え渡る寒さの中、

白い息をふぅーーっと一息吐いた後、

穂波は決断した。


穂波

「・・・私達も帰りましょうか」


穂波の言葉にセルネスはハイとうなずいて

馬車に乗り込む。

穂波も荷台へと乗り込もうとすると、

腕を組んで寄り掛かっているハチクが

意外そうな顔で穂波を見ていた。


ハチク

「以外だな、穂波。私はてっきりまた...」


穂波

「フォロアさんを追うと?

本当はそうしたいところですよ。

あんなお話を聞いたら尚更です。

でも急な展開で正直ちょっと混乱してますし、

何より私も結構疲れてます。

今闇雲に動いても、誰かの力になれる自信が

ありませんから」



穂波は他人の為に尽くせる人間だが、

自分に出来る事の限界はよく分かっていた。


セルネス

「お2人ともー。そろそろ出発いたしましょう」


馬の上で手網たずなを持つセルネスが呼びかける。


穂波

「はーい!

・・・それに今日一日だけで、

編纂の書に書く事がいっぱいありましたからね」


ハチク

「確かにな。この世界に来て3日目だが、

既にそれなりの体験をしてきた訳だ。

これから先は慎重に行動するべきだろう」


穂波には何よりも優先すべき、

世界の変革を記録するという大事な

役目があるという事を二人は再認識し、

二人は馬車でリノアの図書館へと帰るのだった。

不定期の小説をここまで読んで頂き

ありがとうございます。

今回の29話は、原案者の花咲氏と連絡がとれず、

氏の編集を経られない状態ですが、

数少ない読者の皆さんに出来るだけ早く読んで頂きたいと思い、先に投稿しました。

後に編集すると思います。


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