表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スノードロップな君が読む物語 ~Record the change of the world~  作者: フリーライダー
転 各々の思い
34/84

26.集結



日没前。

□森の開道にて、


真っ赤に染まっていた空は

上から紺色に移り変わり始め、

沈みゆく夕日の光りと混ざって紫に染まる。


穂波達一同は洞窟から野原へ続く道まで戻り、

馬車を止めた場所まで歩いていた。


ケイン

「なぁ大丈夫かよクレオ?

無理するなって言ったのにさぁ...」


列の一番後ろにいる、果物屋の娘を護衛していた

北の国の兵士2人の会話を、穂波は盗み聞きしていた。

茶髪で頭に赤いバンダナを巻いているケインは、

脚を引きずる黒髪の兵士に肩を貸していた。


黒髪の兵士クレオ

「あの時に無茶しなかったら、

今頃みんな揃ってベリーチュのジャム

みたいになってたさw」


クレオと呼ばれた兵士の言葉に、

ケインは朝食に食べた事のあるそれを思い出す。

ゾッとしながらも、その例えの秀逸さに

吹き出す。


ケイン

「フッ!だな!ハハハッ♪

・・・でも、やっぱりごめん。

俺に付き合ったばっかりに」


クレオ

「それは今に始まった事じゃないぞ。

それにお前、あの果物屋の娘さんに惚れてんだろ?

命張って守ったんだから、好印象間違いなしだって」


ケイン

「なっ!?俺はそんな下心でやったわけじゃ...

まあ、でも、故郷に戻る前にちょっと話してみるよ」


前を歩く穂波はそんな会話から、

兵士2人の絆の深さを感じていた。


穂波

「ふふ♪・・・」


セルネス

「何か可笑しい事でも?」


穂波

「あ、いえ!みんな無事でほんとに

良かったなぁって。それに色々凄いもの

を見れましたし♪」


セルネス

「ホナミさんは肝がわってるといいますか、

あんな体験をしてそう思えるとは、

たくましいですねー」


セルネスの言葉にハチクはうなずく。


ハチク

「まったくだ。

だがそういうお前も、何だがイキイキして

いるように見えるのだが?」



セルネス

「えっ?」


穂波達が彼女に出会った時の第一印象は、

とにかく物静かで地味な女性だった。

それが今では、頼もしい戦士として協力してくれている。


穂波

「そうですね。初めて会った時に比べて、

口数も増えて色んな表情が見れてる気が

しますよ♪」


セルネス

「そ、そうですかね?うーん・・・」


自分の変化を指摘され、

少し気恥しくなるセルネス。


セルネス

「私はただ・・・そのぉ・・・

普段と違う日々が、何とも刺激的に

感じてしまって」


ハチク

「あぁ。なるほどな

(他の連中も皆、同じような心境なんだろうな。

あの女魔法使いを除いて)」


ハチクは前方を歩くリノアとフォロアを

比較していた。


リノアは自分の活躍に満足している様子で、

意気揚々と先頭を歩いている。


一方その後を歩くフォロアは未だに周囲を警戒していた。

また、先程からリノアと彼が使っていた道具を

ジロジロと観察しているようだ。


ハチク

「あの2人・・・・・・ボソボソ

(・・・これ以上面倒な事が起きなきゃいいが)」


独り言を呟くハチク。

すると、それを聞いた穂波がハチクの顔を覗き込む。


穂波

「ちょっと、ハチク!!」


ハチク

「ん?なんだ?」


穂波

「あんまりそういうネガティブな事を

言うのは良くないですよぉー。

言霊ことだまっていうのがあってですねぇ…」





《ブゥゥゥゥゥゥゥ.•*¨*•.¸¸》








最初にその音に気付いたのはフォロアだった。


フォロア

「ん?何よ、この音?」


リノア

「えっ?・・・・・・本当だ。



音が近づいて来てる。


これは・・・・・・・



羽の音?」






《ブゥゥゥゥゥゥゥウウ.•*¨*•.¸¸》



一同が耳を澄ませる中、ハチクは口を開く。



ハチク

「・・・・・・なぁリノア」


リノア

「はい、なんでしょう?」


ハチク

「さっきの虫は・・・空を飛んだりするのか?」



ハチクの言葉に全員が一瞬考え、

その意味を想像した途端に凍りついた。



リノア

「い、いや、そんな話は聞いた事ないですし、

羽なんて見た事もありませんが・・・・

なぜそんなことを?」


ハチクはずっと空を見上げている。


ハチク

「じゃあ、あれはなんだ?」



全ての視線が紫と紺色の混ざった空を見上げる。


目に映ったのは、何の変哲もない

日没直前の絵画のような景色だ。


森の上を火事の黒い煙が漂っている。


ケイン

「なんだって言うんだよ?別に何もいないぞ。

ハチの巣でも近くにあるんじゃ...」


ハチク

「あの一番上のモヤだ」


ハチクが指差して示したのは、

上空に浮かぶ1つの黒いモヤだった。


よく見ると煙にしては不規則な流れ方をしている。

風の流れで周りの煙や雲が左へ流れる中、

そのモヤだけは穂波達の方へと近づき、

大きくなっていた。


ケイン

「ま、まさかなぁ・・・ハハハ」


クレオ

「と、飛べないんですよね?」


リノア

「・・・・そのはず・・・ですが」






《ブウウウ.•*¨*•.¸¸!》



不穏な空気の中、羽音だけが響いている。

誰もが、ただ様子を伺って沈黙を続けている時。



フォロア

「・・・チッ!ファイアー・ボール!!」


《ボアッ!!》


フォロアは呪文を唱えて右手の杖をかかげると、

人の頭ほどの大きさの火球を放った。


リノア

「ちょっ!?」


フォロア

「じっとしてても埒が明かないでしょ!?

焼けば分かるわ!!」


フォロアの放った火球は、

真っ直ぐ黒いモヤへと飛んでいく。

ところが、突然モヤの中央に穴が空き、

ファイアー・ボールは命中せずに

空の彼方へと消えてゆく。


フォロアはまた舌打ちをして、モヤを睨む。


フォロア

「明らかに避けられたわね」


穂波

「・・・ということはーー」




黒いモヤは次第にその色を変え、




《ブヴヴヴヴ.•*¨*•.¸¸!!!》




赤く発光し始めた。



《ギュルギュルギュルーーーー!!》

《ギシャアアアーーーーーーー!!》



フォロア

「走ってぇぇぇぇーー!!!」


《ダダダダダダ!!》


娘「キャアアアアーーー!!」

ケイン「マジかよぉーー!!!」

クレオ「ハァハァッ・・・」


血相を変えて一斉に逃げ出す。


穂波

「ハチクが縁起でもないこと言うからーーー!!」


ハチク

「いやっ、私のせいではないだろぅ・・・

しかし、今度ばかりはさすかに分が悪そうだ」


目をギラギラと光らせるキリエバイトの群れは、

彼女達の歩く倍のスピードで飛んでくる。


フォロア

「馬車までもうすぐだけど・・・

間に合いそうにないわね!」


後ろを振り返りながら、フォロアは杖を構える。


リノア

「ま、まさか戦うつもりかい?」


フォロア

「まさか !アタシだけならまだしも、

この状況で囲まれたら、

全員を守り抜く事はほぼ不可能だわ!!

だから、今ここで結界を張る!!

アンタら時間稼ぎぐらいは出来るでしょうねぇ!?」


セルネス

「ええ、勿論です!」


リノア

「そ、そー言われてもなぁ....

僕の方は使えそうな薬品は残ってないし、

杖も団扇も・・・こうなったらコイツで」


リノアはポーチの中から、

先ほど使っていた魔法道具の針金を取り出すが、


リノア

「あれ?・・・ああーもうっ!!

さっき適当にしまうんじゃなかった!!」


針金の輪は複雑に絡まっていて、

解こうとするが、焦って上手くいかない。


フォロア

「もう!!アンタねぇ...」


文句を言う口が止まった。

フォロアは改めてリノアが取り出した針金を見つめる。

そして思い出した。

彼女にはその針金に見覚えがあったことを。


ただ、彼女の常識では

『ここにあるはずのないものであり、

使われるはずもないもの』だった。


フォロア

「アンタのそれって・・・まさか...」


フォロアが何かを言いかけるが、


ハチク

「オイッ!!何をしてる!?

スグそこまで来てるぞ!!」


セルネス

「穂波さん!早くこちらに!!」


穂波

「待って下さーーい!!まだケインさん達が!!」


穂波の後ろにいた兵士2人は、

クレオが脚を引きずっていたので、

恥ずかしがる彼をケインが無理矢理おぶって

必死に走っていた。


フォロア

「詠唱を始めるわ!!

早く私の後ろまで来なさい!!」


フォロアは杖を使い、

自身を軸に地面に素早く円を書く。


そして、詠唱をしながら更に呪文を書き込む。


リノア

「クソッ!このっ!このっ!!」


針金をこねくり回すリノア。



《ブヴヴヴヴ.•*¨*•.¸¸!!》


飛翔するキリエバイトの姿が

ハッキリと確認出来る距離まで迫っていた。

ゆうに100匹は超えているだろう。


ケイン

「ウオリャアアアーーーーーー!!」


《ズザザザザーーー!!》


最後にクレオをおぶったケインがなんとか、

フォロアの魔法陣の中に滑り込む。


《《キエェェェエエェェェーーーーーー!!!》》


そこへ40匹程のキリエバイトの群れが

急降下してくる。


セルネス

「来ます!!」


フォロア

「フォロア・ピュアートの名において、

聖なる子等に懇願こんがんする!!

我が身を覆う空の壁、我が敵をはらう風の壁!

エル・ドーム・アウトォ!!

我が身を、おのが灯火で守らせ給えぇ!!!」



【((《シュンッ!!》))】



《ギュルギュルギュルギュルゥゥゥー!!》


完成した魔法陣が眩い輝きを放ち、

半透明なエメラルドグリーンのドームにて覆われて、

寸前で降り注ぐキリエバイトの雨を弾き返す。


《ドドドドッドドドドドドドドドドドトドドドドドドドドドドドドドドド!!》


フォロア

「クゥ!・・・キッツゥ!!」


キリエバイトが周囲に弾き飛ばされる度に、

フォロアの魔力は消耗していく。


フォロア

「ヤバイッ・・・これ以上は!!」


ケイン

「えぇ!?」


ハチク

「おいおいっ、今こんな状態で守りが消えたら...」


フォロア

「「わかってるわよ!!!」」


フォロアは歯を食いしばって必死に結界を

維持しようとするが、絶え間ないキリエバイト達の

突撃に、結界は次第に薄くなっていく。


フォロア

「ダ・・・メ!もうムリィ!!」


《シュウーー》


疲労したフォロアは膝を付き、

最後の数匹が突っ込む前に結界は消えてしまった。


穂波

「うわぁ・・・あんなにいっぱい・・・」


弾き飛ばされた大量のキリエバイト達も

起き上がり、ジワジワと四方八方から

押し寄せてくる。


「あぁぁぁ...」


あまりの恐ろしさに、果物屋の娘は腰を抜かしてしまう。


ケイン

「俺の後ろに隠れて!!クレオも!」

クレオ

「バカ言え!俺だって...」



《ギュルギュルキシャーー!!》



ケイン

「真上から3匹!!」


ハチク

「スゥ・・・」


セルネス

「クゥ・・・」


2人は頭上に向かって剣を構える。

明らかに不利な空中からの攻撃。

陸地も四面楚歌の状態。

緊張と恐怖にあらがうように、

戦える者は剣を握る手に力を込める。



《ギシャアアァァァーー!!》



薄暗く寒い森の中で、ギラギラと目を光らせる

キリエバイト達の鎌が振りかざされようとしていた。




《ブォォンッ!!》》》》》


その寸前。




「「アサルト・アインホルゥン!!!」」


叫び声と共に、誰かが頭上に飛び込んで来た。



キリエバイト「ギュルry!!・・・」

キリエバイト「ギュルギュry!!

キリエバイト「ギュルギュルギシ..shaaaa!!!」



風でなびく赤い髪。

しなやかなシルエット。

キリエバイトの断末魔さえ遮られる速さの人影が、

宙を舞っていた3匹の虫を串刺しにしてゆく。


キリエバイトの胴体から突き出た鋭い剣先が

オレンジ色の体液に濡れ、木々の隙間から差す

僅かな日の光りを反射してギラリと輝いた。


穂波

「えっ?」


セルネス

「なんて綺麗な・・・」


ハチク

「まさかあいつは....」



スタッ!


《((ブンッ!!!))》


《ベチャッッ!!!》


剣の持ち主は地面に着地すると、

勢い良く串刺しにした死骸を振り払う。

飛んでいった死骸は近くにいたキリエバイトに

当たり、倒れて地面に覆い重なった。


???

「バーグ!今だ!!」


フォロア

「!?」


バーグ

「ウッシャアアアアア!!

ジ・エンド・インパクトォォー!!!」


勇ましい声に上を見ると、

道沿いにある木の上の葉っぱの中から、

従者の1人、戦士バーグが飛び出して来た。

彼は落下しながら、手にしている鋼鉄の

ハンマーをキリエバイトの塊に目掛けて

振り下ろした。


《ブシャァアーーー!!!!》


無慈悲に潰されたキリエバイト数匹と

周りの数十匹は、一瞬にして無残な地面の染みと化す。


バーグ

「フーッ!!残りは・・・80匹前後って所か。

余裕だなぁ、アクト!!」


その名に、全員の注目がキリエバイト達から外れる。

穂波の目に映ったのは、紛れもない

勇者アクト・レインファルトだった。


アクト

「ーーあぁ、みんな良く頑張ったね!!

あとは....


キリッ


《ビクッ!!》


彼の眼光に、虫達の細い四肢や触覚が震え揺れる。

突如現れてそこに立っているのは、

穂波達が今まで見てきた紳士的な好青年とは違う、

戦士としてのアクト・レインファルトとだった。


アクト

「あとは...僕達に任せてもらうよ」


アクトは剣を握った左腕を伸ばし、

ゆっくりとキリエバイトの群れへと迫る。


絶対絶命の暗闇の中で、射し込んだ希望。

『勇者アクト・レインファルト』の真の実力を、

穂波達は知ることになる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ