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スノードロップな君が読む物語 ~Record the change of the world~  作者: フリーライダー
転 各々の思い
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25.合流

25.合流


穂波達が森林火災を何とかしようと

行動を始めた頃、


ハチク、セルネス、黒髪の兵士は

穂波達が通った森の茂みを駆け抜けていた。



黒髪兵士

「ハァハァ!な、何でこんなにいるんだぁー!!」


《カサカサカサカサ》


《カサカサカサカサ》


《カサカサカサカサ》



《キリリリリィー!!》


《ギリギリギリリリィィー!!》



後ろから迫りくる鳴き声。

木々の間の暗闇を横切る無数の赤い視線。


ハチク

「そこら中ベタベタだ。

もう駆除する気も失せたぞ」


いつも以上に気だるく、嫌そうに言うハチク。

体中に飛び散りしたたるオレンジ色の体液が、

激しい戦闘があった事を物語る。

3人は煙の上がっている方へと逃げていた。



セルネス

「これは異常ですよぉ!とにかくリノアさんと

合流して、一刻も早く逃げましょう!」


それが出来れば苦労しないと思いながら、

ハチクは後ろを気にする。

例え合流出来ても、食い止める所か

群れを引き連れてしまったのだ。

いずれにせよ、追いつかれるのは時間の問題だった。


そんな切羽詰まった状況に、

ハチクは珍しく淡い期待を2人に求めた。


ハチク

「・・・一応聞くが、2人とも魔法攻撃とか、

必殺技みたいなのは使えないのか?」


黒髪の兵士

「そんな無茶な!自分はただの兵士ですよ!」


当然のごとく答える兵士に対して、

セルネスは躊躇いながらも渋々口を開く。


セルネス

「・・・・・・一応・・・戦技持ちですが」


セルネス

「せんぎ?」


聞き慣れない言葉にハチクは首を傾げるが、

黒髪の兵士は驚いていた。


黒髪の兵士

「えっ!?じゃあなんで使わないんですかぁ!」


セルネス

「・・・最後に使ったのは数ヶ月前ですし、

発動確率が五分五分の技をこんな所で使うなんて...」


頼りない口調で言い訳をするセルネスの態度と、

一発逆転の可能性がありながら

試そうともしない神経がハチクには理解出来ず、

呆れと苛立ちからセルネスに対して声を荒げる。


ハチク

「半々なら充分だろうが!!

一か八かとりあえずやってみろ!!」


セルネス

「ハ、ハ、ハイィ〜〜!!」


ハチクの怒鳴り声に背中を押され、

セルネスは覚悟を決めて反転する。

ハチクと兵士も立ち止まって、

セルネスの後方で剣を構える。



セルネス

「・・・・ゴクッ」


木々の隙間の暗がりを見つめながら、

セルネスは深呼吸をして息を整える。


そして剣を空に突き上げると、

グルグルと剣先を回し始めた。


セルネス

「聖なる風よ。

セルネス・グリーフネスの名の元に、

我が身の全てを刃に込めさせ給え!」


呼び声に答えるように、剣が白く発光し、

セルネスの身体から緑色のオーラが漂う。

すると、今度は脚を開いて右足に重心を乗せる。

右手剣を手首で回転させ、

空いている左手を指先までピンッと

森の奥目掛けて伸ばす。


セルネス「フーッ..スーッ...ハーッ」


目を閉じて、手元に集中する。


《カサカサカサカサ》《カサカサカサカサ》


《ギリリリリリリ!!》

《カサカサカサカサ》 《カサカサカサカサ》


《ギリギリリリリリリ!!》


キリエバイトの足音と威嚇音が

すぐそこまで来ている。


黒髪の兵士

「間に合うか・・・」


兵士とハチクが固唾を呑んで見守る中、

次第に風が剣に集まり、セルネスは目を見開いて叫ぶ。


「「エアロ・ブレイーーズッ!!!」」


セルネスは手首の回転を止めてしっかり柄を握ると、

思いっきり剣を振りかぶった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【 「 ! 《!ブワッ!》! 」 】


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



突然何かが舞い降りて来たかのような

上からの風圧で、木々は揺れ、土埃が舞う。


黒髪の兵士

「うわっ!?これが戦技!?」


ハチク

「・・・・ッ!」


ハチクの赤い袴が激しくのたうち、

小さい身体がバランスを崩しそうになる。

セルネスを中心に突風は波のように広がり、

ザワザワと葉や枝の擦れる音が遠のいていく。



《キエッ!!キエッ!!》


キリエバイト達の所にも到達したのか、

奥から鳴き声が聞こえてきた。




それからしばらく、不気味な静寂が続く。





黒髪の兵士

「やったか?」



兵士とハチクは様子を伺っている。



ハチク

「それにしても、凄い突風だったが、

攻撃自体は以外と地味だったな」


何らかの力が働いたであろう強風を

身をもって体験したハチクだったが、

言ってしまえばただの風以外の何ものでもなかった。


ハチクは何か腑に落ちず、

ふとセルネスの方を見ると、

何やら顔を赤くして気まずそうな顔をしていた。

ハチクの視線を感じたセルネスはそんな顔を背け、

ゆっくりと前方へと歩き出した。

そして、



セルネス

「あの、そのー・・・・・・・・・



す、すみませぇぇーーーーーんん!!!!」




セルネスは一目散に走り出してしまったのだ。






ハチク・兵士

「は?」





訳が分からず彼女の後ろ姿を眺める2人だったが、

理由は直ぐに分かった。



《カサカサ!!

ガサガサ!!ビチビチ!!》


ハチク・兵士

「!?」


森から再び聞こえる不穏な物音。


2人は前方の樹々に目を凝らすと、

先程より活発に暴れ狂うキエバイト達が、

草木をかき分けて目の前まで向かって来ていた。



黒髪の兵士

「ええええーー!?

あれ失敗だったんですかぁ!!」


慌てて逃げ出す兵士とハチク。


セルネス

「ごめんなさぁーーい!

あんなにカッコつけといて、

大見得切っといて、発動しないなんてぇぇぇ!!」


セルネスは恥ずかしさと情けなさで、

涙目になっていた。


ハチク

「ったく、どいつもこいつもぉ・・・」


ハチクのジト目の瞳が白目を向きそうになる。



《タタタタッ》



次第に炎の明かりが見えてきた。


ハチク

「段々熱くなってきたな。穂波はどこに...」


少し焦りながら辺りを見回すハチク。

すると、奥の方から声が聞こえる。



フォロア

「ちょっとぉ!!まさかアンタ、

私の杖にそんなの注ぐつもり!」


リノア

「いいんです!!

これでバッチリ上手くいくんですから!!」



リノアの声に一瞬ホッとするハチクだったが、

何故か礼儀知らずな女魔法使いの声まで聞こえる上に、

この状況でリノアと口論しているのだ。


ハチク

「おいおい、こんな時にまで喧嘩しているのか」


ハチク達は声のする方へと向かう。

先程の失敗を気にして、後ろから

とぼとぼと付いて来るセルネスが何かに

気づく。


セルネス

「スンスンッ。ん?

・・・なんだか落ち着く匂いが」


焦げ臭い煙に混じって、逆に清潔感のある香りと

フワフワと浮かぶ気泡が漂っていた。


黒髪の兵士

「・・・石鹸?」



ーーーーーーーーー



フォロア

「本当にこんなんで消火出来るんでしょうねぇ!?」


リノア

「もう!とにかくさっさと

『これに向かって』放水して下さいよ!!」


言い争いを続ける2人の声に

ハチクは我慢ならず、茂みをかき分けて飛び出した。


ハチク

「おい、あんたらいい加減に...


フォロア

「聖なる水の子よ!!

地の底から、その恵みを湧き上げ給え!!

ハイドロ・ポール・シュートォ!!」


ハチクの目に映ったのは、

セルネスとは打って変わって、

大胆にポーズを決めて勇ましく叫びながら

杖を突き出すフォロア。

その次に彼女の前で細い針金の輪を

地面に置いているリノアがいた。



ハチク

(じーー・・・)



ハチクは目線を足元へ向ける。


丁度リノアが手で置いている輪っかの中に、

ハチク脚を踏み入れていた。


ハチク

(・・・・・嫌な予感が...)


ハチクは感が良かったが、時既に遅し。


リノア

「ハ、ハチクさん!どいて...」


《ファンッ♪》


リノアが声を掛けるも、

ハチクの真下には既に魔法陣が浮かび上がり、

青白い輝きを放った次の瞬間



《ブシャアアアァァーーーー!!!!》



突如ハチクの姿は消え、

魔法陣から噴水のように勢いよく水柱が湧き立ったのだ。



ハチク

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーー!!

ブブブブグブクブク!!」



大木の幹並の直径の水柱は、

ハチクを天高く持ち上げていった。


フォロア・リノア

「あ・・・・」


呆然と立ち尽くす2人の元へ、

セルネスと黒髪兵士もやって来た。


セルネス

「皆さんご無事でしたか!?って、あれ?

ハチクさんは?」


黒髪兵士

「おぉ!!な、なんですかこれぇ!?」


天高く巻き上げられた水は飛沫となって降り注ぎ、

近くの木々に燃え移った炎を弱める。

しかし、リノアの思惑は他にあった。




□一方、リノアとフォロア達の少し後ろで


穂波

「あれ?今ハチクの声が聞こえた気が・・・」


《シャボシャボ♪》


娘「穂波さん、早く泡を入れないと」


後方でリノアの作業を手伝う穂波と娘は、

布切れで石鹸を泡立て、抱えきれずに

溢れる程の泡を作っていた。


穂波

「あ、はい!では、行きましょうか!」


2人は抱えた泡をブワッと持ち上げて

水柱へと走り、その流れの中へと放り込んだ。


リノア

「来ましたぁ!フォロア!!」


フォロア

「わかってるわよ!!バブルアップ!!」


呪文を唱えると、フォロアの杖の皿に入った液体と

リノアの手元の輪から大量の泡が溢れ、

水柱が段々と白くなる。


《ブシャアアアーーーーーー!!》


高く噴き上がった石鹸水が更に泡立ち、

泡の雨となって周囲の森に降り注いだ。


リノア

「よし!これでいい!」



《モコモコモコモコ♪》


《ベチャベチャッ!!》


泡の勢いはとどまる所を知らず、

遂には水柱自体が巨大な泡の塊となって木々の

間へとなだれ込む。


穂波

「おぉとっとっ!?」


リノア

「うわぁっ!これは予想以上に〜〜!?」



《ブワァァァァォォーーーーーーー》


押し寄せる白い泡に、全員が飲み込まれた。


ケイン

「おーい!みんな無事かーい?」


セルネス

「ま、前が見えません」


フォロア

「うっ!目に入ったわよ!最悪!!

どうなってんのよこれ〜〜!?」


顔を服の袖でぬぐい、

身体を埋もらせている泡を払い除けて、

何とか目を開くことが出来た。


フォロア

「・・・真っ白じゃないの」


木の上や地面に積もる泡は、

まるで雪景色の様に一面を白く染めていた。

草木に引火していた炎も泡に包まれ、

酸素を失った事で鎮火されていく。



穂波

「うわー♪軽い雪みたい!」



「こんな魔法、初めて見ました♪」


泡に埋もれながらも楽しそうに浮かれる2人だったが、

穂波は大事な事を思い出した。


穂波

「あれ?そういえばハチクは何処に?

セルネスさん達と一緒だったんじゃあ....」


リノアとフォロアも、水柱に巻き込まれた

ハチクの事を思い出して、辺りを見渡す。


リノア

「あああっ!そうでした!

彼女はどこに飛ばされて...」


フォロア

「・・・あー、あれじゃないの?」


フォロアが杖で示した先には、

脚をくずして座りこんでいる泡だらけの

ハチクの姿があった。


穂波

「ハチク!?無事ですか〜〜〜!!」


ハチク

「 ゴホゴホオェェェェェ・・・・最悪だ。

体液まみれの服は綺麗になったが....

ゲボッケホッ!!」


ハチクは石鹸が入る前の水を大量に飲んでむせて、

泡で目を赤くしていた。


お姉さん座りで着物は濡れて白い泡にまみれ、

顔を赤くして涙目になっているハチクの姿に、

ケインと黒髪兵士はつぶやく。


黒髪の兵士

「なんか・・・ちょっと」


ケイン

「ああ・・・色っぽいな...」


フォロア

「ケッ( -᷅_-᷄ )」


《ボカッボカ!!》


ケイン・黒髪

「イテェー!!」


馬鹿な事を言っている2人を見て、

リノアはいつも通り紳士的であろうとする。


リノア

「こ、これを...」


リノアは自分のローブを肩から脱ぎ、

穂波に渡した。


穂波

「ありがとうございます。

ハチク、これで拭いて下さい」


ハチク

「ああ、すまないな」


フォロア

「・・・ところで、この泡の後始末どうすんのよ?」


フォロアは厄介そうな顔で周りの泡を見る。


リノア

「泡なので、時間が経てば自然に消えますよ。

それに植物由来の石鹸だから、環境への

影響もありませんよ!

だけど、虫にとっては...」



その言葉で一同はキリエバイトの存在を

思い出して警戒する。


ところが、リノアが指差した先には

泡に埋もれて痙攣している何十匹もの

キリエバイトが仰向けに裏返っていた。

兵士のケインは気持ち悪そうに剣で

つついて確認してみる。


ピクッ!ピクッ!!


ケイン

「ウゲェ・・・コイツらもう大丈夫なのかい

リノアさん?」


リノア

「ええ。虫類は、身体の両脇に空いてる

複数の穴で呼吸してるらしいんだ。

だから泡でそれを塞いでしまえば、

窒息死するってわけさ!」


得意気に話すリノア。


穂波

「まさに一石二鳥ですね♪」


ケイン

「スゲェ!!リノアさんって、

マジで凄い魔道士なんじゃないですか!?」


ケインは興奮した様子で、リノアを褒める。


セルネス

「いつの間にこんな技術を・・・

流石ですねリノア殿」


セルネスも感心して、優しい笑みを浮かべている。


そして気になるのは、

プライド高いフォロアの反応だった。

穂波とハチクは彼女の様子をうかがうが、

彼女は以外にも素直だった。


フォロア

「まぁ、火事を食い止められたのは

確かにアンタのおかげだわ。

泡で消火するなんて・・・

私には到底思いつかないもの」


リノア

「あ・・・・・・ありがとう。

でも、君の水魔法がなきゃ上手くいかなかったよ。

複数の属性の魔法をあんなに使い分けられるなんて、

流石は従者の魔法使いだね」



フォロア

「フンッ!当然よ!

この私は王立アカデミーの主席卒業者こと、

フォロア・ピュアートなんだから!」


互いに相手を認め合った2人。

自然と皆の顔が明るくなる。

度重なる危機が去り、

緊張の糸が解けて安堵した一同は、

ようやく帰路につくのだった。

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