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スノードロップな君が読む物語 ~Record the change of the world~  作者: フリーライダー
転 各々の思い
32/84

24.多才の魔法使いと奇策の魔道士


森で果物屋の娘を捜索していた穂波達4人は、

カマキリ型の怪物『キリエバイト』

の群れに遭遇してしまう。

一行は囮役と捜索役の2手に分かれ、

ハチクはリノアと共に森の中へと

逃げた娘と兵士の行方を追っていた。



ーーーーーーーーーーーー



リノア

「ええーと、消火に使えそうな物はーーー

あ〜〜っと、これだ!!

ってぇー!水が無いと意味がないんだったぁーー!!」


ハチク達と別れてから、ずっとこんな調子で

リノアは慌しく身に付けた道具をああでもない、

こうでもないと取り出していた。



穂波

「リノアさん、それも持ちますよ!」


穂波は横でそんな彼のカバンや小物入れを

持ちながら並走していた。


リノア

「すみませんホナミさん!

おーーい!!誰かいないかぁー!!」


何度こうして呼びかけても、

一向に応答がない。

その代わり、前に進むほど熱気と煙、

むせるような焦げ臭い匂いが強くなってくる。


穂波

「ゴホッ、ゲホッ!!」


リノアは手で口を塞ぐが、

どのみち走り続けた2人の体は

新鮮な酸素を必要としていた。



リノア

「ウグッ・・・こうなったら、

ホナミさん伏せて下さい!!」


いきなり指示された穂波は

慌ててしゃがみ、頭を手で覆う。

リノアは腰のホルダーから、

鳥の翼のように羽根が並んだ一本の

羽ぼうきを取り出した。

そしてリノアは利き腕を上げ、

その羽ぼうきを掲げる。


リノア

「(頼むから、近くにいないでくれよ…)

聖なる風よ!我が手を翼に、

羽ばたかせ!シエルブラストゥ!!」


詩のような文言(もんごん)の後に呪文を唱え、

リノアは羽ぼうきを力一杯振り下ろした。


~〜〜〜~〜 ~〜~~〜~〜~


《ブゥゥウオオオオーー!!》


〜~〜~〜~ ~〜~〜~〜~〜~〜~〜~


穂波は吹き飛ばされそうな

緑の帽子を抑える。


小さな扇のひと振りが突風を巻き起こし、

辺りの熱気や煙は四散して、臭いも吹き払われた。


穂波

「うぅ・・・凄い」


穂波はこの世界で見る始めての魔法に感動する。

ところが、当の本人は痛そうな顔をしていた。


リノア

「イッテテ。やっぱり1回キリかぁ・・・」


右手に握る羽ぼうきは、

持ち手以外ボロボロになっていた。

リノアはそれを投げ捨てる。


穂波

「助かりましたリノアさん!

流石ですね!おかげで先に進めますね!」


リノア

「ええ、行きましょう!・・・ッ」


口元が微かに歪む。

リノアは羽ほうきを握っていた右手を

握り締めて、再び歩みを進めた。


そして遂に、茂みの向こうに道が見えた時、

それは聞こえた。



《シュバァァァーーー!!

シューーーゥゥ!!》



それは燃える音ではなかった。

再び視界を曇らせるモヤも、

焦げ臭い有害な煙とは違うものだった。


穂波

「ん?今度は違う音がしてきましたよ!

それに、これは煙じゃなくて...」


穂波の火照った肌が心地よさを感じる。

熱されて乾いた空気の中にいたが、

今漂っているモヤは湿気を含んでいるようだ。


リノア

「・・・蒸気か?

木が蓄えた水分が蒸発しているのか、

それとも誰かが...」



《キリキリキェェェーー!!》


穂波・リノア

「ワッ!?」


突然、耳に飛び込んできたキリエバイトの

鳴き声に2人は驚いてビクつく。

ところが、その直後に聞こえてきたのは、

女性の怒鳴り声だった


???

「う・る・さいっ!!

この汚らわしい虫けらがぁーー!!

ボルテジ・ハイ!サン!・ヒートォウェーーブ!!」


少し先の木々の隙間から炎が燃え広がるのが見える。

その火に包まれた幾つかの黒い影が

のたうち回っては次々と姿を消していく。


《ギシャアーーー!!!》


リノアと穂波は走って茂みを抜け、開けた道に出た。

2人が左右を確認すると、森の奥へと続く方の道に

二人の女性と1人の兵士がいた。



女性

「キャッ!」


片方の女性が穂波達に気付いて声を上げる。

おそらく彼女が、探していた果物屋の娘だろう。



茶髪の兵士

「ちょっ!また後ろから来....て・・・人?」


兵士は穂波達の存在に気付いたようだ。


穂波達はやっと見つけた2人の元へと駆け寄るが、

そこには信じられない光景が広がっていた。


???

「どうかしたのケイン!?

こっちは着けた火を消すのに忙しいん

だから、

1、2匹ぐらいなら何とかしなさいよ!

男なんだから!

本当にヤバくなったら、私の方に来なさい!

一気に消し炭にしてやるわ!!」


ケイン呼ばれた茶髪の兵士に声を荒らげているのは、

後ろにいる女魔法使いのフォロアだった。


何故ここにいるのかは分からないが、

彼女は娘と兵士を守る為、

右手に赤い宝玉を備えた木の杖と

左手に青い結晶を固定した金属の杖を構え、

森の奥側の道から湧き出て押し寄せる

キリエバイトの大群を、たった1人で相手にしていたのだ。


右手の木の杖で敵に炎を放ち、

左手の金属の杖で手当り次第に放水しているフォロア。

杖といっても2本とも上部に重心があり、

それなりの重さがありそうだが、

フォロアは女性でありながらそれを片手で持ち上げ、

両手で2本の杖を自在に振り回している。


今まで見てきた高圧的で自信に満ちた

彼女の態度は、実力の裏返しだったのだと

穂波は納得した。

そんなフォロアの勇ましい姿に、

リノアも圧倒されていた。



リノア

「焼却と消火を1人で、同時にやるなんて...」


穂波には魔法の個々の凄さは分からないが、

魔法を使えるリノアが見とれている様を見るに、

相当な技術なのだろうと察する。


穂波

「わ、私は魔法の事はあんまり分からない

ですけど、やっぱり器用な技なんですね」


リノア

「えぇ、流石は従者の魔法使いです。

だけど・・・あんな調子じゃあ消火が間に合わない!」


フォロアの放つ炎魔法は、複数のキリエバイトすら

焼き尽くす強力な火力だが、

それ故に周りの木々への燃え移りも早かった。


フォロア

「ハァ・・・クソッ!!」

フォロアは額から汗を流しながら、

カバンから取り出した瓶薬を飲み干す。

瓶を投げ捨てると、また水魔法を必死に放つ。

しかし、火の勢いが収まった場所から、

キリエバイトが向かってくる。


フォロア

「エル・シュートッ!!」


木の杖が緑色のオーラを纏う。

フォロアは杖を軽く回してオーラを渦巻かせ、

勢いよくスイングすると、

緑の旋風がキリエバイト達を蹴散らした。


リノア

「うわぁ!か、風魔法まで!?」


リノアの思わず出た声で、

フォロアが後ろの2人の存在に気がつく。


フォロア

「ん!? アンタ達やっと来たのね!

遠くの突風はアンタでしょ?

さっさとこっちに来て、手伝いなさい!」


フォロアは相変わらずの口調でリノアに命令する。


リノア

「ムッ・・・わ、わかってるよ!!

でも、どうして君がこんな所に...」


穂波

「フォロアさん、私達を助けに来てくれたんですね!!」


穂波は羨望の眼差しをフォロアに向ける。


フォロア

「え、ええそうよ!

感謝しなさい♪…ってそこぉー!!

エル・シュート!!」



《ギシャァァー!!》


「きゃっ!?」


兵士ケインと娘の間から、

茂みの奥にいたキリエバイトを狙い撃った。


ケイン

「ふぅ・・・大丈夫かい?」


兵士ケインは横で尻もちをついている娘に

手を差し伸べる。


「ええ、ありがとうございます」


フォロア

「気を抜かないで、しっかり守りなさいよ!!」


ケイン

「す、すいません!」


リノア

「にしても、

この森にどれだけのキリエバイトがいるんだ?

セルネスさん達は大丈夫かな」


フォロア

「とりあえず今は自分達の身を守る事を考えなさい。

このままじゃ、全員虫の餌よ」


フォロアが前に向き直る。

木々の隙間の暗がりから、赤い視線が点々と光っている。

しかし、リノアにはそれ以上に

周りの火の勢いの方が危うく思えた。


リノア

「それか、丸焼きですね」


フォロア

「ウッ...仕方がないじゃない!!

燃やすのが一番効果的なんだから!!」


リノアの皮肉に、フォロアは痛い所を突かれて、

開き直る。


リノア

「別に君を責めてる訳じゃないですよ。

実は、僕にいい策があります。

君の水魔法と合わせればキリバイトを一網打尽に

出来る上に、この火事の拡大も止められるはず!

ここは協力しましょう!」


リノアの提案に対してフォロアは怪訝(けげん)な顔をしたが、

力強く言い切った彼の眼差しは真剣なものだった。

それに、状況は一刻を争う。他に道はなかった。



フォロア

「・・・分かったわ。アンタの策に任せるわ」


穂波

「私も手伝います!」


ケイン

「俺も!!」


リノア

「ありがとう、じゃあ...」


フォロア

「ちょっと!2人ともただの一般人よ!

しかも1人は大して戦力にならない新米兵士。

一体何が出来るって言うのよ!!」


穂波は気にしていなかったが、

兵士のケインは見るからに落ち込んでいた。


リノア

「き、君はさっきから本当に失礼だな!!

もう少し言い方ってものが...」


穂波

「リノアさん、フォロアさん」


声を荒げる2人を前に、

穂波は冷静な口調で話し掛ける。


リノア・フォロア「?」


穂波

「私は戦えない。

守られる立場なのは重々承知しています」


フォロア

「だったら!…」


穂波

「でもだからこそ、出来る事は何でもさせて下さい!

身軽で足の速さには自信があるので、

囮にもなれますし!!」


リノア

「そ、そんなことさせられませんよ!!」


ケイン

「それなら俺が!!どうせ力が及ばないのなら、

せめて兵士として危険を冒すのは俺の仕事だからね!!」


そう言って胸を張るケインを、娘が引き留めようとする。


「そんな!私のせいでこんな所まで

連れて来てしまったのに、

もし貴方に万が一の事があったら・・・」


責任を感じ、瞳を潤ませる娘。

額に汗を滲ませるほどに熱された森の中、

各々が至らぬ身であるにも関わらず、

互いを心配して助けようとしている。

そんな光景に、フォロアは眉間にシワを寄せて

頭を抱える。


彼女の表情を見て、リノアは何を思っているのか

不安になる。

しかし、彼女が感じているのは怒りでも、

呆れでもなかった。

フォロアはいつもとは少し違った目つきで

全員に向き合う。


フォロア

「・・・アンタらの覚悟はわかったわ。

だけどねぇ、私達がそんな事させちゃいけないのよ。

何もしない、奇跡を祈ったり、他人任せの連中なら

まだしも、アンタらみたいな・・・

誰かの為に尽くせる人の・・・

届かない願いを叶える為にアクトは・・・

ワタシは!!」



《ギリリリギュリーー!!》


フォロア

「私は魔法使いになったのよ!!!」


耳障りな虫の雑音が話を遮った途端、

フォロアは体をひるがえ)し、

その元凶へと刺すような視線と杖を向けて

瞬時に呪文を唱えた。


「アイス・ショット・ニードル!!」


金属の杖から青いオーラが出て、

小さな氷の矢を作り出し、

キリエバイトへと射出される。



《ギシャアァーー!!》


鋭い氷の矢は、容易くキリエバイトの頭部や体を貫いた。



リノア・ケイン

「!!」


彼女の気迫に、男であるリノアとケインですら

思わず息を呑む。


フォロア

「従者として、アンタらに危険を冒させるのは、

私のプライドが許さないわ!!」



フォロア・ピュアートは穂波から見ても、

高慢な性格で、自分は優れていると自負し、

周りを見下している印象を受けていた。

しかし、実際に彼女が優秀な魔法使いである事は

事実であり、自身の力と立場に対して、

責任と信念を持っている事を、

彼女の行動と言葉は物語っていた。


穂波

「フォロアさん。やっぱり貴女は強くて、

優しい人ですね・・・

でも、1人で背負わないで欲しいです。

ここにいる全員で、全力で生き延びましょう!!」



ケイン

「ああ、その通りだね!

俺はとにかく不意打ちされない様に、

索敵に集中するよ!倒せなくとも、皆の盾になる!!」



「わ、私も・・・ただ、守られるのは嫌です!!

何かお役に立てれば...」


リノア「・・・・・・」


フォロアの力を持つ者としての使命感。

各々がこの状況で懸命に出来る事をしようとする姿。

それらを目の当たりにしたリノアは手袋の袖を引っ張り、

メガネの位置を中指で直して意気込む。


キリエバイトの襲撃は収まっているが、

それは魔法での放水が止んでから、

更に周囲の炎の勢いが増しているからだ。

いつまでも立ち話をしている余裕はない。

リノアは話しをまとめようとする。


リノア

「ではフォロアさんは引き続き消火と群れの相手を。

ケインさんには、四方からの来る敵の索敵をお願いします!

そしてホナミさんとお嬢さんは僕の作業を手伝って下さい!」


フォロア

「アンタが何をするのか知らないけど、

彼女らは魔法の素人なのよ?」


フォロアが念を押した事は、

穂波達にとっても気になるところだった。


リノア

「大丈夫です。一応確認するけど、

君のその結晶の付いてる鉄の杖には

霊薬を入れる用の受け皿があるだろ?」


フォロアが左手に持っている杖には、

結晶が固定されていて、

下には結晶よりも大きめの皿が敷かれていた。


フォロア

「ええ。補助用の霊薬を注いで使う仕様だけど・・・」


リノア

「ならいけるはずだ。僕が彼女らに頼むのは、

魔法じゃない。何処の家庭でもやる事さ!」



そう言って、リノアはリュックから幾つかの物を

取り出した。

それらはどう見ても大した物ではなかったが、

一同はリノアを信じて行動を開始するのだった。


近日中に魔法使いフォロアと自称魔道士リノアの

イラストと紹介をあげますので、

お楽しみに〜ヾ(o゜ω゜o)ノ゛

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