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スノードロップな君が読む物語 ~Record the change of the world~  作者: フリーライダー
転 各々の思い
30/84

22.子供からの緊急クエスト


□聖堂の裏手側にて

帰り道に偶然再会した騎士のイノスから、

長い話を聞いてきた穂波(ほなみ)達は、

待たせているセルネスの元へと急いでいた。


穂波

「セルネスさーん!

お待たせしましたー!」


聖堂裏の敷地で、馬車に乗っている

セルネスが気付いて手を振る。

膝上には本が置いてある。

暇つぶしに読んでいたのだろう。



セルネス

「お帰りなさい穂波さん、ハチクさん。

では図書館に戻りましょうか」


セルネスは待たされた事に対して

特に気にする様子もなく

馬の手綱(たづな)を握って、出発に備える。


穂波

「本当にお待たせして

すいません、セルネスさん!

お昼先食べてきちゃって、

お腹空いてませんか?」


セルネス

「いえいえ、こちらも食べて

来ましたので、お気になさらず

・・・フフフ♪」


街を観光するように勧めた張本人とはいえ、

昼食の時間をまたいで待たされたのだ。

不快に思ってもおかしくはないはず。

ところが、

セルネスはむしろ上機嫌だった。

彼女の穏やかな笑顔を見て

穂波はホッすると同時に、

性分でどうしても気になってしまう。


穂波

「セルネスさん。私達がいない間に、

何かいい事でもあったんですか?」


セルネス

「あ、いえ、大した事ではないんですが...」


そう言いつつも、セルネスは素直に

起こった出来事を話しながら、

馬車を発車させた。



《パカラッパカラッ》



************


時は(さかのぼ)り、

□聖堂裏にて


丁度お昼に

穂波達がフォロアと菓子屋にいた頃、

セルネスは馬車で本を読んでいた。


セルネス

(遅いなー、穂波さん達。

でも言い出しっぺは私だし、仕方ないかぁ。

折角だから馬を置いて、

私も一緒に行けばよかった。


・・・・お腹空いたなぁ)


セルネスは馬鹿真面目に残った事を

後悔しながら、一人の時間を持て余していた。


すると、聖堂の正面からゾロゾロと、

巡回任務から帰ってきた騎士達が

歩いて来た。

セルネスは馬車から出て、挨拶をすると、

騎士達も彼女に気づいて会釈する。

近づくと、先頭に立っているのは

騎士隊長だった。


隊長

「誰かと思えば、セルネスか。

今日は確か、休暇だったはずだが?」


セルネス

「あぁ、はい。その通りですが、

朝から旅人さん達のオラコールの観光を

お手伝いしてるんです」


隊長

「観光の手伝い...」


セルネスは隊長が考え込んでいるのを見て、

正直に話してよかったのものか心配する。


(隊長は堅物だからなぁ・・・

もし大聖堂に部外者を連れ込んだのが

バレたら・・・)


隊長

「・・・セルネス」


隊長が近づいてくる。

セルネスは隊長に問い詰められた際の

言い訳を、頭の中で必死に考え溜めていた。

しかし、


隊長

「素晴らしい!」


結局それは必要にならなかった。


隊長の予想外の言葉に、セルネスは勿論、

他の騎士達も目を丸くしていた。


隊長

「己の時間を割いてまで

人々に献身的に尽くすとは、

まさに騎士の鏡ではないか!


君はいつも控え目で地味で目立たないから、

内心ずっと心配していたのだが・・・

いやはや関心したぞ!

皆も、セルネスを見習うように!」



************


セルネス

「ーーーーって、褒められたんです。

それから、

隊長がお昼をご馳走してくれましてー」


穂波

「そうだったんですか。

そりゃあ嬉しいですよねぇ♪」


ハチク

「・・・一部は失礼な事を言われていた

気がするが」


相変わらずのジト目で呟くハチク。


セルネス

「まあ、本当のことですからね。

気にしてません。

隊長は先祖代々騎士の家系で、

まだ若いのに誰よりも騎士らしく

誠実で、堅物なんです。

だから正直一緒にいると

気が抜けなくて疲れるんですが、

やっぱり認めてもらえると嬉しいですね」


初めて見るセルネスの嬉しそうな微笑み。


確かに彼女は物静かな性格だが、

人に褒められたことに対して

こんなに嬉しそうに微笑む顔を見ると、

とても純粋な女性だということがわかる。


穂波もそんな彼女につられて笑顔になり、

馬車は和やかな雰囲気で日差しで暖かい

オラコールの街を降りて行った。



ーーーーーーーーーーーーー



それから少し後、


□リノアの図書館前にて


穂波達を乗せた馬車は

図書館の敷地に帰って来た。


《パカラッパカラッ》


2人は馬車の中で立ち上がり、

セルネスに案内の礼を言おうとした。


ところが、


セルネス

「到着しましたが・・・

なんだか騒がしいですねぇ」


穂波は耳をすませる。

すると、外から子どもの騒ぎ声が聞こえた。


穂波

「何事でしょう?」


馬車を降りる穂波、ハチク、セルネスの3人。


裏庭を歩いて図書館の方へ向かうと、

玄関先でリノアが3人の子供に囲まれていた。



少年

「なあ、頼むよぉ!リノアー!!」


リノア

「落ち着いて!心配するのは分かるけど、

もう少し待ってみても・・・」


少女

「夕方になってからじゃ遅いよぉ!!」


よく見ると、聖堂に向かう道中に

穂波と話しを聞く約束をした子ども達だった。


穂波

「どうしたんですか?」


子ども達の注目が穂波の方へ向く。

リノアは助かったと言わんばかりの

顔で穂波達を見る。


リノア

「あっ!穂波さん、ハチクさん。

それにセルネスさんも丁度いいところに!

実は…」


少女

「果物屋さんのお姉ちゃんが森に行っちゃったの!!

お客さんに『ベリーチュの実』が欲しいって

頼まれたから」


リノアの代わりに、割って入ってきた

子ども達が口々に説明し出す。


少年

「でも今はお店に置いてないから、

うちの姉ちゃんが森に取りに行って来るって」


子ども達の話を要約すると、

果物屋の娘が客に季節外れの果物を頼まれて、

森に探しに行ったのを弟の少年が心配している

という訳だ。

ここまで聞く限りでは、

大した事には思えなかったのだが、



穂波

「1人で行っちゃったんですか?」


リノア

「それがですね、一応は兵士が2人ほど

付き添ってくれたみたいなんですが」


ハチク

「それなら尚更、安心なんじゃ...」



少年・少女「ダメぇー!!!!」


大声をあげる子ども達。

何事かと、穂波達3人の視線が集まる。


少年

「兵士の1人は知らない人だけど、

もう一人は怪しい変な奴なんだよ!

アイツは最近この街に現れて、姉ちゃんに

付きまとってるんだ!

しかも兵士の癖に、ダサくて頼りないしー!」


少女

「あの男の人と一緒だなんて、

きっとお姉ちゃん(たぶら)かされちゃうよー!!」



リノア

「『誑かされる』って、

何処でそんな言葉を覚えたんだよぉ」


セルネス

「ちなみにその兵士の名は?」


いつになく真剣な表情のセルネス。

穂波は『騎士としての彼女』に頼もしさを感じた。


リノア

「1人はケインという名だそうです。

わかりますか?」


名前を聞いて、

セルネスは記憶を探ってみるが、



セルネス

「・・・聞き覚えがないです」


リノア

「話を聞くかぎり若い新人兵士らしいです。

でもこの街で兵士や聖騎士は目立ちますから、

大体は存在を知られてるはずなんです。

なのに、セルネスさんまで知らないとなると…」



一同が(けわ)しい顔になり、子ども達が不安がる中、

ハチクはお構いなしに結論を言い放つ。


ハチク

「・・・その子らの話も、

あながち間違いじゃないかもな」


子ども達は泣きそうな顔で

再びリノアにしがみついてくる。


少年「リノアー!!」

少女「お姉ちゃんがぁー!!」

少年「可哀想にぃぃぃぃぃぃぃ!!」


耳をつんざくような甲高い子どもの声に

リノアは堪らず、なだめようとする。


リノア

「分かった!分かったよ!大丈夫だって!!

と、とにかく僕が森に行って探して来るよ!」


リノアがそう言うと、

子ども達はようやく落ち着いた。


セルネス

「私も同行しましょう」


リノア

「ありがとう、セルネスさん。

じゃあ僕は準備して来ますので、少しお待ちを」


リノアは図書館へと戻っていった。

代わりにセルネスが子ども達をなだめる。


残された穂波とハチク。


穂波「・・・」


子ども達を見つめる穂波。

ハチクには彼女が何を考えているか。

何をする気なのかは容易に予想がついた。


穂波

「ハチク、私達も一緒に行きましょう!」


分かってはいたが、

ハチクは浮かない顔をする。


ハチク

「外は危険かもしれない。

勇者やこの世界の変革に関係のない事で

リスクを冒すなんて、どうかしてるぞ」


穂波はただの17歳の女の子だ。

ハチクは剣を(あつか)えるものの、

自己防衛以上の事は期待出来ないと

自分で分かっている。

異世界で他人の事まで救えるほど、

2人は強い訳ではないのだ。

穂波とて、その事は重々承知している。



しかし、それでも穂波は。


穂波

「もし、2人の兵士が悪い人達だったら、

セルネスさんとリノアさんだけじゃ

大変じゃないですか!

最悪、お姉さんを人質にしてくるかも

しれないです。

人は多い方が絶対にいいはずです!

あの子達の為にも」


真剣に訴える穂波の剣幕に、

押されるハチク。


穂波

「こういう世界じゃ、

よくある事なのかもしれません。

今この瞬間にも、過酷な運命に(さら)されている

人々は山ほどいるのでしょう。

・・・でも目の前で手を伸ばせる人が

いるなら、私は力になりたいです・・・

いざという時は、ハチクの方が強いので、

頼ってしまうかもしれませんが・・・」


穂波の言葉は頼りないようでいて、

力強い意思が確かに込められていた。

流石のハチクも、

ここまで言われては反対出来ず、

頭を掻きながら答える。


ハチク

「ふぅー・・・わかったよ穂波。

私は何処であろうと、

お前の旅に付き合ってやるさ」


穂波

「わがまま言ってごめんなさい・・・

そしてありがとうです!!」


穂波は嬉しさと申し訳なさから、

ハチクに頭を下げると、

リノア達に同行させて貰えるように

頼みに行った。


リノアとセルネスは、心配しながらも

穂波の申し出をありがたく受け入れた。




少女「おねいさん・・・」

ハチク「!」


一人の少女がハチクに声を掛ける。


少女

「お姉ちゃんを助けに行ってくれるの?」


ハチク

「まぁな」


それを聞いて、姉を心配する弟は

必死で懇願する。


少年

「お願いします!!姉ちゃんを!

必ず連れて帰って来て下さい!!」


穂波はハチクの反応を、

玄関から見守っていた。





ハチク

「・・・・約束は出来ないな」


少女・少年「そんなぁー!!」


遠くから見ていた穂波が頭を抱える。


穂波

「あちゃー!」



必死な少年を前にしても、

ハチクは根拠のない言葉を言うような

人間ではない事を、彼女が1番よく知っていた。

それでも、穂波は少し期待していたのだ。



そしてその期待に、


ハチクは違う形で答える。



ハチク

「だが・・・

もし一緒の兵士2人が不届(ふとど)き者だったら、

その時は......」



少年

《ゴクッ》


ハチクの顔を見上げる少年が息を呑む。

ハチクの目付きは鋭く、

ただならぬ強い思いを感じさせる。

そして、彼女は言い放った。




《男に生まれて来た事を、後悔させてやるさ》



()くして、

自称魔道士の青年 と 控え目な女騎士、

発育のいい身体の娘 と 低身長の金髪女性。

そんな4人パーティーの冒険が始まった。




13話にオラコールの挿絵を追加しましたー。

明日は勇者『アクト・レインファルト』のイラストと、

設定を掲載いたします。

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