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スノードロップな君が読む物語 ~Record the change of the world~  作者: フリーライダー
承 旅の始まり
25/84

17.出だしの良い朝


□リノアの図書館


この地の空気も冴え渡る冷たさだが、

穂波を目覚めさせたのは、

隣の部屋から聞こえる

カチャカチャと擦れ会う食器と

香ばしく何かが焼かれる

料理の音だった。


穂波は瞳を開けるより先に、

スンスンっと鼻を働かせる。


穂波

「・・・んん・・いい匂いぃ♪」


そう呟いてベッドの中でうごめく。


ハチク

「・・・っふ」


そんな穂波の様子を

先に起きていたハチクは

微笑みながら眺めるのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーー



《ガチャ》


□リノアの実験室

扉を開くと、その部屋は物であふれていた。

室内の棚は実験道具や本で敷き詰められ、

机の上では大量のフラスコや鍋が

沸いている。


ハチク

「正に実験室だな。

整理整頓されてるんだか、

されてないんだか」


ハチクの視線の先には、

部屋の中央には小さなテーブルとイスが

用意され、そこだけは普通の食卓だった。

テーブルの上には既に2人分の朝食が

用意されている。


リノア

「あ、おはようございます!」


奥から出てきたリノアは早くから起きて

いたのか、髪も服装も整っていた。


リノア

「丁度朝食の準備出来たので、

どうぞどうぞ♪」


2人はリノアに素直に感謝して、

朝食を頂く事にした。


ーーーーー


朝日が差し込む実験室。

木桶の中で洗い物をするリノアの後ろで、

穂波とハチクは朝食を口に運ぶ。


穂波

「・・・おいしー(*´~`*)」


ハチク

「・・・・・・ああ、上手いな」


フォークとナイフを握る手が進む。

この世界で食べた数少ない食事の中でも、

凝った料理のようだ。


卵料理はただの目玉焼きではなく、

ほわほわのスクランブルエッグに。


朝から胃がもたれないように、

ソーセージは丁度いい大きさに

切り分けられ、サラダに添えられている。

ぬるくない、丁度良い冷たさのミルクに

固くない麦色のパン。


食べる人の事を考えて、

調理に工夫がされているようだ。


穂波

「リノアさんは料理も上手なんですね!」


リノア

「昔から自分で料理をしてたので。

それに料理は、魔法の探求と同じぐらい

奥深いんです!

今日の朝食も全て魔法を使ったり、

食材の性質や食感の組み合わせを

考えてつくったんですよー」


意気揚々と話すリノアは楽しそうだ。


ハチク

「シェフというより、まるで科学者だな」


リノア「かがくしゃ・・・?」


穂波が「あっ」と声を漏らして、

ハチクは自分の言った言葉が、

この世界では通じない事に気付く。


ハチク

「・・・(ああそうか)

いや、気にするな。

大した向上心だという意味だ」


苦し紛れの適当な誤魔化しをしたハチク

だったが、リノアは褒められたことに

照れ出す。


リノア

「えっ!!・・・フフッ。

ありがとうございます。

僕にとって最高の褒め言葉ですー♪

ところでお2人は今日この後

何かご予定があるのですか?」


穂波はパンを頬張ったばかりの口で答える。


穂波

「ほくにありましぇ...」


ハチク

「この聖域の事を色々知りたいんたが、

ここに役に立つ資料とかはないか?」


リノア

「勿論ありますが・・・珍しいですね。

今どきそんな事を調べたいなんて。

失礼ですが、このオラコールへは何をしに...」



《カンカン♪》


玄関の扉を叩く音がした。



「ブックス殿!!朝から失礼します!!」



それは昨日、穂波達と少し親しくなった

女騎士 セルネスの声だった。


リノア

「セルネスさん?

こんな朝からどうしたんだろ」


リノアはタオルで手を拭き、

玄関へと向かう。


穂波

「あ、もしかして馬車のことかな」


ハチク

「だろうな。一晩経ってから思い出すとは」


ハチクは目を閉じてティーカップの

紅茶に口をつける。



《ガチャ》


リノアが扉を開けると、

そこには自分の荒い吐息でメガネを

曇らせるセルネスの姿があった。

彼女の淡い緑色のポニーテールも

いい加減に結ばれていて、ボサボサだ。

どうやら急いで来たようだった。


セルネス

「お、おはようございますブックス殿!

外にこちらの馬車が置いてありますが、

もしやぁ...」


セルネスは恐る恐る中を覗き込む。


穂波

「おはようございますーセルネスさーん!」


中から穂波が元気に挨拶をしたが、

セルネスはそんな彼女を見て、

逆に後ろめたさを感じる。



セルネス

「穂波さん、ハチクさん。

おはようございます・・・

き、昨日は馬車を任せて

置いてきぼりにしてしまい、

申し訳ありませんでしたぁ!」


セルネスは深々と頭を下げて謝る。


ハチク

「勇者達の相手で随分忙しかったようだな」


ハチクは淡々と食事を取りながら話す。


セルネス

「か、返す言葉もありません・・・

リノア殿、お2人を助けて頂き

ありがとうございます」


リノア

「いえいえ、お気になさらず。

にしてもセルネスさんも大変ですね〜。

昨晩は『あの勇者達』に散々こき

使われたんじゃないですかぁ?」



先程までの親切で純粋な感情を

さらけ出していたリノアの顔が

意地悪に見える。

穂波は強調して喋るリノアの話し方に、

セルネスへの気遣いとは別の。

リノア自身の特別な思いを感じた。


リノア

「いえ、そういう訳では...」


ハチク

「馬車の事はさておき、

別に私達にまで気を配る必要はない。

ただあいつらに付いてきた一般人だ。

そっちにも色々仕事があるだろうしな」


セルネスに見向きもせず、

食べ終わった食器を重ねるハチク。

あまりにも素っ気ない態度にも見えるが、

長い付き合いの穂波には、

それがハチクなりの気遣いだと

わかっていた。


しかし、



セルネス

「・・・そ、そうですか」


案の定、冷たい印象を与えてしまい、

セルネスは寂しそうな返事をする。

穂波は慌てて言葉をかける。


穂波

「セ、セ、セルネスさん!

ハチクは別に怒ってたり、鬱陶うっとうしく

思ってる訳じゃないですからね!

私達ただでさえアクトさんに

無理言って連れて来てもらって、

兵士や騎士の皆さんにもお世話に

なったので、これ以上何かしてもらうのは

わ、悪いですからぁ。

アハハハッ」


早口でなんとか弁明する穂波。

彼女の優しさにセルネスはホッとする。


セルネス

「な、なるほど。

でも私は今日は休暇を頂いてますので、

何かお手伝い出来ればと...」


セルネスは騎士としてなのか、

2人に好意と興味を抱いているからか、

穂波達の役に立ちたがっていた。

そんな健気なセルネスを見兼ねて、

リノアは提案する。


リノア

「では『聖堂』にお連れしては?

聖域について色々知りたいみたいですし、

実際に観てみるのは貴重な体験になりますよ」


穂波

「聖堂!!そこって確か、

アクトさんが儀式をする場所ですよねぇ!?」


物事に基本無関心なハチクも、

重要そうな場所に行けるかもしれない

となると、耳を傾ける。


セルネス

「なっ!?・・・さ、さ、流石に

そんな簡単に部外者を入れるわけには....」


セルネスは予想外の展開に困惑し、

焦って断ろうとする流れだったが、


穂波

「聖堂・・・(*´・・`)」



ハチク

「残念だったな、穂波」


あからさまにガックリする穂波を

ハチクはわざとらしく励ますと、

セルネスは頭に手を当てて考え込む。


セルネス

「うーーー・・・わかりましたぁ。

まだ朝ですから、

こっそり入れば問題ないでしょう。

私がご案内しますぅ」



穂波

「本当ですか!ありがとうございます!

やったねハチク♪」


ハチク

「ああ、良かったな」


人事のように言うハチクだが、

内心では穂波の調査がはかどるのを

期待していた。


リノア

「では僕はここで、役に立ちそうな資料を集めておきますね」


穂波

「あっ、よろしくお願いします!

じゃあお言葉に甘えて、行って来ますー!」


セルネス

「はい、では馬車へ。

リノア殿。私の馬はこちらに置かせて頂きますね」


《ガチャ》


《バタン》


客人2人が出発して、図書館は普段の

静寂を取り戻す。

リノアは1人ぼっちで少し寂しさを

感じたが、すぐにまた動き始める。


リノア

「さて!今日やる事はぁ・・・」


リノアは懐からメモを取り出し、

文字で埋められたページの隙間に

予定を書き足す。


リノア

「穂波さん達の為に書物を集めてー。

いつ帰って来てもいいように

食料を調達しておいてー。

あっ、あと新しく作った井戸と肥料の

感想を聞いて回らなきゃ!

今日もやる事が一杯だ!

頑張りますか!」



こうして、

穂波とハチクの3日目の旅が始まったのだった。





同時刻

□昨夜、隊長が破壊した門にて


門番

「フワァ〜〜〜・・・ねむ」


「なんで俺らが徹夜なんだよ。

隊長連れて来いっつーの。ったく!」


木製の扉がなくなり、

ただの出入り口になった門を、

門番達が木箱の上に座って

見張っていた。

2人はあまりにも無防備な門の前で、

徹夜で警備するように頼まれたのだ。


門番

「今日から修理終わるまで休暇

もらえるって言われても、こんなの

割に合わねぇよ」


門番の1人が腰を上げて、

どこかへ行こうとする。


「おいおい!大工達が来るまで

離れるなと言われただろ!?」


「もう人通りも多くなったから

大丈夫だって。

そもそも、こんな街に誰が来るって

いうんだよ...」



???

「やぁ、兵士諸君」




門番「「ダァッ!!??」」



2人は突然外から声を掛けられて、

驚きのあまり飛び跳ねる。

思わず姿勢を正して、敬礼までする。


ところが

外から門を潜って入って来たのは、

緑色の大きめの襟付きコートを羽織った、

白髪の老人。


いや、老人と呼ぶにしては

背筋は伸びていて、身なりも きちん

としている。

老紳士といった方が正しいだろう。


鉄製なのか、手には見慣れない銀色の

カバンを持っていた。




老紳士

「朝からご苦労!調子はどうだねぇ?

んん?顔色が悪いぞ。しっかり休み給え。

質の良い仕事は、質の良い睡眠から

始まるのだよ」


そう言って門番の肩に手を置いて、

アドバイスをすると、

老紳士はそのまま通り過ぎて

街へ入ろうとする。


だが、彼らも一応は門番であり兵士だ。

街の外から来た怪しい男を呼び止める。


「ちょ、ちょっと爺さん!

困るよこっちから入られちゃ!」


老紳士

「んん?何か手続きが必要かねぇ?

だが、老体の身でここまで来るのは

大変だったのだ。

せめて、先に休ませてくれんかねぇ」


門番

「あーー・・・どうする?」


「こんなところまでわざわざ来た

年寄りを無下にもできないだろ。

爺さん、もう少し歩けるなら、

この先の俺の叔母さんの店で休んできな。

茶の一杯でも出してくれるだろう」


「おお、それは有難い。

是非寄らせてもらおう」



顔にシワを寄せて疲れた様子を見せる

老人に、門番達は仕方ない様子で

通行を許可した。


門番

「何かあったら、またここに来いよー。

助けてやるから」


老紳士は会釈して、街へと歩いてゆく。



「いいねぇ。

フランスにいた頃を思い出す・・・


しかし、残念なものだ。

この趣きのあるレンガ造りの見事な

街並みが・・・・








『明日には無残に崩れてしまうとは』



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