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スノードロップな君が読む物語 ~Record the change of the world~  作者: フリーライダー
承 旅の始まり
24/84

16.忘れさられた脅威

穂波ほなみの就寝から

少し時をさかのぼり、

彼女達がリノアの図書館に到着した頃。

時を同じくして、北の国の領土内にて。


□北の僻地へきち


雪がちらほらと振る夜。

惨劇の舞台となった雪原に

勇者護衛の任から帰還した兵士50人と

数人のハンター。

そして1人のエルフの賢者が集っていた。


隣接する森や雪原は兵士達で埋めつくされ、

朝から晩まで捜索が続いていた。


見張り

「・・・ったく、帰って来て早々

なんでこんな所に連れてこられんだい」


ある兵士は文句混じりの吐息で両手を

温めながら、その手を擦り合わせる。


ハンター

「オメェら何も聞かされてないのか?

これだからお国の兵隊は・・・

ここで獰猛どうもうな怪物が酷い殺戮を

起こしやがったんだ」


貫禄のあるハンターの言葉に

兵士の顔は更に強張り、冷気とは違う

寒気に襲われる。


見張り

「・・・マジかよ。

通りで徴兵した連中だけ、帰したわけだぜ

・・・チクショー」



そんな風に周囲の人間が噂をする中、

3人の男性が惨劇の現場となった

野営地を調査していた。


勇者護衛の任から、

急遽きゅうきょ帰還してきた兵士団長。


遺体の解剖をした医者。


手練れだった同胞の死を知ったエルフ族

から、賢者が派遣されていた。


雪に埋もれた焚き木を囲んで、

散乱する凍った死体。

折れた弓矢。焦げた服。折れた刃物。

雪に薄く染み付く黒いシミ。


そんなあまりにも不気味な空間に

放置された馬車の中で、

団長と医者は座って待っていた。



団長

「ムゥ・・・

一体いつまで調べるつもりなのだ。

こっちは勇者の護送という、

主様からの名誉ある任務を放ってまで、

馳せ参じたというのに・・・」


団長は苛立っていた。

彼と部下達は長旅から帰還した

その足で、この場所に直行して来た。

勿論、怪物の捜索の為でもあるのだが、

団長と医者は、ずっとエルフの賢者の

見解を待っている。


賢者は一日中この場所を調査していた。

放置された馬車や雪や樹木に

染み付いた血痕。

死体から肉片の一片に至るまで、

それはもう念入りに。



医者

「ワシも一応鑑識の結果を述べたのだが

・・・ずっとあの調子だ。

まぁ聡明なエルフの賢者様なのだから、

意味のある行為なのだろうが・・・」


エルフの賢者

「手段も思考も違うが、目的は一緒だ。

その上、我々は人間より遥かに結果を

求める。大人しく待っているのが賢明だ」


凍ったまま放置された遺体をま探り(さぐ)

ながら、地獄耳のエルフがさとす。



団長

「貴殿らエルフは長寿ゆえに、

時間の感覚がルーズ過ぎるのだ!!

答えが出るのは、我々の孫の代に

なるやもしれんぞ!」


医者

「まぁまぁ」


怒りをあらわわにする団長を

わずらわしく思ったのか、

エルフは仕方なく重い腰を上げて

団長と医師の乗る馬車へと近づく。



団長

「それで、何がわかったのだ?」




賢者

「どの遺体も損傷が激しい。

人間によるものではない」





団長は言葉を失う。


医師は彼の顔色をうかがい、

マズいと思って口を出す。


医師

「・・・あー、賢者殿。それはぁ...」


団長

「それは既に目撃証言と鑑識で

分かってたことだ!!

我々が知りたいのは怪物の正体であろう!!」



怒号にも動じず、エルフは無表情で続ける。



賢者

「最後まで聞くのだ人間。

真実に近づく為に重要なのは、


何が襲ったかではない。


『何故』襲われたかだ」



団長

「どういう事だ?」



賢者

「亡骸には牙や爪の破片といった、

捕食の形跡が一切なかった。

それに切り傷に関して言えば、

虫属ではあっても獣の技のはずが無い。

恐らく武器を使ったのだ。


更に生存者の話では、パーティの中に

『ブレェイエル』に似た容姿の人間が

いたそうだ」


知らない言葉に団長は顔をしかめる。


団長

「何だって?」


医者

「エルフの言葉で、我々人間の『勇者』

を意味するそうだ」


団長

「では、やはり魔物の仕業なのだな?

我が国に土足で忍び込んだ上に、

勇者殿を狙うとは!

すぐに包囲網を敷いて...」


団長は慌しく兵士達に指示を出そうとするが、


賢者

「お前達で対処出来るとでも?

ここまで言って察しないとは・・・

やはり人間達は奴らの存在を語り伝える

どころか、忘れ去ろうとしていたか・・・」



賢者は相変わらず変化に乏しい

表情ながらも、呆れた口調でなげく。

団長は不快に感じるが、彼の不穏な

物言いが気になった。


賢者

「エルフの我が幼き頃の話だ。

無理もあるまいか。



魔王の侵略が始まってから100年間。

魔族の中でも特に恐れられた、

魔王直属の闇の軍団が存在した。



奴らは魔物でありながら、

『鉄の鎧と武器』を持ち、禍々しき姿の

指揮官達によって統率される精鋭だった。

あの頃は各国の軍隊でも歯が立たず、

勇者の助力があってやっと撃退出来たのだ」


初めて聞かされる事実に、

2人は唖然とする。


団長

「・・・そんなものが復活したというのか」


エルフ

「断定は出来ない。

だが、この異様な襲撃状況と、

単独で勇者を狙った事を考えると

疑うべきだろう。

奴らの名はーーーーーーーーー







『アイアン・サングレイダーズ』









□魔界





《ドォンッ》





《ドォンッ》 《ドォンッ》







《ドォンッドォンッドォンッ》





ほの暗い地の底から

太鼓の音が響く。


闇の中に紛れて蠢く。


緑色の皮膚の人ならざる者達。


刺々しい身体の大きい虫の群れ。


カツカツと音を立て歩くスケルトン。


狂乱の叫びを上げて騒ぐ魔族の軍団は、

大きな洞窟の前に集まっていた。

先頭には抜きん出て背が高く

漆黒のマントで覆われた謎の魔物と、

一際醜くく、獰猛そうなオークが立っている。


オーク

「手筈ハ整イマシタ。

コレヨリ進軍イタシマスガ、

行キ先ハドチラデ?」


この場の全ての存在がたかぶる気持ちを抑え、

静寂をもって敬意を払う。


そびえ立つ漆黒の魔物は、

マントから手を払い、命令を下す。



???

「聖域・・・オラコールへ」


《ギヤァァァァ!!》

《グルオオォー!!》

《キシャァァァァ!!》



魔の手は刻一刻と迫っていた。


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