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スノードロップな君が読む物語 ~Record the change of the world~  作者: フリーライダー
起 異世界で
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11.聖域への道のり


異世界を旅する穂波とハチクは、

始まりの地『聖域オラコール』に向かう

勇者一行の冒険に同行することになった。


勇者達と穂波達は、

それぞれ別の馬車に乗る。

前後をオラコール騎士達が護衛し、

後ろに北の国の約100人の兵士が

ついてくる。

遂に勇者御一行の冒険の始まりだ。


穂波が馬車の騎手に尋ねたところ、

今回は特別らしく、

先代の勇者に借りがあった北の国の領主が、

遥々ここまで遣わせたのだ。

大勢なら道中の盗賊や怪物達にも

邪魔されないので、今日中には到着するらしい。



馬車の中で過ごす長い時間。

穂波は『編纂の書』に、

道中での事を記録する事にした。



***********


2日目のお昼前。

私達は今、

この世界の物語の主人公とも言える

勇者さん達と一緒に『聖域』と呼ばれる

土地へ向かっている。


馬車で南都を出た後も、

しばらくは民家や街道から人々の掛け声が

聞こえ、注目の的だった。

更に街から離れると、畑や牧場が広がる。

作業をしている農家の人達はこちらには

見向きもせず、黙々と作業していた。


段々人気が無くなると、

今度は草花が一面に広がる、

さっぱりとした平原がずっと続いた。

雲一つない青空とポカポカ陽気。

ながーーい 1本道を進む。

あまりにも平穏で何もないので、

後ろに付いてくる兵士の方々を眺めてみた。

色んな人を観察するのは楽しかったけど、

ハチクは彼らを見て、何故か呆れていた。


馬車の中は

地面からの振動が直に伝わってきて

ガタガタと荒く揺れていたが、

私は眠りこけてしまった。


だけど、遠くから響く角笛の音で

目が覚めた。

丘の方から馬の足音が近づき、

やって来た兵士の人が

団長さんに何かを伝えた。


盗み聞きしてきたハチクの話によると、

北の国で恐ろしく獰猛な怪物が

出没したらしい。

その事件の調査と防衛の強化の為に、

少数精鋭を残して大半は北の国に帰還しない

といけなくなったとか。

しばらくして私達の馬車の前で、

団長さんが志願兵を募った。


そして残ったのは、

15人の少年少女の兵士だけだった。

今まで徒歩だった彼らに、

団長が馬を授けた。みんな嬉しそうだ。

北の国の団長さんは最後に勇者さんに

お詫びを言うと、他の兵を引き連れて

北の方へと帰っていく。

残ったのはオラコールの騎士さんと

残った兵士さん。

アクトさん達と私とハチクの40人。


ハチクは帰っていく兵士達を

じーっと見つめていた。

彼らの後ろ姿にはもう緊張感は無く、

安堵している人やお喋りをしている人が

目立った。

ハチクが呆れていた理由が何となく

わかった気がした。




多分お昼過ぎ頃。


人数が減って、

聖域の騎士隊長さんが代わりに

先頭に立ってから、随分移動が速くなった。

草原を抜け、今度は大きな森に入った。


だけど、出るのが大変だった。

騎士隊長さんが全速力で駆け抜ける

ように指示した。

木々や茂みの隙間から、

何かの鳴き声が聞こえる。


「ファイカーだ!!」


誰かがそう叫んだ。

ここに来てようやく異世界らしい

未知の生き物が見られると思うと、

不安より好奇心の方が勝ってしまう。

けれど馬車から顔を出そうとしたら、

ハチクに羽交い締めにされてしまった。

外では走りながらも、ファイカーとかいう

生き物とみんなが戦っていた。

私は押さえつけてくるハチクと闘っていた。




ファイカー 見たかった。





まぁ結局は後で見れたんだけども。



森の外で美味しいお肉になって。




***********



木々の茂った森を抜け、枯木ばかりの

殺風景な林で、一同は昼食をとっていた。


穂波はファイカーという怪物の骨を

もぐもぐと咥えながら、編纂の書に

書き記す。


ハチク

「穂波。行儀が悪くないか」


ハチクは親のように注意する。


穂波

「軟骨がまだ残ってるし、

骨にも味が染みてますから〜。

それにおばあちゃんが

『命を頂くからには、骨の髄まで残さず

味わえ』って言ってました」


ハチク

「そうか。それは確かに大切な事だな。

だが、記録は後でもいいんじゃないのか?」


穂波

「馬車の中だと凄い揺れてしまって、

ちゃんと書きにくいんですよ」


自分の書いた内容を読み直して

誤字脱字がないか確認する。

するとそこへ、一人の少年兵士が

やってくる。


黒髪の兵士

「あのー、肉のおかわりは大丈夫ですか?」


穂波

「む! だひほうふれす!はひはほう!」


ハチク「大丈夫だ。ありがとう」


茶髪の兵士

「おーいクレオ!

バーグさんが武器見せてくれるってさぁ!!」


黒髪の兵士

「あ!ちょっと待ってくれよー。

すいません、それでは」


既に従者の周りには人が集まっていた。

バーグは気さくに喋りながら、

自分の立派なハンマーと大剣を

見せてあげていた。


イノスは座りながら、

弓兵の女の子達と話をしている。

どの女の子も憧れと好意の目を向けている。


ではアクトとフォロアはどうかというと、

遠目で眺める人はいても、

近づく者はいなかった。

それもそのはず。

座って食事をするアクトの隣りで、

フォロアはニコニコしながら

すり鉢で何かの粉末を作り、

アクトに身体の調子を聞いたりと、

常に傍らに寄り添っていた。

アクトは恥ずかしそうだが、

嫌がってはいない。


穂波

「なんかいい雰囲気ですね〜」


ハチク

(周りの連中は空気を読んでやってるのか。

それとも勇者に近づき難いのか)


考えるハチクをよそに、

穂波は自分達の前の鍋で大人しく食事を

している1人の騎士の女性に話しかける。


穂波

「貴女はアクトさん達の所に

行かないんですか?」


女騎士

「えっ・・・ああ、私は別に。

ああやって、皆さんの束の間の休息

を邪魔するのは、失礼だと思うので」


メガネをかけて物静かそうな印象だけど、

淡い緑色のポニーテールが綺麗で可愛い彼女は

淡々と肉の入ったスープをすする。


穂波

「ああ、なるほどぉ。

そこまで気が配れるなんて、

さすがは騎士さん。大人の対応ですねぇ」


女騎士

「あ、ありがとうございます・・・

褒められたのなんていつぶりでしょう

・・・ハハハ」


憂いを秘めながらも、素直な笑みがこぼれた。


そんな一介の騎士の様子から、

ハチクはベルバックの言葉を

思い出す。


『みんな失うことを恐れて、

挑むことに躊躇しちまってるって事だ。

理想とやる気があっても、

勇者と自分を比較したり、

周りの奴らになだめられれば、

すぐ引っ込んじまう』


頭の中に募っていた

得体の知れないこの世界の人々の

抱える『わだかまり』

ハチクはその正体に何となく

気づいてきていた。

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