アリタイ国の宰相
先物取引を断られてしまった俺は、
呆然としながら、別れの挨拶をして、
卸問屋を出た。
さて、どうする?
「なあ、別に、この卸問屋に拘る必要はないだろ?」
トムがなんか言っている。
「どういうことだ。」
「アリタイ国にだって王都はあるだろ?」
おお、トムがなんか神々しく見えてきたぞ。
なるほど、アリタイ国の王都に行ってみるというのも手だな。
物流という面では、この港町が良いが、
需要という面では王都の方が上だろうし、
きっと、ここよりも大きな卸問屋があるだろう。
気分が上向きになってきたぞ。
ところで、アリタイ国の王都は何処なんだろうか?
と卸問屋の前で考えていると、
ルキウスさんが現れた。
「おお、丁度良い所に。ルキウスさん、王都の場所は分かりますか?」
「分かりますが、徒歩ですと、ここから10日はかかりますよ。」
なんと。アリタイ国は意外と広いんだな。
ルキウスさんは続ける。
「なにより、今回はユーキさんにお願いをしに来たのですよ。」
「え、なんですか?」
「ユーキさんの企んでいる先物取引の件、私が受けますから、
それでケドニア国に帰って頂きたいのです。」
なんで、ルキウスさんが、先物取引の話を知っているんだ?
そもそも、先物取引の話をしたのは、
卸問屋とトム以外に・・・
ああ、なるほど、トムが喋ったか・・・
「トムから聞いたのですか?」
「ええ、トム君からです。ユーキさん、貴方は賢い方のようだ。
であれば、ここから王都に向かうより私と取引をした方が得であると
分かるでしょう?」
「それは分かりますが、それではルキウスさんにメリットが無いような・・・」
ルキウスさんは、ふっと笑うと、こう言った。
「偽ってすみませんでした。私は貿易商ではなく、
アリタイ国の宰相なのです。今、ケドニア国王の穀物買付により、
この国では穀物の値段が上がる一方です。
もし、ユーキさんが先物取引の話を持ちかければ、
調子に乗って受ける人間は多いでしょう。」
「いやあ、先ほども卸問屋に断られてきたところですよ。」
「それは私が止めたのですよ。
もし止めなければ3ヶ月後に損をすることになるのですよね?」
ルキウスさん、そんな力があったのか。
それにしてもトムが話さなければ取引成立だったんだろうか。
見ると、トムがしまったという顔をしてる。
「分かりました。ルキウスさん相手に取引をして、
ケドニア国に帰ることにいたします。」
宰相としては、国民の損害を見逃すことは
できないということなんだろうね。
その後、細かい条件を詰めて、契約書を作成した。
小麦などの穀物を現在の相場で金貨11万枚分3ヶ月後に売ること、
保証金は、前払いとして金貨1万枚、
後に金貨10万枚を届けることになった。
さて目的も果たしたし、それではケドニア国に帰りますか。




