旅の準備
宿屋の看板娘にトムを雇ったことを告げ、
旅の準備をする。
なんでも、隣国アリタイには、
海洋都市アクアから船旅となるらしい。
片道3日はかかるということだから、
長旅の準備をしなければ。
色々準備をしていると、
看板娘が挨拶に来た。
「トムをよろしくお願いしますね。」
「ああ。」
「ところで通行証は持っているんですか?」
「つ、通行証?」
「国境を通過するんですから。都市間の移動ならギルドカードくらいで十分ですけど。」
「ええと、通行証は何処で手に入るのかな?」
「お城ですね。」
そういう役所的な手続きも、お城なのか。
ということで、翌日、お城に出向いた。
さて、こういうときはメランさんだ、何処かな?
「あら、詐欺師ユーキがまた用事かしら?」
「メランさん。詐欺師は止めてくれないかな。」
「もう、お城中、詐欺師ユーキの話で持ちきりよ。」
「何も騙してはいないだろ?」
「でも、金貨20万枚分も債権を用意するんでしょ?」
「あれは討伐のためのカネだ。」
「ふーん。金貨10万枚あれば、傭兵100人を雇うには十分なはずよ。」
なんで、メランさんが傭兵の相場まで知っているんだろう。
しょうがないので、盗賊討伐を利用した儲け話を
メランさんにした。
メランさんの黒い目が爛々と輝きだした。
「ねえ、私がいなかったら、トム君はお城には入れなかったわよねえ?」
「まあ、そうだな。」
「当然、その恩人である私に何かお礼したいと思うわよねえ。」
「分かった。分かった。話に加えてやるから。いくら用意できる?」
結局、メランさんは金貨1万枚を用意してきた。
この女性、相当貯め込んでいるなあ。
でも、とりあえず金貨1万枚あると見せ金として使えるので、
かなり助かったというのも事実だ。
通行証は時間がかかるということなので、
先にマテウスさんたちにも挨拶をしておく。
マテウスさんたちは控えの間にいた。
「マテウスさん、今、大丈夫ですか?」
「おお、ユーキ。私たちを傭兵のまとめ役に指名してくれたらしいな。」
「はい。私は隣国のアリタイに行かなくてはならなくなりましたので、
留守中、よろしくお願い致します。」
色々話をしてから、メランさんを探しに戻ると、
ちょうど通行証が出来たところだった。
お城から出る俺を、メランさんは城門まで見送ってくれた。
「無事に帰って来てね。」
「ああ。」
今回は、メランさんのお金を預かっているのもあるのだろうが、
なんだか嬉しい。
さて、隣国のアリタイに出発するか。




