最終話 Je t'aime de mon coeur~心から君を愛してる~
最終話となります。
数日後 京都にて
約束の時間よりも1時間も早く来てしまった
もし、僕が行くのが遅いため会えなかったらと考えると気持ちが焦っていく
せっかく手に入れたチャンスを無駄にするつもりはない
久遠、会いたいよ。
約束の時間どうりにその二人はあらわれた
赤い髪の活発そうな少女と、銀髪の少女。銀髪の少女は黒いワンピースを着ている。そして赤髪の少女の手には、目印である豪奢な金の羽をイメージしたバックが握られている
時計を確認する
この少女たちで間違いない
ずっと呼びたかったその名を口にした
あふれてくる感情
あぁ、会いたかった
髪や瞳の色を変えていてもすぐに気が付く、銀髪の少女が黒崎久遠であるということに。
「久遠!」
驚いて振り向く銀髪の少女
ふっと、目が合う
久遠は動けなくなった
息をひそめて、ただ見つめる
信じられないものを見たような表情をしていた。
隣の少女が、変装のための呪術を一瞬のうちに無効化する
ライムグリーンの髪に琥珀色の瞳を持つ少女の姿
「行きなさい」
アリサの言葉で我に返った
「えっ。」
驚愕とともに羽矢の姿を認めた途端 反射的に【あってはならない】という意識が働きテレポートして、離脱しようとした久遠をエスポワールが突如現れ防ぐ
ここまでの言動を振り返り、この状況をアリサたちが仕組んだのだということに気が付く。さっきの言葉の意味を悟ったのだ。
この辺一帯の空間を、エルが支配したのだ。
黒い髪に黒い瞳を持つ長躯の青年は私を見下ろす。
低い声で言われる
「逃げるのか?我が契約者」
「ダメ?」
エル、あなたまで加担しているのね。私を逃げられない
可愛らしく久遠はエルに聞いてみたが、ダメだといわれる
エルが本気になれば久遠はどこにも逃げられないだろう。
目の前にいる
いとしい彼。
ずっとその姿をこの両の目で見たかった。
幻覚でもなんでもなく、たしかに目の前に如月羽矢はいる
「久遠」
年月が経ても彼が、如月羽矢であるということは誰に言われるまでもなくわかっていた。
少し低くなった声で、もう一度久遠の名を呼ぶ
あ、あああ。
どうしようもなくあふれてくる思い。どうしようもなく惹かれていくこの気持ち。
洪水のように心の防波堤をぶち破る。止められない。止まらない。どうして、こんなにも彼の隣にいたいと思ってしまうの?あなたがいとおしいとどうしてこんなにも思ってしまうの?胸が、ズキンと痛む。
最近は、表情を散りつくろうのもうまくなっていたけれどさすがにこのサプライズにはつくろうことができなかった。狼狽が、顔に出ていたことにも気が付かない
それに気が付いたエルがあきれたように指摘する
「別人のようだな。普段とは。」
そうかもしれない
私はもっと強くかっこよくいないと、まだやらなければいけないことがある
つよがりだったと思う、それでも言わずにはいられない
この契約者の前でみっともない姿を見せたら負けると久遠の中のプライドが叫ぶからだ。
「そうかしら?ねぇ、テレポートさせて頂戴?」
まだ心の準備ができていないのよ。そう言外に言う。内心焦りはましていくばかりだ。
彼の前に立って、この仮面を維持することもできそうにないし、この仮面を外しもう一度かぶることもできそうにない。だから、それができるようになるまで時間がほしい。
いま、彼の姿を見ただけで私はこんなに簡単に揺れている
「‘我慢させていたのに過ぎないのだ。だからその鎖がはじければ私は今すぐ彼のもとに飛んでゆこうとする’だろう?」
かぁっと顔が赤くなる
それはさっきまで心の中で思っていたことだ。
見下すような畔笑うような笑みを張り付けているのにその声音はどこまでも優しい。
会いたくて、泣いた日もある、目を閉じて思い出して切なくなる時もあった
二人が出会ったひも、君の気持ちを知って時、私の消えない記憶や思い出という宝物だあふれてくる。
だめだ。ちゃんと黒崎久遠を保てていない。
このままではだめ
「また勝手に読んだわね!!」
そう怒る。そうでもしていないとどんどん、ダメになる気がしたのだ
あぁ、彼が近づいてきてしまうではないか。
「翼はあるだろう。その背中に。飛んで行け。あとは我が何とかしよう」
そういって、戦友とも呼べる契約者に言われる。
本当にあとは何とかしてくれるの?
私が普通の女の子になってもいいの?
ただ、如月羽矢を好きでいていいの?
さまざまなわがままな欲求を浮かべ すがるように契約者を見る
口に出さなくても伝わっているだろう
どうせ今も面白そうに私の心を読んでいるのだろう
もう、仮面は3分の2くらい崩れている
好きになってもいいの。また、彼の彼女でいていいの?
彼の彼女でいたい。好きでいたい。好きになってもらいたい。
「何のための共犯者だというのだ。我が契約者にできることだぞ、その上位種である我にできないはずはなかろう。いけ」
いけ
その言葉に彼は魔力を込める
アリサが背中の空いた黒いドレスじみたワンピースを私に着せようとあんなに頑張っていた理由は、これだったのか。
「たのむわ」
その言葉とともに仮面は、粉々に壊れた
仮面の向こうの素顔は、何処までも普通な少女の真っ直ぐなこころ
走っていくのももどかしい
私は、彼のところまで言葉どうりに飛ぶ
背中に、真っ黒な羽を伸ばして彼のもとに飛び込む
背中のあいた服を選んだのは、これが理由。私がこうするとわかっていたのだろう。
「羽矢!!」
ライムグリーンの髪を風になびかせ羽矢に飛びつく
羽矢のもとに帰ってきた
この腕、この匂い。このぬくもり。
彼の容貌は数年前とは変わってしまった
もう、彼も私も20代後半だ。
だけど、どちらもその心は別れたあの日、私が海に飛び込んだあの日にさかのぼっていたような錯覚
あの日あの時で止まっていたのだ。止まっていた時間は今ようやく動き出すような錯覚。
まるで、私も彼もあの時で心の時計を止めていて、仮面越しで大人ぶっていても心は変われなかったように
「羽矢、背が高くなったね。声も少し低くなったね。とっても、かっこよくなったね。」
180近くなった彼の身長150後半である私との身長さはかなりある
そのため私は、羽矢の胸に位置に頭が来ることになる
見上げる羽矢の顔は、すごく大人びている
たくさん苦労を背負った感じがすることに気が付きその鯨飲のほとんどが自分が起こしたことにあることに気が付き申し訳なくなる
ごめんなさい
そう口にしようとする
それを遮るように羽矢が口づけする。
魔獣の眷属である黒崎久遠にとって息をせずとも生きられる
どれだけ息を止めていても、そう口をふさがれていても平気
だから、羽矢にされるがままになる
あぁ、でも身体も脳も解けだしてしまいそうになる
ふにゃふにゃと崩れ落ちてしまう。
キスしてくれたってことは私許されたって思っていいよね?私のことまだ好きだと思っていいよね?
羽矢が何て言っても今私はそう思っちゃうよ。
崩れ落ちそうになる私をあわてて支え、とろけそうでまぶしい笑顔で言う
「お帰り。」
「ただいま。」
心の中が温かくなる
どうしようもなくうれしくて、ほおに涙が伝う
嬉しくても人は涙を流すんだね
その涙を、羽矢の指が救う
どうして、この人はこんなにも曇りのない笑顔で私を受け入れてくれるのだろう
私は、あなたを利用したのに、だましたのに。
どうして、そんなに優しいの
私はあなたの優しさにおぼれてもいいの?甘えていいの?もう、頑張らなくてもいいの?
しっているよ
羽矢のことをたくさんの女の子が好きになったことも、その子たちをみんな振ってくれたことも知っているよ。
どうして私を選んでくれたの?
「久遠。生きていてよかった」
まっすぐできれいな瞳。青いの瞳。本当に心の底から嬉しそうに言うのね。
抱き合う二人を、赤髪の少女は微笑みながら見る
黒い青年は、興味深そうに二人を眺める
心からの言葉を羽矢が口にするから、私も心の底からあふれてくる感情のままに言葉を紡ぐ。
「羽矢。ゴメンネ。あんなことして…でも今でもあなたが好きよ。」
長年別れた男が女のことを未だに好きでいてくれていると思うのは女の傲慢だと思う。
だから、羽矢が私をこんな風にとろけさせてからどうしようもなく好きにさせてから私が一番聞きたくない、言われたくない「嫌い」という言葉を言われたとしても仕方がないと思う
でも、願わくはまたあの時のように一緒にいさせて。好きになって。
羽矢は、久遠が死んだふりをせざる得なかったという事情を今の久遠をまじまじと見て納得していた
彼女は飛び降りたあの時のままの姿だった
そう、彼女の姿は十代半ばのままで少しも成長していなかった
時が止まったようなその姿。
身長も体重も髪も肌もあのときとそうかわらない
久遠は年を取っていない。とっているけれどとても緩やかなのだ。
羽矢と同じ時を歩めないがゆえに久遠は別れを告げなければならなかった
たとえ羽矢や家族がうけいれても 変わらない彼女の様子 に近所の人たちは不審に思うだろう
たとえ、引っ越したとしても今は情報が伝わるのが早い世界だ。とても住みにくくなる可能性があった。
今この時この世界ならばそんな彼女も受け入れられるだろう
ファーガリアという国の民のなかにはとても長寿な存在がこちらの常識では考えられないような長い月日を生きる存在が普通にいるのだ。
いまなら、久遠はファーガリアの民としてその容姿や存在をごまかすことが可能
本当に君は すごいね、久遠。
人の中で交わるには自分の肉体があまりにも異端であるそのことに久遠が出した答えだ。
せめて、人として彼の記憶に残したかった。
化け物としての久遠ではなく、人である久遠を愛してくれたのだから。
でも、彼は私が化け物だと知っても同じように変わらずに愛してくれただろう
こうして、腕に抱かれている今ならわかる
私のすべてを受け入れゆるそうとしていることが伝わってくる
読もうと意識しなくてもこんなにあふれだす思いは読めてしまう
結局、私がきれいでいたかっだ
彼の記憶や家族の記憶の中だけでも、人としての記憶であってほしかった
自己満足だったのだ
あぁ、私はどうしようもなく愚か者だ
こんなにも羽矢が好きなのにどうしてもっと早くから素直にならない?
時間は有限だというのに。
私は、抑えきれないくらい羽矢が好き
手放したくない
ほかのだれにも渡したくはなかった
「全部僕は許すよ。起こりたいこともあるけど後にする。久遠、本当にきみはすごいね。僕は、君がほしいよ。」
ぎゅっと抱きしめられる
久遠の頬が上気する
羽矢は、そして久遠の隣に出現した、黒い男に目を向ける。何者であるのか羽矢は知らない、だけどあまりにも久遠と彼は似た空気をまとっていた、そう気配と呼ぶべきだろう
たぶんこの存在が彼女の日常をゆがめた元凶の一人、それでいて、いま彼女が最も信頼している存在だ
微妙に、黒い男に対して殺意や嫉妬という感情が鎌首をもたげる
「羽矢は、夢をかなえてくれた。ありがとう」
久遠が笑顔とともに感謝の言葉を口にする
たったそれだけで、湧き上がった負の感情は霧散する
クーちゃんは今も昔も変わらずに僕の女神さまだ
もう、僕は20代後半。
あまりにも二人の見た目的歳の差は大きい
はた目から見たら、ロリコンに見えるのかな?
久遠は、抱き合った姿勢のまま ぽっぽっ と今まであったことを口にする
久遠がしてきたことをまとめると、
久遠は、あの惑星の者たちと話し合いをしたらしい
無理やり、王様のもとに乗り込んで行ったらしいのだ
何というかむちゃくちゃだと思った
自分の話を王様たちに聞かせ、たりないところは見せたらしい
王子は決意し王になったとか言っていたけど、久遠君はどんだけその国への影響力が高いんだい?異常ともいえるほどのことを行ってきたのだ。久遠から言ってみれば影響力が強い魔獣の肩書を利用しただけ度といっていた。
そして、地球と今の関係を作ろうと協力してもらったこと
地球側でも同じようなことをしたということ。あの放送も久遠の仕業であること。
全てを聞いたとき、どうしようもなくこの小さな存在が遠くに感じた
久遠は戦っていた
僕よりも、広く孤立した戦場の上
やっぱり強いよ。心が強く、輝いている
遠くに感じるけど、今は僕の腕の中にいる
遠くはない、こんなにも近い
久遠へのいとしさがあふれる
そして、覚悟を決めた。
黒い男に尋ねる
「あなたは、久遠と同じ時を歩めますか?」
「あぁ。」
僕の質問に、肯定の返事を淡々と返す男
よかった、これで僕と死にわかれたとしても久遠が孤独になることはないだろう
「ねぇ、久遠まだ僕のこと好き?」
「すきよ。ずっと好き。」
子供のように、好きという言葉を繰り返す久遠の姿は愛らしかった。
うん、よかった。ぼくもすきだよ。すごくね。
だから、口にする
「久遠が好きです。君の十年をぼくにください」
「えっ?」
久遠のきょとんとした顔が見える
「十年ってどうして、私は羽矢の最後まで……はっ」
戸惑ったような、プロポーズにも似たその言葉に嬉しさを隠せないようなごちゃまぜの表情
くーちゃん、本当によく帰ってきたね。
そして、久遠 君はとても聡いね。
そう、君の想像道理だ。これは、僕のプライドであり譲れないよ
「最後はいいよ。見せたくない。君を置いていくんだ。僕はそんな最後は嫌だ。だから十年。お願い」
十年といったって十年後ぼくは30代から40歳だ
君はきっと変わらない
僕の覚悟を察した久遠は、僕のその考えを受け入れてくれた
「えぇ。よろこんで」
花がほころぶように笑う
この笑顔がもう一度見れる
それが今までの苦労に対してご褒美のようなものだった
そして、黒い男に向き直る。たぶん、今最も久遠に近いのはそいつだから、宣言する
「あなたの名前をぼくは知りません。ですが、お願いします。十年だけ、彼女をぼくのものにさせてください」
黒いそいつは頭をかきながら全く僕の宣言を予想していなかったらしく困ったように言う
「エスポワールだ。気にするな。我らの中はオマエノ邪推するようなものではない」
「そうよ。こいつはただの共犯者よ」
久遠は、長いライム色の髪をかき分け、真っ直ぐと羽矢の方を向いて告白する
「すきよ。」
「あぁ」
どちらともなく、人目を気にすることなく優しく強く甘く切ないキスを交わす
それはどこか契約に似ていた
暖かな春の風、桜の花びらを運ぶ
彼女らの運命を祝福するように。
そして、3か月後
黒崎久遠は、如月久遠になった。
こんにちは、桜 夏姫です。
皆様、バル・マスケ~仮面舞踏会~を、最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
読者の皆様方が応援してくださったおかげで、無事に最終話まで書くことができました。
本当にありがとうございました。
不定期更新になるかもしれませんが、裏話『??』的な番外編とか、外伝みたいなものを書いていこうと思っています。
本編では語られなかった、黒崎久遠と「百鬼夜行」の主 死神こと 奈落の出会い をかけたら書いてみたいと計画中です。
また、本編を少しづつ『改』に変えていくつもりです。誤字脱字や、一人称などを統一していくつもりです。内容が、ほんの少しそのため変わるかもしれません。
明日から、大学生活の始まりのため今までのように更新できないと思いますが、これからも 桜 夏姫 の作品を読んでいただけると嬉しいです。皆様に楽しいひと時を過ごせるような作品作りを目指していくつもりです。




