Fille des négociations~交渉少女~
少女は、縛られていることを気にしない
それは、いつでもこの拘束をほどくことができるからだ
拘束など無きに等しいのだ
「ねぇ、きいているの?それとも目を開けながら寝ているの?私は、暇じゃないの。王様、あなただって暇じゃないわよね。」
少女が言ったこと
和平を望むか争うか、それとも支配下に置き服従させるか?
父上は何を考えている?
少女は、もしここで支配下に置くあるいは、破壊すると王がいったら、王の首を軽々ととばすだろう
何のためらいも躊躇もなく少女はこの国の王を殺すだろう
そして、その返事をした途端この国は少女の敵へと変わる。
少女は身内は大事にするけれど身内以外と敵に対しては容赦しないだろう
そう、言葉の端々でこっちに伝えてくる
もし、自分だったら?もし、自分に選択権があり選択するのならばどうする?
殺すよりも、生きたままの方がいい。
研究するために生かすよりも友好関係を気づきたい
自分とは違う惑星に住む者たちと和平を結んだほうがずっと面白い
文化や、知識そういうものを戦禍によってなくすのは面白くない
王子は歴史あるものが好きだ
そこに宿る幾人もの人々の思い
時代を超えた、なにかを感じるのが好きだ。
それに、目の前に存在する生き物の精神を作り上げた場所に興味がある
このプライドの高い天性の女王のような少女を構成するすべての要素を研究したい
知りたい
王子は自分の中に、知識を得たいという欲望が、むくむくと湧き上がり育っていく
「無礼な。国王陛下になんという口のきき方、つつしめ。」
大臣の一人が声を荒揚げる
その言葉が先導となり次々と少女に対して、口を出すものたち
あるものはこの場にふさわしいとはとても思えない悪口じみた幼稚なものを口にする
王子は、そのみっともないものの姿を見てため息を漏らさずにはいられない
そのみっともない言葉を口にしたものたちの名前と役職をとりあえず頭に入れておく
時と場合によっては……これからの成り行きによって変わるが彼らを排除した方がこのお国のためになりそうだ
こんな低レベルの脳みそのやつをこの国の中枢にいつまでも入れておいたらこの国は内側から腐っていくだろう
少女は嗤う
嘲笑するような笑み
「なぜ?私はこの国の王が、私が礼を尽くすに足る人物なの?」
だから、私はこの国の王が私が礼を尽くすのにふさわしいかどうか見極めるわ
そう言外に伝えているのだろうか
そして、王だけではなく自分もまた試されている?
考えすぎだろうか?だが、試されている気がしてならない
少女の呪術の腕そして主所から感じる魔力量からしてちからづくでこの場を支配することも可能だろう
それをしないにはそれをしないだけのわけがある?
この呪術科学の進んだこの世界
魂なき、命令通りに動くドールを、父上はお好きでない
そのため、魂ある本物の人間、それもとびっきり忠誠心の高いものをそばに置く
「この者を排除しろ」
王のその命令とともに、兵たちは呪術式の刻まれた武器を、構える
王の命令に従うように教育された兵たち
彼らはみな優秀だ
とても強い力を持っているけれど、少女にはかなわない
ぞくっ
悪寒がした
部屋の温度が一気に下がるような感覚
部屋の温度は一定に保たれているはずだ
いまのは、殺気
少女から放たれたものだ
かなり抑えられてはいるが、いまのは間違いなく殺気だ
ヤバイヤバイ
頭の中で警鐘がうるさいくらいに鳴り響く
考えるよりも先に、叫んでいた
「とまれっ。退けっ!!」
兵たちに、あわてて命じる
このままでは、彼らは殺される
国民の命が散るところを見たくはない
王子の言葉に兵たちが戸惑うように止まる
退きはしなかったが、止まってくれた
何人かはそのまま少女のもとに突撃しようとしている
王が、王子を叱り再度兵に命令しようとしたのだろう
口を開く、その前に王子は呪文を詠唱し起動させていた
「地よ、我が望みに応えよ。呪いにより、歩を進める者の足を止めたまえ。」
床が、うねる
先に進もうとしていたものたちの足に床がへびのように絡み付き転倒させる。
床が形を変え、兵たちの足の動きを無理やりにとめてのだ
王が開きかけた口を開きどこか満足そうな顔をしていたことに王子も大臣たちも気が付かない
ただ黒い影と少女だけが気が付いていた
少女は先ほどの嘲笑とは異なる満足げな笑みを口元にわずかに浮かべる
「へぇ、いい判断できるじゃない。そこの王子様に感謝するといいわよ。衛兵さんたち、あと一歩遅かったら五体満足じゃいられなかったわよ。」
バチン
拘束が、無効化されていく
彼女は詠唱をしていない
呪術式を持っている様子もない
「詠唱破棄」
近くにいた、衛兵がつぶやいたものか、大臣の誰かがつぶやいたのかはわからない
いまのは詠唱破棄というよりも高出力の魔力を噴出させ、鎖や縄などの拘束を砕いたように感じた
少女を閉じ込めていた檻のほうは砂のように成り果てる
檻を壊したときのは、詠唱破棄だろう。だが前半のは違う気がした。
「ふぅん。でもさ、魔力を練るイメージのためのものでしょ。詠唱なんて長ったらしいの別にいらないし、詠唱破棄くらいの威力に抑えないと手加減できなさそうだもん。まぁ、私の初めて目撃した呪術者の見よう見まねで詠唱した時は大した威力にはならなかったんだけど……エルに教えてもらったら、わが呪いにより、うんたらこうたらみたいなのは、邪道だっていうから直したの」
詠唱破棄の威力でもあの拘束を一瞬で破壊した
「我 呪いにより、汝を切り裂く」
王の口から放たれる呪術
正直に言うと、我呪いによりの詠唱のみで発動させるのも正直難しい
この状態で詠唱はかなり破棄されている
我が魔力を込めた呪いよ、呪風となり我に仇名すものを切り裂け
これが本来の形だ
その王の攻撃を、少女はほほえみを浮かべながら無効化する
「防御呪」
たった一言だった。それだけで、王の攻撃を防ぎ切った
王の間に並々ならぬ魔力が衝突し乱舞する
巨大な魔力と魔力がぶつかった衝撃で、少女の近くにいた兵が幾人かとばされる
幸いけがは、ないようだ
「父上!」
「ふん、なるほどな。お前は間違いなく魔獣の眷属のようだ。放たれた魔力の感じがそっくりだ。」
カツン
少女が、一歩王のもとに近づく
「そうよ。あなたの実験はある意味成功したのよ。でもね、二度とさせないわ」
少女は、まっすぐと王を見つめる
強い荒れ狂う意志を宿した瞳
私がいる限り地球にもそこに住むものたちにも手出しさせない
手を出すのなら自分の敵とみなし徹底的に排除することもいとわない
そういっているようだ
言葉より、まとう雰囲気や瞳、態度の端々に要求を突き付けてきたり、牽制したりしてくる。
空気がビリッと震える
それは先ほどの少女の殺気とは比べ物にならないほどの殺気
その殺気に気おされ気絶する兵もいる
身体が、動かなかった
金縛りにあったように体の自由がきかない
王は、驚いたように周囲を見渡す
その目には、明らかな驚愕と恐怖
そして、あきらめたように言葉を紡ぐ
「っ……二度としないと誓おう。」
えっ?王子の疑問をよそに少女は満足げに微笑む
「さすがに、魔獣の眷属と完全復活した魔獣を敵に回すつもりはないようね。賢明な選択ともいえるわね。」
急な展開に驚く。
驚くと同時に安堵する
ひらりと、真上に今までどうして気が付かなかったのが不思議なくらい濃密な魔力を持った存在が現れた
黒く大きな獣
それ瞬きひとつで、人型へと変わる
漆黒の髪と血のように赤獣の目をもつ、背の高い男性の姿をとった魔獣
魔獣は、少女の隣に降り立つ
「さすがに分が悪い。君一人だけでも相当な力を持っているようだ。今の私たちには君と魔獣二人を相手にして昔のように圧倒的な勝利がきそうにない。敗北する可能性が高いだろう。」
父の言うとおりだ
この国は昔の勇者のような力を持つものは存在しない
存在する必要がないほどに平穏な国なのだ
血の流れる戦は、この数百年余りなかった
「国民の犠牲を増やすより、利益にもなりうるこちらの話を飲んだ方がいいものね。」
「君には、私の考えていることをとっくの昔に読まれていたようだ。君の能力が、どれほどのものか知りたかったが、ここにいる兵だけでは、はかりきれそうにない。それに、私が息子であるクローデリザラグを試していたのもお見通しだな。」
王ははじめっからこの少女が力を持つ侵入者だと気が付き、その目的と力量を開かっていたのだ
あのやり取りは時間稼ぎ
短い言葉で返すことによってより相手が多くを話させる
言葉から、ふるまいから、拘束具から送られてくるデータから侵入者を見極めようとした
しかし、危険なことだ
そして、王も少女も自分を試していた
その事実に驚愕する
なぜ、そんなことをしたのだろう?
少女は、相手が王であることを気にせずにあっけカランという
「私もまだ自分の力の未知の部分が多くて困っているんだけどね。今度計測してくれるかしら?それより、どうするの?」
宮殿の王の間にいるものたちが皆息を飲む
淡々とそれでいてどこか軽々しく話しを進められているが、これはとんでもなく重要な話
この国の行く末に大きくかかわる
息をのむ音がそこらかしこで聞こえる
「和平を結ぼう。その星の詳しいことは君が教えてくれるのだろう。だが、君の力を把握している私たちとは違い地球のほうが私たちの存在を受け入れるとは限らない」
「うん。そうよ。まぁ、その辺は適当に脅すわ。今あなたたちにやったようにね。あなたたちと違って向こうはまためんどそうよ。あなたたちは魔獣の存在もその力量も恐ろしさも熟知している分エスポワールという切り札ではなしを早く進められたの。無理そうなら洗脳でもなんでもするわよ。悪魔だろうがなんだろうがいわれても構わない。」
さらりと、口にする言葉
敵に回したくない。
「なるほど。そこまでして、成し遂げたい何かがあるというわけか…」
「個人的なものよ。ふふふ、あなたいま軽く私を読もうとしたわね。いいわよ、あとでいやってほど過去を見せてあげるわ。アンタたちのせいで私の人世波乱万丈よ、制御できない魔力の塊をトリックスターっていう新たな太陽に変えたり、そのせいで生じる能力者たちの今後のこと考えると似たような力を持つもののそんざいが大勢いたほうがいいし、なるべくその衝撃を緩和させるために人体改変を軽く全員にやったりさ。まぁ、協力してくれる存在がいたけど……」
そういって、魔獣を見る少女の顔は驚くほどやさしかった
そこに込められるのは信頼
「我が名を知っていると思うが一応名乗らせてもらおう。我が名は、ルーデビッヒ・ディリ・ファーガリア。この国の王だ。」
少女は、自分の名を口にした
聞きなれない異国の名
「クロサキ クオン よ。黒崎は姓、久遠が名よ。久遠で結構よ、ルーデビッヒ。」
それから、二つの星の未来のために話し合いをすることになった




