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Tremblement de terre~揺れる地~

地震

初めは、緩やかに徐々にその威力を増し揺れる


崩壊していく町並み

山肌が崩れ土砂が町を飲み込もうとする

倒れてくる石の塀

壊れかけていく家


そして


死がせまってくる



楽しかった思い出や、そうでなかった思い出が脳裏をめぐる

家族の思い出、友人との思い出

家族や友人は逃げられたのだろうか?無事だといいな……。


これが走馬灯というやつか・・・・


「わりぃ、めぐみ。父ちゃん先に逝くみたいだ。お前は生きろよ」


ここにはいない愛娘に、向けた最後の言葉

まだ、小さいのに……俺がいなくなってさびしがるだろうな

ごめんなごめんな

でも、父ちゃんもう……


諦めてしまいそうになった

生きることをあきらめて、迫りくる死の恐怖を受け入れていまおうと思った

到底受け入れがたいその死が、じわじわとにじり寄ってくる

逃げ出したい。逃げ延びていきたいのに、逃げられない


助けてほしい

生きていたい

死にたくない

助かりたい

誰か  ダレか  ダレカ


壊れかけていく意識


そこに、救いの主はあらわれる


「大丈夫ですか?」


とてもかわいらしい服を着た、少女だった

白い服は、土や煤、それから血で汚れている



「にげろっ」


砂埃を吸ったせいで、声はガラガラだった。

息も絶え絶えだったから、ちゃんと伝わっているかどうかわからない


俺の死にこの娘まで引っ張ってはいけない


この建物だって、向こうの建物のようにそう遠くないうちに倒壊するかもしれない

男は、わき腹に刺さった、鉄骨のせいで、地面に縫い付けられて動けない


どんどん流れていく血液

赤いシミが地面に広がる


「生きてください。今助けます。紅葉ちゃんお願い」

「まかせて 。いち、にの、さんで抜く」


もう一人の女性が、意を決した様子で言う


「いち、にの、さんっ」


激痛が走る

鉄骨が血からづくで抜かれている

だが、そんなことをしても無駄だ

出血がひどくなるだけだ。

身体に刺さっていた、鉄骨をどういうわけか小柄な女性が手も触れずに抜いていることに驚きはしたものの、死の恐怖が先だって気にならなかった

鉄骨を抜く少女の表情は真剣そのもの


自分を助けようとしてくれているのか?


初めに会ったかわいらしい少女が、さんっ の合図とともに、自分の体に手を当てる

優しく暖かな光に包まれる

陽だまりのような温かさが、全身を回る

祈るように、少女は自分を見る


激痛が徐々に引く

一分もかからなかったと思う

その短時間で自分の傷はふさがっていた

明らかに、致命傷の傷がふさがっていた


さし延ばされる手

その手を取っていた


「避難所へ、わかりますよね。」


その声で、自分がまだ生きているのだと確信できた


「あぁ、譲ちゃん達が助けてくれたのか?」


生きている


「はい。私たちは、ファンタジア。救助活動に来ました。」


立ち上がろうとしたら、くらりときた

目の前が白黒になる


「血が足りないと思います。貧血です。」

「ひ ん け つ?」

「はい、少し待ってください」


少女は、この男のひとに輸血をお願いします。相当な量の血液が流れていました。応急措置しかできなくて……。

そう、少女らの背後にいた救急隊員に頼む


「了解しました」

「お願い。」


戻ってきた少女たちは、俺の顔を見て安堵の表情をうかべる


いまのはとても人間業とは思えない

それでも、彼女たちが人間ではないという発想は不思議と出なかった

もし、人間でないとしても彼女たちは自分の命の恩人であることに変わりはない

あのままだったら、死んでいた

もう愛する家族には会えなかった



「君たちは…」


一体なんなんだ?

そう聞こうとした。

その言葉を予測していたかのように、少女は返事を返す


「人間です。ただ、ちょっと変わった才能や体質を持っているだけのただの人間です。トリックスターの影響ですね。」


トリックスターすっかりその名前が若者の間で定着している新たな太陽

青い光を放つ星

自分たちを見下ろしているあの青い光の塊

自分の容姿を変えた原因



自分の外見もあれによって変えられている

体つきがすごく変わった

細くなよなよとした体つきだったのに、筋肉ががっしりとつき少し赤身帯びた肌

妻は、耳の形が変わった

耳の位置は変わらずに、形が少し尖った耳になった

娘のめぐみは、その小さな背中にひよこ色の羽を持っている


そのせいか、彼女たちの言い分はすんなりと納得がいった

もしかしたら、死の恐怖ゆえに感覚がマヒしているのかもしれない


「そうか。ありがとう。この恩は忘れない。ほかの人たちも頼めるか?」

「はい。わたしたちは、私たちができる範囲で頑張ります。避難所まで、気を付けて。」



そういって、ほかの者たちを助けに行った








たすけて

たすけて…いたい。くるしいっ

あついよぉ


「あなただけでも生きて。守るから。光。」


おかあさんが、ぼくのことをだきしめる。

ほのおのあつさとはちがう、やさしいぬくもり

いつもならホッとするのに、いまのはちがう

ぎゅつとだきしめる

いつもよりきつく ぜったいはなさない そういうおもいがつたわってくる


「おかあさん、しんじゃうの。やだよぉ」


おかあさん、おかあさん

あかいあかいほのおが、おかあさんをきずつける


ぼくをまもってくれている

ぼくもおかあさんをまもりたいのに


「誰かいますかぁ~返事をしてください。」


あつい

だれかのこえ。たすけてくれるかもしれない。

だから、からからにかわいているけどおおきなこえでへんじをする。




「いるよ。たすけて。」





小さい声だった

それでも、聞こえていた

羽矢は、自分の展開している結界の範囲をギリギリにして壊れた建物の中に入っていく

聞こえたのは小さな男の子の声


「大川さん、消化を頼みます。この中に、小さな男の子がいるみたいです」

「わかった。くれぐれも無茶はするな。」

「はい」


通信をしながらも先を進む

結界を張りながら歩いているおかげで、炎の熱も建物の崩壊も羽矢を気づつけない


声がした方に急ぐ


「助けてください。この子だけでもいいから。神様っ」


女性の声

ふたりいるのだろう


あわてて走り寄ると、息子をかばう母親の姿


羽矢はすぐさま、結界を展開する

ふたりを守るように。


丁度その時、建物の外で消火活動をしていた大川さんが能力を利用し炎を消し去る


羽矢の結界により濡れなかったが、もしなかったらびしょ濡れになっていただろう

目の前で起きたことが信じられない様子で目を見開く母親の姿


「大丈夫ですか。けがはっ!」


女性はやけどを負っている

このままではまずいだろう


「この子を頼みます」


そういって、ずっと腕の中に抱えていた息子を離す


「おかあさん」


牧島さんの能力で、通信気なしで会話できる

いちいち、電源を入れる手間がないから楽だ


「賀上、雪菜を僕のいるところによこしてくれ。ひどいやけどを負っている」

「わかった」


大川さんはほかの建物の火災を消して回っているだろう

楓さんも同じだろう

炎を出すことも消すこともできる能力のおかげで、火事は次々と消えていく


「っ、羽矢君。このひとね。まかせて。」


背後に突然気配が生まれる

よく知った人間の気配、賀上と雪菜だ


雪菜はすぐさま女性に走り寄り手を当てて能力を発動する

やけどの跡がみるみると消えていく


雪菜の能力はいつもすごいと思う

誰かの傷をいやす能力。こういう場所では役立ち、重宝するけど、無理をして倒れないか心配だ


「きみは、どこもいたくない?」

「ぼくは、へいき。おかあさんがまもってくれたから」

「そう、すてきなお母さんね。お母さんと一緒に避難所に行こうね」


やけどや、傷を負っていた女性は自分のけがなおっていることに驚いていた

それも、そうだろう

あのやけどの跡が、跡形もなく消えているのだから。


「これは、あなたたちがっ?」

「はいっ。わたしたちは、ファンタジアというものです。ちょっと変わった才能や体質の持ち主だけど人間です。賀上君、この人たちを避難所に運んでくれる」


賀上はすぐさま、女性と、その息子の肩に触れて飛ぶ

あっという間に避難所に二人はついていることだろう


「雪菜平気か?」

「うん。無理はしないよ。」


そして、次の救助者のために街中を走る







日本の内陸部で地震が発生した

大地震というわけではなかったが、山が崩れたため道が遮断され陸の孤島となる町もあった

その中、能力を持ったものたちは人ならざる力とおそれられ忌避されることをいとわずただ助けるためにまっすぐに向かう。

助けたいという気持ちよりもできることをしたい。そう思う気持ちで動いていた。

無力ではない。いま、この身には力がある

不可能を可能とするだけの力。







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