第二十話「燃え盛る森林の中で」5
その頃、丘の上で燃え盛る西地区の森林地帯を見つめるキャンベル。
彼女の冷酷に冷めた眼差しは人の死に対してあまりに無関心である。
「――副団長、報告です。標的が作戦通り、奴らの集会所に到着したようです」
「……うふふふっ、ファイブスターナイツ、予測通りの行動ね。森を守るためなら身を挺して前線に向かっていく。確かにファイブスターナイツに恥じない正義感だわ」
上機嫌に部下の報告を受け止めるキャンベル。
その余裕に満ちた表情は作戦が順調であることの証明。
ファイブスターナイツの一人、リンカはキャンベルの掌で踊らされているのだった。
「こちらの罠に引っ掛かってくれたのなら、焦る必要はないわ。夜になった今なら、そう簡単には彼女に救援を差し向けるのは難しいでしょう。
さぁ、追加の魔獣を彼女に差し上げて頂戴。ゆっくりいたぶってその身に絶望を教えてあげるわ。リカルドとオニキスにも伝達して現地で待機させなさい。厄介なファイブスターナイツはこの場で息の根を止めてやるのよ」
「――了解しました。あんな小柄な少女一人のためにこれほどの戦力を投入するとは。容赦がありませんね、副団長は」
庭園に咲く美しく可憐な花のように煌びやかなファイブスターナイツ。その中でも最年少であるリンカは見た目にはそれほど脅威には見えない。
しかし、副団長であるキャンベルの認識は全く違っていた。
「お前達の認識が甘すぎるから、彼女らを野放しにさせてしまっているのよ。
魔獣の実証研究には丁度いい素材だったけど、いつまでも放置させておくのはあまりに危険な相手よ。
王宮を攻め落とすためにも、ここで叩き潰しておく必要があるわ。
基地があるこの森で暮らしてくれているなんて襲うには都合がいいじゃない。純真可憐な彼女から仕留めて王立警護隊の戦意を削ぐ。
それに、これまで強化してきた魔獣が今後も使えると判断できれば、これからの戦いをより有利に進められるのよ。これ以上、完璧な作戦はないわ」
リンカがこれまで退治してきた害獣達。
それは、この森林地帯に備えられているルミナスリバティーの秘密基地から差し向けられてきたものだった。
危険な外来生物を諸外国から引き取り、ルミナスリバティーはここで実験を繰り返し、レジスタンス活動に活用できないか検証を行ってきたのだ。
獣人族の中でも秀でた能力を持つリンカとの戦いを続ける中で、より改善点が発見され、改善を施すことで進化を遂げてきた魔獣。
それに加えて、西地区の産婦人科研究施設を襲うことで入手した薬物も、キャンベルが指揮を務めたことで今回は活用することに成功している。
研究施設で得た薬物の中でも今回使われている興奮剤は戦闘能力を向上させるだけでなく、痛みを感じなくさせる効果があり、命尽きる最後の瞬間まで全力で戦い続けることができる。
危険極まりない効果だが、魔獣を使い捨ての道具としてしか考えていない彼らにとって、これほど有用な効果を発揮する薬物はない。
シカリア王国に普及していない近代兵器のみならず、利用できるものは何でも利用していく。
そうした方針の中で人工的に改造された魔獣は恐ろしい兵器として進化を遂げた。
これは、王宮襲撃用の際にも使われることが想定されているため、王宮にとっての脅威へと成長を果たしているのだった。




