第二十話「燃え盛る森林の中で」2
太陽が西の空に沈んでいく。東の空から、戦乱を告げる丸い月が顔を覗かせる。謎多きルミナスリバティーの副団長、キャンベルはその最初の一手を繰り出そうとしていた。
「魔獣達の準備は出来ているのかしら?」
「はい、既に完了しております。今にも檻を突き破って出てきそうな程、鼻息荒く作戦開始の時を待っております」
「ふふふふっ……。それなら、同胞の仇を心行くまで討ってくれそうね」
片膝をついた体勢でキャンベルに基地で管理している魔獣の状態を伝えるメンバー。この日のために入念な準備をしてきたキャンベルは不敵な笑みを浮かべ、勝利を信じて疑わなかった。
「では始めましょうか。定刻通り、作戦を開始します。遠慮はいらないわ。森を焼き払いなさい」
丘の上から、広大な森林地帯の様子を眺めるキャンベルは作戦の開始を発令した。キャンベルが指揮するテロリスト部隊が動き出し、森の中へと次々に消えて行く。
やがて、彼女の非情な命令によって、森の中から真っ赤な炎と灰色の煙が立ち上り始めた。この作戦のために持ち出された火炎放射器が猛威を振るっている証拠であった。
「あはははっ! 良い景色ね。さぁ、出てきなさい、ファイブスターナイツ。ここが貴方達の墓場よ」
口元を歪ませ、憎悪を宿した残忍な笑みを浮かべるキャンベルがファイブスターナイツの名を告げる。キャンベルの目的は森を焼き自然を破壊することではない。この森を愛してやまない、一人のファイブスターナイツを狙った犯行であった。
「非道な作戦でありますな。我は出番まで基地で待機させていただきます」
「正々堂々、互いの技を競い合うのが私の美学だ。歪んだ体制を正すため、必要な作戦であることは理解しているが、調子が狂う。私も基地で待機させてもらおう」
キャンベルが指揮する部隊の管轄に所属するリカルドとオニキスが揃って非道な作戦からそっぽを向く。一度、火の手が上がると燃え広がっていく速度は早い。
静かな森に危機が訪れ、ざわめき始めた。人々の弛まぬ努力によって再生を遂げてきた自然がいとも簡単に失われつつある。
その愚かさを十分に理解している二人にとっては受け入れがたい光景であった。
「構わないわ、貴方達の出番は後に取ってあるから。それまでは基地で待機しているといいでしょう。さて、余興はここからよ。手塩にかけて育てた、魔獣に働いてもらいましょう」
強力な戦力である二人の騎士はキャンベルの言葉を受け、あっさりと基地へ戻っていく。
キャンベルの命令によって森へと放たれる魔獣。それは戦端を告げる残酷な合図であった。




