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ジェンダーフリースクリプト~始まりの物語~  作者: shiori@


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第十九話「作戦前夜」9

 二時間以上を掛けてようやく海岸に到着すると、既に大勢のメンバーが集まり、前祝いと言っても差し支えない程の規模でバーベキューを囲い、酒盛りをしていた。


 波の音は穏やかで、空を見上げれば満天の星空が広がっている。冬場に突入したことで冷たい寒気が流れていることを除けば、実に心地のいい場所。

 エリサはクオンと共に馬から降り、緊張が解けるとホッと一息ついた。


 運動の後であるおかげで、冷たい海風が今は優しく感じられる。月明かりに照らされた水平線を眺めると、心地いい開放感が全身を包み込むようだった。


「良い場所だね」

「はい、世界はこんなにも美しい。心が洗われますね」


 自然が作り出した美しい景観にあっという間に心惹かれてしまうエリサとクオン。視線を砂浜に移すと、焚火の周りを囲うように人が集まり、酒と料理が振舞われ、盛大に催し物が開かれている。

 その中心にいるのはよく見知った人物。豪快な性格をしたポール・ブレイカーと踊り子としてファンが多いベルレーヌ・キャンベル。自然に身体を寄せ合い、二人は仲睦まじい姿で活気のある場の空気をさらに盛り上げている。


 観光客が中心で男性が多い考えていたエリサだが、この場の男女比は殆ど変わらず、沢山の女性達が明るい姿でルミナスリバティーの活動を支持していることに驚かされた。


 早速、メンバー達に歓迎され、バーベキューに同席することになった二人。

 食事が進み、お酒を呑まないエリサは暫くすると満腹になって席を立ち、クオンと海岸線を歩き始めた。


 月明かりに照らされ、キラキラと輝く海原が果てしなく先の方まで続いている。ヨーロッパとアフリカ大陸の間に広がる地中海。自分達はその狭間で暮らしている。かつてはそのせいで戦争に見舞われた土地だが、今は平和の国として観光客が多く訪れている。 

 争いは何もかも奪っていく、そのことにまだエリサは気づかないでいた。


 砂の上を踏みしめていくエリサの視線の先、作戦前夜の集会が開かれる砂浜の向こう側にも照明が灯り、そこでは何隻もの船舶が停泊していた。


「荷物が運び出されているようですね」

「……うん、凄い数だね。見慣れない格好をした人達も大勢いるみたい」


 似たような背格好をしたエリサとクオンは横に並んで立ち止まり、港から荷物が運び出される様子を眺める。

 海上輸送された荷物を運ぶ、大勢の協力者達。そのほとんどは体力のある男性陣で彼らは夜間の運搬を任されているのだ。

 

「準備に余念がないわね」

「協力者は順調に集まっている。この調子なら武器弾薬は幾らでも必要になるだろうからな」

「そうね、士気の高い今の内に優位に立つ必要がある。彼らの手を借りれば大規模な作戦にも着手できるわ」


 この砂浜から基地へと兵器が運ばれていく様子を見つめるアントニオとキャンベル。その表情は真剣そのもので、これから始まる激戦を予期しているかのようだった。


 この日だけでも数回、ヨーロッパ方面からの荷物を受け取り、基地へと運び出している。ヨーロッパでは近代化が進んでいるため、兵器開発も本格的に進められている。防衛を第一に考えての措置だが、戦争の時代が近づいているとも言える傾向だった。


 王宮で暮らすエリサとクオンにまでは伝わっていないが、女王マリアンナとの謁見の不発は繁華街を中心に伝播が広がっている。それは速報性の高い大量印刷を可能にしたことによる広告効果と協力者の増加が大きい。

 近代的な技術を最大限に活用したプロパガンダ。このままでは観光客は王宮によって搾取されるばかりで永住権も得られず、女民との結婚も許されないと速報で伝えている。


 一方、こういった観光者向けの情報以外にもシカリア王国で暮らす女民向けには諸外国から訪れた男性の恋人が出来ても国外に移住することは当分は難しいだろうと伝えている。近隣諸国の様子が伝えられる一方、旅行に出掛けることすら禁じられている現状は女民達のフラストレーションとなっている。

 そのフラストレーションを解消する手段として海外からの趣向品に手を出したり、繁華街を訪れる人々は増加傾向にあるのだ。

 そういった傾向が進んでいるおかげでルミナスリバティーの協力者は増え、七か条の要望書の内容に理解を得られるような変化が続いている。

 

 着々と革命運動の機運が高まっている。

 それをアントニオ自身が実感しているからこそ、このタイミングでの作戦決行が有効であると判断したのだ。

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