第十九話「作戦前夜」5
「リムル、ここで待機しているなら出迎えてくれてもいいでしょう」
「あたしはアントニオのそばを離れる気はないよ。あまり時間がない。早く挨拶してくるといいよ」
壁に背中を付け、腕を組みながら羽を隠すリムルに向けて悪態を付くクオン。それに対して、リムルの反応は実に淡泊なものだった。
「時間がない? 作戦があるなら知らせてくれてもいいのに……」
「ふふふふっ……。クオンは想像力豊かだから、いちいち反応が面白いね」
「私は面白くありません。謁見に同席させてもらったからって調子に乗らないことです」
「王宮でスパイをしているクオンには出来ない仕事だよ。クオンは可愛い服が似合うんだから、愛嬌良く振舞えばいいんだよ」
「私は男です。貴方こそもっと女の子らしく振舞えばいいじゃないですか」
リムルに対して何故か対抗意識を燃やすクオン。
互いのことをよく知り、信頼関係が出来ているにもかかわらず、年が近いせいもあった二人の仲はあまり良好とはいえない。
守るべき相手がいる者同士。親睦を深め合っていても違和感はなかったが、天邪鬼な性格のせいでそう簡単にとはいっていない。
エリサはギスギスした空気のまま会話を繰り広げる二人を見て、複雑な心境だった。
「意外と仲が悪いんだね……」
「リムルは子どもっぽくて性悪なんですよ。常識がないのであまり心を許さない方がいいですよ」
「そんなことはないと思うけど……」
クオンの言葉を反射的に否定するエリサ。
天井が低く異様に声が響く中、書斎へと続く道を通され扉が開かれる。
その先には、一人ソファーでグラスを傾ける、大柄なアントニオの姿があった。




