第十九話「作戦前夜」3
夕刻、クオンの下に伝書鳩がやってきた。送り主はアントニオからだった。
謁見後、初めて送られてきた便りに何が書かれているのか気がかりなクオンはすぐさま伝書鳩から受け取った手紙を開いた。
「……これは、何か進展があったのでしょうか」
手紙に記されていたのは意外な内容だった。
謁見の中身について聞かされていないクオンは想像する他ない状況。
思考を中断して、一旦クオンはエリサの下へと向かった。
「……今度はクオンも一緒だなんて、何の用事だろう……」
「謁見の中身と関係があるのだと思いますが、現状では推測するのは難しいですね」
手紙に書かれた内容はシンプルそのもの。
今晩二人で繁華街にある、ルミナスリバティーのアジトに集まるようにというものだった。
「急を要することかもしれない。父様が呼んでいるのなら、行くしかないね」
「……はい。王宮の人達に気づかれてしまうリスクはありますが、向かいましょう」
夜な夜な、二人揃って外出とあっては偽装工作も困難を極める。
それでも、謁見の詳細が如何なるものであったか、頭を悩ませるクオンは王宮を発つ決心をした。
夕食後、身体を洗って気持ちを整えたエリサは三度目の外出を迎えることになった。夜間の外出は三度目を迎えても慣れることはなく、緊張は解けない。
気休め程度にコロとボール遊びをしてクオンが迎えにやって来る時を待つ。広い自室に転がるボールを追い掛け、器用に口に挟んで主人の下へと戻ってくる。それを何度も繰り返していると、クオンが軽く扉をノックして部屋に入ってきた。時刻は定刻通り、夜九時を回っていた。
「お待たせしました。王子、脱出路は既に確保してあります。直ぐに行きましょう」
「ご苦労様、クオンは真面目だね。家出ばかりする素行の悪い人間にはなりたくないけど、行こうか」
「見つかれば次は警備が厳重にされ、外出禁止の措置が取られてしまうかもしれません。慎重すぎるということはありません」
「その通りだね。警戒していこう」
王子であることを、従者であることを忘れて自由になりたいと願ってしまう時もある。だが、それは決して叶うことのない願い。
生まれの不幸を呪っても意味はない。クオンは夜の寒さを凌げるよう上着を羽織り、準備が整ったエリサを連れて王宮を抜け出した。




