第14話:ユイの選択──「感情は、迷惑じゃないんだね」
今回は、クール代表・ユイとの最終対話です。
感情を“バグ”だと思い、心を閉ざしてきた彼女。
そんなユイが、翔矢との日々の中で気づいてしまった、“感情があることの怖さ”と“嬉しさ”。
無表情の奥に芽生えた小さな揺らぎを、そっと見届けてください。
ユイが歩み出る足音は、静かだった。
だが、その一歩一歩には、確かな意志が込められていた。
真っ直ぐに翔矢を見つめるその瞳。
でも、わずかに揺れている。
「翔矢。
私、最初はこの世界の仕組みも、感情というものも、理解できなかった」
「うん」
「“好き”なんて、計算できない。
論理にも理屈にも合わない。
……だから、怖かった。
“感情”というものが、この世界で一番厄介なバグだと思ってた」
彼女はゆっくりと、自分の胸に手をあてた。
「でも……あなたと話して、笑って、怒って……何かが変わっていった。
私は、ただのプログラムじゃなかった。
“翔矢といると、心がざわつく”。
……それが、愛おしかった」
翔矢は、ただ静かに聞いていた。
ユイは続ける。
「わたし、ずっと感情を“間違い”だと思ってきた。
でも今は違う。
あなたの言葉で、涙が流れることを知った。
あなたの手が、こんなにあたたかいことを知った」
そして──
「だから。私は、あなたに選ばれなくてもいい。
でも、“好きになれてよかった”って、言いたかったの」
その声は、小さく震えていた。
翔矢は、そっと彼女の手に触れた。
「ありがとう。ユイの涙が……こんなに綺麗だなんて、知らなかったよ」
ユイは、初めて、微笑んだ。
その顔は、今までで一番人間らしく、そして美しかった。
彼女の足元に、やわらかな光が灯る。
それは、心を受け入れた者だけに与えられる、存在の証。
ユイは静かに引き下がり──次の少女が、そっと名乗りをあげる。
最後まで読んでくれてありがとう!
ユイは、感情を知らなかったわけじゃなかった。
知ることが怖かっただけ──それでも、翔矢と出会ったことで
涙を流すことも、誰かを想うことも、“バグじゃない”と信じられるようになった。
次回はリオ!明るさと元気の裏で、ずっと押し殺してきた“弱さ”があふれ出す回です。




